虹ヶ咲学園サッカー同好会"NEO SKY, NEO MAP!" 作:ルビィちゃんキャンディー
最初はボールに触らせる機会が少ないですが、世界観や設定を皆さんに理解してもらえるように頑張って書きました。
自由なサッカーを取り戻すため、音ノ木坂学院から虹ヶ咲学園へと転入した上原歩夢。
放課後、早速サッカー部部室へと向かおうとしたのだが…歩夢は思い知ることになる。
「……部室、どこ?」
都心私立高校の圧倒的敷地面積を。
「だからって広すぎるよ…私今どこにいるの?」
近くにあった構内案内図で現在地を確認する。
ショッピングモールや都心の駅で見るようなレベルの案内図なため、数分間にらめっこするも…なかなか目的の場所が見つからない。
「何探してんの?」
困り果てていた歩夢だったが、背後から自分に向けられているであろう声に反応し振り返る。
そこには金髪で服を着崩した、いわゆるギャルが立っていた。転校初日から絡まれたかと思った歩夢だったが、話を聞くと彼女もサッカー部部室に向かっているようで─────
「私、宮下愛って言うんだ。よろしく!」
「上原歩夢…です。よろしくね」
────愛と共に部室を目指すことになった。
会話してみると、彼女はコミュニケーション力の塊のような存在だった。
彼女の話しも面白いのだが、こちらの話しもしっかりと聞いて楽しんでくれる…それ故に、先程までの緊張感は気づけば消え去っていた。
見た目も制服を着崩してはいるが、清潔感あふれる姿はまさに現代ギャルだった。
そんな彼女と歩くこと数分、見えてきたのは大量の扉が並ぶ開けた空間。寮のような場所だった。
愛はその場で立ち止まり、歩夢に説明するために口を開く。
「ここが虹ヶ咲学園の部室棟だよ!」
「え…これが部室棟!?」
歩夢の知る部室棟にはエスカレーターなど無いし、わざわざ案内図も無いし、扉の数も数えられるほど。
しかし、それら"歩夢の常識"を全てぶち壊したのが虹ヶ咲学園の部室棟だった。
規模が違う。果てしなく違う。
だが、呆然と立ち尽くす歩夢とは違い、愛は全く動じることなく続けた。
「確かに広いけど、私の前いた学校もこんな感じだったよ」
「前の…学校?」
「愛さん、最近転校してきたばっかりなんだよね!」
その言葉で一気に現実へと戻されることになった。サッカー部部室へと向かう転校生…自分と同じならば、彼女も"あの手紙"で集まった同士。
それを意識した上で宮下愛を再び観察する。
話してわかったことは、彼女はスポーツのセンスが抜群だということ。
前の学校ではさまざまな部活の助っ人として練習や試合に参加していたと言っていた。
その情報だけでも彼女が頼もしい存在だと分かる。また、人間関係面でも上手くやっていけそうだ。団体スポーツでこれらは必須だ。
そんなことを考えている間に、2人はサッカー部と書かれた扉の前に到着した。
「到着!では、たのもー「あなたたち、サッカー部の生徒ですか?」
「「???」」
愛が扉を開けようとしたのと同時に背後から声がした。愛はその手を止め、歩夢と共に声のした方を振り向く。
そこには眼鏡をかけ、腕には生徒会の腕章をつけた生徒が立っていた。
「い、いえ…私たち、サッカー部に入部しようと思ってて」
「サッカー部に…ですか」
生徒会役員だと思われるその生徒は一瞬言葉を詰まらせたかのように見えたが、そのまま扉の前まで歩き出す。
そして…部の札に手を伸ばし、一言。
「サッカー部はただいまをもって廃部となりました」
「「!?!?」」
理解出来ないでいる歩夢たちに構うことなく札を抜き取る生徒会役員。
混乱した頭で廃部の理由を聞こうと生徒会役員を呼び止めようとしたのだが…すでに立ち去った後。残されたのは立ち尽くす歩夢と愛だけだった。
「ど、どうしよう…廃部なんて聞いてないよ」
「こうなったら、生徒会室に行って直接理由を…」
理由を聞かないことには始まらないと言いながら歩き出す愛の後について行こうとする。
しかし、そんな2人を呼び止めるように、廊下の奥から1人の生徒が走って近づいてきた。
「もしかして、入部希望者ですかー!?」
―――――――――
「あ、あの…どこまで行くの?」
サッカー部員だと言う少女の後を歩き続け、気づけば人気の無い部室棟の奥の奥。
廊下の電気はついていないため、薄暗くひんやりとした空気に包まれている。
不安が増すばかりの歩夢は少女に質問するが、対する少女はケロッとした態度で答えた。
「もう少しで到着です。ここなら生徒会にもバレませんからね〜♪」
通り過ぎる部屋たちの部屋名は倉庫がほとんど。人が使っていないことはひと目でわかった。
そして少女がその中の1つの扉に手をかけた。勢いよく開かれた扉の先では─────
「誰も…いない?」
────フィフスセクターと戦う仲間が待っていると思っていたが、その期待はこの寂しげな空き部屋によって消え去ってしまった。
サッカー部の廃部と何か関係があることは確か。そう考えた歩夢と愛は少女に尋ねようとする…が、それよりも先に少女が口を開いた。
「……本当にごめんなさい。サッカー部、守れませんでした」
廊下で歩いていた時の笑顔は消え、悔しさと怒りで唇が震えているのが分かった。
「先輩方、今のサッカーを変えるために転入してきてくださったんですよね…」
「そうだよ」
愛は少女の質問に答え、さらに続けた。自分たち以外にも他校から転入してきたメンバーはいないのか…と。
その質問の答えは、今のサッカー部の現状に大きく関係するものだった。
「いました。先輩方よりも早く転入してきたので、チームに合流して練習を始めていました」
「ですが…勝てなかったんです」
「勝てなかった…?」
「フィフスセクターから指示された練習試合、公式試合の勝利ノルマ…達成するどころか、一勝も出来なかったんです」
フィフスセクターは各学校のサッカー部にさまざまなノルマの指示を出している。
練習時間から勝利回数、得点まで。ノルマを達成できなかった学校にはペナルティが課せられ、最悪廃部や廃校まで追い込まれる。
虹ヶ咲学園サッカー部はそのノルマを達成できなかった…弱肉強食と化した今の日本サッカー界では珍しくないことではある。
しかし、実力があるはずの転入生たちを加えてノルマが達成できないなど…ありえなかった。
「どこの…学校と試合したの?」
「"星章学園"、そして…"王帝月ノ宮高校"です」
「「!?!?」」
少女の口から出た2つの高校…知らぬ人はいない、全国でもトップクラスの超強豪校だった。
その高校らとの試合…確かに勝利は絶望的かもしれない。だかフィフスセクターが何故そのような無謀な試合を敢えて指示したのか。
「決まってんじゃん…元々潰すためだったんだよ。虹ヶ咲学園サッカー部を」
愛の声に怒りが混じる。
それもそのはず。フィフスセクターに逆らおうとするチームがいるならば、真っ先に潰す選択をするのは当然のことだろう。
何かしらの理由で自分たちの目的がフィフスセクターに知られていたとするならば…無謀な試合構成にも納得がいく。
「…でも、私たちにも責任はあるんです」
「元々別のチームでしたからね、プレーや戦術の考え…やりたいことがみんなバラバラすぎて、うまくまとまらなかったんです」
そして少女は気づいた。
自分たちは同じ方向には行けないのだと。そのため互いに遠慮するようになり、気づいた時には敗北の山。そしてサッカー部廃部。
ホーリーロードに出場する以前の問題。
悔しさを何とか耐えようとしていた少女だったが、そのピンク色の瞳は涙で揺れていた。
「…自分が情けないです」
「「………」」
もっと早く虹ヶ咲学園に転入していたら…
歩夢は自分の決断の遅さを恨んでいた。しかし、すでに手遅れと言わざるを得ない状況。
俯いたままの少女を前に、上原歩夢はどうすることも出来ないでいた。
が──────宮下愛は違った。
「まだだよ!!」
「「!!!!!」」
静まり返った倉庫部屋に響く声。
鼓膜だけでなく、心臓も刺激された感覚だった。
「サッカー部が無くなっただけで、部員だった人たちはまだいるんだよね?」
「は、はい…」
「ならもう一度サッカー部を作ろう…!ほかの転入生の人たちや、部員さんを説得してさ!」
「でも…また試合に勝てなくて…」
「大丈夫!!愛さんと歩夢を信じて!私たちが来たんだから、何とかなるよ!!」
宮下愛の言葉には力があった。
直接心に語り掛けているような…愛と同じ立場であるはずの歩夢も、その言葉に動かされそうになっていた。
そしてただ一人残された、虹ヶ咲学園サッカー部の少女も同じだった。
「…先輩方を、信じてもいいんですか?」
「当然!私たちはもう仲間なんだからさ!」
少女は涙を拭った。全て吹っ切れたかのように、笑顔で2人の手を取った。
まるで人形のような小さな体だが、その手に触れた瞬間、歩夢と愛は気づいた。鍛えていなければ付かないような握力、そして目立つ傷跡。
「これからよろしくお願いします…!先輩!」
「私の名前は"中須かすみ"です!一緒にサッカー部を復活させましょう!!」
踏み潰されたはずの反逆の芽は、再び土から顔を出し、新たに空へと伸びようとしていた。
すっかり元気を取り戻したかすみは倉庫部屋を飛び出し、説得できる可能性が一番高い生徒の元へと向かうと言い出した。歩夢と愛に異論は無い。
こうして、虹ヶ咲学園サッカー部復活の第一歩は踏み出された。現時点でのメンバーは3人、まだまだ始まったばかりである。
―――――――――
「じゃあ、転入生は私たち含めて5人?」
「はい。3人が先輩方よりも早く転入してきて、一緒に活動していました」
目的の場所へ向かいながらかすみの説明を聞く2人。どうやらその3人と、元々虹ヶ咲学園の生徒でサッカー部だったメンバーとでチームを組んでいたようだったが…
「虹ヶ咲のサッカー部員全員に掛け合ってみましたが…やはり、フィフスセクターに逆らってまでサッカーは出来ないと断られてしまいました」
「1人を除いて」
「1人…?」
虹ヶ咲学園サッカー部のエースストライカーであり、その爆発的な攻撃力と正確無比のボールコントロールは他を圧倒するレベル。
しかし、その選手は虹ヶ咲学園のどの科のどのクラスの生徒であるか…情報は全て不明。謎だらけのエースストライカーとして学校中で人気を集めていた。
「優木せつ菜先輩。あの人はフィフスセクターと戦うと宣言していました…きっと、力になってくれます」
「でも、謎ってことは…どこにいるか分からないんだよね?」
「はい…メールの返信もありませんし、正直可能性は低いかもしれません。ですので、まずは仲間を確実に増やしていきましょう」
かすみの足が止まった。そこはサッカー部には無縁に近いと思われるような場所だった。
"演劇部劇場"と書かれた扉。かすみは迷わず開き、中へと進んでいく。
「まずは1人目。先輩方も聞いたことがある名前だと思います」
「気づけば彼女に"踊らされ"、武器であるプレーも"演じられてしまう"…『帝国の演劇姫』」
「桜坂しずくさんです」
サブタイトルの『最初の出会い』の出"あい"と愛さんはダジャレです☆