モモイロノミチシルベ   作:メアリィ

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義弟、先輩に会う

「お久しぶりです!!先輩!」

「会って早々大きい声出さないで」

 

 

 

 

授業をすっぽかした俺は都内のとある喫茶店に来ていた。

俺の高校の先輩の高校の丁度真ん中らへんに位置する喫茶店は、駅から徒歩数分ということもあって、平日の午前でありながらお客で賑わっていた。

 

「寝起きですか?昨日も遅くまで描いてたんですか?」

「まぁね。ちょっと立て込んでたから…。それよりアンタはいいの?学校抜け出して」

推し(義姉)の為なら学校なんてクソ喰らえ!ですよ」

「はぁぁ……このシスコン」

 

先輩はあからさまな溜息を零しながらフルーツタルトを1口サイズに切って口に放り込む。さっきまでの仏頂面とは打って変わって美少女そのものの笑顔を見せていた。

 

「(相変わらずここの姉弟(・・)はわかりやすいなぁ)」

 

目の前にいるショートヘアの美少女女子高生は東雲(しののめ)絵名(えな)といい、俺のクラスメートである彰人の実の姉に当たる人物。

そして、俺の義姉である愛莉の幼少期からの幼馴染でもある。俺自身絵名への思い入れとかは無いけれど、義姉の唯一無二の存在らしく、よく彼女の話を耳にしていた。

 

「で、話って何よ」

「もちろん推し(・・)の事についてですよ!」

 

悔しい事に、義姉(・・)の事を一番よくわかっている人物は彼女だ。

義姉(・・)の癖とか価値観、好きな物、嫌いな物、夢、特技、好きな人のタイプ、大事な友達、得意料理etc……

 

あげればキリがない程、義姉(・・)の事をよくわかってるつもりだ。

しかし、俺と絵名との圧倒的な差がある。

例えば、桃井愛莉(・・・・)としての時間の共有がそう。

今回の義姉(・・)の件は推し(・・)でもなく、義姉(・・)でもなく、桃井愛莉(・・・・)として何かを見つけなければならないと思ってる。

 

ならばこそ。

その、桃井愛莉(・・・・)との時間共有が1番多い東雲絵名の強力が必要だと思ったのだ。

 

「アンタさぁ、自分の義姉の事を推しって言うの止めない?シンプルに気持ち悪いんだけど」

「義姉だろうかなんだろうが、推しは推しなんですよ。」

「あーもういいよ。私寝不足気味だから早く帰りたいから早くして」

 

若干苛立ちを見せながら、強めに催促する。

確かに急に呼び出したし、これ以上機嫌悪くなって話聞いて貰えなくなるのも困るので、呼吸を整えてから説明する。

 

「義姉ちゃんが事務所を退所したって話はもうご存知ですね?」

「まぁね。あれだけ大々的に取り上げられてたら知らないって言う方が難しいって」

「そうですよね。でも理由とかは明かされてないじゃないですか」

 

そう。

ニュースやネットでの記事でも具体的な理由は明かされていない。

 

───一身上の都合

 

なんて理由で退所したとの扱いだけど、俺はもちろん家族もこの事を知らない。

 

「私も知らないわよ?ここ暫く連絡とってすらいないんだから」

「そこは俺もよくわかってます!!義姉(・・)ちゃんのSNS監視してる(・・・・・・・・)ので何時(・・)どこで(・・・)誰と(・・)どんな会話してるのかよくわかってますので」

「…きっも」

 

 

絵名に心底ドン引きされたような気がする。

『うわぁこいついつか犯罪に手を出しそう』なんて顔すらしてる。

俺は別に何も悪いことはしてない。義姉(・・)のSNS監視するのは当たり前(・・・・)の事だし、俺がネット上で所属している姉愛好家の友人知人も当然のようにしている。

知らないけど、東雲姉弟はそこまで仲良しじゃないのだろう。いつも彰人は絵名の愚痴ばっかり言ってるし。

 

「やめときなさいよ。愛莉にバレたら怒られるじゃ済まないわよ」

義姉(・・)ちゃんに怒られるのはご褒美です」

「…はぁ。ダメだわコイツ」

 

絵名は呆れ声を最後に何も言わなくなり、黙々と目の前のフルーツタルトに意識を向ける。俺は、様になる絵名を横目に何にも染まっていないコーヒーを啜る。

 

 

「結局」

「はい?」

「私はなんで呼ばれたの?何も知らないって分かってるなら──」

「……絵名さんには、|義姉ちゃんの支えになって欲しいんです」

「なんで私?晴や…あまり言いたくないけど彰人にお願いすればいいじゃない」

「俺じゃあ…義姉(・・)ちゃんの支えになれません」

 

言葉にはしなかったが、彰人には絶対お願いしたくなかった。

彰人にお願いするなら、俺がやる。

 

──彰人が桃井愛莉にずっと昔から片想いしている事を俺は知っている。

 

だから頼れなかった。頼りたくなかった。

 

「ふーん?まぁ愛莉の為だし、それくらいは当然よ」

「助かります。義姉(・・)ちゃんの話を聞くだけで全然いいんです。支えになってください。俺は…俺が支えになろうとすると義姉(・・)ちゃんは強がって弱さを見せてくれないので……」

「愛莉らしいわね。いいわ、アンタに頼まれたからやるってのはちょっと癪だけど、手伝わせてもらう」

「あざっす。ここ俺が出すので」

「え!?ほんと!?」

 

瞬間、その美人な顔に笑顔が戻る。

やっぱりこの人美人だよなぁ、なんて口には出さず。

 

「じゃあこのストロベリーパンケーキ頼んでもいい??」

「え?や、あのそんなに高いのは」

「おねがぁい」

「……」

 

そんなに可愛い笑顔でおねだりされると流石に弱くなってしまうんですが策士絵名さんよ。

この人自分が可愛く見せるやり方知ってんなぁほんと、と思いながら俺は呼び出しベルを押す。

 

 

 

 

今日一日で2,000円以上飛んで行ったというのはまた別の話。

 

 

 

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