A.原作で既にチキンブロスったり、ジャムったりしているので無理
「こちらB-3、予定空域に到達。これよりテスト飛行を実施する」
「了解、B-3。打合せ通りに定時連絡を求む」
「B-3、了解」
B-3…雪風は高度4000m付近まで上昇、これでも普段の任務で飛ぶ高度よりずっと低い。そして、機の後方にはB-13…無人機であるレイフが1km程の間隔を保ったままぴったりついてくる。これで用意は整った。偵察ミッションの目標であるヒュージネストは目と鼻の先、巨大な雲の柱がそびえ立っている。各種センサ類を起動、レーダー、各種カメラ等光学系…雪風に積み込まれたそれらを全て使用して、帰還への手がかりを探すのだ。
「センサ類は全て雪風自身が操作する。お前は絶対にメインディスプレイや操作パネルには触れるな」
「了解。と言っても、それだと暇だなあ」
深井中尉からの忠告に百由はどこか不満げな返事を返す。そして、百由はメインディスプレイに目を向ける。すると、レーダーの表示が目についた。その画面上には数多くのシンボルが表示されている。その多数のシンボルには民間機と表示が付いている。航路を飛ぶ旅客機や貨物機だろうか。しかし、その列から離れた空域にただ一機だけ別のシンボルが表示されている。
「この一機だけ離れたところを飛んでいるわね…なんだろう」
百由がそう呟くと、深井中尉が答える。
「こちらを監視しているらしい。おそらく早期警戒機の類だろう」
「そんな離れたところから…しかし、監視の意味はあるの?」
「データ収集、後はこちらの動きを見張っているに違いない。何かあれば四方八方からSAM…対空ミサイルを撃ち込んでくるつもりなのだろう。そこらに艦艇や地対空レーダーがいくつか点在しているからな」
それに、と深井中尉は呟く。すると、メインモニタに画像が出てきた。
「監視しているのはあの機だけじゃない。陸地にはいくつかの集団が点在、光学系の機器でこちらを観測しているようだ」
メインディスプレイには草木に隠れるような姿勢を取る一団が複数映し出されていた。草木を模した偽装網を被り、光学系のセンサを上空に突き出している。
「どうやってこんなのを見つけたの?」
「雪風が見つけた。見た目だけではなく、赤外線対策までして隠れてはいたが…それでも雪風の目を誤魔化す事は出来ない」
深井中尉は続けて画面の表示を切り替える。
「他にも妙なものを捉えている、この流れ続けているスポットジャミング…いや、妨害電波。これが話に出ていたエリアディフェンスとやらなんだろうな」
「この発信源は都内?」
「その他多数の場所からも出ている。しかし、ESM…まあ、電波を探知する機器と考えればいい。それが捉えたデータを見る限り、新宿辺りに特に強い電波発信源があると考えられる」
「これは主要なもの以外も全て捉えているの?」
「ああ」
妨害電波の発信源がマップ上にシンボルとして表示される。都内だけでなく、その周囲にも多数のシンボルが並ぶ。当然、百合ヶ丘の周囲にもそれがあった。この広域にまき散らされた妨害電波でヒュージの奇襲を防いでいるのである。
「なるほど、これが全てエリアディフェンスか…」
「だが、こんな余計なものはどうでもいい。これから本命を調べる」
「了解」
雪風のセンサは目の前にそびえるヒュージネストへと向けられた。電子、可視光、赤外線等の光学系…搭載しているあらゆるセンサがヒュージネストを徹底的に調べ上げる。すると、警告音が鳴った。センサが何か見つけたらしい。
「これは…雲の中に穴があるのか?更に海面より下に空間がある」
「ええ、その通り。そして、その奥には…」
「なんだ?何か巨大な物体がある」
「アルトラ級ヒュージ…それがこの7号由比ヶ浜ネストの主よ」
「距離があるから正確には分からないが…サイズはとにかく巨大だ。こんな化け物がいるのか」
「その全長は500mとも1000mとも言われているわ。そして、こいつがネストを維持しているのよ」
すると、深井中尉は機の高度を上げる。
「側面からではうまく探知できない。これなら上空から垂直にスキャンした方がいい」
「やめた方がいいわ。中から狙撃されかねない」
「相手は対空火器を持っているのか?」
「マギを使用した光線を撃ってくる可能性を捨てきれない。あと、中にどんなものが潜んでいるか分からないし」
「今リスクを背負う必要はないか…」
そして、百由は持ち込んだ端末を開く。そこにはネスト周辺の立体的な図が映し出されていた。
「それに、こっちもいいデータが取れたから無理する必要はないわね」
「なんだ?」
「この機の腹に積んだポッドが捉えたデータね。いい具合にマギの流れを捉えたの。ふむ?これは…」
「何かあったのか」
「いえ、なんかネストから渦巻くように出たマギが…ここからちょっと離れたポイントに向かって噴き出しているような」
「マギとやらを俺はよく知らないが、それはよくある事なのか?」
「こんな変な動き初めて見たわ。何かしら」
「座標を教えろ。こっちでも探査する」
そして、百由はその座標を言う。再び雪風のセンサはそのポイントを重点的に探査する。
「赤外線カメラに何か影が…これは、空中の一か所に温度が違う点が浮いているのか」
「そのようね。こっちの計測結果ではこの点にマギが集まっているわ。でも、そこから先にマギは無い…これは消えている?いや、まるで吸い出されているような感じにも見える」
「つまり空中に浮いた穴か。これが帰還への鍵か?」
百由はうーん、と唸る。そして、答える。
「そうかもしれないし、違うかもしれない。でも、こんな明確な事象は十二分に怪しいわね」
「あとは調べるしかないか」
「そうね、継続して観察するしかないわねえ。データが足りないわ」
深井中尉は深井大尉以上に無口な印象であったが、必要な会話であればしっかりと返事を返してくるようだ、百由は無線で会話をしながらそんな事を思い浮かべていた。
そして、雪風はネストから離れるように左旋回、陸地へのルートを目指す。すると、警報音が再び鳴った。
<ENEMY>
雪風が敵を捉えたと言ってきたのだ。メインディスプレイに光学センサの画像が表示される。そこには浜辺を歩くミドル級ヒュージが映っていた。周囲にはリリィの姿も防衛軍の姿もない。地上からはまだ捕捉されていないらしい。すると、深井中尉は言った。
「ちょうどいい、対地攻撃の試験をしよう」
「積んできたロケット弾をあれに撃つって事?」
「その通り」
「うーん、流石に無許可はまずいような…」
百由がそう言うと、深井中尉は地上の管制を呼び出す。余計な揉め事は勘弁願いたいからである。
「こちらB-3、ミドル級と思しきヒュージを発見した。対地攻撃試験を実施したいので射撃許可を求む」
「何、ヒュージに攻撃すると?許可できない。現在位置を報告せよ、B-3。地上部隊を向かわせ…いや、ちょっと待て」
「B-3、スタンバイ」
ほんの少し間を置いて、管制から返事が返ってくる。
「B-3へ、攻撃を許可する。しかし、先に現在位置と目標の座標を知らせ」
「こちらB-3、了解」
深井中尉は目標の座標と自機の位置を報告する。そして、交戦を宣言。こちらの詳しい位置を聞いてきた理由はおおよそ察しが付く。彼らは対地攻撃の様子を観察するつもりなのだろう。
<ENGAGE>
<MODE AGG...RDY- ROCKET>
火器管制システムを対地攻撃モードに切り替え。HUD…ヘッドアップディスプレイには目標を囲う四角いTDボックスが表示される。これが対地ミサイルならば手順を踏んでロックオンすれば話は済むのだが、今回は無誘導のロケット弾である。機体のコンピュータが計算した着弾予想位置がHUDに表示されるので、パイロットがそれを見ながら機を操縦、そのまま目標にロケット弾を叩き込む流れとなる。同じく無誘導な攻撃手段である機銃掃射とほぼ同じ要領だ。
目標のヒュージは上空を気にもしていない。浜辺に上陸後、周囲を見回している様子だ。動きは無い、攻撃するなら今しかない。そう考えていたところ、メインディスプレイに新たな表示が出る。
<B-13:ENGAGE>
<B-13:RDY GUN...RDY ROCKET>
後方にいるレイフも攻撃すると宣言してきたのである。後方にも注意する必要が出てきた、下手をすれば空中接触や攻撃に巻き込まれる危険性があるからだ。深井中尉は雪風に対して呟く。
「B-13をサポートしてやれ」
<ROGER, Lt. FUKAI>
すると、雪風はデータリンクにて通信を開始。レイフに攻撃タイミングを指示するのである。これで後ろを気にせずに済むだろう。深井中尉は一度旋回、最適な攻撃角度を狙う。そして、目標に対してアプローチ開始。HUDの表示を見ながら距離を詰める。操縦桿やラダーを細かく微調整。そして、タイミングを見て引き金を引いた。機内にロケット弾の発射音が響く。直後、操縦桿を引いて離脱機動に入る。発射された多数のロケット弾は着弾すると着発信管が作動、そして炸裂。直撃弾と至近弾を浴びたヒュージは爆発の炎と煙に覆われる。チラッと後ろを見るとレイフも攻撃を実施していた。視界から目標が消えるが、雪風のセンサは目標を捉え続けているだろう。だが、自分の目で結果を見ておきたいと深井中尉は考えた。過去のデータを見る限り、ミドル級やスモール級のヒュージは通常兵器で対抗可能と記載があった。その記載通りに攻撃が通用していればいいが。
そして、左旋回を続けて煙が晴れるのを待つ。煙が晴れると目標の姿はまだそこにあった。しかし、倒れ込んでいる様子だ。効果はあった。とどめを刺すべく、再度アプローチ。再びロケット弾と機関砲弾の雨を浴びせる。これでロケット弾は弾切れだ。レイフも二度目の攻撃を実施。直撃を浴びせた事を誇るようにアフターバーナーを点火、急上昇。高度を上げて旋回開始、再び煙が晴れるのを待つ。そして、煙が晴れると、ミドル級ヒュージは原型を留めずに瓦解していた。そして、深井中尉は後席に尋ねる。
「倒したか?」
「ええ、あれなら確実」
専門家が戦果を認めた。よって、攻撃成功。
<MISSION CMPL>
「こちらB-3、攻撃完了。目標はおそらく瓦解、撃破したと思われる」
「了解、地上部隊を向かわせて確認を実施する」
「コンプリートミッション、RTB」
そして、雪風はレイフを従えて帰還する。
仮設滑走路に着陸後、雪風とレイフは格納庫に入る。整備員と技術者が次々と集まり、作業と点検を開始する。そして、深井中尉と百由は機体から降りる。だが、深井中尉は整備員に作業を任せると、どこかへと行ってしまった。おそらく、ブッカーの所へ報告しに行ったのだろう。一方、この場に取り残された百由はずしりとした疲労感に襲われつつ、作業の様子をぼんやり見ていた。そうしていると視界の隅に一柳隊の面々が映った。何故ここにいるのだろうと視線を動かすと、その先に桂城少尉と深井大尉がいる。大型のディスプレイに何かを表示して見ているらしい。何を見ているのだろうと、百由は気になってそちらへと移動する。梨璃が深井大尉に何か質問している。
「これは何でしょう?」
「この物体が何なのかは今のところ分からない。だが、こいつは怪しいと俺は思う」
すると、ディスプレイには先程観測したと思しきマギの流れを模したデータが表示されているではないか。
「深井大尉、いつの間に私がさっき観測したデータを抜き取ったのかしら?」
百由がそう言うと、深井大尉が返事を返してきた。
「何を言っている、これはレイフが先程記録したデータを見ているんだ」
よく見ると、自分が計測したものとは表示が異なる。
「レイフが…いや、どうやってマギを?」
「マギ?なるほど、この大気に干渉している物体がマギというものか」
「大気に干渉した物体…これはどうやって観測したデータなの?」
すると、深井大尉は言った。
「フローズンアイ…空間受動レーダー。大気に干渉する物体や事象を全て捉える事ができるレーダーだ」
「大気に干渉する物全てを捉える?そうきたか…確かにそれなら納得だわ」
「さっきの反応だと、そちらも同じようなものを観測したという事か」
「ええ」
すると、桂城少尉が口を開く。
「じゃあ、あの穴も捉えたという訳だ」
「捉えたわ、赤外線でも異常があった」
「君はあれが異世界に繋がっていると思うかい?」
「調べてみないと分からないわね。今はとにかくデータが無い」
百由がそう答えると、深井大尉が質問を飛ばしてきた。
「では、今後はこの現象を注視すればいい訳か」
「おそらく…あくまで勘だけど」
「フムン。解決への糸口は見つかったわけだ」
こうして、雪風とレイフの調査飛行は終わった。ヒュージネスト周辺に未知の事象を確認し、ミドル級ヒュージを撃破する戦果を出して。
だが、一つ深刻な問題が発生した。それはこの先しばらく何の進展もなかったという点である。
OVA版の特殊戦機が原作と同様の空間受動レーダーを載せているのかよく分からない…AWACSの類はそれっぽいセリフがあるけれど