要するに、これは夜中の妙なテンションの勢いで書いちまった部類のネタである。
話が浮かんじまったから仕方ない。
「ありゃ?理事長代行、どうかしました?」
その声で意識がはっきりする。
自分の名前はジェイムズ・ブッカー、それは間違いない。
FAFが地球に撤退した後の取材を続けていたジャーナリストのリン・ジャクスン氏と話し、ブーメランを投げながら彼女を見送ったところから記憶が曖昧だ。先ほどまで近所の農地にいたはずなのに、気が付いたら見知らぬ建物の執務室のような所にいるではないか。そして、眼鏡をかけた女性…いや、大人では無く学生程度の年齢だろうか?その人物がこちらに話しかけてきたが…理事長?どういう事だ?そう考えたところで別の記憶が流れ込む。
この体の主は「高松咬月」という人物で、この学院…百合ヶ丘女学院の理事長代行という名前からしてご立派な役職に就いているらしい。そして、この学院はヒュージとかいう化け物と戦う人材を育成し、それと戦う学院…訳が分からない。
これはジャムの仕業か?だとすれば、今更自分を狙ってくるなんておかしな話だ。通路は完全に破壊され、ジャムの姿は完全に消えたのに。我が友人、深井零とその愛機…雪風と共に。しかし、こんなおかしな事をやってのける存在の心当たりはそれしかない。
「あれ?この本さっきまでありましたっけ?ふむ、ジ・インベーダー…聞いたことない本ですねえ。興味深いので借りていってもいいですか?」
この眼鏡の少女はテンションがやたらと高い。名前は「真島百由」という、若くして研究と開発方面で活躍する秀才だそうだ。彼女の言葉で机の上に本とブーメランが置いてある事に気が付いた。それはジ・インベーダー…リン・ジャクスン氏が書いた、フェアリイ星で戦うFAFとジャムの話を数々の取材で纏めたベストセラー本である。
「あ、ああ…別に構わんよ」
勢いで押し切られて貸してしまった。
とにかく、色々と調べねば…まずはこの世界の事について。これがただの夢ならいいのだが、最悪の場合は何とかして元の世界に戻る術を探さなければなるまい。この体の記憶を探る限り、この世界は魔法と言う概念が存在するファンタジーのような摩訶不思議な世界のようなのだから。
「ねえ、最近の理事長代行…なんか変じゃない?」
ブッカーに起きた奇妙な事態から二週間程過ぎたある日、百合ヶ丘女学院生徒会の面々が雑談していると、その内の一人である出江史房はこう話を切り出した。
「そうか?」
「やたらと面倒見がよくなったというか…悪く言えば過保護になったというか。今まで生徒に任せていたのに、戦況確認の回数も急に増えたし。挙句の果てには出動するレギオンに『いかなる事態に陥っても必ず帰還せよ、これは命令だ』なんて指示出すし」
「あー…確かに。一部のリリィはその言葉に感動しちゃって士気が上がっているから悪くは無いのだけど…」
「なんか急にブーメランも作り始めていたような…健康の為とかなんとか言って」
「資料もやたら漁っているし」
他の面々も心当たりがあるのか次々と頷いて話し出す。そんな話で場が盛り上がっていると百由が部屋の中に入ってきた。彼女は本と書類の束を抱えている。
「やあやあ、皆さんお揃いで。おっと、もしや理事長代行の事かな?あ、それに関して面白いネタがあるけど聞いていく?」
室内の皆は頷いた。すると、百由は本を机の上に置く。
「これはこの前、理事長代行の机の上に突然現れた本、タイトルはジ・インベーダー。私の目の前で急にこの本が現れたのよ、面白いでしょう?でも、面白いのはその現象だけじゃないの。本の内容も面白いの。という事で、話の概要をこれに纏めたから読んでみて」
そして、百由は本の隣に資料を置いた。それを皆が読む。話としては地球外生命体と人類が戦う話である。生徒会メンバーの一人、秦祀は率直に感想を言う。
「これは…SFか何か?」
それに対して百由は言う。
「やっぱりそう思うよねえ。でも、私が思うにこの本のジャンルはノンフィクション。実際にあった話を書いたものなのよ」
場がざわつく。彼女は到底現実的ではない話が書かれた本がノンフィクション…つまり、実際にあった内容を纏めた本だと言ったのだ、無理もない。
「何故だ!…みんなやっぱりそう思ったでしょう?まあ、理由は色々あるわ。まず、この本のタイトルと著者を調べてみたけど該当なし、この本が世に流通していたという痕跡が何一つ見つからないの。次に本の内容について、これがSFなら作中の制度や歴史の流れについての説明がやたら薄い。これは読者がその程度の情報を知っていることが前提の書き方ね。そうじゃないと読者はちんぷんかんぷん、私も最初に読んだ時は頭に『?』マークがいくつも並んだわ。ああ、これが何かのシリーズ作品というのなら話は別よ。でも、さっき言ったように著者も追えないからそれは無さそう。あと、この作中に出てくるジャムという存在、とっても興味深いけどこの本だけだと正体はさっぱりね」
それを聞いた面々は首を傾げながら考える。この百由の話にはどこか説得力があったからだ。更に百由が語ろうとしたところで、一人の生徒が駆け込んできて叫んだ。
「大変です、学院の近くに所属不明の戦闘機が二機も不時着しました!現在、付近でちょうど任務を終えた一柳隊が救援に向かっています!!」
「あらら、それは大変。ちょっと見てくる」
そう言うと、百由はそそくさと飛び出していった。
このブッカー少佐はOVA版。
中編に続く。
続きはその内に
ほら、向こうも書かないといけないし…