「くっ!」
優花は道場の中を走り続けた。至る所に多くの人が括りつけられたこの異様なとこを。
『どこ?どこにいるの!』
「おい」
「っ!?がぁ!?」
その括りつけられている人の間から伊黒の太刀筋が優花を襲った。
「のろい」
「くっ!」
悔しさからか彼女は歯を噛み締める。
「あぁ!!もう!!」
夢での伊黒との鍛錬のせいか現実で優花はイライラしながら木刀を振っていた。
「うわぁ、優花めちゃくちゃ怒ってる」
「無理もないよ。その伊黒って男と毎日夢でしごかれているもんね。そりゃイライラするよ」
その様子を奈々と妙子は見ていた。
「でも、なんか最近優花の動きとか良くなってない?」
「そう?」
「うん、だって」
『蛇の呼吸 壱ノ型』
『委蛇斬り』
優花は木刀から刀に変え、蛇の呼吸を使い、的用に立てていた丸太を斬る。
「まるで蛇みたいな太刀筋で斬るし」
「確かに……それにあの夢見て以降、投術の訓練もしなくなったし」
奈々と妙子が様子を見てる中、誰かが来た。
「またか」
「天之河」
光輝だった。その光輝は優花の方へ向かう。
「園部さん」
「何?」
声をかけられた優花は光輝を見た途端嫌な目で見た。
「もういい加減剣の訓練は止めるんだ。君の天職は投術士なんだから」
「何度も言ってるけど、これは私の勝手よ。アンタに指図される覚えはないわ」
「これは君のために言ってるんだ!」
「私のためって……いつから私の親になったのよ!」
「何で分からないんだ!君のためなんだ!」
光輝は怒り、優花の肩を掴む。
「放っておいてよ!」
優花は光輝の手を振り払い、去ろうとする。
「待て!話しはまだ……っ!?」
あまりのしつこさに優花は光輝を睨み、彼の顔に刀の刃先を向けた。
「これ以上私に近寄ったら本当に斬るから」
そう言って納刀し、今度こそ去る。
その夜
「香織」
優花は未だに目覚めない香織のとこにいた。彼女は夜に彼女の様子を見に行くのが日課となっていた。
「早く目覚めてよ」
優花はそう言いながら彼女の手を握り、祈った。
その時、握り締めた香織の手がピクッと動いた。
「!?香織!聞こえる!?香織!」
必死に呼びかける優花。すると、閉じられた香織の目蓋がふるふると震え始めた。優花は更に呼びかけた。その声に反応してか香織の手がギュッと優花の手を握り返す。
そして、香織はゆっくりと目を覚ました。
「香織!」
優花はベッドに乗り出し、香織を抱きしめた。
「……優花ちゃん?」
「よかった……よかったよ!」
あまりの嬉しさに優花は泣き出してしまった。そんな彼女を香織も抱きしめた。
「その……ごめんね。つい」
「ううん、いいよ。気にしていないから」
数分後、優花は泣き止み、香織に謝罪した。
「それより体はどう?どこか悪いとこは?」
「う、うん。平気だよ。ちょっと怠いけど……寝てたからだろうし……」
「そうね、何日も眠っていたし」
「何日も?そんなに……どうして……私、確か迷宮に行って……それで……あ……………南雲君は?雫ちゃんは?焔ちゃんは?」
「っ……」
優花はそれを聞いた途端に暗い表情となった。
「……嘘だよ、ね。そうでしょ?優花ちゃん。私が気絶した後、三人とも助かったんだよね?ね、ね?そうでしょ?ここ、お城の部屋だよね?皆で帰ってきたんだよね。三人とも……訓練かな?訓練所にいるよね?うん……私、ちょっと行ってくるね。お礼言わなきゃ……だから、放して?優花ちゃん」
現実逃避するように次から次へと言葉を零し三人を探しに行こうとする香織。そんな香織の腕を、優花は掴んで放そうとしない。
「……香織」
「やめて」
「香織」
「やめてよ……」
「香織」
「いや、やめてよ……やめてったら!」
「香織」
「放して!放してよぉ!……っ!?」
香織は叫びながら優花の顔を見て目を見開いた。彼女は涙を流し、泣いていた。
「優花ちゃん」
「そんな」
香織はショックを受けていた。
あの後、優花から自分が眠っている間に起こった事を全て聞いた。
「私もあの時、証言したんだけど、見間違いとかで結局駄目だった」
実は優花はあの大迷宮で起きた事を証言した。あの火球は檜山がやったのだと。しかし、光輝は彼がそんな事するはずないや彼女の見間違いとかで彼女の証言は聞き入れられなかった。
結果、あれはハジメと焔が自分で何かしてドジったせいだと思うようにしているようだ。
「優花ちゃん、私、信じないよ。雫ちゃんと南雲君と焔ちゃんは生きてる。死んだなんて信じない。焔ちゃんが裏切り者なのも信じない」
「香織」
「分かってる。あそこから落ちて生きていると思う方がおかしいって。……でもね、確認したわけじゃない。可能性は一パーセントより低いけど、確認していないならゼロじゃない。……私信じたいの」
「香織……あんた凄いね。あんな事があったのに」
「悲しいよ。でもね、ある剣士さんがね」
「己の弱さや不甲斐なさにどれだけ打ちのめされようと、心を燃やせ。歯を喰いしばって前を向け、君が足を止めて蹲っても時間の流れは止まってくれない。共に寄り添って悲しんでくれない。俺がここで死ぬことは気にするな。柱ならば後輩の盾となるのは当然だ。柱ならば誰であっても同じことをする。若い芽は摘ませない」
「竈門少年、猪頭少年、黄色い少年、もっともっと成長しろ。そして、今度は君たちが鬼殺隊を支える柱となるのだ。俺は信じる。君たちを信じる」
「って、その剣士さんは死ぬ直前に後輩に」
香織は鬼滅の刃の煉獄杏寿郎の言葉を思い出す。
「へぇ〜」
「だから、私、もっと強くなるよ。それで、あんな状況でも今度は守れるくらい強くなって、自分の目で確かめる。三人の事。……優花ちゃん」
「何?」
「力を貸してください」
優花はじっと自分を見つめる香織に目を合わせ見つめ返した。香織の目には狂気や現実逃避の色は見えない。ただ純粋に己が納得するまで諦めないという意思が宿っている。
「もちろん。付き合ってやるわ、私も頑張るから!」
「優花ちゃん!」
香織は優花に抱きつく。何度もありがとうって言いながら。
「あれ?」
「どうしたの?」
「優花ちゃん、私が眠ってる間に体つき良くなってない?」
「……あぁ、それは……」
香織は優花の体つきが良くなっている事に気づく。
優花はその訳を話す。
「そうなんだ。優花ちゃん頑張ってるんだね」
「うん。ネチネチうるさいのがムカつくけど」
「ふふ……『あれ?伊黒?なんかどこかで知ったような……なんだったけ?』」
香織は優花の話に出てきた伊黒という人物に思い当たるような節を見せる。しかし、分からなかった。
「さて、私そろそろ」
「うん、頑張ってね。優花ちゃん」
優花は香織の部屋を後にしようとする。
その時、部屋の扉が開けられる。
「香織!目覚めたのか!」
「香織!」
光輝と龍太郎だ。香織の様子を見に来たのだろう。優花は入って来た二人を見て睨む。
「香織、良かった」
光輝は香織に近づこうとする。しかし……
「出て行って!!」
「えっ?」
「出て行って!何が死んだのが南雲君と焔ちゃんよ!焔ちゃんが裏切り者?何でそんな酷い事を言えるの!」
「香織?どうしたんだ急に?目が覚めて混乱しているのか?大丈夫か?」
光輝は香織に触ろうとするが……
パァン!
「触らないで」
香織に手を払われてしまった。香織はベッドから出ると優花の手を掴む。
「えっ?」
掴まれた優花は驚くが、そのまま香織に引っ張られ、部屋を出た。龍太郎は呆然と出て行くのを見たが、光輝は香織がいたとこで固まっていた。
「香織」
「優花ちゃん、一緒にいていい?」
優花は香織を見た。今の彼女を一人にするのは良くないと感じた。優花は香織を自分の部屋に連れ、そのまま二人でで寝た。
「またダメだった」
翌日、優花は落ち込んでいた。どうやらまた伊黒に攻撃出来なかったようだ。
「どうすれば」
「優花ちゃん!」
「香織?」
香織が部屋に入って来た。手に本らしき物を持って。
「ねぇ優花ちゃん。優花ちゃんの言ってた伊黒さんってこの人だよね?」
優花は香織が持っている本を見る。
「……えっ?」
優花は信じられないような目で見た。その本の表紙に描かれていたのは……
「……伊黒……さん?」
「「よっ」」
炭治郎、善逸登場!
「うぅ〜香織ちゃんが目覚めた!良かったよ!」
香織が目覚めた事に泣く善逸。
「善逸、泣き過ぎだよ。でも、本当に目覚めて良かった。それにあんな決意するなんて感心するよ」
「うぅ〜それにしてもあの光輝って男、何香織ちゃんを悲しませるんだ。……許さん!あいつちょっと殺してくるわ!」
「止めるんだ善逸!」
善逸を止める炭治郎。
「ここでコソコソ噂話。東堂さんが持って来た俺達の漫画は何冊かって言ってたけど、全巻あるみたいですよ」
「「次回、殻を破る投術士!」」