虹ヶ咲学園サッカー同好会"NEO SKY, NEO MAP!" 作:ルビィちゃんキャンディー
ルビィちゃんキャンディーです。
長らく更新が途絶えていたことをお詫びします。
言い訳をするとすれば、リアルが忙しくなってしまったことですね。若い頃のモチベはどこに消えてしまったのか…
ゆっくりではありますが更新は続きます。
かすみの声が響く教室、空気は最悪だった。
状況を把握できていない歩夢はその場から得られた情報を整理する。
かすみが怒りを向けていたのは見知らぬ少女。そして聞こえてきた単語、"シード"。
歩夢「シードって…フィフスセクターの?」
かすみ「そうです!!この人こそ私たちを廃部に追い込んだ張本人、"王帝月ノ宮高校"の選手の1人なんです!!そんな人がうちの学校に来るなんて…フィフスセクターの監視役以外に考えられますか!?」
フィフスセクターは"シード"と呼ばれる監視者選手を各校に派遣している。指示に逆らった場合や、指示をこなせないと判断した場合、サッカー部を潰したり乗っ取ったりするのみならず、時には学校そのものを廃校にまで追いやっている。
そんな選手が革命を目指すチームに来たとなれば、その後は目に見えている。
だが、まだ王帝月ノ宮の少女をシードと決めつけるには疑問が残っていた。
彼方「質問だけど〜、ここの学校のサッカー部は部の再申請をしてないのかな?」
新雲学園からの転入生、近江彼方が手を上げながらかすみに質問する。
苛立ちを隠しきれないまま、かすみは問に答える。
かすみ「まだ人数も揃っていませんので…してないです」
彼方「フィフスセクターは"シード"をサッカー部がある学校に送り込むはずだよ〜つまり、」
歩夢「今の虹ヶ咲学園にはシードは来れない… 」
ハッとしたように声が出た。
その通り!と力の抜けた笑顔で彼方は答える。
彼方「確かに王帝月ノ宮は虹ヶ咲学園と戦ったチームだけど…その子の話とかすみちゃんの話がどうも噛み合わない」
エマ「詳しく話しを聞いてみよ…?」
完全には納得がいってないような雰囲気ではあるが、かすみは王帝月ノ宮の少女から離れ、一呼吸終えてから椅子に座った。
流石と言うべきだろうか。
一瞬で疑問を指摘し、その場の空気を落ち着かせて見せた彼女…近江彼方。
日本屈指のチームのメンバーだからこそなせる力なのか…歩夢は自身の実力不足を痛感する。
「あ、ありがとう…ございます」
かすみ「それで?あなたは何故、ここに転入してきたんですか?」
「……私は、」
そして少女、天王寺璃奈は伝えた。
自分が王帝月ノ宮のサッカーに疑問を持っていたこと。"アレスの天秤"と呼ばれる、完全管理されたサッカーへの異議。
虹ヶ咲学園との試合で、自分が求めているサッカーへの答えが見つかる気がした…
話している間、彼女からの敵意や故意な発言は感じられなかった。全て本音、事実。
璃奈「私は…みんなの力になりたい」
かすみ「天王寺さん…」
先程までの態度に罪悪感を持ったのか、下を向いたまま名を呟くかすみ。
だがそれを責める者はこの部屋の中にはいなかった。彼女もまた、チームを守ろうとしての行動をしたまでだ。
しずく「これで8人…あと1人ですね。かすみさん」
優しく語りかけるしずく。それに勇気づけられたように、かすみは椅子から立ち上がる。
かすみ「部の申請は5人以上…でも運動部は試合が出来る人数を集めた上での申請が原則」
かすみ「つまり…9人が申請への最低人数です」
かすみの手が少女へと向けられた。
かすみ「やっぱり無しはなしですからね!これからよろしくお願いします!天王寺さん!」
璃奈「こちらこそ…よろしくお願いします」
小さな声と握手で応える璃奈。
だがその手に確かな力強さがあった。
一時はどうなるかと思ったが、とりあえず安心してミーティングを始めることができるようだ。
しかし、まだ気になる点は残っていた。
璃奈は元王帝月ノ宮サッカー部…フィフスセクターのお膝元といっても過言では無い。
そんなチームからの転入…裏切りも同然だ。耳に入っていてもおかしくはないが、
「歩夢先輩聞いてますか…!」
───ここでかすみからのお叱りの声。
考え事もほどほどにミーティングに耳を傾ける。
フィフスセクターにバレてもそれが早いか遅いかの問題だ。すぐに部を立ち上げ、試合で成績を残せば、強制廃部は防ぐことが……
「誰も……入部してくれなかった」
電車に揺られながらあからさまに落ち込む歩夢がいた。
結局、部を再結成しなければ練習もできないので、まずは部員を9人にすることから始めたサッカー部員(仮)たち。
しかし、フィフスセクターに睨まれていることを知っているのか、誰も誘いに応えようとしなかった。
それどころか"これ以上はよせ"と警告まで入れられる始末…
「学校でも練習は出来ないし…当分は"あの公園"のお世話になりそうかな」
歩夢は登下校とは別の電車に乗っていた。
昔から、試合に負けた日や1人になりたい日は必ずこの電車に乗る。
目指す場所は都心の少し外にある公園。
特訓で自分を追い込むには最高の設備、広さを兼ね備えている公園。
音ノ木坂学院に入学してからは、部の練習がハードスケジュールだったため、ほとんど来れる日は無かった。
良くも悪くも、数ヶ月ぶりの電車だった。
電車を降りたら目の前が公園。
授業を終えた小学生たちの笑い声が、暖かな風に乗りながら聞こえてくる。
私にもあんな時期があった。
あの頃は侑と一緒にあの子供たちのように、公園の草の上を無限の体力で駆け回っていた。
高校生にもなると、あの頃の無限の体力の異常さを改めて感じる日々だ。
学校でも15分の休み時間があれば体育帽子を持って校庭へ飛び出し、ドッヂボールやごちゃごちゃのサッカーをひたすらに遊ぶ。
授業開始のチャイムと同時に校舎へ全力ダッシュ。ボール片づけ係は遅刻確定。先生に怒られない言い訳を考えながら、誰もいなくなった玄関で上履きに履き替える。
よく聞く話。小学生の頃が一番楽しかった。
クラスメイトたちは大人ぶりながら、自分たちの小学生時代の青春を語る。
だが、歩夢は"今も"とても楽しかった。
サッカーが全力でできる間はいつでも最高だ。そのため、自分を追い込む辛い特訓、園田鬼監督の自衛隊顔負け練習も、小学生に負けじと全力で走った。
そんな楽しい日々を続けるためにも…私は戦うんだ。
小学生たちの笑い声が遠のく中、歩夢は何度目か分からない決意表明を心の中で行った。
歩夢の特訓場は公園の奥、木々が生い茂る林の近く。
静かな場所で集中するのもあるが、一番は木々を相手に想定した"シュミレーション"。
「─────ふっ!!」バッ
持ってきたボールを林の中に蹴りだし、続いて歩夢も勢いよく飛び込んだ。
不安定な足場、躱しても躱しても現れる木。
周りにあるもの全てが試合に活きる。
昔────日本代表選手のインタビュー雑誌を読んだ時、これと同じ特訓で実力を高めた選手がいた。
歩夢は馬鹿正直に真似た。
もっと効率のいい方法があるかもしれない。
だが、それでもやめようとはしなかった。
無限の体力を持つ小学生たちを夢見続けているのか?違う、あの頃から走り続けているのだ。
無限では無くなっても、走ることはやめない。
集中─────できている。
意識は100%ドリブルへ向けられている。
無駄な思考は消え、ただ走ることだけを―――
───えっ、」バッ!
バチィィン!!
頭のすぐ横で何かが弾む…いや、ぶつかる音がした。
無の世界にノイズが入る。
徐々に聞こえてくるのは草木が擦れる音、枝が落ちる音。
耳が敏感に反応する、集中が切れた証拠だ。
そしてやっと気づく。
ぶつかった"何か"は、ボールだった。
「す、すいません…!!大丈夫ですか!?」
林の奥から人がでてきた。
自分と同い年ぐらいの少女だった。
焦った顔で私の安否を確認している…なるほど、私の顔にボールがぶつかったと思っているらしい。
「大丈夫です…避けましたから」
「へ…避けた?」
「はい、ギリギリでしたけど」
集中し、意識を完全にドリブルに向けていたとはいえ、何となく視界の外から何かが飛んできていることは感じ取っていた。
反射に助けられる形ではあったが…反射神経を鍛えるこの特訓がどうやら役に立ったらしい。
「あの至近距離であのスピードのボールを…避ける…そんなことが…」
「…?何か言いましたか?」
「い、いえ…!私の不注意で…以後気をつけます!」
礼儀正しく謝罪する少女、聞くと私と同じくここで特訓していたらしい。
私以外にもここでサッカーする人がいたのか…
変わり者と思った瞬間、特大ブーメランが私の身体を貫いた気がした。
「あはは…昔読んだ雑誌で、日本代表の方がこんな感じの特訓をしたいたらしくて…」
「え、それって10年前のあの雑誌…」
「!!!まさか、あなたも読んだことが!?」
これは運命か、あの雑誌を読み、同じ場所で、馬鹿正直に特訓する仲間がいた。
ここ数年の中で一番の衝撃だった。
こんな特訓をするのは…自分だけかと。
そこからの流れは早かった。
公園のベンチに座り、同士とサッカーについて語り合う。
彼女の語りは連射弾のように怒涛だったが、存分に楽しむことができた。
久しぶりにこんなにサッカーを語った気がする。
気づけば、公園は恐ろしいほどまでに静か、それもそのはず、子供たちもすっかりいなくなっている時間だった。
「ふぅ…とても楽しかったです!次会う時はひと勝負どうですか!?」
「私なんかで良かったら」
「そんな謙遜しないでください!上原歩夢さん」
「…!」
私は名乗っていない。
ほんの少し、2人の間に緊張が走る。
「音ノ木坂学院サッカー部の上原歩夢さん…結構有名ですからね。2年生にして東京都屈指のチームのレギュラーメンバー…」
「私なんてそんな…」
「私には目標があります!」
勢いよくベンチから立ち上がる少女。
その声が寂しくなった公園に響き渡る。
「歩夢さんは"五冠"をご存知ですよね?」
五冠…規格外の実力・才能・成績を持つ5人のサッカープレイヤーだ。
今の日本のサッカー大会の決勝では、その5人の誰かが所属するチームが絶対に進出する。
私も…"2人"はよく知っている。
「静真高校"絶対皇帝"
「音ノ木坂学院"神の心臓"
―――――"輝きの天才"高咲侑」
高咲侑。私の親友。
今は海外でサッカーをしている。
それでもなお、彼女は日本の五冠として揺るがない。
その圧倒的なサッカーを…私は何度も魅た。
「私はその5人、全員を超えるつもりです」
少女は言い切った。
私は少しの間、声を出すどころか、呼吸さえも忘れてしまっていた。
普通の人なら、冗談だと笑うだろう。
考えもしないだろう、夢のまた夢。
しかし、彼女の燃えるような目を見ていると……冗談で言っているようには感じない。
「今はまだでも…必ず。私は約束したんです」
「約束…?」
気になる言葉を追求する間もなく、少女は公園の出口へと走り出した。
突然のことすぎて、私は未だにベンチから立ち上がれていない。
「またサッカーしましょう!今度は勝負ですからねー!!」
少しして、少女の姿は完全に見えなくなった。
嵐が過ぎるとはこのことなのだろうか、静かすぎて、逆に落ち着かなくなってきた。
帰ろう。道中でジュースでも買いながら…
あ、名前聞き忘れた。
翌日、サッカー部(仮)のメンバーは生徒会室の扉の前にいた。
「かすみちゃん…やっぱりやめよ?」
「止めないでくださいエマ先輩…!!勧誘も成果無し、せつ菜先輩も見つからない、ならば特攻あるのみです!!」
理由はかすみが説明した通りである。
サッカー部は原則、9人集まらなければ採用されない…しかし、道はこれしかないのだ。
特攻し、華やかに散る。
革命を志した戦士の…決意の塊──────
「あ、いいですよ」
「………え?」
「「「………え?」」」
メンバー全員が固まる中、生徒会長が申請書にサインする。
まさかまさか、まさかまさかである。
「え…生徒会長…あなた、サッカー部を廃部にしましたよね?」
「はい。しました」
「なんで…流れるようにサインしているんですか?」
「なんでと言われましても…不備が無いので許可する以外に言えることはありません」
不備が無い??
自分たちが悩んでいたことと真逆のことを言い始めた生徒会長。
サッカー部は9人以上が原則、書類に書かれている名前は全部で8……いや、
「あれ…?せつ菜先輩の名前が……」
「9人いますね。では、今日の放課後から活動を許可しますので」
生徒会長の目はまるで──────
「頑張ってくださいね」
────炎のように燃えているようだった。
虹ヶ咲ではオリジナルキャラをガンガン出していきます。
そろそろ試合したい。