ロキ、ガネーシャ、ルーナ、エイナ、シル、アーニャは現在、バベルにあるダンジョンの入口にいた。ウラノスから18階層の異常事態を聞いて全員18階層に行った団員達が心配で仕方なかったのだ。ガネーシャは都合により時々離れることはあったのだが、他の二人は24時間バベルの塔の前でずっと待っていた。
「もう、1週間やな・・・」
「ええ、遠征以外でここまで心配になるのはいつ頃かしら」
そう言って二人は毛布をくるまう。一見すると不審者のように居座ったが、オラリオの冒険者、神達は事情を知っていたため静かに見守っていた。それは、エイナだって同じ事だ。ミイシャから全ての仕事を任せて、現在24時間ベルの帰りを待っている。ウラノスから聞いており、エイナも休むことが決まったのだ。
ミアにかんしても、特に仲が良かったアーニャとシルの様子を見てしょうが無いとのことで休みにしている。ギルドからダンジョンの出入りは禁止されていたため助けることも出来ない状況だった。ルーナ達の分かるのはただ生きているかどうか・・・ただそれしか分からなく、不安が過ぎる。更に言えば、アーニャ達はリューが生きているかも分からない状況だ・・・
「リュー・・・大丈夫かにゃ・・・」
「大丈夫よ・・・リューならきっと・・・」
そう言って二人は待ち続けている。
「ベル・・・皆・・・お願い・・・無事でいて・・・」
ルーナはただ祈るだけだった。神頼みというヤツか・・・自身が神であるという突っ込みを忘れるほどルーナはただ無事を祈り続ける。
今日も待つだけかと思っていたが・・・
「皆様!たった今、ルーナファミリア、ロキファミリア、ガネーシャファミリアの皆さんが帰還しました!!」
「「「「「「・・・・・・・ッ!」」」」」」
それを聞いた途端、ルーナ達は風のように素早くダンジョンの入り口に向かう。もちろん、オラリオの人民と神も気になったのか様子を見に行っていた。ルーナ達は本来、神々が越えては行けないラインを通っていたが、今回はギルドもそれを、目をつぶることにした。
「・・・ルーナ様・・・」
ダンジョンの入り口に、ベルが現れる。それと同時にレミリア達も顔を見せる。ルーナファミリアは全員生存だった・・・
「皆・・・・」
そうして、ベルは何かを察したようで顔を赤らめる。いうのが恥ずかしいのだろうか、少し、いうのも戸惑ったが、家族だし当然なので言うことにした。その間に、フードを被った男は立ち去る。
「ただいま、戻りました・・・ルーナ様・・・」
そう言ってベルは何時もの笑顔を見せた。
「うん、お帰り・・・皆・・・・・・・ッ!」
それに、安心したのかルーナは涙を浮かべながら返す。その瞬間、エイナもきた。
「ベル君!もう、心配したんだから!!」
エイナも涙をためていた。ルーナも驚き、思わず後ずさりする。そのせいかエイナは飛び込んできた。
「エイナさん!?危ないですよ!!」
「ア・・・ごめん・・・」
ベルはエイナを受け止めたとき、少しふらついていた。よく見ると、ベルがきていた防具はほとんど壊れかけだった。武器は不壊属性があったからか壊れてはいなかったがそれでも汚れが酷かった。
(こんな、ボロボロになってまで・・・)
エイナはベルの姿を見て自分が情けなくなってしまった。この少年は、こんなに傷ついてまで戦った。
ルーナもベルと他の団員達の様子を見る。誰もがボロボロだった。こいしに関してもレベル7からここまで傷ついたのは初めてだ。レベル10からはそもそも、防具が壊されることすらもなかった。
(こいしも、ここまで・・・)
何も出来なかった自分に胸が痛んだ。ちょうどお空達もきておりカサンドラ達も涙目になっていた。
「リューは?!」
その頃シルとアーニャは急いでリューを探す。人混みをかきながら、ただひたすらリューを探す。そこに・・・
「リオンならいるぞ・・・」
そう言って、シャクティのとなりにリューがいた。
「シル・・・アーニャ・・・」
「リュー!!」
「この馬鹿エルフがー!どれほど、仕事が増えたと思っているにゃー!後でちゃんと働けよにゃー!」
「はは、すいません・・・」
そう言って、アーニャはポカポカとリューの肩を叩く。そして・・・
「皆・・・お帰り・・・」
「うん・・・ただいま・・・」
そう言って、アイズはロキの元に近づく。そうしてロキは涙をこらえていたのかフルフルと震えていた。やっぱり泣くのかな・・・と思ったが・・・
「久しぶりに、アイズたんの尻触らせてくれやあ!!」
そう言ってロキは、アイズにセクハラを仕掛けてくる。もちろんアイズはすんなりと避ける。
「ふぎゃ!!」
「相変わらず懲りないね~」
ティオナがロキをしゃがみながら見下ろしている。
「あ、ティオナ久しぶり~」
「うん、久しぶりだね・・・」
そうして、何時もの光景が目に映る。それは、競い合い、時に、馬鹿騒ぎするようなそんな日常。それを見ている間、帰ってきたのだとベル達は自覚する。そしてベルはひっそりと笑みを浮かべる。
「皆さん・・・帰りましょう・・・僕達のホームに!!」
「「「「「うん!(ああ)(ええ)」」」」」
そうして、英雄達は自らの家に帰る。自分達の待っている家族の元に・・・
「よっしゃああ!!皆、飲めぇ!!」
「オオオオオ!!」
「ハハハハ!!!おい、坊主!!もっと飲めぇ!!!」
「勇儀さん・・・もう限界っす・・・」
あれから数週間、辺りは夜の中、月影の館では宴会が始まっていた。辺りはどんちゃん騒ぎで、外からもその声は聞こえる。今回も、住民は空気を読んだらしく何も言わなかった。更に・・・
「良いのか・・・私もいれて・・・」
「何を言っているんですか、貴方達は恩人ですよ!そのお陰で、異端児達も範囲は狭いですがここに住めるようになったんですから、いっぱい飲んでください!!」
「だとよ、アステリオス!俺たちも飲もうぜ!!」
そう言って、リドはアステリオスの杯に酒を入れる。実はリヴェラの街の住人達のお陰で一部の地域だが地上でも異端児が住めるようになったらしい。そこにはボールスという男が活躍したらしいが、それは伏せておこう。
更に・・・
「ふむ、旨いな!!」
「よく考えてみれば私達ここから出て、皆さんと食事したことありませんでしたよね・・・」
「そう言えば、そうだな・・・」
「良いではないか・・・我々も徐々に受け入れられていると言うことだ」
これは、ここにいるものしか分からないようにしているが黒龍達も宴会に参加していた。一応、騒音問題とか広さの問題でゴブニュファミリアに頼み地下を作っていたのだ。いつか、黒龍達とも宴会が出来るようにと秘密裏に作っていたらしい。
「しかし、本当に良いのか?アイズ・・・彼奴は・・・」
「ベートさん・・・前にも言いましたが私はもう良いんです・・・それにお分かりを」
そう言ってアイズは語気を強めた。少し裏話に入ろう・・・
あの後、ディアンケヒトファミリアの、治療を受けその間にベル達は相談してロキファミリアに黒龍のことを打ち明けたのだ。それを聞き、フィン達は固まっていて驚きを隠せなかった。
「ウソ・・・だろ・・・黒龍?!おい、アイズ!!お前、あれだけ黒龍のことを憎んでいたじゃないか!!」
「そうですよ、アイズさん!!貴方の冒険は、黒龍を殺すためにやっているんじゃないんですか?!」
レフィーヤとベートは突然の事に信じられなく、思わず叫んでしまった。ベートはアイズの復讐を応援してそれで強さを認めていたため今までの応援したことが無駄になってしまう事が認めたくなかった。まぁ、二人はアイズを慕っているためベルにとられたようで悔しいのが一番の原因だが・・・
「私は・・・もう、黒龍にあの憎しみは要らない・・・いや、正確に言えば憎しみの矛先を私は間違えた・・・のかな?」
「どういうことだい?アイズ・・・」
「僕達が説明します・・・」
フィンは少し、目を細める。その代わりに答えるようにベルとリヴェリアが説明する。ベルが黒龍を倒した後、力を手に入れるため修行し、使いこなすようにしていたら謎の電流が流れた事を・・・そして、あの事件の記憶が曖昧なこと、そして今回出たモンスターが薬を打たれたとき同じような電流が流れたことも・・・
「なるほど・・・つまり君たちは、黒龍の事件には何か裏があると言うことだね・・・」
「ああ・・・」
リヴェリア達は軽くうなずく。フィン達も頭を抱えていた。
「それにレヴィスが気になる事を話していたよ!」
「うわっ!!こいしさん、びっくりさせないでください」
そこに、こいしがぬるりとベルのとなりで話しかける。突然の事で傍にいたアミッドは悲鳴を上げていた。
「何だね?」
フィンはこいしに真剣なまなざしで見つめる。こいしは緩くそれでいて重く答えていた
「『お前達の世界』って言っていた。まるで、別の世界を知っているようにね・・・それに、フィンは分かっているとは思うけどあの御方って言うのも気になったしね・・・」
「それに、あの変身するモンスター、あいつらには魔石はありませんでした。代わりにこんなものが・・・」
そう言って、ベルは布からあのモンスターからとった四角い板のようなものを取り出した。それを小悪魔にも見せる・・・
「これは・・・」
「こあさん、どうですか?」
「うーん、やっぱり無理ですね・・・複雑すぎて分かりません・・・何かしらの技術は施されてはいますが・・・オラリオでも見たことがありません・・・」
それを聞き、全員が絶句する。小悪魔はこう見えて道具作りがうまく分解も出来るのである。その小悪魔が出来ないとなると・・・しかも、小悪魔見たことがない道具ならこれはこの世界の技術では到底、作れないものである。アスフィにも調べてもらったがそれでも分からなかったのだそうだ・・・
「そうなると、やはり・・・」
「ああ、今後オラリオには途轍もない敵が攻めてくる・・・下手したら世界が滅びかねない・・・」
リヴェリアの一言により、全員に沈黙が流れる。暫くして、フィンは口を開いた。
「分かった。我々も、君たちに協力しよう・・・黒龍に関しては僕から、一部の人たち以外では言わないようにするよ・・・」
「ありがとうございます・・・」
そう言って、ベルは涙を浮かべフィンに頭を下げる。
「顔を上げてくれ、君は僕の家族を守ってくれた・・・君には感謝しても仕切れないよ・・・だからこれくらいはさせてくれ、ありがとう」
そう言って、フィンは手を差し出す。ベルは顔を上げると、フィンの手を強く握りしめる。
「これからも頼むよ・・・ベル・クラネル」
「・・・はい!」
こうして、一部だが黒龍のことはロキファミリアも存在を認めた。
現在は、こうして互いを知るために飲んでいる。その中には氷龍もいた。ちなみに、何やら全員小さくなれたらしく、現在小さくなっていた。それに、可愛さがあったのか女性陣に人気である。
「ガッハハハハ、黒龍と氷龍とやらよ!いっちょ、儂と飲み比べしてみようではないか!!」
「良いぞ!!だが、龍である我に勝てると思うか!!」
「ガハハ!!人間様をなめるんじゃないぞ!!龍なんて軽く超えてくれるわ!!」
ガレスもすんなり受け入れているようだった。氷龍は、ガレス達を懐かしそうに見つめる。
「・・・変わらないのだな・・・」
そう言って氷龍は大きな杯を飲み干す。そこに、ロキファミリアが乱入してきた。
「おっしゃあ!!黒龍も参戦して、飲み比べや!!
「「「「おおおお!!」」」」
「あ・・・じゃあ、私も・・・・」
「わ・・・私も・・・」
「坊主!!ここは、お前も男を見せろ!!」
「勇儀さん・・・俺、もうムリッス・・・」
「男を見せろ!!それでも、男かお前は!?」
「ひぇ~」
勇儀に何本も飲まされたラウルは悲鳴を上げていた。その様子を見て、自然に笑い声が飛ぶ。暫くして、ベルも飲み過ぎたため少し外の空気を当たった。
そこにアイズも同行していた。
「ウグ・・・飲み過ぎた・・・気持ち悪い・・・」
「ベル・・・大丈夫?」
そう言って、アイズは背中をさする。暫くして少し吐いた後、ベルは夜空を見上げていた。
「きれいですね・・・」
「うん・・・」
そう言って二人は星を眺める。ふと、一番星が光り出した。
「ねぇ・・・ベル。一つ、聞きたいことがあるんだけど・・・」
「何ですか・・・?」
そうしてふと、間が開く。アイズはすこし、ベルの顔を見つめた。
「ベルは・・・どうして強くなりたいの?」
「え・・・っと・・・」
ベルは少し戸惑う。突然聞かれてもどう答えるのか分からなかったのだ。ベルはただひたすらに悩む・・・
「えっと・・・英雄になりたいからですかね・・・」
そう言って、ベルは星を見上げる。暫くして口を開ける。
「僕は、お爺ちゃんに読ませてもらった英雄譚に憧れてここまで強くなれました。誰かを助けられるそんな英雄になりたい。今もそのお陰です・・・」
そしてベルは星に手を伸ばした。そうして、話を続ける。
「僕は・・・そんな理想を叶えたいからここまで強くなれました。理想をつかむために、僕は覚悟を決めたんです」
「覚悟を超えた先に、希望はあるってベルは、言っていたね・・・」
「はは、お恥ずかしいです・・・」
「でも、すごいと思う・・・私には、到底出来なかった」
「アイズさん・・・」
そう言って、アイズはうずくまる。そしてぽつりと語り始めた。
「私は、黒龍に家族を殺されたから復讐に燃えていた。最初は人形姫と呼ばれていたよ・・・ベルと会うまでは正直、復讐を果たせれば死んでも良いと思っていた。でも・・・今は違う・・・」
そう言って、アイズはベルの顔を自分に向かせた。そうしてベルの瞳を見つめていた。
「今は・・・貴方と生きたい・・・全て終わったら、君と一緒にいたい・・・」
「アイズさん?」
「ベル・・・私は君のことが・・・」
そう言って、アイズはベルに口づけをする。一瞬ベルは何が起きたのか分からなかった。やがて小さなリップ音が聞こえる。
「好きだよ・・・」
「え・・・・?」
「ルーナ様達には悪いけど・・・貴方の初めては、私がもらうから・・・」
そう言って、ベルを抱きしめる。その時のベルの目に写っていた月はアイズの姿に隠れていた。そうして再び、アイズはベルに顔を近づける。
「ちょっと、待ってください!流石にこれ以上は・・・・・・・ッ!」
しかし、アイズは止まらない。アイズは人目がつかない場所まで移動する。いつの間にかシチュエーションが整っていたのだ。そうしてアイズは顔を近づけ、ベルを見つめる・・・そしてそのまま・・・・・・
「チッ!!古明地こいしいいいいいいいいい!!」
暗い空間の中、レヴィスは暴れていた。こいしに負けたことが、相当気にくわなかったらしい。レヴィスは家具を殴りつけていた。
「おや、おや、ものに当たってはいけませんよ、レヴィス・・・」
ふと、後ろから老人が近づいてきた。老人は、水晶を見ながらレヴィスに声をかける。
「うるさい!!貴様は、分かってはいないようだがなぁ!!私は敗北し、それでいて拷問されそうかけた!!これ以上の屈辱があるか!!」
「全く、何時もの冷静さは何処に行ったのか・・・」
老人はレヴィスの話を無視して水晶を見る。
「何を見ている?」
ふと、レヴィスも気になったのか水晶を見る。そこには、とある人物が写っていた。
「こいつは・・・」
「フフ、こういう人間は使いやすいのです・・・今度、早速声をかけましょう・・・」
そう言って、老人は不気味な笑い声をする。レヴィスは、その人物に少し不信感を抱く。
「いいのか?そいつがどうも、こちら側にくることがなさそうだが・・・」
そう言って、レヴィスは腕を組む。老人は不気味な笑い声を出したままだった。そうして答える。
「そのために回収したんですよ・・・これをね・・・」
そうして、老人は袋を取り出した。レヴィスはその中身を見る。それを見てレヴィスは驚嘆の顔をする・・・
「これは・・・」
「そういうことです・・・そう言えばあそこは?」
「彼奴が取引に成功したらしいです。次こそは、アルゴノゥトを殺して見せましょう」
そう言って二人は笑う。そうして、レヴィスは謎の穴を呼び出し、それをくぐる。そしてレヴィスはとある場所に向かった。
「貴様か・・・イシュタル・・・」
「ようこそ、歓迎するわ。レヴィス・・・」
そこは、歓楽街で辺りは賑わっている中で大きな建物、『イシュタルファミリア』のホームだった・・・入り口を入り、レヴィスはイシュタルの元に向かう。
「ゲゲゲゲ!お前が私を強くしてくれるのか?!」
そこに、ヒキガエルのようなアマゾネス、フリュネ・ジャミールがレヴィスを向えた。
「ああ、これで思う存分暴れていけ・・・」
そう言ってレヴィスは大きな檻を出した。それと、あの箱も取り出す。
「ふ・・・ふふふふ!!あははははは!!フレイヤ、待っていろ!!これで貴方の眷属を皆殺しにしてやるわ!!」
そうして、イシュタルの高らかな笑い声が辺りに響いた。
「アイズ・・・さん」
「ベル・・・」
アイズは、押し倒した後周りに人がいないか確かめる。もうアイズはヤる気だった。アイズの目は獣そのもの。かといって、生身のベルでは、振り切れるかどうかだ・・・しかも、ベルはこういうことにはかなり弱い。怯えているベルの瞳にアイズはベルの顔に近づく。
「・・・?」
しかし、それは突然終わる。どこからか音が聞こえたからだ・・・
「何でしょう・・・」
そうして、アイズは急いで建物の裏を覗く。ばれたら恥ずかしいと思ったのだろう。音がしたところに向かってみると・・・
「・・・?!」
「アイズさん・・・ってその子は!!」
そこには、長いツインテールと共に青い髪をしていて白い肌をしていた傷だらけの少女が倒れていた。
この出会いが、物語を加速していく・・・
はい、今回はここまでです。次回からようやく春姫編に入れそうです。そして謎の、少女の正体は・・・?次回もお楽しみに!!