エゥーゴの主力量産型MS開発に挑んだRS社。目指したのは、Z計画に則ったスペックのMSであった。しかし、開発には困難が立ちはだかり、結局は大きく下方修正を余儀なくされている。
ジェミニボックスから直にティターンズの物と思しきMSの報告を受けていた彼らは、次の主流は間違いなく可変MSになる事は間違いないと考えており、量産型でもそれは強く考慮されるべきだと方針を固めて開発に着手する。
とは言え、AE社でも既に可変MSの開発には失敗しており、ノウハウが無いRS社では尚更難しいと考えられていた。
しかも、RS社が目指していたのは試作機でもワンオフに近い機体でもなく、量産機でもあった為、ある意味でハードルはAE社が目指した物よりも高かったかも知れない。
そこで彼らが取った方法が、限定的な可変機構と割り切った運用方法を確立した上での設計であった。
Z計画における到達点の一つは柔軟な可変による戦局への対応と多様性であったのだが、これを削ぎ落として量産機としての方向へと落とし込む事で、不足分を補う事にしたのだ。
また、開発に際してはZ計画のプロトタイプMSのデータも提供されていたので、それらを参考にした事で驚くべきスピードで彼らの意図するMSは完成した。
こうして生まれたのがゼーラスと呼ばれるMSであったのだが、これがRS社として開発できた最後の機体ともなってしまう。
ゼーラスは、機体全体をMSZ-006-Xシリーズのデータを元に、RS社が独自の手法で量産機に落とし込んだ物となっている。
その様に書くと聞こえは良いのだが、実際には良い様に弄くり回した上に、量産を急ぐ為、更に既存部品をくっつけたと言うのが本当のところだ。
その為か、結果的にムーバブルフレームと従来のモノコックとのハイブリッドとも言える中途半端なMSとなってしまっている。
ただ、一見無茶苦茶に見えるこの手法をRS社は見事に昇華させ、使えるMSに仕立て上げて同社の技術力を見せつけてAE社を驚かせてもいる。
そのAE社がリック・ディアスに変わる量産機の開発終了が間近であると言う情報も受け取っていたRS社は、何としても、それらと比較できるだけの機体を投入する必要があったのだが、マッチポンプがAE社であったのは皮肉とも言えよう。
こうして誕生した機体は偶然にもMSA-003 ネモと同じ様に、ジム・スナイパー2と一部部品を踏襲している事が判明する。
これはRS社が既存のMSから流用できる部品を用いようと考えた結果、最も良いと判断されたMS等を大幅に参考にした為でもある。
その事実は、両者のエゥーゴに対するニーズを良く理解している証明ともなったが、その事はRS社にとってはショックを与えてもいた。
何故なら競合してしまう以上、MSとしての基本性能が被ってしまう上に、コスト面で考えると完全に負けてしまうからだ。
しかも、MSA-003も割り切ったMSと言う似たコンセプトを持っており、少なからずAE社を出し抜こうとしたRS社の上を行っていた。
それでも彼らが開発を止めなかったのは、ネモには無い変形機構をこのMSが持っていたからでもある。
ゼーラスの変形機構は非常に単純である。
背部のバインダーが肩とボディの間に挟まれた稼働するパーツに保持され、それが回る事で上半身をすっぽりと覆うと言う物だった。
後のZガンダムで言うところのフライングアーマーではあるが、あちらが分割されていたのに対し、この機体では完全に一体化されている。
それはちょうど、シャトル等をそのまま背負っている様な感じでもあった。
変形した状態の名称は後にウェーブライダーとして統一されたが、開発時点では単にモビルアーマー状態とされていた。もっとも、早い段階から名称は変更されてもいる。
このウェーブライダー状態では加速性が上がる為、ゼーラスは自前で戦闘エリアに機体を運搬できると言うメリットも持っていた。
ただし、ウェーブライダー形態からMSへの変形は戦闘中でも可能なのだが、その逆は時間がかかり過ぎて不可能となっている。
そこが割り切った内の一つであり、ウェーブライダー形態はあくまでも移動手段としてしか意味が無く、後のZガンダムの様な柔軟性は持ち合わせていない。
大気圏への突入能力も持ってはいるのだが、当初予定されていた素材ではコストがかかり過ぎるとされ、結局はワンランク下の物が用いられた為に連続した運用性は失われている。
それを解消する方法として専用の耐熱塗料が用意され、大気圏へ突入する際には事前にそれを塗る様にとマニュアルには記載されていた。
一応、そのままでも突入できない事はないらしいのだが、劣化が激しく進む為に再利用は出来なくなるらしい。
また、地上での空力特性による飛行はほぼ不可能でもあるので、突入後は作戦行動の継続を考えるとパラシュートと言った装備による減速を推奨されている。
短距離程度であればMSZ-006同様、推力の強引さによって飛翔や滑空も可能ではある。推進剤の心配を全く考慮せず、その後の活動範囲が限られる事を考慮しなければの話ではあるが。
この様に書くと何もかもRS社の完全オリジナルの様に思えるのだが、何てことはない。結局は全てAE社が既に試してボツにした案と技術を拾い上げ、限定的に使用する条件を現場に押し付ける形にしただけなのである。
実際、このゼーラスに用いられた可変機構も元はAE社で既に試作されていた物であり、所詮は捨てられたデータ故にRS社側は手に入れられた様な物であった。
兵装に関してもやはり量産性を意識して既存の物を使う事を前提としていた、と言うよりは開発期間を短くする為の選択が成されたと言って良い。
結果としてネモとほぼ一緒となっており、後に一部の機体では百式のビームライフル等を携行する機体もあったと言うが、基本的には火力は弱い部類に入る。
また、本機は百式とも少なくない関係を持っていた。
と言うのも、頭部はMSZ-006-Xの一つに用いられていた百式タイプをRS社が独自に簡素化した物を取り付けていたからだ。
ただし、知らない者が見た場合、両者の形状に共通点を見出すのは難しい。それだけ、RS社が弄くり倒して簡素化してあったと言える。
この様にして開発自体は順調に完了したゼーラスではあったが、結局はエゥーゴの正式な量産機として採用される事はなかった。
一番の理由はやはりコスト面でもあったが、整備性などのトータルバランスで見た場合、やはり完成度はイマイチであったと言わざるを得ないからだ。
しかし、ジェミニボックスへの一定数の配備と言う要望に関しては、現場の声も含めて理解を得られ、予備機も合わせて20機程が製造されて実戦へと投入される事になる。
実は、このMSには正式な名称も形式番号も存在していない。
理由としては、存在しない部隊の存在しないMSとして扱われていたからだ。
一応、RS社の社内識別用としてZX-006と言う形式が当てられてはいるが、これとて関係者向けの物であり、部外者に向けての資料は一切ない。
一般的な名称として知られるゼーラスでさえも単なる愛称に過ぎず、正式な名称ではない。
もっとも、このMSの呼称においてはゼーラスが半ば正式的な名称に近く、資料の多くには、それで記載されている事が多かったのも事実である。
以上が、一般的に知る事ができる、ゼーラス及びジェミニボックスの資料とされている。