ZガンダムAWS   作:ST郎

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21.厄介者

 

「事情は分かった。 全てを話してくれた上に、そこまでやってくれたアンタには感謝しよう。 しかし、ババを引けに行けと言われた人間の気持ちが分かるか?」

「そんな…僕は仕向けられて…」

 

 全ての事情と経緯…中には自分の推論も挟むと言う断りを入れながら、モルドは包み隠さず話した。

 それによって初めて知る事が多かったカールは、ショックを受けた様な顔をする。ただ、ハッサスとイドだけは相変わらず普段通りで、大して驚いた様子を見せてはいなかった。

 恐らくだが、何かしらの形で概要くらいは掴んでいたのかも知れない。

 

「申し訳ない。 これが今できる精一杯だ。私の立場では…」

「いや、アンタを責めている訳じゃないさ。 所詮は傭兵だと、自分に言い聞かせただけの事だ。 気にするな」

 ハッサスの言葉にイドも頷く。やはり、こうなる事をある程度は予見していたのだろう。何せ、モルドは突然来たのではなく、事前に連絡くらいは入れていたからだ。

 

「さて、話が分かったところで、カール。 お前は帰れ」

「い、嫌ですよ。 パイロットが居ない事くらい、僕も分かってます。 特にゼーラス・ヤークトは僕じゃないと駄目なんでしょう?」

 そう言いながら、カールは不安げにモルドを見た。だが、モルドは何も言わずに眼鏡をかけ直すだけである。

「帰れ」

 更にハッサスが強く言ったが、カールは拒否する言葉を残してその場を出ていってしまった。

 

「意地悪が過ぎませんかね。 聞いての通り、私の誘導があったとは言え、彼なりに思うところがあって来たんだと思いますよ」

「だからこそだ。 アイツは…カールは、戦いに囚われ始めている。 そうなってからでは遅い」

「私は、そうは思いませんね」

「どうして、そう言い切れる?」

 モルドの言葉に反応したのはイドだった。鋭い眼光をコチラへと向けている。そこには、多分に非難の意味も込められていたのだろう。

 

「彼の生い立ちを、ちょっと調べたんですよ。 両親を失い、貧困で天涯孤独。 カールくんは、ある意味で最初から戦場にいた。 それでも、彼は自分を見失っていない。 あまり、見くびらない方が良い」

 それを聞いて、ハッサスとイドは同時に「ほぅ」っと息を漏らした。

 

 

「カール? どうしたの?」

 船の外に飛び出す勢いでやって来たカールに追いすがったミュリアムは、その顔を心配そうに覗き込む。

 少し沈んだ様な顔をしていたからだ。

 恐らくハッサス達に何かを言われたのだろうが、その内容も大体察しが付く。

 ただミュリアムにしても、それは仕方がない事だと思った。戻ってきてくれた気持ちと、顔を見れただけでも十分だ。彼は兵士ではない。

 

「帰れって言われた」

「ああ、やっぱり」

 そう言ってミュリアムは腰に手を当て、少し海老反りになった状態で顔を背けた。相変わらず、器用なポーズを取るなとカールは思う。

 そのまま一回転してカールに向き直った彼女は言う。

「みんな、カールの事を心配して言ったのよ」

「じゃあ、僕が皆んなを心配するのは駄目なんですか? グスターブにはここでの事は忘れろって言われたよ。 それで忘れる努力もした。 仕事に打ち込んだ。 でも…でも、ミュリアム、君たちジェミニボックスの皆んなを忘れるなんて無理だよ。 そして、悩んで悩み抜いて。 それでも、皆んなの力になりたいと思ったんだ!」

「カール…」

 その時初めて、ミュリアムはカールが自分よりも年下なのだと実感する。

 彼女はカールを優しく抱き寄せると、その頭をやはり優しく撫でてやるのだった。

 

 

 

「そ、そうだ。 グスターブとグルードは? 何か、見ない気がするんだけど」

 ミュリアムの思わぬ抱擁に、しばし呆然とされるままにしていたカールだったが、ハッと気が付いて彼女を離すと、照れを隠す様にして別の話題を振る。

「二人共、外に出てるわ。 伝手を何とか頼るって。 ただ、私らって裏切り者って言うか、どっちつかずだから厳しいかもね」

 そう言ってミュリアムはカールの手を引くと、船の床へと降ろさせた。近づいて来るコンテナに気が付いた為、進路を空けようとしたのだ。

 

 その真上をコンテナが通って行く。

 それを二人で暫し眺めていたが、そこでミュリアムが気が付いた様にして、手にしたバインダーをめくると辺りを見回す。

 

「何、コレ? 搬入の予定に無いんだけど。 カール?」

「いや、僕も知らない。 持ってきたのは3つだけだし」

 それを聞いてミュリアムが弾かれる様に動きながら、更にカールに合図を送る。

 それだけで直ぐに理解したカールは、指摘されたコンテナへと用心しつつ近づいた。

 壁際に寄ったミュリアムは受話器を掴み取ると、関係部署に連絡を入れる。

 

「こちら搬入口ブラボー。 リスト外のコンテナが搬入されてます。 何か、追加の報告、あります?」

『搬入口ブラボー? こっちに報告は無いぞ。 ちょっと待て。 艦長達に確認…』

「いいわ。 直接聞くから。 ただし、そっちも待機してて」

『了解』

 素早くパネル部分を操作するミュリアム。

 しばらくした後、艦長のハッサスが出た。その間にも、ミュリアムはコンテナの動きから目を離さない。また、カールもコンテナを運んで来た連中に話を聞いている様子だった。

 

『どうした』

「ミュリアムです。 搬入口ブラボーに、リストに記載されていないコンテナが運び込まれています。 アナハイムの人から、何か聞いてます?」

『待て』

 長い沈黙。振り返るとカールがコンテナを運んできた作業員と何かを喋っているのが見えた。何やら、激しく言い合っており、不穏な空気を感じる。

「こっちの客じゃ無いらしい。 構わんから警報を鳴らせ。 警備連中め。 幾ら人手が足りないからって…イド!」

 ハッサスが振り返った時、既にイドは部屋から出ていく所だった。

 ミュリアムも返事をする前に警報機を鳴らしたらしく、受話器向こうでその様子が伝わると同時に、直ぐに艦内全体にもそれが鳴り響く。

「私は、どうしましょうか。 一応、確認に行きます?」

「客人は念の為、ここで大人しくしていてくれ」

 そう言ってハッサスもブリッジへと向かった。

 

「な、何だ。 この警報?」

 コンテナを運んできた一人がキョロキョロと辺りを見回す。

 お前らのせいだよ。と、カールは心の中で舌打ちした。

 

「もう一度聞く。 どこの所属だ。 もしくは、搬入者名は?」

 警報が鳴っている事もあって、カールは大声で怒鳴った。

「だから、ジェミニボックスだってよ」

 それに対し同じく向こうも怒鳴り返すが、さっき聞いた答えと同じだ。

 流石に、その返答はおかしい。

 

「ジェミニボックスは、この船の名前だ。 そんなの、おかしいでしょ」

「知らないね。 コッチは言われた通りに運んできただけだし、書類だって、ホラ!」

 そう言って差し出された書類には、確かにnameの所にジェミニボックスとある。内容の所には単に装備品とだけ書かれてあって、何が入っているのかは明確にはされていない。

「中身は何です?」

「だから、知らないって。 俺達は届ける様に依頼されただけなんだ。 じゃ」

「あ、おい!」

 カールの制止も無視して、運んできた連中は、その一人の合図によって次々と引き上げて行ってしまった。

「カール」

 呼ばれて振り返ると、そこにはイドが居た。

「何だ。 このコンテナ。 どこからだ?」

「それが…」

 そう言って書類を手渡すと、イドは眉間に皺を寄せた。

 

 

「本当に、お宅らの物じゃないんだな?」

 強引に置かれたコンテナを前に、ハッサスはモルドを呼びつけて聞く。

「いえ、全く。 そもそも、アナハイムならエゥーゴの名前を使うでしょう」

 それはそうだ、とハッサスは内心で納得する。だとしたら、これは一体何なのか?

 

「爆発物は仕掛けられていない様です。 どうします?」

 整備員の一人がコンテナを調べる機器を手にコチラに呼びかける。つまり、開けるかどうかを仰いだのだ。

「…カール、パイロットスーツを完全着用して居るのはお前だ。 お前が開けろ」

「はい」

「え、ちょっと、艦長!」

 ミュリアムは止めようとしたが、その前にカールが直ぐに開けてしまった。

 

 

「コイツは…」

 中身を見た瞬間、これを送って来たのがどこなのか、分かる者達には直ぐに分かった。

 そこにはMSの追加装備品が納められており、特にカールには良く見覚えがある物だった。

 

「ゼーラス用、追加装備…」

「RS社の連中か。 余程厄介払いしたい様だな」

 そう言って、ハッサスは溜め息を付いた。

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