続きかけるといいですな〜
宇宙世紀321年或いはザビ帝国暦241年。
金星近傍においてザビ帝国と地球連邦軍残党による亡命政府である惑星連邦との最後の戦いが始まろうとしていた。
そんな時代でこの私は太陽近傍に位置している惑星連邦軍技術試験母艦『イシュタル』のブリッジ、その艦長席に座っている。
私の名前はユーマ・アリサカ、日系人でありこのイシュタルの艦長だ。
ちなみに生まれは金星上空に浮かぶ円盤状の浮遊コロニーだから金星人と言った方がいいのかもしれない。
もっと正確には金星空中人とでも言えばよいかな?
歳は28歳、独身だ。
「ユーマ艦長〜本当に私達過去に行くんですかね〜失敗したらチリも残らないじゃないんですか〜死後の世界に行けないのは嫌ですよ〜〜!アムロ・レイと話すんですから〜〜あ〜あ〜聞こえますかーアムロ様〜〜」
私の横で身長160センチのピンク髪の巨乳がまた馬鹿な事を言っていた。
その顔はコスプレイヤーのような化粧で見るたびに印象が変わる。
彼女の素顔を私は知らない。
ついでに髪の地毛の色も知らない。
今はピンクだがコロコロと髪の毛の色も変わっているからだ。
記録による年齢は確か私より数年年下ぐらいだったか。
まぁ化粧がどうあれ髪の色がどうあれ何カップかは知らないがその大きな胸を揺らしながら怠そうに喋るのはやめていただきたいものだ。
頭につけた船内指令用のサイコミュインカムの電源は切ってあるよな?
船内中に喋ってないよな。
「任務中だぞ、オペ子さん。頼むから感応波の無駄遣いをしないでくれ。死後の世界にいるアムロさんも迷惑だろう」
ニュータイプの思念は死後の世界に届く、死者と会話だって出来る。
それはこの時代の常識だった。
まぁ死後の世界にいるアムロ・レイが彼女を相手にするかは知らないが。
「何よ〜オペ子じゃないし〜〜副艦長だし〜! あ、そういえば〜ユーマ艦長、先程上層部からわざわざ本国の数少ないニュータイプまで使ってサイコミュで秘匿通信が来てましたけど、ここからの帰還命令だったりしないんですか〜?」
そんな不真面目そうに見える彼女の名前はオーパ・ペンタルニス、オペレーターではなく我らがイシュタルの副艦長である。
私は先ほど別室で上層部から秘匿通信で報告を受けたがどう皆に伝えるか悩んでいたのだ。
こうやって話せるようにしてもらえるのはありがたいものだな。
一応こんな形でもオーパ副艦長は私を支えてくれているのだった。
「副長……指揮官としての責任感を持ってくれ。それに緊張感ももう少し持ってもらえると助かる。通信はザビ帝国軍の部隊がここまで来るかもしれないという連絡だった」
艦長としてはこう言う他ないが助かってはいるのだ。
「嘘だ〜こんな太陽の真近くまで来る暇人は流石に私達だけですよ〜。いや、まさか本当にザビ帝国軍がここまで来るんですか?」
金星において惑星連邦が最後の戦いを挑む最中、私達は太陽低軌道上に2隻の護衛艦と共にその時を待っていた。
技術試験艦という名目となっているこの艦、イシュタルは実のところ惑星連邦に存在するニュータイプ能力者の殆どを乗せた秘匿決戦母艦である。
現在の正式な乗員数は105名。
今のところ全長500m、見た目は銀色の球体だ。
今のところというのも船体は流体のサイコフレームで出来ており見た目、大きさ、船内構造は殆ど好きなように変える事が出来るから当てにならん数字なのだ。
これは戦艦だが、技術を結集した決戦兵器という意味ならばガンダムと言っても良いだろう。
この艦は惑星連邦の希望を担ったガンダムだった。
「我々は暇人か……ペンタルニス副艦長、その秘匿回線の内容、他にもあって、それはギレン皇帝がついに目を覚ましたという内容だった」
長きにわたって眠りについていたザビ帝国皇帝ギレン・ザビ本人が復活したのだ。
「え……ギレン皇帝はアムロ様と相討ちになったって士官学校で習いましたけど」
宇宙世紀93年、雌伏の時を過ごしたアムロ・レイは同じくギレン皇帝打倒を望むシャア・アズナブルことキャスバル・レム・ダイクンと共にザビ皇帝暗殺を企てた。
もちろん金星亡命政府である惑星連邦はこれを全面的に支援した。
「それはプロパガンダというやつですよ」
おっと、本当の我が艦のオペ子が口を挟んできた。
「ギレン皇帝を負傷させる事には成功しましたが打倒する事はできませんでした。あの英雄達を持ってしても倒せなかった存在……結局のところ我々が惑星連邦、最後の希望ということは間違いないんですから、気を緩めないでもらいたいですね。我々に失敗は許されないんです。それに下手すると今頃金星は全滅しているかもしれませんよ。あ、それと艦長、クロノスシステムへのエネルギーチャージはバッチリ進めてますよ」
「うそ、マジヤバなんだけど……過去に行くって言うから戦争よりは楽そーな仕事だと思ってきたんだけどこれってぇマジヤバなんじゃね……」
オーパ副艦長は完全に停止していた。
戦闘中に波こんな事にはならないで欲しいがどうだろうか。
俺は少し心配になった。
「あー、副艦長がフリーズしてる。というか副艦長はプロパガンダを真に受けてるし、戦争よりタイムトラベルの方が楽そうって……ユーマ艦長、本当になんでこんなのが副艦長何ですか。オペレーターを任せられない人なのは分かりますが、私が副艦長も兼任して良かったのに……」
いや、本当のオペ子さんよ。
きっとこの副艦長、実は優秀で猫被ってるだけで今の混乱ぶりも演技なんだよ。
演技派なのよ。
「え、まさか皆知ってたの? マジヤバ」
これは演技じゃなさそうだな。
「はぁ……」
オーパは混乱するとギャルっぽいのな。
いつも怠そうに喋るけど、そうかギャルだったのか。
あれか、古代地球のヤマンバギャルとかいうやつか、化粧濃いし。
副長に呆れているのはこの船の本当のオペ子であるユキ・ノザキだ。
髪は紫色で身長は140センチ程、歳は12歳の滑舌と毒舌が回るクール系少女だ。
副艦長候補だったのだが年齢の為に船内のコントロールが主な仕事のオペレーターになった。
この子は副艦長がしっかりしてないと不機嫌になるのだった。
「まったく……ブリッジクルーでギレン皇帝の事を知らないのは副艦長ぐらいじゃないですか。普通考えてギレン皇帝が死んでたらザビ帝国だって一つにまとまってられませんよ。」
「それは皇帝の残留思念的なのが〜〜……」
「皇帝が死んでたらとっくに思念だってあの世に行ってますよ。恨まれてるんですから死後の世界のルールとやらで死者たちが残留思念なんてあの世に持って行きますよ」
「あぁ、オーパだけでなくユキまで喋り始めてしまった」
私は思わず呟いた。
「艦長が止めないからですよ」
ぐさりと私の心にダメージが入った。
遥か昔、あのホワイトベースの若き艦長はどうやって艦長を務めていたのか尋ねたい物だ。俺もブライト様〜って感応波の無駄使いをしたくなる。
「俺も知ってたぜ〜! あ、艦長、もちろん俺も知ってますぜ〜」
おっと、これまたガキンチョであるマサト・トロイラインも話し出した。
彼は兵器コントロール担当の赤髪で小さいアフロみたいな髪型の9歳の少年だ。
身長はユキより少し小さいくらいだな。
彼は私を尊敬してくれているが口調が海賊みたいになっているのが気になる。
「艦長、僕も参加して良いでしょうか」
彼は操舵長のニック・ストロー。茶髪で地味な髪型をした礼儀正しいが少し気の弱い15歳の少年だ。
身長は170はあるな。
ちなみに私の身長は約180……正確にいうと178センチだ。
年齢的にあと数年すれば追い抜かされるかもしれんな。
以上の私、オーパ、ユキ、マサト、ニック、この5人がイシュタルのブリッジクルーだった。
まぁこの人員からも分かる通り、惑星連邦にはもうすでにまともな人員が残ってないのだった。
私とて艦長としてはこのイシュタルが初めての艦であった。
まだ人柄さえよくわかってもいない子供達を率いて私は時を超えなければならないのだ。
「総員傾注!」
私はお喋りを始めた皆に大声を放つ。
流石に皆、一応の訓練はされている為、私の大声で全員が気をつけの形を取った。
「げっ、怒った?」
「副艦長のせいですよ……」
「お、俺は悪くねぇや!ユキの言う通り副艦長のせいでやす!」
「ご、ごめんなさい!」
「これより艦長命令として、対空警戒をサイコミュレーダーに任せ1時間の休息とする!」
私は大声を出して皆に休憩を取らせる事にした。
昔は有視界で索敵せねばならず奇襲に怯えなければならなかったがニュータイプによる察知ができるためにブリッジに缶詰にされる必要はなかった。