「はァ?なんで好きでもねぇやつと付き合わねぇと行けねぇンだよ!」
サシャはここまできて好きだと自覚が無いエレンに驚きだが、エレンの恋を叶えるためにもその事は押し殺しエレンが納得しそうなもっともらしい嘘を並べる
「ですから、治療のためですって!」
「治療って薬とかじゃねぇのかよ!」
「未だ、この病気に特効薬ないんですよ!ゴホッゴホッまぁ、強いて言うのなら愛のある……ごホッ」
サシャの言っていることは後半聞き取れはしなかったが、特効薬が無いというサシャの言葉はエレンにとって、大変ショックなものだった。
「特効薬がない?」
「そうです!ですからその病気を治すにはその人と付き合うしかないのです!」
「嘘だろ……」
(まぁ嘘なんですけど……)
サシャの言うことを次々と真に受けるエレンの純粋さにサシャは心が締め付けられた。
「わ、わかった…それしか、ないのなら……やる」
「それで、その相手は誰なんですか?」
「は?」
「恋して……ゴホン……恋の病にかかってしまった、相手ってのは誰なんですか?」
「いや、その……」
エレンはライナーの名前を出すのが照れくさくて言うのを躊躇した
「さぁ!教えてくださいこれも治療のため!サァ!」
早く言えと言わんばかりにグイグイ詰め寄るサシャ
「やっぱ!この話なし!」
それを突き飛ばしエレンは頬を真っ赤にして走り去って行く。
(はァ!?私がライナーと付き合う!?)
付き合うことを意識するとよけい照れくさい。
そんなに走っていないのに自分の心臓の鼓動が早くなってるのが分かる。
(バカ!何考えてんだよ!治療のため!治療のためなんだぞ!?私がライナーのことを好きとかそんなんじゃないんだぞ!?)
自分の考えを振り切るためエレンはさらに加速する。前もよく見ず角を曲がると……
ドン!
案の定人とぶつかる。
そのガッシリとした体幹にかなり勢いがあったからかエレンはふらつき転びそうになるが手を掴まれ、持ちこたえる。
「わ、わりぃ」
エレンが先に謝るがその男は「大丈夫か?」と心配してくれた。
その男の声は聞き覚えがあった。
「ら、ライナー!」
「?」
突然自分の名前を叫ぶエレンにライナーはハテナマークを浮かべた。
エレンはと言うと状況を理解するのに数秒かかった。
エレンは手を握りしめられている、ライナーに。
その状況をエレンは理解すると鼓動が益々早くなり、何を混乱したのか握られている手を利用し、ライナーに一本背負いを食らわせてしまった。
「グホッ!」
「す、すまん!急いでるから!」
ライナーは訳がわからないまま投げ飛ばさられ、エレンは訳の分からないまま走り出した。
******
******
寝付くに寝付けない。
最低のバッドコミュニュケーションをとってしまった。
出会っていきなり一本背負いされる人の気持ちはとても最悪なものだろう。
されたことがなくても分かる。
なぜ、自分はあんなことしてしまったんだろう。
エレンはそう後悔していた。
ライナーはその後食堂であったが目も合わせてくれなかった。
エレン自身も目を合わせれなかった。
当たり前だ
エレンはあれもこれも恋の病のせいだと思った、そう思えばそう思うほど治療を早めたくなるが、そう思えばそう思うほど治療法は
「はぁ」と大きくため息をつき覚悟を決める。
エレンは隣でイビキをかいて寝ているサシャを小突いて起こした。
「なんぇすかぁ」
寝起きだからかサシャの呂律は回っていない。
「な、なぁその……付き合うってどうやれば出来るんだ」
そうだ、付き合うと言っても恋人同士になるんじゃない治療のためだしょうがないんだ
エレンはそう割り切ることにした。
「ムフフ待ってましたよ!その言葉!それで相手は誰ですか!?」
(治療のため治療のため、恥ずかしくない恥ずかしくない)
エレンは自分にそう言い聞かせる。
「ラ、ライナー」
エレンは聞こえるか聞こえないかの声で言ったが、サシャは余裕で聞き取った。
「なるほどぅ……それは敵が多いですねぇ」
「そ、そうなのか?」
「えぇ…ライナーは結構モテますからねェ~…」
(そうだよな……ライナーなんだからモテて当然だろ!
だけどなんだ?この胸のチクチクは……
これも恋の病のせいか?)
「これは厳しい戦いになりますよ!共に頑張りましょう!」
「あ、あぁ言っておくけど私はライナーのことが好きじゃないからな?治療のためだからな?」
「分かってますってぇ〜もぅヤダなぁ」
サシャはニヤニヤを必死で抑えひきつった顔でそう言った。
(本当に大丈夫か……?)
「そ、それと今日さ……」
エレンは今日ライナーにした事をそのままサシャに話した。
「えぇ……」
流石のサシャもドン引きしていた。
「分かりました!まずは明日ライナーに謝りましょう!
話はそれからです!」
「お、おう!」
エレンの戦いはここから始まる