焔SIDE
南雲、雫とオルクス大迷宮を進み続けた先に見つけた扉。
サイクロプスの邪魔もあったが、無事突破し、扉の中に入った。
警戒しながら中に入り、そこで見たのは……
「誰か……そこにいるの……?」
何かの物体に埋まっている金髪の少女だった。
「女の子?何でこんなとこに女の子がいるの?」
雫が戸惑っている。
私だってそうだ。
何でこんなとこに女の子が?
「お願い……私を……」
困っているのか?
音や匂いからも別に悪意のようなものは感じないし。
それになんかこの少女から人とは違う匂いと音もする。
どうしたもんか?
「すみません間違えました」
「待ちなさい」
「待たんかい」
南雲が去ろうしたので雫と二人で彼を掴んだ。
「何とんずらしようとしているんだ!こんな状況で!」
「状況も何もこんなところに閉じ込められてる奴を信用できるかよ」
「でも、話を聞くぐらいは」
「見たところ封印されているようだが……そう見せかけた罠かもしれん」
「それは」
南雲の罠という言葉を聞いて雫が戸惑いを見せた。
まぁ、グランツ鉱石の例があるからな。
「おい南雲、話聞くぐらいしてやれよ。それにあの子から別に悪い匂いや音はしないし」
「姉貴、こんな奈落の底に封印されてるぐらいだかなり「だぁー!!もうぐだぐだうるさい!」っ!?」
私は南雲があまりにもぐだぐだと言うから怒鳴り、彼を睨んだ。
「いい加減にしろよな……男なら腹を括っていけ、度胸見せろやゴラ。行かねんなら私が行くよ」
私は金髪の少女の方へ行く。
「待て」
「南雲」
南雲が私の肩を掴んだ。
「行ってやるよ」
「ほう。やっとか」
南雲が先頭を歩き、私と雫はその後をついて行き、少女の元へ。
「なぁ、お前は何者だ?何でこんなとこに閉じ込められてる?」
南雲が少女に問いかける。
「裏切られた」
「裏切られた?」
裏切られた?
一体何があったんだこの少女に?
「何があった?」
「私、先祖返りの吸血鬼……すごい力を持ってる……だから国のために頑張った。でも……ある日……家臣の皆……お前はもう必要ないって……おじ様……これからは自分が王だって……私……それでもよかった……でも、私、すごい力があるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」
この少女、吸血鬼だったのか。道理で人とは違う匂いと音がするもんだ。
それに彼女が語った壮絶な過去と封印理由。
私は思わず手を強く握り締めた。
雫は手で口を覆っていた。
南雲は尚も少女に問いかけた。
「お前、どっかの国の王族だったのか?」
「……(コクコク)」
「殺せないってなんだ?」
「勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」
首を落とされても!?
まるで無惨と黒死牟みたいだ。
「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」
「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」
私達三人は「なるほどな」と納得した。
不死身の体に魔力を直接操れる。
この少女、下手したら無惨や上弦の鬼すら凌駕するんじゃねぇのか?
「……助けて……」
少女がポツリと懇願する。
私と雫は南雲を見た。
正直あの少女を助けられるのは彼だけだろう。
南雲が少女をジッと見た後、私と雫を見て、少女を閉じ込めて入る立方体に手を置いた。
「あっ」
少女がその意味に気がついたのか大きく目を見開く。南雲はそれを無視して錬成を始めた。
濃い紅色の魔力が放電するように迸る。
しかし、イメージ通り変形するはずの立方体は、まるで南雲の魔力に抵抗するように錬成を弾いた。
でも、全く効いてないわけじゃない。少しずつアイツの魔力が立方体を蝕んでいるみたいだ。
助力したいが、私は錬成は使えない。火属性魔法は使えるが、私の戦い方は炎の呼吸による剣技、魔法はもしもの時の保険で殆ど使わない。
「ぐっ、抵抗が強い!……だが、今の俺なら!」
南雲は更に魔力をつぎ込む。
私と雫はただそれを祈るように見た。
少女を封じる周りの石が徐々に震え出した。
「まだまだぁ!」
南雲は気合を入れながら魔力をつぎ込む。
だが、これだけやっても立方体は変形しない。南雲はヤケクソ気味に魔力を全放出しやがった。
私と雫は目を見開く。
直後、立方体に変化が出てきた。立方体がドロっと溶けていき、少しずつ少女の枷を解いていく。
それなりに膨らんだ胸部があらわになり、次いで腰、両腕、太ももと彼女を包んでいた立方体が流れ出す。そのまま、体の全てが解き放たれ、少女は地面にペタリと女の子座りで座り込んだ。
南雲も座り込んだ。魔力を使い過ぎたようだ。
「「南雲!」」
私と雫は南雲に駆け寄った。
かなり疲れているようだ。一体どれだけ魔力を使ったんだ?
「……ありがとう」
少女が礼を言ったので、そっちに目を向けた。
「……名前、なに?」
「焔。東堂焔だ」
「雫。八重樫雫よ」
「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」
「……名前、付けて」
「は?付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」
「もう、前の名前はいらない。名前つけて」
名前つけてって言われても。
取り敢えず、参考に鬼滅の女鬼を思い浮かぶ。
朱砂丸
母蜘蛛、姉蜘蛛
下弦の肆・零余子
上弦の陸・堕姫、鬼になる前の名前だった梅
鳴女
珠世様
思い浮かんだけど、いい名前が思いつかね。
「“ユエ„なんてどうだ?ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが……」
南雲が言い出した。
ユエか
「ユエ?……ユエ……ユエ……」
「ああ、ユエっていうのはな、俺達の故郷で“月„を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い目が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」
なるほどそういう意味でか。悪くないかも。
「……んっ。今日からユエ。ありがとう」
というわけで、少女の名前はユエに決定した。
「よろしくな、ユエ」
「よろしくね、ユエちゃん」
「ん。よろしく、ホムラ、シズク、ハジメ」
「おう、取り敢えずだ……」
「?」
南雲はそう言うと着ていた外套を脱ぎ、ユエに渡す。
「これ着とけ。何時までも素っ裸じゃあなぁ」
あ、そういえばユエはずっと素っ裸だった。
「ハジメのエッチ」
それを聞いて私と雫はジト目で見た。
ハジメはユエが外套を着ている間、神水を飲んで回復する。
「っ!?」
私は真上からなにかヤバい匂いと音を感じた。
私は咄嗟に雫を掴んだ。
「焔?」
雫はどうしたのかという目で見てきたが、そんなの気にせず全力で走った。
見ると南雲もユエを掴んでいた。あいつも何か感じたのか。
ズドン!!
真上から何かが降ってきて、地響きが立った。
振り返って降って来たものを見た。
そこには巨大な蠍がいた。
「「よっ」」
炭治郎、善逸登場。
「オルクスにあんな女の子が封じ込められていたなんて。それも長い事こんな所に」
「いや〜ユエちゃんか。可愛いな。禰 豆子ちゃんも可愛いけど、あの子もなかなか」
「善逸」
「ここでコソコソ噂話。東堂さんはよく色々な人から因縁をつけられるが、本人は向こうから勝手につけてきたと殆ど無視している。不良になったのもそれが原因だとか」
「それにしても蠍の化け物が降ってきたけど、大丈夫かな?」
「ううん……大丈夫だよ。皆なら」
「「次回、奈落の蠍」」