好感度数値が見えるようになった。仲のいい彼女達は〝13〟だった。泣きたい。   作:鹿里マリョウ

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急いで書いたから微妙な出来になってしまいました。後で書き直すかも。


広角春香(こうかど はるか)
誰にでも優しいクラスの人気者。たまに肉食獣の目になる。
好感度〝13〟

矢羽猪秋葉(やばいの あきは)
矢羽猪直来の妹。兄に対して超毒舌で、冷たい態度をとる。しかし、その裏に隠された本性は・・・・・・。
好感度〝15〟


不良後輩(犬)

 保健室でベッドに座っている。

 保健室の先生も席を外しており、ただ俺が独りボケーッと静けさを感じるだけの時間。

 現在他の生徒達は授業中である。しかし、だからといって背徳的な高揚感が来るわけでもない。そんな気分にはどうしてもなれない。

 言ってしまえば、俺は放心状態であった。

 

 原因は間違いなくクラスの皆特に広角さんに嫌われていることが発覚したことだ。

 せめて広角さんは50くらいあって欲しかった。今まで向けてきた笑顔は仮初だったのか。もう誰も信じられねえぜ。

 これからの学校生活が不安でしかない。休み時間には携帯を弄って外界との関係を遮断しよう。弁当は一人で黙々と食べよう。放課後は直ぐに帰ろう。・・・・・・いつもの俺じゃん。

 逆にこれでどうやって嫌われたんだろう。

 

 まあとりあえず広角さんには近づかない方がいいよな。

 マジであの天使スマイルの下で何を考えてるのか分からん。こわい。

 さっき授業のチャイムがなった時も謎にごねてきたし。私も一緒にサボりますとか、保健室でもできる授業があるからとか、優しくするよとか。

 完全に肉食動物の目だった。怖かった。

 

「はあ、俺は最早誰を信じれば・・・・・・」

 

 溜め息が虚しく空気に溶ける。水を張ったような静けさが再び落ちる・・・・・・かとも思ったのだが、

 

 

「ナオキ先ぱぁああああああああい!!!」

 

 保健室のドアが壊れんばかりの勢いで開かれた。

 そして人間離れした速度で俺の懐にダイブをかます女子生徒。

 

「ナオキ先輩、ナオキ先輩ナオキ先輩ナオキ先輩ナオキ先ぱああああい!!」

 

 犬耳にも見える軽めのツインテールを振り回して、その女は俺の腹に頬ずりしてくる。

 

「ナオキ先輩大丈夫っすか!?何処か具合悪いっすか!?それともさぼりっすか!?」

 

 グイグイと顔を近づけて、彼女は心配そうに眉をひそめている。

 可愛い八重歯と首のチョーカーがチャームポイント。妹や広角さんにも引けを取らない犬っ子美少女である。

 名前は辺和(へんわ)夏海(なつみ)。俺が妹以外で交流のある唯一の後輩である。

 

「スグクルな、ナオキじゃなくて」

「了解っす!ナオキ先輩!」

 

 ・・・・・・。

 俺の名前の直来(すぐくる)だが、ご覧の通りナオキと間違えやすいのだ。

 そして夏海は毎回間違える。何度注意しても訂正しないところを見ると、わざとやっているのだろう。仲のいい奴らのお決まりの掛け合いみたいなもんだ。

 

 まあ、この子も〝13〟なんですけどね!!クソが!!

 

 夏海の頭上にはこちらを嘲笑っているのかとすら感じられる〝13〟の文字。

 

 さて、まずいことになった。とても。

 何がマズイって、この子、ここら辺じゃ知らぬ者はいないクレイジー不良ガールなのだ。

 不良集団四十人を一人でのしたという伝説すら持っている。てか俺その現場にいたし。なんならその大蹂躙スマッシュフリョウーズの原因俺だし。

 

 経緯を流れで説明すると、俺が不良に絡まれた。夏海が来た。ボコボコにした。以上だ。

 最初俺に絡んできたのは数人の不良だったが、夏海の一流アクション映画でも白目を剥く体捌きに恐れをなした不良が、途中数十人の仲間を呼び出すなんてアクシデントもあったが、来たヤツらも一瞬で血祭りに上げられていた。

 頬を興奮に染めながら敵を屠っていく光景は一つのトラウマといっていい。

 着いたあだ名は、〝狂狼〟。

 

 そんな辺和夏海の好感度が、〝13〟。

 恐怖である。

 この人懐っこく頬ずりしてくる笑顔の下には、どんな悪魔が潜んでいるのだ。

 俺を油断させる笑顔。敵意など感じられない。しかし彼女の好感度が分かると、途端に寒気が腹の底から湧いてくる。

 

「ナオキ先輩?」

「ひいっ!?」

 

 表面に出さないようにしていた感情の機微も、彼女には容易く見破られた。

 

「どうしたんすかナオキ先輩、今日なんか変っすよ?」

 

 夏海が自分の顔を俺の顔へと突き合わせてくる。

 やだかわいい。と思ったのも一瞬、いや二瞬。・・・・・・三瞬。好感度激低の殺人マシーンに詰め寄られた恐怖に身を固める。

 

「ま、待て!ステイ!夏海ステイ!」

 

 かなり気が動転していた。

 恐怖のあまり突いて出た言葉は、彼女のような強者へ口にするには不遜過ぎるものだった。

 夏海の不良としてのプライドに触れた──

 

「なんすか!?犬ごっこすか!?わんわん!」

 

 わけでもなくすげえ乗り気だった。

 

「わんわん!ナオキ先ぱ〜い!わふわふ〜」

 

 いや乗り気だな。

 予想外に過ぎる夏海の反応に、当惑していると、目の前で驚くべきことが起きた。

 

 〝14〟

 

 ・・・・・・上がった。

 好感度、上がった。13から14に。

 そうか、当然だ。だって好感度である。下がりもすれば上がりもする。周りからの評価が低すぎるが故にこんな当たり前のことすら失念していた。抜け落ちていた。

 低いなら、上げればいいのだ。

 嫌われている状態から好かれることは難しい。プラスして俺は家族以外と対面するとテンパるタイプの人間である。

 だが、不可能ではない。この状況を抜け出す方法がある。その事実が何より俺の心を照らした。

 

「先輩、先輩先輩先輩。すぅーーー、ぁあ!先輩の匂いすごいっす!すぅーーー」

 

 きっと夏海後輩は犬が大好きなんだろう。八重歯とか首のチョーカーとか犬っぽいし。

 だから彼女には犬関係の遊びをふっかけまくったら好感度上昇が狙えるだろう。

 

「──んっ、はぁ♡先輩♡先輩ぃ♡♡もっと♡もっと先輩のすごいの欲しいっすぅ♡♡」

 

 目じりが下がり息を荒らげている。なんかエロい。

 よく分からないが喜んでくれているのは確かだ。このまま続けよう。

 

「やめられないっす♡こんなの、中毒になっちゃうっすぅ♡♡♡」

 

 

 

 教室に戻るのも怖かった為、一通り辺和夏海と戯れた後、この日は早退した。因みに夏海の好感度がまたひとつ上がって〝15〟までいった。まずまずの成果だ。これからも頑張ろう。

 

 

 

 

 

 ■■■

 

 

 

 

 

「スグクル君お見舞いに来たよ!!」

 

 授業の終了をチャイムが告げたおよそ三秒後、広角春香は保健室のドアを破壊も辞さない心持ちで開放する。

 

 ──が、そこに目的の人である矢羽猪直来はいない。代わりに可愛らしい後輩がベッドに顔を埋めて悶えていた。

 

「はぐぅ♡♡ナオキ先輩ぃ♡♡♡アタシ、犬っす♡♡ナオキ先輩の忠犬っす♡♡♡♡飼ってくださぃ♡♡躾てくださぃぃ♡♡♡♡」

「──は?」

 

 知らないメスがいる。スグクル君はいない。私がいない間にスグクル君に擦り寄っていた。私の、スグクル君に。コイツが?

 

「・・・・・・おい」

「次会った時は、頭撫でて欲しいっす♡♡そ、それから、お散歩もしたいっす♡♡首輪引かれて、ナオキ先輩のペットだって脳髄まで刻まれたいっす♡♡♡♡」

「おいっ!!」

 

 普段の広角春香を知るものなら、間違いなく耳を疑い現実を疑うであろうどす黒い声音が張り裂けた。

 

「・・・・・・チッ、うっさいなぁ。今忙しいんだよ。消えろ」

「あなた、一年生の辺和夏海だよね?あのさ、今後一切スグクル君に近づかないで貰えるかな。あなたみたいなのがスグクル君の隣にいると彼が汚れちゃうの」

「は?お前こそ男子共に股開いてろよ、ちやほやされたいんだろ」

 

 不良と人気者。対極に位置する二人が、真っ黒な殺気をぶつけ合う。全ては、愛しい人の隣を勝ち取るために。

 矢羽猪直来の預かり知らぬところで、彼を巡る怪獣対戦が行われているのだった。

 

 

 

 




辺和夏海(へんわ なつみ)
不良。つよい。あだ名は〝狂狼〟。しかし近頃は〝忠犬〟というあだ名を触れ回っているとか。因みに「〜っす」という敬語は主人公以外には何があっても使わない。
好感度〝13〟→〝15〟

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