炎の呼吸は世界最強   作:ギラサメ

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遅くなって申し訳ありません。

仕事もそうですし、二つの作品の並行に苦労しました。



第三十章 フェアベルゲン

NO SIDE

 

 ハジメ達は次の大迷宮を目指すため、ハウリア族と共に樹海に向かう。帝国兵との戦闘もあったが、無事に樹海に到着した。

 

「お前達……何故人間といる!種族と族名を名乗れ!」

 

 樹海で彼らは虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人と遭遇した。焔、雫、直葉、董香はいつでも戦闘出来るように日輪刀の柄に手をかける。

 

「あ、あの私達は……」

 

 カムがなんとか誤魔化そうと額に冷や汗をを流しながら弁明を試みるが、その前に虎の亜人の視線がシアを捉え、その眼が大きく見開かれる。

 

「白い髪の兎人族……だと?……貴様等、報告にあったハウリア族か。亜人族の面汚し共めっ。長年、同胞を騙し続け、忌み子を匿うだけでなく、今度は人間族を招き入れるとはっ。反逆罪だ!もはや弁明など聞く必要もない!全員、この場で処刑する!総員かかっーー」

 

 それを聞いた焔、雫、直葉、董香が日輪刀を抜こうとする。

 

 しかし

 

 ドパンッ!!

 

 虎の亜人が問答無用で攻撃命令を下そうとした瞬間、ハジメの腕が跳ね上がり、銃声と共に一条の閃光が彼の頬を掠めて背後の樹を抉り飛ばし樹海の奥へと消えていった。

 理解不能な攻撃に凍りつく虎の亜人の頬に擦過傷が出来る。聞いたこともない炸裂音と反応を許さない超速の攻撃に誰もが硬直している。

 そこに、気負った様子もないのに途轍もない圧力を伴ったハジメの声が響いた。“威圧„という魔力を直接放出することで相手に物理的な圧力を加える固有魔法である。

 

「今の攻撃は、刹那の間に数十単位で連射出来る。周囲を囲んでいるヤツらも全て把握している。お前等がいる場所は、既に俺のキルゾーンだ」

 

「な、なっ。詠唱がっ」

 

 詠唱もなく、見たこともない強烈な攻撃を連発出来る上、味方の場所も把握していると告げられ思わず吃る虎の亜人。それを証明するように、ハジメは自然な動作でシュラークを抜き、ピタリと、とある方向へ銃を向けた。その先は、奇しくも虎の亜人の腹心の部下がいる場所だった。霧の向こう側で動揺している気配がする。

 

「殺るというのなら容赦しない。約束が果たされるまで、こいつらの命は俺が保障しているからな。……ただの一人でも生き残れるなどと思うなよ」

 

 威圧感の他にハジメが殺意を放ち始める。あまりに濃厚なそれを真正面から叩きつけられている虎の亜人は冷や汗を大量に流しながら、下手をすれば恐慌に陥って意味もなく喚いてしまいそうな自分を必死に押さえ込んだ。

 直葉もハジメの殺意に少し恐怖する。そのせいか彼女は焔の隊服の裾を掴んでいた。董香も多少の冷や汗を流す。

 

『冗談だろ!こんな、こんなものが人間だというのか!まるっきり化け物じゃないか!』

 

 恐怖心に負けないように内心で盛大に喚く虎の亜人など知ったことかというように、ハジメがドンナー&シュラークを構えたまま言葉を続ける。

 

「だが、この場を引くというのなら追いもしない。敵でないなら殺す理由もないからな。さぁ、選べ。敵対して無意味に全滅するか、大人しく家に帰るか」

 

 虎の亜人は確信した。攻撃命令を下した瞬間、先程の閃光が一瞬で自分達を蹂躙することを。その場合、万に一つ生き残れる可能性はないということを。

 

「……その前に、一つ聞きたい」

 

 虎の亜人は掠れそうになる声に必死で力を込めてハジメに尋ねた。ハジメは視線で話を促した。

 

「……何が目的だ?」

 

「樹海の深部、大樹ウーア・アルトのもとへ行きたい」

 

「大樹のもとへ……だと?なんのために?」

 

「そこに、本当の大迷宮への入口があるかもしれないからだ。俺達は七大迷宮の攻略を目指して旅をしている。ハウリアは案内のために雇ったんだ」

 

「本当の大迷宮?何を言っている?七大迷宮とは、この樹海そのものだ。一度踏み込んだが最後、亜人以外には決して進むことも帰ることも叶わない天然の迷宮だ」

 

「いや、それはおかしい」

 

「何だと?」

 

「大迷宮というには、ここの魔物は弱すぎる」

 

「弱い?」

 

「そうだ。大迷宮の魔物ってのは。どいつもこいつも化け物揃いだ。少なくとも【オルクス大迷宮】の奈落はそうだった。それに……」

 

「何だ?」

 

「大迷宮というのは“解放者„達が残した試練なんだ。亜人族は簡単に深部へ行けるんだろ?それじゃあ、試練になってない。だから、樹海自体が大迷宮ってのはおかしいんだよ」

 

「……」

 

 ハジメの話を聞き終わり、虎の亜人は困惑を隠せなかった。ハジメの言っていることが分からないからだ。樹海の魔物を弱いと断じることも、【オルクス大迷宮】の奈落というのも、解放者とやらも、迷宮の試練とやらも……聞き覚えのないことばかりだ。

 だが、妙に確信に満ちていて言葉には力がある。本当に亜人やフェアベルゲンには興味がなく大樹自体が目的なら、部下の命を無意味に散らすより、さっさと目的を果たさせて立ち去ってもらう方がいい。

 虎の亜人は、そこまで瞬時に判断した。

 

「……お前が、国や同胞に危害を加えないというのなら、大樹のもとへ行くくらいは構わないと、私は判断する。部下の命を無意味に散らすわけにはいかないからな」

 

 その言葉に、周囲の亜人達が動揺する気配が広がった。

 

「だが、一警備隊隊長の私如きが独断で下していい判断ではない。本国に指示を仰ぐ。お前の話も、長老方なら知っている方がおられるかもしれない。お前に、本当に含むところがないというのなら、伝令を見逃し、私達とこの場で待機しろ」

 

 冷や汗を流しながら、それでも強い意志を瞳に宿して睨み付けてくる虎の亜人の言葉に、ハジメは少し考え込む。

 

「……いいだろう。さっきの言葉、曲解せずにちゃんと伝えろよ?」

 

「無論だ。ザム!聞こえていたな!長老方に余さず伝えろ!」

 

「了解!」

 

 虎の亜人の言葉と共に、気配が一つ遠ざかっていった。ハジメは、それを確認すると構えていた両銃を大腿部のホルスターに納めて“威圧„を解いた。

 空気が一気に弛緩する。

 

「「はぁ、はぁ」」

 

 直葉、董香の二人も息づかいする。

 

「大丈夫か?」

 

「はぁ、はぁ。何なのあの南雲って子?」

 

「まるで上弦の鬼……いや無惨か?思い出す」

 

 

 

 

 

 

 

 

「頭を垂れて蹲え。平伏せよ」

 

「貴様共のくだらぬ意志で物を言うな。私に聞かれた事にのみ答えよ」

 

「お前は私の言うことを否定するのか?」

 

「なぜお前の指図で血を与えねばならんのだ?甚だ図々しい身の程を弁えろ」

 

「黙れ何も違わない私は何も間違えない」

 

「全ての決定権は私に有り私の言うことは絶対である。お前に拒否する権利する権利はない。私が“正しい„と言った事が”正しい„のだ」

 

「お前は私に指図した。死に値する」

 

 

 

「て、あのシーンを」

 

 董香が思い出したのは、無惨が下弦の鬼の解体シーン所謂“パワハラ会議„である。

 

「あぁ、あれね」

 

「うん。あれ最初見た時は衝撃的だったよ」

 

「漫画で見たけど、あれは」

 

 焔、直葉、雫も無惨の下弦の鬼の解体を思い出す。

 

「漫画?雫ちゃん何で漫画持ってたの?」

 

「焔がこの世界に来る時、持ってきていたの。しかも全巻」

 

「あぁ、ほむちゃんの暇つぶしの」

 

「成る程ね。それでコミックは今どこに?」

 

「雫と白崎に貸したまま」

 

「白崎?」

 

「私の親友。香織も読んでて気に入っちゃったの」

 

「香織ちゃんか。会いたいな」

 

「雫の親友か。会ってみたいな」

 

「うん。会わせてあげるね」

 

「おい、お前らそろそろお喋りはやめろ。来るぞ」

 

 ハジメからの指示で四人は会話をやめる。

 霧の奥からは、数人の新たな亜人達が現れた。彼等の中央にいる初老の男が特に目を引く。流れる美しい金髪に深い知性を備える碧眼、その身は細く、吹けば飛んでいきそうな軽さを感じさせる。威厳に満ちた容貌は、幾分シワが刻まれているものの、逆にそれがアクセントとなって美しさを引き上げていた。なにより特徴的なのが、その尖った長耳だ。彼は、森林族、エルフなのだろう。

 

「ふむ、お前さんが問題の人間族かね?名はなんという?」

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。あんたは?」

 

 ハジメの言葉遣いに、周囲の亜人が「長老になんて態度を!」と憤りを見せる。それを片手で制すると、森林族の男性も名乗り返した。

 

「私は、アルフレリック・ハイピスト。フェアベルゲンの長老の座を一つ預からせてもらっている。さて、お前さんの要求は聞いているのだが……その前に聞かせてもらいたい。“解放者„という言葉、どこで知った?」

 

「うん?オルクス大迷宮の奈落の底、解放者オスカー・オルクスの隠れ家だが」

 

「ふむ、奈落の底か。聞いたことがないがな……証明できるか?」

 

「それなら私が証明しようか?」

 

「君は?」

 

「東堂焔だ。私、コイツと一緒にオルクス大迷宮にいた。この目で見たんだ。雫も見ていたよ」

 

「はい。私も見ました。この目で」

 

 焔、雫が証明するため、証言する。しかし、アルフレリックは考え込むような顔をする。証言だけでは足りないのだろう。

 

「……ハジメ魔石とオスカーの遺品は?」

 

「ああ、成る程。そうだな、それなら……」

 

 ユエの提案を聞いたハジメはポンと手を叩き、“宝物庫„から地上の魔物では有り得ない程の質を誇る魔石をいくつか取り出し、アルフレリックに渡す。

 

「こ、これは……こんな純度の魔石、見たことがないぞ……」

 

 虎の亜人が驚愕の面持ちで思わず声を上げ、アルフレリックも眉をピクリと動かして内心の驚愕を漏らしていた。

 

「後は、これ。一応、オスカー・オルクスが着けていた指輪なんだが……」

 

 そう言って、ハジメが見せたのはオルクスの指輪だ。アルフレリックは、その指輪に刻まれた紋章を見て、今度こそ内心の驚愕を隠しきれずに目を見開いた。そして気持ちを落ち着かせるように、ゆっくり息を吐く。

 

「成る程……確かに、お前さんはオスカー・オルクスの隠れ家に辿り着いたようだ。他にも色々気になるところはあるが……よかろう。取り敢えずフェアベルゲンに来るがいい。私の名で滞在を許そう。ああ、もちろんハウリアも一緒にな」

 

 アルフレリックの言葉に、周囲の亜人族達だけでなく、カム達ハウリア族も驚愕の表情を浮かべた。虎の亜人を筆頭に、猛烈に抗議の声が上がる。

 

「彼等は、客人として扱わねばならん。その資格を持っているのでな。それが、長老の座についた者にのみ伝えられる掟の一つなのだ」

 

 アルフレリックが厳しい表情で周囲の亜人を宥める。しかし、今度はハジメの方が抗議の声を上げた。

 

「待て。何勝手に俺の予定を決めてるんだ?俺は大樹に用があるのであって、フェアベルゲンに興味はない。問題ないなら、このまま大樹に向かわせてもらう」

 

「いや、お前さん。それは無理だ」

 

「なんだと?」

 

「大樹の周囲は特にキリが濃くてな、亜人族でも方角を失う。一定周期で霧が弱まるから、大樹のもとへ行くにはそのときでなければならん。次に行けるようになるのは十日後だ。……亜人族なら誰でも知っているはずだが……」

 

 アルフレリックは、「今すぐ行ってどうする気だ?」とハジメを見たあと、案内役のカムを見た。ハジメ、焔、雫、直葉、董香もアルフレリックと同じようにカムを見た。

 

「あっ」

 

 まさに、今思い出したという表情をしていた。ハジメの額に青筋が浮かぶ。

 

「カム?」

 

「あっ、いや、そのなんと言いますか……ほら、色々ありましたから、つい忘れていたと言いますか……私も小さい時に行ったことがあるだけで、周囲のことは意識してなかった言いますか……」

 

 しどろもどろになって必死に言い訳するカムだったが、ハジメとユエのジト目に耐えられなくなったのか逆ギレし出した。

 

「ええい、シア、それにお前達も!何故、途中で教えてくれなかったのだ!お前達も周囲のことは知っているだろ!」

 

「なっ、父様、逆ギレですかっ!私は、父様が自身たっぷりに請け負うから、てっきりちょうど周期だったのかと思って……つまり、父様が悪いですぅ!」

 

「そうですよ、僕達も、あれ?おかしいな?とは思ったけど、族長があまりに自信たっぷりだったから、僕達の勘違いかなって……」

 

「族長、なんだかやたらと張り切ってたから……」

 

 逆ギレするカムに、シアが更に逆ギレし、他の兎人族達も目を逸らしながら、さり気なく責任を擦り付ける。

 

「お前ら」

 

 そこに董香が兎人族のとこに行く。彼女は怒りからか拳が震えていた。

 

「トウカ殿、罰するなら私だけでなく一族皆にお願いします!そう!連帯責任だ!連帯責任!」

 

「あっ、汚い!父様汚いですよぉ!一人でお仕置きされるのが怖いからって、道連れなんてぇ!」

 

 

 

 

 

「やかましいお前ら!!この残念地味ウサギが!!」

 

 

 

 

 ドゴンッ!!

 

 

 

 

「うぅ〜酷いですよぉ〜トウカさん」

 

「あぁ?文句あるか?残念地味ウサギ!」

 

 シアの頭には立派なタンコブが出来ていた。彼女だけでなくカムたち他の兎人族にも出来ていた。

 

「姉貴、お前の知り合いって」

 

「あぁ、董香は怒ると怖ぇからな」

 

「うん。董香ちゃんって怒り出すとあんな感じに」

 

「あんな感じって」

 

「あれは凄かった」

 

 董香の事を話しながら移動する面々、しばらくすると美しい街並みが見えてきた。

 直径数十メートル級の巨大な樹が乱立しており、その樹の中に住居があるようで、ランプの明かりが樹の幹に空いた窓と重しき場所から溢れている。見上げれば、人が優に数十人規模で渡り歩けるだろう極太の樹が絡み合い、空中回廊を形成している。樹の蔓と重り、滑車を利用したエレベーターのような物や樹と樹の間を縫うように設置された木製の巨大な空中水路まであるようだ。樹の高さはどれも二十階建てのビルくらいありそうである。

 

「綺麗」

 

「ん、綺麗」

 

「素敵」

 

「派手で良い」

 

「あぁ、小さい時に読んでいた本に出てきたようなとこだ」

 

 雫、ユエ、直葉、董香、焔が美しい街並みを見て称賛する。それを聞いてアルフレリックの表情が緩む。

 

「ふふ、どうやら我等の故郷、フェアベルゲンを気に入ってくれたようだな」

 




「「よっ!」」

 炭治郎、善逸登場。

「ここがフェアベルゲンか。綺麗なとこだな」

「そうだな。いや〜それにしてもシアさんもお綺麗で、しかもあんな大胆な格好までして。この世界の女って最高!」

「善逸。ここでコソコソ噂話。東堂さんはプロレス技や柔道技など様々な技を使える。それでひったくりなどを捕まえた事があるらしい」

「来たのはいいけどこれからどうなるんだろう?シアさん達とか」

「何もなければいいけど」

「「次回、ハウリアの処罰!」」




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