ティターンズとの遭遇戦闘でゴタゴタした末、ジェミニボックスはスペースコロニー郡の一つ、通称サイド1へと近づきつつあった。
情報によれば、ここでティターンズが何かしらの行動を起こすらしい。よってジェミニボックスは、名目上においてこれらの活動を監視、必要があれば牽制せよとの事である。
要は嫌がらせに近いちょっかいを出せという事だ。もちろん、戦闘になる事を前提で。
「やはり、気に食わんな」
艦長のハッサスがブリッジから宙域を眺めつつ呟く。
サイド1と言えば、既に色々な噂が飛び交っている場所でもある。今更、こんな所で何をしようと言うのか。或いは、30バンチと同じことでも起きると言うのか。
しかし、可能な限り集めた情報によれば、今のところティターンズが動く様な動きは、どのスペースコロニーでも起こってはいない。
だとしたら一体何があると言うのか。
モルド・サブルと言う男は、ガンダムらしきMSの事を示唆していたが、果たして、本当にここに現れるのだろうか。
ハッサスは拭いきれない疑問にイライラしながらも、見張りの体制を強化する様に指示を出した。
時同じくして、サイド1に向かう船があった。
艦名をコロール。
マゼラン級を利用して改装された艦で、分類上としては改マゼラン級ともされていたが、準アレキサンドリア級とも呼ばれていた。
その呼び名の通りに艦の前方が無理やりMSデッキへと改造され、後のアレキサンドリア級に似た様な艦型を持っていた。
上面と側面の砲塔は完全に撤去され、代わりにMSデッキが不格好に取り付けられている。中央の砲台用の構造物も撤去されていて、MSコンテナがこれまた無理やり増設されていた。
MS運用能力はそれなりに上がっているのだがバランスが相当に悪くなっており、それによって最大速度を出すと操舵が難しくなると言う欠点を抱えており、コンピューターによる補正も勿論備わってはいるのだが、それを持ってしても戦闘艦としては致命的に動作にブレや遅れがあると言う問題があった。
その様な問題があるにも関わらず運用されていたのは、この艦がアレキサンドリア級を建造するに当たり、そのテストを行う実験艦の一つとしての役割も持っているからに他ならない。
そして、実戦を想定されて建造されてもいたので、実際に出向いて来たと言う訳だ。
そのコロールには、ラフト・サイマーがRGM-79Z バウンド・ジグと共に乗り込んでいた。
今回の任務は、サイド1・30バンチで起きた痛ましい出来事を、反地球連邦組織なる連中がプロパガンダの為に利用し、スペースノイドを扇動しようとしているらしく、それを阻止するのが目的らしい。
ラフトはこの任務を盲目的に信じており、30バンチのスペースコロニーで何が起きたか本当の事は知らない。ティターンズの発表に対して、彼は露ほども疑いを持とうとはしなかった。
或いは、そうした実績面が、今回の任務に選ばれた理由なのかもしれない。
誰に操られているかなど知る由もなく、ラフトは愛機を見上げた。
機体には、一緒に着いてきたグリタス・デンケが取り付き、調整を入念に行っている。しかし、暫くすると、ラフトの元へと降りてきた。
「これで大丈夫だと思いますが、ま、違和感があったら、また言って下さい」
バウンド・ジグの調整は、まだ続いていた。
とは言っても、非常に細かな部分で詰めている段階であり、念には念を入れてと言った具合の調整である。
「助かる。 アンタが来ると言った時は、正直どうなるかと思ったが、着いてきてくれて感謝するよ」
ラフトの礼にグリタスはニヤリと笑う。どうも、この笑い方は彼特有の物らしい。初めて見た時は何か含んでいるとも勘違いしたが、専門職にありがちな変わり者と言った感じなのだろう。
しかし、付き合ってみると案外と良い奴な上に、信頼できる人物だった。
だからこそ、今になってラフトは敢えて聞いてみたい事がある。
「なあ、初めて会った時、このバウンド・ジグは厄介者だって言ってたよな。 本当の所、その意味は何だったんだ?」
そう言ってグリタスを見ると、あの時と同じ様にして黙る。
「俺は、コイツとアンタに命を預けるつもりだ。 できれば、全てを知った上で乗りこなしたい。 まあ、無理にとは言わないがな」
そう言って、ラフトはバウンド・ジグの方に目線を移す。チラリと横目でみると、グリタスはこっちを見ていた。探っているのだろうか。
「バウンド・ジグは…失敗作なんですよ」
「何?失敗…」
「ああ、いや。 MSとしては完璧に近いんですがね、本来の目的での開発は失敗に終わったんです」
「本来の目的?」
グリタスの話によると、バウンド・ジグはニュータイプ専用機として、テストベッド的な役割を持って開発が始まったのだと言う。その為に、莫大な予算が投じられたとも語った。
しかし、実際には、期待した程の成果も性能も発揮できなかった為、関係者を困らせたらしい。
「これは後になって分かった事なんですが、ジオンから接収した資料には、幾つかデータに抜けがありましてね。 それで、予定した機能をバウンド・ジグは発揮できなかったらしいんですよ」
「つまり、ジオンのペテンにあったって訳か」
「それは、どうか分かりませんよ?」
「?」
「データの抜けは、接収した時には無かったとも言われてますし、後で何者かが工作したとも言われてますからね」
「スパイの仕業か?」
「それは…ただ、莫大な予算回収の為に、バウンド・ジグは様々な機関に改良や解析の依頼をされていましてね。 遂には、民間であるはずのアナハイムにまで協力を求めたんですが……そこで、一定の成果を出すに至ってましてね。 連邦のメンツは丸つぶれ。 いや、ティターンズ側に立つと、怪しんだって所でしょうね。 まあ、そのお陰でデータはまるまる引き渡しって事にはなりましたが、資金の方は逆に連邦側からアナハイムに支払わされてましてね。 痛み分けにしても、厄介者扱いされていたんですよ」
なるほど。
ラフトは、声を出さずに納得した。恐らくだが、連邦内部にも居るスペースノイド派によって、このMSは利用された可能性もあるのだろう。
ただ、これ以上会話を促す様な真似をすると、グリタスの事情にまで及ぶのではないかと考えた為、続きを促す真似は止めた。それは、彼なりの気遣いでもある。
しかし、意外にもグリタスの方から、その辺を話し始める。
「実は私は、一年戦争の頃はNT専用機開発者の一人として、連邦に席を置いていたんです」
「ほう?」
ただの研究者、あるいは民間人とも思っていただけに、これは意外だった。
「と言っても、軍属扱いで兵士ではなかったのですがね。 そして、私はレビル将軍の一派でした」
と、そこまで言って、再びグリタスは黙ってしまう。しかし、その言葉だけで十分にラフトは理解した。
ティターンズの台頭に関しては、彼もある程度知っているつもりだ。
レビル将軍の死による派閥構造の崩れによって今のティターンズはあると言っても良い。
その対極にあったグリタスが、どの様な扱いを受けたかは大体想像がつく。
彼がいちいち黙るのは、自分の意思とは関係ない派閥争いに巻き込まれたく無いからかも知れない。
先程のデータの抜けと言うのも、あるいは最後の悪あがき的な工作が展開された可能性もある。その疑いは、当然ながらグリタスにも及んだのだろう。
二人は黙ったまま、目の前の厄介者とされるMSを見上げた。
「対空監視、厳にせよ。 MS隊、何時でも出られる様にしとけよ」
艦長のハッサスから次々と指示が出る。
受理した任務の詳細によれば、既にこの辺にティターンズが潜んでいるはずだった。
それが新型MSのテストなのか、或いは全く別の目的を持った行動なのかは今の所は分からなかったが、ジェミニボックスは敢えてそれに突っ込まなければならない。
目的としては、こちら側から仕掛けると言うのが前提となっている以上、不意打ちされるのは避ける必要がある。
そうしなければ敵にイニシアチブを握られてしまい、こちらは後手に回った上に任務失敗、最悪な場合は撃沈されかねないからだ。
そうした雰囲気を感じ取ってか、ジェミニボックス内はピリピリとした緊張感に包まれていた。
それをカールも感じ取り、緊張してどうにも落ち着かない。
と、そのカールのお尻を思いっきり叩く者が居た。ミュリアムだった。
「なーに、一端にビビってんのよ。 カールの出番なんて、私がこさせないんだから」
そう言いながら、ミュリアムはウィンクしながら宙を漂って行く。既に、パイロットスーツは着用済みで、彼女も直ぐに発進できる状態を整えている。
最初の遭遇戦闘から、カールは更にみっちりと鍛え上げられていた。
一応、選択肢として、食客的な扱いも提示されてはいたのだが、カールは敢えて準兵士と言う扱いの方を選択する。
イドやグスターブ等からは、良く考えて答えを出せと言われたが、それでも、カールは積極的に戦うと言う道を選ぶ事にした。
彼なりに考えた結論としては、このまま誰かに自分の命を委ねるよりは、自らの責任と意思によって、その運命を決めたいとも考えたし、何より、周りが戦いに向かう最中、自分だけが引っ込んでいるのは違うと考えての結論でもある。
確かに、自分はテストパイロットに毛が生えた程度かも知れないが、それでも、ゼーラス・ヤークトを扱える一人として、何かの役に立ちたいとも考えたのだ。
そこからの訓練は、今まで以上に厳しくなった。
寝る時間すら削られ、ギリギリの状態にまで追い込まれ、そして一切の手加減なしのグスターブやミュリアムのシゴキによって、カールは如何に自分が甘い気持ちで居たかを知る。
勝率は途端に一桁台に落ち込み、勝てそうで勝てないと言う状態へと突き落とされた。
それによってカールが自信を喪失するのに、そう時間はかかる事はなかった。
それでも、グスターブ達は容赦しない。
やれ、「これが訓練で良かった。お前は、今日だけで十数回死んでいる」だの、「MSの性能に助けられていなかったら、数秒も持たなかった」だのと罵倒され、最初の頃に逆戻りした様な錯覚すら覚える。
しかし、彼らの人となりを既に知っていたカールは、むしろ、それが優しさであるとも理解していた。
既に失ってしまった人達の事を背負っていたのもあってか、カールは存外にしぶとく、そして兵士として大きく成長してもみせる。
その結果、サイド1に到着する頃には、再び勝率を五分にまで戻す所まできていた。
それでもグスターブには、「まだ足りない」と言われている。
恐らく、その通りなのだろう。カールの兵士としての期間は、圧倒的に短い。
たった一回の戦闘で運良く生き残りはしたが、純然たる兵士としての能力で言えば、正規に訓練した新兵と並べられるかどうかだろうと、自分でも評価している。
ただ、そうしたカールの自己評価や投げかけれている言葉とは裏腹に、当のグスターブ達は既にカールの実力を認めざる得ないと言う、全く別の見解を持っていた。
MSの性能と言うのも加わってはいるが、自分たち相手にこれだけ食い下がれると言う時点で、既にジェミニボックスの一員としては十分に合格点とも言えるレベルに達している。
あと足りない物があるとすれば、それは経験だろう。
それによる迂闊な事をさせない様に、敢えて今も厳しい言葉を投げかけてはいるが、一兵士として見た場合、カールは十分に及第点に達しているとも言えた。
或いは、それが逆にグスターブにとっては、不安にさせる部分でもあったと言える。
実際、イドやハッサスらは、既にカールを戦力の一つとして見なしており、作戦においても組み込む様な事を始めている。
育ての親ともなったグスターブには、それが複雑でもあった。
あと数回、いや、できればもう一航海を共にする事ができれば、自分の経験も含めて教え込め、それで立派な兵士となれるはずだった。
カールは原石としてはまずまずの存在でもあり、磨きがいがあっただけに、何となく惜しいという気にすらグスターブはなっていた。
それは単にカールが一時の間だけ兵士として扱われると言う事もあるが、何より、下手をしたら戦闘でどうなるか分からないと言う心配もあったからだ。
得てして、上手く育った新兵ほど早く逝ってしまう。
と言うのがグスターブの中に秘めたジンクスの様な物でもある。
もちろん、そんな事を口に出して言える訳もない。何よりグスターブ自身、カールの可能性にかけてみたいと思っていたし、密かに彼こそがジンクスを打ち破るのではないかと期待してもいた。
そこには、ゼーラス・ヤークトと言う、更に根拠を後押しする何かもあったので、尚更である。
その様な中、カールも出撃リストの中に入れられていた。
先発はグスターブ隊、後発にグルード隊が続くが、カールは後発組に入っている。
準備を整えて格納庫に来たカールが見渡すと、ウェーブライダー形態のゼーラス・ヤークトに新しい装備が取り付けられていた。
例のMSNと言う型番のMS用ビームライフルが取り付けられているのだ。
流石に違法改造ビームライフルと比べるとスッキリしており、何となくゼーラスがスタイリッシュに見える。しかも、このコンパクトさで各種能力は改造ビームライフと同等以上なのだから、やはりAE社の技術力を感じさせた。
まあ、現地改修の急造装備と比べると言うのは色々あれだが、本来ならヤークト用として納品された装備なのに、既にミュリアム機や他の機にも使用されている当たりからすると、ジェミニボックス内でも改造ビームライフルは必ずしも使い易いとは言い難い物だったらしい。
ただ、狙撃能力と言う点では改造ビームライフルの方が上であり、後方支援及び母艦の護衛となると新装備のビームライフルでは、それらの任務にはあまり適していないとも言える。
その中で、カールの役割は狙撃組を守る直掩ともされていたので、プレッシャーの様な物も感じていた。
「本当に大丈夫かな」
更なる実戦を前に、カールは不安そうに呟く。
幾らグルードの補佐役と言う形で付くとは言え、万が一の最終防衛ラインを任される様な事を言われると自信が無い。
確かに、ゼーラス・ヤークトの性能はある意味でジェミニボックス内では最高クラスなのだが、混戦状態に陥った場合、重要なのは性能よりもパイロットの腕である。
狙撃組が撃ち漏らした敵への対処と言うのは、あくまでも保険的な役割とも考えられている様だが、そんな敵が本当に居たとしたら、それこそ敵のエースパイロットとかそんなクラスになるだろう。
ハッサスかイド、もしくはグスターブの考えかは分からないが、恐らくは自分を前線から出来るだけ遠ざけようという腹づもりなのかもしれないが、任された本人としては不安しか無い。
確かに自分の腕はまだ足りないので仕方の無い判断かも知れないが、むしろ、自分と言う大きな穴を埋める様な布陣にも思えて、万が一の事態が起きた場合を考えると、どうしても落ち着かない気持ちになるのだった。
それと、落ち着かない気分にさせられている理由の一つは別にもあった。
と言うのも、あれからゼーラス・ヤークトに付いて、幾つか気になる話も聞かされていたからだ。
前から疑問に思っていたのだが、何故、ゼーラス・ヤークトはジェミニボックスでわざわざ組み替えられ、新装備品を使うテストをするに至ったかだが、その詳細らしき物がようやく分かってきたのだ。
話によれば、ヤークトに搭載されている試作品の装置は、搭載された時点では単なるデータ取り程度でしかなく、本格的に何かしらの作用をもたらす物とは思われていなかったらしい。
ただ、この装置はゼーラス以外にも並行して別のMSに搭載され、そっちでも運用に関するデータ取りを行い、結果、ある種の機能を発揮する方法が見つかったとされている。
そこで急遽、装置を搭載していたゼーラスにも別MSで行われた改良に相当する装備品を付け足す事で、更なるデータ取りを推し進め様とした為、今日の様に現場で何もかもすると言う話になったのだそうだ。
恐らくだが、アナハイム側としては、このヤークトに対しては余り期待はしていないのかもしれない。
本命は別で試験されているMSの方なのだろう。
何と言うか、RS社は自社が開発したはずのMSにおける発展性を、根こそぎ他社に持っていかれている感じがして、開発に関わったカールとしても複雑な気分を抱かずにはいられなかった。
こうした事をRS社がどこまで知っているのか、それとも全くの蚊帳の外かに置かれているのかは知らないが、一つ言える事は今やゼーラスはAE社の手駒にされている事であろう。
だだ、それも仕方がないと考える部分もある。何せRS社は、AE社に大きな借りを作っているのだから。
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グスターブ率いる前衛の部隊が、ウェーブライダー形態で次々と発進して行く。その中には、ミュリアムも入っていた。
甲板にて既に待機していたカールは、そのミュリアム機が発信して行くのを見送る。
前衛部隊最後のゼーラスが発進し、甲板にはウェーブライダー形態のカール機の他、MS形態のゼーラスが3機。更に1機のジム2が残る。
作戦に参加するMSは全部で9機だが、ジム2は大型ビーム砲を撃つ為の補佐に過ぎない。
そして、そのジム2にグルードは乗っていなかった。
遂に、彼もゼーラスへと機種転換したのだ。
機種転換については、艦長のハッサスやイドから提案があったともされているが、強制と言う分けではなく、あくまでも本人に任せると言う形で話は出されたと言う。
そして、グルードも思うところがあったのか、すんなりとそれを受け入れた。
ただし、彼のゼーラスは色々と弄られており、背部フライングアーマーには小型のジェネレータが二基増設され、しかも、それに合わせてスナイパーライフルも改造が施されて射程と威力が増強されている。
それを見てカールは、現場でこれだけの改造をやってのけるジェミニボックスのメカニック陣の力に関心させられると共に、かなりアバウトな形でやってのける危うさみたいな物にもヒヤヒヤする思いだった。
実際、甲板に並ぶグルードのゼーラスの背部には、装甲と言うには余りにも取ってつけた感のある覆いでジェネレータがくっつけられている。
機能的には何も問題ないという事なのだが、見た目がかなり雑であり、本当に大丈夫なのだろうかと心配になる程だ。
しかし、当のグルードは全く気にしている様子が無く、それだけメカニック達の事を信頼しているという事なのだろう。
そこはカールにはまだ無い部分でもあったので、ちょっと羨ましいとも思った。
だがグルードのゼーラスは、それだけで終わってはいない。
更に、敵が捨てた大型ビームライフルも装備していて、超長距離からの攻撃を可能としている。
もっとも、改造したゼーラスのジェネレータ出力を持ってしても足りないらしく、それを補う為にジム2がエネルギーチューブを介して繋がれているのだ。
カール個人の感想としては滅茶苦茶だとも思ったが、ミュリアムが何時か言っていた「必要があれば何でもやる」が思い出され、なる程とも思う。
ミュリアム達が去っていった宙域を見れば、かなりの残骸が浮遊しているのがコチラからも分かった。
サイド1は一年戦争の頃からの激戦区でもあり、その名残と言うのか、手の付けようの無い悲惨さが今も残っていた。
と、グルード機のMSが、手で行くぞと言う合図を送ってくる。
それに呼応してゼーラス1機だけをジェミニボックスに残し移動を開始した。もちろん、カールも追随する。
「周囲に注意しろ。 ミュリアム、離れすぎるな。 それと、絶対にこちらからは撃つなよ。 餌に食いつく前に逃げられたら、後が厄介だからな」
ウェーブライダー形態のまま宙域を移動するグスターブ達は、所定の手順で偵察行動を開始していた。
一応、遠慮気味に移動する様にして、宙域に目を凝らす。
情報では単にサイド1に何かしらあると言うだけなので、ここから先は自分達でその何かを探すしか無い。
事前にミノフスキー粒子は撒いてあったので、各種のセンサーは互いに潰れた状態のはずであり、後は目の良さが勝負となるはずだ。
周囲には残骸が多く隠れるには適した場所でもあるのだが、逆に言えば、センサーの有効範囲が限られた状態では、どっちにとっても条件は同じとなるはずだった。
そして、ミュリアムは目が良い。
グスターブ達にとって、ある意味で彼女が頼りでもあった。それだけに迂闊な行動を取らない様に釘を刺す。
そして、そのミュリアムから通信が入る。
『グスターブ隊長。 カールを連れて来た方が良かったんじゃない? あの子、敵を見つけるのは、私よりも勘が良いよ?』
敢えて口には出さないが、彼女は明らかにカールの特殊な力の事を指していた。
「敵を見つけるだけならな。 しかし、今回はこっちから仕掛ける必要もある。 カールのヤツの腕も上がってはいるが、気にかけながら戦闘をする余裕はない」
それを聞いたら今更ながらに納得したのか、ミュリアムは、それ以上は何も言わなかった。
実を言えば、最初の予定ではカールも連れて来るはずであったのだ。
しかし、戦力のバランスと言う総合的な面で判断した場合、やはり連れて行くのは難しいと最終的にグスターブが判断した。
この決定は直前になって決めたので、ミュリアムも出撃前までは知らなかった事だ。
故に、ミーティング前の打ち合わせと違う事に、彼女も多少は驚いたはずである。もっとも表情には出さなかったので、それを今になって聞いて来たのだろう。
「さて、何が出てくるか」
グスターブの呟きには、多少の期待感が込められていた。彼の本心では、連邦制のガンダムを見てみたい、できれば戦ってみたいと言う思いがあったからだ。