好感度数値が見えるようになった。よく話す彼女達は〝13〟だった。泣きたい。   作:鹿里マリョウ

8 / 10
好感度は、

10、一瞬離れるのも辛い(恋愛)
9、ずっと想っちゃう(恋愛)
8、大親友(友情)、大好き(恋愛)
7、特に仲のいい友人(友情)、好き(恋愛)
6、友人(友情)、気になってる(恋愛)
5、普通
4、ちょっと苦手
3、嫌い
2、大嫌い
1、消したい(切実)

という感じで行きます


文化祭準備で嵌められた夕方

 

 

 

 秋葉vs夏海の対決が始まってすぐ、僕は職員室へ急いだ。

 これから仲を深めていきたい二人だ。どちらも怪我して欲しくはない。

 職員室に着いて、ノックする勇気を湧き上がらせること五分、ドアは僕が何もせずとも開かれた。

 

「ん?何してるんだ?」

 

 職員室から筋肉隆々のゴツい男が出てきたのだ。

 体育教師の五里(ごり)先生。いつもは怖くて近づけないが、今の状況では理想的な人物と言える。

 

「あ、あの、喧嘩が起きてます」

「なにぃい!?どこだ!?案内してくれ!」

「は、はい」

 

 僕は再びあの空き教室へ走る。並走する五里先生は、じれったそうにしながらも、僕の速さに合わせてくれた。

 

 

「ここです!・・・・・・て、あれ?」

 

 息を切らしながら教室に辿り着いたものの、そこは既に無人となっていた。

 

「おわあ!?何だこのドア!?壊れてんじゃねえか!!」

 

 五里先生が破壊されたドアに目を剥く。ついで、僕の方に顔を向けた。

 

「キミ、喧嘩している奴の顔は見たか!?」

「い、いえ、焦っててあんまり・・・・・・」

 

 咄嗟に嘘を吐く。秋葉と夏海の喧嘩を目撃したのは僕だけの可能性がある。これで二人が呼び出されたら、確実に好感度が下がってしまう、そんな不安が僕に虚偽の申告をさせた。

 

「そうか、じゃあ覚えてる範囲でいいからその時の状況を教えてくれ」

 

 

 ────その後、質問をいくつかされる。適当に誤魔化しながら答えていく中で現れた好感度は〝6〟だった。役に立たないからって酷くない?

 

 暫くして五里先生は職員室に戻って行った。この後の処理を考えると申し訳なくなる。僕は嫌われて当然なのでは、とネガティブな思考にさえなってしまった。落ち込んだ気持ちのまま帰ろうと歩き出した時、それを見つけた。

 

「これは、針?」

 

 地面で光を反射させているそれは、間違いなく針だった。

 裁縫で使う一般的な針ではない。もっと、ダーツで使う針に近い形状をしていた。

 一気に血の気が引く。二人の喧嘩は、こんな物が飛び出すまでに発展していたのか。

 急いで秋葉に電話をかける。

 

 p──ガチャ。

 

「もしもし、兄さんですか?」

 

 ・・・・・・早くね?一コールもなかったよ。

 

「あ、うん、そうだけど。秋葉大丈夫?あの後怪我とかなかった?」

「私も、残念ながら辺和夏海も、これといった負傷はしていませんが・・・・・・もしかして兄さん、私を心配しているのですか?」

「え?まあ、そうなるかな」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・すき」

 

 ??────????ん?何今の??すきって言った?すきって、好き?ん???

 

「すき、だらけですよ兄さん」

 

 ち、違った。隙だらけだった。好きじゃなかった。めっちゃ恥ずかしい。妹に対して何を思ってるんだ僕は。キモすぎる。あと隙だらけって何?狙われてるの僕。

 

「いざとなると、勇気が出ないものですね。兄妹の関係を壊してしまうのは、やはり怖いです」

 

 兄妹の関係を壊すって、殺る気満々じゃん。勇気を出して何をやるの?僕を殺るの?

 

「秋葉、僕って何かから狙われてる?」

「・・・・・・分かりません」

 

 少しの間からの濁した回答。明らかに図星の反応じゃないか。

 

「今日の放課後、教室で待っていてください。迎えに行きます」

 

 え、なんで?殺しにくるってこと?

 

「一緒に帰りましょう」

 

 たとえ仲の良い兄妹だとしてもやらないような行為を唐突に平然に提案してきた。当然裏が無いわけが無いだろう。人目につかない場所に誘導して消されるのかもしれない。

 

「い、いや、遠慮しとくよ」

「駄目です。一緒に帰ります」

「そもそも僕、放課後文化祭の準備あるから。ほら、もうすぐでしょ、文化祭」

 

 本日、僕のクラスで文化祭の準備があるのは本当。でも、今日の準備は任意参加だ。僕も元々行く気はなかった。が、秋葉と一緒に帰るという恐怖体験よりは、クラスの端っこでモジモジしてる方がマシという判断に至った。

 

「兄さんがいても迷惑をかけるだけでしょう」

 

 ず、図星。

 

「でも一応僕も出るし」

「は?兄さんが?何にですか?」

「あれ、言ってなかったっけ。僕のクラス、〝ホストバー〟やるんだ」

「準備頑張ってください、では」

 

 え、切られたんだけど。もしかして愛想つかされちゃった?好感度下がっちゃった?ええ、どうしよう。

 

 困惑と焦りに襲われる。しかし、準備があると言ってしまった以上、早く帰ることはできない。

 放課後は良い時間帯まで文化祭の準備を手伝うことにしよう。

 

 

 

 ◼️◼️◼️

 

 

 

 そして放課後の教室。端っこで一人、小道具を作る。僕の他にも何名かのクラスメイトがいて、皆固まって喋りながら作業している。

 日常の何気ない場面で劣等感を感じていると、教室のドアが開かれる音が聞こえた。そして現れたのは、

 

「あれ〜?春香じゃん、今日用事あるって言ってなかったっけ」

 

 広角さんだった。

 その姿にまず声を上げたのは、広角さんの友人である茶良(ちゃら)さん。下の名前は分からない。

 

「あ、チャラちゃん。用事無くなったから来ちゃった」

 

 その言葉に教室が沸き立つ。さすがの人気だ。

 広角さんは教室を見渡すと、僕を見つけて動きを止めた。うわ、なんでいんの?とか思われたりしてないだろうか。してそうだな。

 

「ん?ああ、なるほど☆乙女だね〜、春香も」

「も、もう、やめてよチャラちゃん」

「じゃあ春香には、社会科室に置いてある衣装が人数分あるか確認してきてもらおっかな〜☆でも一人だと大変だろうから、二人とかで行った方がいいよ☆」

「────っ!そ、そうかな?そうだよね!ありがとうチャラちゃん!」

 

 茶良さんとの会話を終えた後、広角さんはこちらに向かってきた。

 

「スグクルくん!付いてきてくれないかな?」

 

 なんかデジャブ。

 

 

 

 ◼️◼️◼️

 

 

 

「おお〜、あったあった。ほら見てスグクルくん。ホストの衣装だよ」

 

 広角さんがはしゃいでいる。体がはねるのに連動して大きなお胸が揺れる。うぐぐ、見るな、見るな僕の目。

 

 ここは社会科室。例の如く僕と広角さん以外は誰もいない。鍵も掛けられた。僕の心臓はドキドキだ。無論、恐怖で。今日の昼と同じような状況に、警戒心は最大まで高まっている。

 

「えーと、1、2、3、・・・・・・39、40。うん、ちゃんと人数分あるね」

「そ、そう、よかったね」

 

 いつ何をしてくるか分からない。常に一定の距離を保つ。

 

「・・・・・・・・・・・・ねえ、スグクルくん」

 

 その時、明らかに広角さんの雰囲気が変わった。

 

「は、はい」

 

 思わず唾を飲む。殴られるのか、脅されるのか、何が来るんだ。

 

「この服、着てみない?」

 

「・・・・・・ん?」

 

 どんな思考でその考えに至ったの?

 なまじ不穏なことをされるとばかり思っていたため、肩透かしをくらった気分になる。

 

「ほら、サイズとか来た時の感じとか確かめたいし。ね、いいでしょ?」

「え、まあ、それくらいなら」

「じゃあ、あっちの準備室の中で着替えて来てくれるかな?」

「分かったよ」

 

 どうやらこの提案も文化祭準備の一環らしかった。しかし、ならなんで急に纏うオーラが重くなったのだろう。いや、そもそもそのオーラとかも勘違いなのかも。

 

 言われた通り、併設されている準備室に入り着替えをする。

 鏡がないので確認できないが、陰キャがホストの格好をしているって大分なグロ映像なのではなかろうか。

 い、いや、どんな人でも着たい服を着る権利はある筈だ。自信を持っていこう。

 

 もう一度身に纏うホスト服を整えてから準備室を出た。広角さんにこの身を晒す。

 

「────ぁぅっ♡♡♡♡」

 

 広角さんが、絶句していらっしゃる。

 え、そんなに酷い?へ、へこむ・・・・・・。ええと、やっぱり着替え直した方がいいかな。

 

「────写真」

「え?」

「写真、撮らせてくれる?」

 

 写真?なんで?ああ、サンプルとしてクラスの皆に見せるのか。なるほど。

 

 ・・・・・・それ、まずくない?

 例えば、こんな状況を考えてみる。

 

『皆見て!スグクルくんの衣装姿!』

『うええ〜、きもちわるーい。なにこの勘違いやろー、ないわー』

 

 地獄である。そうか、そうだったのか広角さん。ここへ僕を連れ込んだのは、全てこのための布石。僕を笑いものにする為だったのか。酷い、酷すぎるよ広角さん!

 

「ほら、そこに立って。そう、カメラ目線で」

 

 抵抗しなきゃいけない。ああ、でもあの目だ。あの捕食者の目。怖すぎる。

 

「えへへ、じゃあ撮るね。いくよ?えへへ、はい、チーズ」

 

 シャッター音。幾度となく聞いてきた筈のその音が、今は絶望の音にさえ感じられた。

 

「じゃあ次はツーショットね、ほら、もっとこっちに寄って?大丈夫、怖くないよ」

 

 一枚で終わると思いきや、広角さんが体を詰めてくる。や、やばい。肩が、肩が当たってる。お、落ち着け僕。ここでキョドったら益々思うつぼだ。後でクラスの笑いの種にされてしまうんだ。

 

「ふぁ♡♡んっ────ふぅぅ♡♡♡スグクルくん♡♡ふふ、もっと、こっち♡そう、カメラに収まるように、ね♡♡ふぅあっ♡♡」

 

 広角さんの様子がおかしい。体の拒否反応を必死で抑えようとしているのか。そんな決死の覚悟までして僕を笑いものにしたいらしい。つ、辛い。あ、でもすっごい良い匂い。

 ・・・・・・まんまと僕はキョドってしまった。そして、シャッターが切られる。終わった。明日から僕は笑いものだ。

 

〝14〟→〝15〟

 

 広角さんが今の写真を確認していたところ、彼女の好感度が一つ上がった。

 こ、これはあれか、完全に思い通りに動かされた僕の、遊び道具としての評価が高まったということか。どうしよう、凄い微妙な気持ち。

 

「わぁ♡えへへ♡♡スグクルくんとのツーショットだ♡加工してない本物のツーショット。やった♡わぁぁ♡♡やった♡やった♡嬉しい♡♡わぁぁ♡♡嬉しい♡♡嬉しい♡♡♡えへへへ♡♡」

「────っ!?こ、広角さん?」

 

 そこで僕は、異変に気づく。

 スマホを見つめる広角さんは、頬を紅潮させ笑顔を浮かべている。が、その瞳からは、大粒の涙が止めどなく溢れ出ていたのだ。こ、怖い、怖すぎる。

 僕を笑いものにできる喜びと、密着してしまった気持ち悪さを同時に感じているのだろう。でもそんな泣くほど気持ち悪がることある?僕も泣きたい。

 

 こうして、恐怖と絶望に震えながら、文化祭の準備は過ぎていった。

 

 

 ■■■

 

 

 

 ────その日の夜。広角家。

 私は自室で、今日撮ったスグクルくんの写真を見つめている。帰ってきてからずっとだ。一瞬も目を離さず見続けている。時計にも目をやっていないので、正確に何時間かは分からないが、窓から差し込んでくる光を感じなくなってから暫くしたので、最低でも三時間以上は経っているだろう。

 ホスト姿で、カメラ目線のスグクルくん。

 スグクルくんの写真は沢山持っているが、全て盗撮なため、カメラ目線というのは初めてだ。

 じっと視線を合わせると、身体の芯から熱い想いが湧き上がってきて、四肢を駆け回り、私の中をぐちゃぐちゃにしていく。

 

「あぐっ♡♡うぐぅ♡♡♡スグクルくん♡♡だめだよ♡♡あっ♡♡うぅぐ♡♡♡」

 

 スグクルくんの瞳が、私のお腹の奥を鷲掴んで離してくれない。指先で弄ばれているように、ずっと疼きっぱなしだ。

 

「ふぅ────♡♡♡ふぅ────♡♡♡」

 

 暴れ狂う愛情で、私は訳も分からず涙を流していた。愛の結露。スグクルくんの写真を見つめるだけで、熱い涙が零れ落ちてきた。

 

 もう一枚の写真も見やる。

 スグクルくんと私が、肩をくっつけた写真。

 二人だけの世界。煩わしい虫のいない世界。

 

 ────渡さない。

 

 私の中の愛情に、黒色が混ざる。

 

 渡してなるものか。

 スグクルくんの妹にも、辺和夏海にも、そしてもしかしたらもう一人、いるかもしれない誰かにも、決して譲りはしない。

 

 スグクルくんに群がる羽虫は、全て駆除する。そう、二人だけの世界の為に。

 

〝15〟→〝16〟

 

 

 




高校生がホストバーってどんな文化祭やねんって書いた後に凄い思った

♡はアリなのかナシなのか問題

  • モハメド・アリ
  • アリだけど多すぎるのはナシ
  • どっちでも
  • モハメド・ナシ
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