バディファイト・フューチャーヒーローズ正月記念短編~そうだ、手札の君神社に行こう~ 作:雪咲
ここ最近、投稿していなくてすみません。色々と忙しかったのと別のゲームにかまけていたりして、時間がかかってしまいました(なお、この短編にかかった時間は8時間くらいという……)。
あ、今回の短編に登場する“手札の君神社”の設定について、ほぼ私のでっち上げとなっておりますので、ご了承ください。
今回のお話としては、いつものメンバーで手札の君神社に初詣に行きます。ファイト描写はございません。
それでは、お楽しみいただければ幸いです。
『あけましておめでとう! 早速だけど、百花ちゃん、リンちゃん。初詣に行こう!』
今日は1月1日、お正月だ。大晦日のうちに解凍しておいたおせちを家族三人と一匹で食べ終えた後、自分の部屋のベッドに座りながら、SNSの百花ちゃんとリンちゃんのいるグループにメッセージを投げ込んだ。
『改めまして、明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。初詣に行くのはいいけれど、何処に行くか決めているの?』
『明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いしますね。結ちゃんには何か考えがあるのかな?』
しばらくして、二人からメッセージが返ってきた。百花ちゃんは0時になった瞬間に新年の挨拶のメッセージが来ていたけど、グループメッセージで改めて挨拶する所が百花ちゃんらしい。リンちゃんは普段はのほほんとしているけど、メッセージでは以外と普通……というか、結構丁寧なんだよね。
『少し遠い所だけど、手札の君神社に行こうと思ってるけど。どうかな?』
『手札の君神社というと、九柱の神を祀っているという、あの?』
行く場所について打ち込むと、百花ちゃんからすぐに返事が返って来た。流石、百花ちゃん。
手札の君神社は九体の神様を祀っていて、各地に分社が存在するかなり大きな神社だ。古くは平安時代の初期に現れた悪霊を倒す為、九柱の神が人の前に姿を現したのが発端らしい。特に悪霊と一対一で戦い、都を守り通した八柱目の神・猛神グランガデスは今でも根強い人気がある。
『そうだよ。私のお母さんがその神社の関係者……手札の君本子さんっていう人と大学時代からの知り合いで、私もその神社で生まれたんだ』
『手札の君本子さんって、有名なバディモンスターのコンサルティング会社の社長さんじゃない!? 結のお母様の人脈って、どうなっているのよ』
『本子さんでしたら、私もお父様の仕事に連れて行って貰った時に、何度かご挨拶したことがありますよ。優しく、そしてお父様との商談にも決して臆さない、強かな方でした』
手札の君本子さんの名前を出すと各々の返事が返ってきた。本子さん、お母さんに無理矢理色んなワールドに連れ出された挙句にハプニングに巻き込まれて、げっそりした顔で帰って来るような苦労人だとは言えなさそうな雰囲気だ。
『あ、リンちゃんは本子さんの事知ってるんだ。だったら話が早いね』
『でもいいのかしら? 私の家の本家は、その神の一柱と敵対した禍津日神を祀っているのだけど』
『問題無いんじゃないかな? 今は別に敵対している訳じゃないよね。それに、本子さんから「お友達と一緒に」って本殿の観覧チケットを貰ってるんだ』
『!?』
歴史とか好きな百花ちゃんなら、絶対に反応すると思っていた。本殿の観覧チケットは入手が困難で、一部のマニアからは喉から手が出る程欲しい物だってお母さんが言っていた。
『結ちゃん、是非一緒に行かせてちょうだい。本殿を見る事のできるまたとない機会だわ!』
『日辻さんからお父様の許可をいただいたので、私も行けますよ』
『決まりだね。えっと、リンちゃんは多分直接行くよね。私と百花ちゃんは電車で行くから、3時間後に現地で待ち合わせ』
『分かったわ』
『了解です』
二人の了解も取れた事だし折角だから着物を着ないととベッドから立ち上がる。部屋の中をふわふわと飛んでいたハルが私の頭の上に降りて来た。
「ユイ、楽しそうだね」
「そうかな? そうだといいな」
「でも、ユイってあまり着物を着たことがないよね。お母さんの手を借りないといけないじゃないの?」
「う……」
私と母の関係は良くも無ければ悪くも無い。私がお母さんに一方的に苦手意識を抱いていることもあるんだけど、ほとんど家に居ないお母さんとはお父さんよりも付き合いがない。
「仕方ないなぁ。ボクがユイとトウコが話せるように手伝ってあげるよ。さあ、行こう。あまり時間はないんでしょ?」
「ハル、ありがとう。行こっか」
そうして私は、ハルを頭に乗せたまま自分の部屋を飛び出したのだった。
*
「やっと到着したわ」
「電車、かなり混んでたね」
電車に揺られて一時間、私と百花ちゃんは手札の君神社の前までたどり着いた。百花ちゃんと二人で電車で移動している間、たくさんの人の視線が向けられていた。今日の百花ちゃんはとても気合が入っているみたいで、身に付けた寒色を中心にした色合いの着物が百花ちゃんの美しさを引き立たせ、より一層大和撫子然とした風貌になっていた。百花ちゃんは景色の中に溶け込みながらも、確かな存在感を放っている。人々の注目の的になるのも当然だ。
百花ちゃんと待ち合わせ場所で会った際に「どう? お手伝いさんと一生懸命選んだのよ」と感想を訊いて来たので、「百花ちゃん、凄くきれい」と褒めたら、百花ちゃんは満足気に小さく微笑んでいた。
「お待たせ~。明けまして~、おめでとう~」
「結さん、百花さん。あけましておめでとうございます。百花さんが身に付けている御召し物、とても良いものですね」
少し遅れてリンちゃんと幻想蒲公英さんがやって来た。リンちゃんは百花ちゃんと対照的に明るめの色を中心にした着物を着ている。隣の蒲公英さんは、今日はメイド服ではなくて、『風の祝子』の時の巫女服姿だった。蒲公英さんにとってはこれが正装なんだろう。
多分、今日の蒲公英さんは執事とメイド一同から、ボディーガード兼お目付け役兼保護者を一任されているはず、私達にとっても保護者がいると色々と楽なのでその配慮はとても嬉しい。
「そうでしょ。こういう物なら家に沢山あるもの。みんなと会う前にお兄様に見せたら、とても褒めてくれたわ」
そう言って、少し朱に染まった頬を隠すように百花ちゃんが照れる。普段は毅然としたイメージのある百花ちゃんだけど、ジュンさんといる時だけは年頃の女の子らしさを見せるんだよね。
「(リンお嬢様。結さんのあの表情、百花さんの好意に気が付いていない……というよりは好意自体は気が付いているものの、結さんは額縁通りに受け取り過ぎていませんか?)」
「(あの二人なら大丈夫だよ~、きっとね~)」
蒲公英さんが少し身をかがめて、リンちゃんと内緒話をしている。多分、私と百花ちゃんの事なんだろうけど……私、何か変なことしたかな?
「じゃあ、みんな集まったことだし。入ろっか」
「そうね」
「行きましょう~」
基本的にモンスターを外に出さないのがマナー(蒲公英さんの場合は、リンちゃんのボディガードとして付いてきているので例外)なので、ハルをカードにしまった状態の4人で境内を歩いていく。
百花ちゃんは自然と背筋が伸びていて、小さな所作にも神経が宿っているのを感じる。どうやら、とてもはしゃいでいるみたい。それに対して、リンちゃんはとてもリラックスした面持ちで歩いていて、蒲公英さんが少し心配そうに後ろについて歩いている。
三が日という事もあり、境内では幾つもの出店が開かれていた。
「あそこに手札焼きがあるわね。みんなで一緒に食べない?」
「いいよ! じゃあ私は……プリン味にしようかな。ハルの分も買っていこう」
「結は相変わらずチャレンジャーね。私は……無難につぶ餡にするわ」
「私はクリームにするね~。ほら、蒲公英も選んで~?」
「私、本日はリンちゃんのボディガードとして付いてきてるのだけど……」
「大丈夫、大丈夫~。みんなも偶には羽を伸ばして欲しいと思ってるよ~。蒲公英は学校とかじゃないと役割から離れないの、みんな心配してるんだよ~?」
「リンちゃんがそこまで言うなら、ボディガードとして一線は引くけど、それ以外はリンちゃんのバディとして行動させてもらいますね。私はこしあんを頂きます」
「あ、意外とおいしい。百花ちゃんも食べてみる?」
「…………。少し、いただくわ」
「あ、リンちゃん。顔にクリームがこぼれてる。ほら、こっち向いて」
「むぐむぐ……。蒲公英、ありがとう」
「どういたしまして」
和気藹々と歩いている内にあっという間に本殿の近くまでたどり着いてしまった。ここから先は案内してくれるそうなので、その人を探す。すると、巫女服を着た背の高い女性が私達の前に姿を現した。
「あけましておめでとうございます。ようこそ、手札の君神社へ。久しぶりね、結ちゃん。それに……あなたは確か帆風リンちゃんですね?」
「あけましておめでとうございます。本子さん、お久しぶりだね」
「明けましておめでとうございます~。ご無沙汰しております~、私の事~、覚えていてくれたんですね~」
「ええ、リンちゃんのお父さん手強……よい取引相手だったわ。それで、あなたは?」
「明けましておめでとうございます。千歳百花といいます。手札の君の家としても、本子さん本人としても噂はかねがねと聞いております」
「千歳ということは。何だ、みんな知り合いみたいなものじゃない。これも縁なのかしら。……トウコから色々聞いているわ。大変だったわね」
「そ、その節は誠に申し訳ございませんでした」
あ、珍しい。百花ちゃんがしおらしくなってる。この二人の間に何があったのだろう?
「いいのいいの。私の手札の君家としての知識が、あなたの力になってくれたようで何より。じゃあ、改めて自己紹介をするわね。……おいで」
「キュキューゥ!」
本子さんがそう言うと、子供が書いたおばけかもしくはお餅みたいな真っ白くて丸い物が彼女の懐から出てきた。白くて丸い物はかわいい声で鳴くと、本子さんになつくように周りをゆっくりと回っている。
私はこの白くて丸い物から、モンスターとは違う異質なものを感じていた。
「みんな知ってるとは思うけど、私は手札の君本子。それでこの子はアニマ。ともどもよろしくね」
「この子は……本子さんのバディなの?」
「半分は正解、便宜上は私のモンスターになっているの。ただ、この子はどのワールドにも属していないのよ」
「それって~、ジェネリックのモンスターってこと~?」
「それも半分正解。この子はジェネリックのモンスターとして登録しているわ。でも、この子は本来ジェネリックのモンスターでも、今判明している13のワールドのモンスターでもない。ずっとずっと遠くの世界から迷い込んできたのよ」
「近親界理論……」
「あら、百花ちゃんは詳しいのね。そう、この世界は私達が思っている以上に広い。バディファイトのモンスターがいる世界以外にももっと沢山の世界があるはずなの。手札の君が興ったあの時、都を襲った悪霊も多分そう。私はいつかこの子を元の世界に還してあげたいの」
「キュキューゥ?」
「よしよし。トウコ先輩はバディモンスターのいる世界にしかいく事ができないから地道に探していくつもりよ。……最近、トウコ先輩が「アニマを元の世界に還す事できる子が見つかったかもしれない?」と言っていたけれど、あれはどうなったのかしら? ……ああ、ごめんなさい。私一人で語ってしまったわね」
「キュキュー!」
恥ずかしそうに苦笑する本子さんと
「ところで本子さん、何で巫女服を着ているの?」
「ああ、これは……。親父から「帰ってきたのなら、家の仕事を手伝いなさい」って無理矢理……私は仕事で忙しいのに……」
「お母さんは?」
「トウコ先輩なら、さっきまで私を弄ってたんだけどね。ケルちゃんとジョーカーさんが現れて「フリーズ! 折角来たのに集まりに顔を出さないのは何事か!」とえり首掴んで連れて行ってしまったわ。……ええ、日頃私を拉致する罰が当たったのよ。いい気味だわ!」
「キュキュ!?」
アニマが本子さんのそばから離れ、彼女からどす黒いオーラが溢れるかの様に毒を吐いた。本子さん、苦労してるんだね。お母さん、許すまじ。
「本子さん……?」
「オ、オホホ……。何でもないわ、話が長くなってしまったわね。それじゃあ、本殿に行きましょうか」
「「「「はい!」」」」
私達は本子さんの案内で本殿の中に踏み入れるのだった。
*
本殿の中を歩いていくと、木の香りがして、床から木材同士がこすれるような音が響き渡る。何処か神聖な雰囲気を本殿はまとっていた。
本子さんは本殿を進みながら、手札の君神社について私達に教えてくれた。
「手札の君神社は通称、『角王神社』とも呼ばれているわ。八角神王でもあるグランガデスを祀っていることがその由来ね」
「角王を祀っている訳じゃないのですね?」
「そうですね。手札の君神社が祀っている九柱の神の内、グランガデスただ一柱が角王も兼任していました」
本子さんの説明に百花ちゃんやリンちゃんが質問していく。途中、蒲公英ちゃんがリンちゃんの近くに行って、何やら言葉を交わしていた。
「(あれ、リンちゃん。『あの頃』に戻ってる!? 大丈夫!? 体に問題は無い?)」
「(不思議と問題は無いですね。何故でしょう? この神社が祀っている九柱の神の力が、『アレ』を阻害しているからでしょうか……あまり長居してしまっては此処に迷惑をかけてしまいますね。それにしても……)」
「(……?)」
「(……いえ、ここで話すのは無粋でしょう。雰囲気壊してしまうのと、特に一番楽しんでいる百花ちゃんの為にも、この事は黙した方がいいですね。本子さんが気付いてない筈が無いですし、気付いていて“普段通り”なら何も問題無いはずです)」
「(リンちゃんの言っている事、よく分からないけど……。訊かない方がいいことは分かった)」
「リンちゃん、蒲公英さん?」
少し遅れ始めた二人に声をかけると、真剣そうに話していた二人がいつもの表情に戻る。
「ごめんなさい、今行きます」
「少し気になることがありましたので、蒲公英ちゃんと相談していたのです」
「そっか。二人とも、真面目な話をするのもいいけど、折角だから楽しもうよ」
「すみません、無粋でしたね。行きましょう、蒲公英」
リンちゃんが蒲公英ちゃんに手を差し出す。蒲公英ちゃんはそれを見て一瞬はっとした表情をしたけれど、すぐにとても柔らかな微笑みを浮かべてその手を取った。
その所作が何を意味するものなのか、私にはまったく分からないけれど。二人にとって、特に蒲公英ちゃんにとって、とても大切な意味のある事なのは十分に伝わってきた。
「はい、リンちゃん。どうか、私を連れて行ってください。――一緒に」
*
幾つかの部屋を見て回り、一番最後のとても大きな部屋に辿り着いた。
「ここが最後の部屋ね。ここにはある像があるわ。早速中に入ってみましょう。……他の部屋でもそうだけど、特にこの部屋ではお静かにね?」
「「「「はい」」」」
私達が広間の中に入ると、そこには巨大なグランガデスの像が祀られていた。その像は一本の大木から、荒々しく、しかし繊細に、筋繊維一本一本に至るまで掘り出されており、その像は確かな現実感を持って、その威厳を、オーラを発しながら、正に今にも動かんとするような様でそこに鎮座していた。
(同じものではありませんが、詳しくは→《神王降臨の儀》を見てみよう!)
私は確かに、その像に見とれていた。
「すごい……」
「素敵ね……」
百花ちゃんの方を見ると、一見おとなしく振る舞っているが、その瞳は爛々と輝いていて、その光景を決して見逃さない様目に焼き付けていた。
「圧倒されますね……。これが、人と神が力を合わせた一つの形。……ふふ」
「そうだね、リンちゃん」
リンちゃんと蒲公英ちゃんは何処か尊い物を見る様にグランガデスの像を眺めていた。……あの、二人とも、グランガデスの像を通して何か別の物を見てない?
一方、本子さんの方を見てみると、グランガデスを映すその目は、尊敬と憧れと、少しの嫉妬と後悔が浮かんでいるように見えた。
「これで、本殿の観覧はおしまい。どうだった?」
「凄かった。最初から最後まで圧倒されてばかりだったよ」
「とても素晴らしい物を見させて頂きました。このグランガデスの像は一際素晴らしい像でしたが、他の八柱の神の像もそれぞれ負けず劣らず神々しさが一本の木の中に表現されて……、感無量だわ」
「神様の力が息づく、とても素敵な場所なのです。この様な場所がずっと残っているのが素敵だと思いました」
三者三様の感想に本子さんはとても面を食らったらしい。
「ねぇ、結ちゃん。二人の感想が、とても小学生のものとは思えないのだけど。……流石、元お嬢様学校の絆ヶ丘学園。共学になった今でも教養に力を入れているのね」
「私だけ気の利いたことが言えなくてごめんね?」
「あ、いいえ! 別に結ちゃんのことを悪く言ったわけじゃないの。ただ、こんな感想を言ってくれるとは思わなくて……何だろうね、少し嬉しい」
そう言った本子さんの瞳に先程と同じ色合いが映っていて、私は、お母さんに聞いた話を思い出していた。
「うん。みんなを連れてきて良かった」
「私も、結ちゃんを誘って正解だったわ。……じゃあ、みんな。忘れ物はないかしら?」
「「「「大丈夫です」」」」
「じゃあ、本殿を出ましょうか」
*
本殿を出た後、すっかり参拝するのを忘れていたので4人で向かう事にした。
「百花ちゃんは、願い事は何にした?」
「私は、お兄様と、結とみんなと一緒に、また一念健やかに過ごせますようにって願ったわ」
「百花ちゃんらしいね。私は、誰もが自分らしくあれますように。かな?」
「結らしいわね。百花ちゃんと蒲公英さんは?」
「秘密~」
「私も秘密です」
「む、ちょっとズルいけど、話せないなら仕方ないね」
「無理に話す必要は無いわね。……さて、もう用は済んだことだし、帰るのかしら?」
「そうしようかな……うーん、ちょっと待って。一つだけ本子さんと話をしてもいい?」
視界の端で本子さんが掃き掃除をしていた。あの時、本子さんの瞳に映っていたものについて少し聞かなければいけないと思ったのだ。
「いいわよ。元々は結ちゃんが誘ってくれたものだしね。リンちゃんも蒲公英さんもいい?」
「うん~」
「リンちゃんがそういうなら」
「みんなありがとう! ちょっと行ってくるね! 本子さーーーーん!」
私が本子さんの所に駆け寄ると、彼女はびっくりした様子で私を見た。
「あら、結ちゃん。私に何か用かな? それとも本殿に忘れ物をしたとか?」
「ううん。あのね、一つだけ本子さんに訊きたいことがあったんだけど、いいかな?」
「私に答えられる事ならなんでも構わないわ」
「じゃあ、遠慮なく訊くね。――本子さんは、グランガデスとバディになれなかったこと。後悔してる?」
「――――――――」
その瞬間、本子さんが虚を突かれたように固まってしまった。少しした後、本子さんがゆっくりと再起動し、額を指で摘まみながら私に言葉を投げかける。
「――ふぅ。その話、トウコ先輩から訊いたの?」
「うん。昔ね、すっごく珍しくお母さんが帰ってきた時に、私相手に独り言をした際に聞いたよ。凄く心配しているとも言ってた」
あの日の事を簡単に伝えると、本子さんは泣き笑いの様な表情を浮かべた。
「……トウコ先輩は、何も見てない振りして本当に心配症なんだから。それに、トウコ先輩が酔ったのは私の所為だから自業自得ね。あの日、酔っているトウコ先輩が見たくて、グランガデス様に捧げる神酒と同じ酒造所の強い酒を注いだのは、紛れもなく私なんだから」
「それで、どうなの?」
「後悔は無い……と言ったら嘘になるわ。神王の試練に落ちた時、それに角王の証継承の儀で、荒神さんの所のケルちゃんが八角戦王になった時も、私は見てることしかできなかったわ。でも、後悔が無かったら、今の仕事に就くことも無かったし、この子と出会わず、人生の目標を見つけられなかったと思うわ。……そういう意味では、貴女のお母さんには感謝しているの。あ、トウコ先輩には秘密ね。散々振り回された分、私が死ぬまで心配し続ければいいわ」
意地悪そうな顔で本子さんは笑う。本子さんの瞳には後悔の色は無かった。……良かった、本子さんは最初からお母さんに救われてたんだ。
「本子さん、お母さんとちょっと似てるよね」
「ウソ!? ……いやいやいや、全然似てなくない?」
「そうかなぁ?」
「あー、すっきりしたわ。こんな話、トウコ先輩にも家族にも部下にも言えないしね。よし、結ちゃん。良かったら、この子の遊び相手になってよ」
「キュキュッ、キュキュキューゥ!」
「アニマと、本子さんとファイト? うん、やりたい! けど……」
ファイトするなら少し時間がかかってしまう。その前に、百花ちゃんとリンちゃんに相談しないと。私は辺りをうろうろと見回すと、私がやってきた方角から百花ちゃん達がやってきた。
「話は終わったかしら? ……その様子だと、結はファイトしたいのね?」
私の瞳を見て、百花ちゃんは仕方ないなぁといった様子でため息をついた。
「う……、百花ちゃんには全部お見通しだね」
「別にいいわよ。元々、予定したことが全部終わったから帰ろうとしただけだもの。折角だし、私もファイトしたいわ」
「私も~、ファイトしよう~」
「よーし、順番にファイトしましょう! アニマ、準備はいい?」
「キュキュ!」
こうして、私達の初詣は楽しく終わったのであった。
いかがでしたでしょうか。
今、一つコラボ短編を書き始めていますので、こちらも早めに完成させないと……と思っております。