虹ヶ咲学園サッカー同好会"NEO SKY, NEO MAP!" 作:ルビィちゃんキャンディー
更新遅れて申し訳ないです。ホロライブにハマって抜け出すのに時間がかかりました。今回は短いです。
「…あなたがそんなことを言い出すなんてね」
薄暗いホールに集められた少女たち。その中の1人に言葉は向けられていた。
少女はメンバーの視線が集まる中、離れた場所で言葉を返すように口を開く。
「私は…自由になりたい」
「…あなたは自分がやったことの重大さが分かっていないようね」
まるで取り調べのように話しは続く。
リーダーと思われる少女の目に光は無い。
「フィフスセクターの"アレスの天秤"は、人の育成を完全に管理するシステムなのよ。あなたのやるべきことを決めるのは、あなたじゃない」
「…私のやることは私が決める。システムが決めるのは…違うと思う」
負けじと1人の少女は抗議する。
だが仲間たちは微動打にしない。刃物のような空気も変わらない。そして、感情も。
「……チャンスをあげる」
「チャンス…」
「今ならまだ目をつぶるわ。私だって上には報告したくない。心を入れ替えてチームのために力を尽くしてくれる?」
ここで引き下がってはいけないと、1人の少女は自分に訴えた。
「……ごめんなさい。できない。私はあの試合の後、ずっと考えた。私がサッカーをする理由…あそこなら見つかるかもしれない」
「…そんな小さなことのために、あなたは全てを失うつもりなの?」
「私たちは日本の未来を背負っている。私たちが結果を出せば、日本はサッカーだけじゃない。あらゆる分野で世界を変えられるんだ」
「そのために私が私を捨てるのは…違う」
「…本当にそれでいいのね?」
「……」
1人の少女は沈黙の肯定を最後に出口へと歩き出した。
だが誰一人として彼女を止める者はいない。
まるで心が存在しない人形のように、次の命令が出されるのをただただ待っているようだった。
「…どういうつもり?野坂」
「彼女はもう使い物にならない。私はそう判断した。でも、それは"向こう"でも同じ」
「璃奈のサッカーは…ここでしか真価を発揮しないのだから。彼女も直にわかるよ」
輝きを失った瞳に映る少女の後ろ姿。
出口へと向かう少女を待つのは、窓の外に広がる眩しい世界か、この部屋のように光をも飲み込む底無しの影の世界か。
少女が部屋を出るまで誰一人動くことは無かった。
―――――――――
「エマ・ヴェルデさん…?」
「廃部前のサッカー部の最後のメンバーです!今から勧誘しに行きますよ!」
虹ヶ咲学園の昼休み。2年生の教室では、母親お手製の弁当を口に運ぶ歩夢、それお構い無しに会話を進めるかすみがいた。
「で、でも今お弁当食べてるから…」
待ちに待った昼食。
だがかすみは聞く耳を持たなかった。
「早く行きますよ!放課後はミーティングがありますから、今しか時間は無いんですよ!」
「そ、そんなぁ…」
同じクラスの愛に助けを求めようとしたが、教室を見渡しても愛の姿は無かった。
朝から様子がおかしいと感じていたため気になってはいたのだが、どうやらそれについて考える暇はないようだ。
かすみに連れられ向かったのは虹ヶ咲学園の園芸部が管理している校内庭園だった。
「エマ先輩はここにいるの…?」
「理由はしず子とだいたい同じです。植物と先輩の技には深い関係があるようなんですよ」
植物と関係のある技はなかなか聞かないため、興味を引く内容ではある。
だが歩夢は目に映る色とりどりの花々、生い茂る草木に気を取られてしまい、それ以上、技の追求をすることはできなかった。
素人が見てもわかるほどの立派な植物たち。
これらを管理しているエマ・ヴェルデとは何者なのか…
「あっ!エマ先輩ー!」
かすみが1人の少女の元へと駆け出した。
赤毛の三つ編みおさげに青い目、彼女が海外から留学してきたというエマ・ヴェルデで間違いはないだろう。
「かすみちゃん…!どうしたの?庭園のこんな奥まで」
「先輩をサッカー部に連れ戻すために来たんですよ!」
「え…でもサッカー部は廃部になったんじゃ…」
かすみはエマにこれまでのことを全て説明する。新たな仲間と共にサッカー部を復活させ、フィフスセクターと戦っていくこと。
それを聞いたエマは驚いたように口を開いた。
「じゃあ、あなたが新しい仲間の…?」
「はい!上原歩夢です!」
突然話しかけられて驚いたが笑顔で答えると、優しい声の主が応えるように自己紹介を返してくれた。
「エマ・ヴェルデです。サッカー部が廃部になって、もうダメなのかなって思ってたから…気づかなくてごめんね?」
「実力なら安心してください先輩!なんたって、歩夢先輩は果林先輩に1対1の勝負で勝つほどですからね!」
「え…!?あの果林ちゃんに??」
近づくエマの顔。
宝石のように綺麗な瞳と癒されるようないい香り。大人の女性と対話しているようで変に緊張してしまう。
何か返事をしなければ…そう思った時だった。
「おや…?誰か来たようだね〜」
突然、茂みの奥から声がした。草木が擦れる音と共に声の主は歩夢たちの元へと近づいてくる。
「あ、あなたは…?」
「サッカー部の人たちでしょ?待ってたんだ〜あなたたちのこと」
自分たちのことを分かって話しかけてきたという少女。だがその今にも眠りに落ちそうな独特な口調、雰囲気のせいで上手くペースが掴めない。
「な、なんでサッカー部の私たちを庭園の奥で待っていたんですか??」
かすみの言う通りだ。結果的にこうして出会えたものの、彼女の行動の理由が分からない。
「それはね〜昨日の放課後の時に、留学生の子があなたたちの中にいなかったからだよ」
留学生…エマのことだろう。
少女はそのまま続けた。
「部員を集めているならこの時間にここに来るって彼方ちゃん、分かってたから。部室は無くなっちゃったみたいだし、当てずっぽうよりはこれが一番効率がいいよ〜」
ウェーブの掛かったオレンジブラウンのロングヘアー、そして紫の垂れ目の少女。
エマとは違った大人な雰囲気を持つその姿で、彼女が上級生であることは一目瞭然。
「私の名前は近江彼方。私も転入生だよ〜。彼方ちゃんって呼んでね」
同じ同士であることが分かり、歩夢たちの緊張感はすぐに消えることとなった。
エマだけでなく、もう1人の転入生とまでも出会うこととなるとは…昼食をお預けしたかいはある。
「彼方ちゃんだね。私はエマ・ヴェルデ。これからよろしくね!」
「こちらこそ〜」
だが、第一印象の雰囲気は―――
「そして…上原歩夢ちゃん」
「!!!!」
(雰囲気が…変わった!?!?)
一瞬で消え去ることとなった。
「昨日の歩夢ちゃんのサッカー見たよ。彼方ちゃんびっくりしちゃった。流石は名門校の選手だなってね…だから、」
「 彼 方 ち ゃ ん と も 勝 負 し て よ 」
先程までのゆっくりとした彼女とは別人。
目を開き、試合前に放つような覇気を放っているようだった。あまりの緊張感に、周囲の空気は震えている。
かすみもエマも動揺のあまり固まってしまったようだ。だが、彼女は敵じゃない。ただ純粋に選手として勝負を申し込んだ…そう信じるしか、歩夢の選択肢は無かった。
「…分かりました。では─────
────キーンコーンカーンコーン
「…あ、」
「残念、授業のお時間みたいだね」
まるで鞘から抜きかけた剣を収めるように、彼方はおっとりとした雰囲気に戻っていた。
「でも勝負はしてもらうよ〜。相手が強ければ強いほど、彼方ちゃんは燃えちゃうのだ」
「は、はい」
彼方は果林と違い、好奇心から勝負を申し込んでいるように感じた。
あの自信の表れはそうとうな実力者でなければ説明がつかない。
「かすみちゃん…近江彼方さんって、」
「……聞いたことがある名前です。去年の全国高校女子サッカー大会、通称"ホーリーロード"の準優勝高校」
「"新雲学園"の近江彼方さん…歩夢先輩気をつけてくださいよ。油断してたら恐らく瞬殺ですから」
「し、瞬殺……」
校舎へと戻る彼方の後ろ姿からは全く想像も出来ない情報に、歩夢は空腹のことなど完全に忘れ去っていた。
―――――――――
放課後は予定通り部員(仮)でミーティングとなっている。
エマと彼方はかすみが案内すると言っていたため、歩夢は愛と共に2人で部員へと向かっていた。
「そういえば、愛ちゃんは昼休みはどこに行ってたの?」
「あー…ちょっと用事があってね」
詳しく事情を教えてくれない愛に違和感を持つ歩夢だったが、部室が近づいたところで別の違和感となるであろう少女の声が聞こえてきた。
「誰か…叫んでる?」
人気のない廊下であるため余計声は響いてくる。足早に部室へと向かい、扉を開けた先ではすでにメンバーが集まっていた。
「こんなのおかしいですよっっ!!」
声を荒げていたのはかすみだった。
状況は分からないが、かすみが怒りを向けている相手は、歩夢は初めて見る少女であった。
「か、かすみちゃん…落ち着いて、」
「落ち着いてなんていられませんよ!!私たちの活動を監視するために送り込まれた"シード"ですよ!!」
「違う…!私はシードじゃない」
相手の少女は反論するも、かすみは聞く耳を持たない。
新たに現れた少女は敵なのか味方なのか…?
物語は更に加速していく―――
原作の虹ヶ咲学園では学部が違ったりしますが、あまり必要無さそうだし、スポーツの転入生なのでほとんど同じ学部のクラスにしてます。