「…………ハッ!?いま何時だ?!……この台詞この前も言ったな……」
「おんや?ようやく起きたか?お前さん4日間も寝てたんだぞ」
「4日も…だと……!?(納期が今日までの仕事がわんさか残ってると言うのに……!!)」
同僚のペンギンに仕事全てを任せることにして、もう色々と諦めることにした。そもそも、気を失って起きたら元の場所。なんて言うことを想像していたが、現実は無情と言うことだ。仕事も帰ることも考えることも諦めて、拾ってくれた翁の質問だけに答えることにした。
「お前さん、名前は?」
「(この体の本来の持ち主の名前は)……分からない」
「大丈夫かお前さん?まぁ取り敢えず外に出て日の光でも浴びてスッキリ……どうした?」
「いえ。何故か日の光を浴びてはいけないような気がして……」
目が覚めてから色々おかしい。4日間も眠ってた割には腹も減っていないし、体のダルさもない。少し動けば耳鳴りがして吐き気を催し、心臓の鼓動と血液の流れる音が頭の中を支配し気を失ってしまうくらい弱かった体が、今はなんともない。日光に対して無意識に拒絶を覚えてしまうこと以外には。
「おっかしな事言うな~。まぁ良い。取り敢えず婆さん呼んでくっから、お前さんは休んでろ」
その直後、お婆さんがやってきて軽く話をした。何故か日光を拒否する体をお互いに不審に思ったが、まぁ無理なら無理で良いと言うことになり、深く追求することは辞めた。
が、当然タダでここに住む訳には行かない。と言うか、社畜を長くやっていたお陰か、何もせずに過ごすと言うことができないのだ。言うなれば、泳ぐのを止めると死んでしまうマグロみたいなもの。この男は働いてないとどうにかなってしまうのだ。
「では、昼間は家の中の仕事を。夜は畑を害獣から守りますので、よろしくお願いします」
それから数ヶ月。この男と老夫婦の少し奇妙な生活はそれなりに順調に進んでいった。その生活の中で、いくつか気付いた事がある。
1つ目は、昼間よりも夜の方が動き回れると言うこと。日光を嫌っている故、これはある種当然と言える。しかし、常人のそれとは違う。普通の人間が昼間に動き回るのと変わらずに動けるのだ。夜と言う視界が最悪の空間を自由にだ。お陰で、畑の害獣被害はかなり減った。
2つ目はやたらと体が丈夫な事。あの屋敷から逃げ出した時なんか、大股で5歩走っただけで目の前がチカチカして酷い耳なりに襲われ、一切動けなくなったと言うのに、今ではそんなことも無く、むしろ畑を荒らす野生動物を追いかけられるくらいに体が元気になっていた。すぐに死にそうなくらいに青白いのはそのままだが。
そして最後に1つ。食事の量が極端に少ない。最初は若いからと気を遣って老夫婦が自分達よりも多めに食事を出してくれていたのだが、それでと人里離れた山の中で畑で野菜を育ててほとんど自給自足の生活をしている家だ。それ以外は弓矢による狩猟や川で釣ってきた魚。多く出てくるとは言え、量なんてたかが知れてる。にも関わらず、わずかに食べただけですぐに食べられなくなるのだ。満腹と言うわけではない。むしろ腹は減っている。感覚としては、受け付けられないと言う感じだ。
そんな体の変化に一抹の不安を覚えつつも、食事が終わった後に与えられた自分の部屋に行き布団の中に入った。その日は何もなかったのだが、問題が起きたのは次の日の夜だ。食事を終えていつも通りに与えられた部屋に入るが、扉を閉めると突然膝をついて口元をおさえ始めた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
両目が紅く光、人間では考えられない瞳孔の開き方をしている。そして何故だかヨダレが溢れ出て止まりそうにない。
苦しそうな呼吸と悶えた時の音に気付き、翁達が部屋の扉を開けて入ってきた。大丈夫かと声をかけて近寄ろうとすると、男が声を荒らげて来るなと叫んだが、時既に遅し。近付いた翁に掴みかかり肩に噛みついてしまった。犬歯が発達し牙の様になっているため、用意に皮膚を貫いてしまう。
「あっ、アァァァァァ……!!ウゥッ!逃げて、逃げてくれ!……私から、離れてくれぇぇぇぇえ!!!」
なんとか正気を取り戻し、床や柱に頭や体を打ち付けて2人を喰らおうとする衝動に堪えるが、もう無理だと判断すると、壁を突き破って家を飛び出した。
「やってしまった……何故こんなことを……」
そう言いながら自分の手を見てみる。その手は妙に筋肉が発達していて、丈夫な爪が伸びている。ちょっとやそっとじゃ折れそうもない爪だ。まるで獣の爪である。近くにあった水溜まりに顔を映すと、相変わらず目は紅く妖しい光を放ち、犬歯は牙の様に伸びていた。
「これは……本当に人間なんだろうか……目が覚めたら平安時代の貴族の屋敷にいて、目の前には自分が殺ってしまったであろう頭の割れた男の死体。なんとか逃げて拾われて、体調が良くなったと思ったら、とても人間とは言えない何かに変わってて、そして助けてくれた2人を襲ってしまって……もう何がどうなってるんだ……」
改めて冷静に自身に起きた事象を並べてみると、気が狂いそうになってくる。それを全力で走りながら考えていた。そして気付けば日の出が近い時間に。
「あっつ……!!」
木々の間から溢れた日光が腕に当たると、尋常ではない熱さと痛みが襲い、その部分だけ焼鏝でも入れられた様になっている。影になっている所に引っ込めると、すぐに再生した。
「もういっそのこと、この日に焼かれて……」
そんなことを思ったが、1歩を踏み出す勇気が出なかった。こんなクソ見たいな状況に食人衝動。本当に死にたくなってくる。1歩足を踏み出せば全てが終わると言うのに、それができないでいる。
仕方なく近くにあった洞窟に入り込み、天井部分を殴りわざと落盤させて道を塞ぎ出られないようにした。人と接触しなければ衝動に刈られて人を襲うこともないし、そもそも出られないため誰かに危害を加えることもできない。ここでできることは1つ。黙って眠りながら寿命で死ぬのを待つ。それだけだ。
「5年ぶりの長期休暇とでも思って、今まで寝れなかったぶん寝ることにするか……」
さっさとギャグパートに行きてぇな。まぁご都合改変がたくさん増えるので、今の内に覚悟決めといてください笑
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