地球から調査隊がやって来た。
フェアリイ基地内ではその到着セレモニーが開催されており、主だった将官達が参加している。しかし、夢結の姿は特殊戦区画内のブリーフィングルームにあった。
正直言ってそんな集まりに興味が無い。サポート任務と言われたからそれに参加させられるのではないかと思ったが、参加するのはお偉方だけなので自分は行かずに済んだ。そんな状況に夢結は内心でホッとしていた。
しかし、同時にある人物に対して同情していた。深井零である。彼は今、式典の警護をする任務として警戒飛行に出ていた。どうでもいい任務に加えて、後席には不愛想かつ初めてのフライトオフィサ…さぞ不満に違いない。
「白井少尉、ここまで質問は無いか?」
「ありません、少佐」
夢結は今、ブッカーから任務の説明を受けていた。しかし、この場で説明を受けるのは彼女だけではない。他に4人のパイロットとフライトオフィサがいた。だが、この面々は特殊戦の人間ではない。特殊戦とは別の軍団である航空宇宙防衛軍団、特殊戦と同じ戦術空軍に所属する他部隊、それぞれからやって来た面々だ。
特殊戦だけに手柄を取られる訳にはいかない…そんな対抗心だけで、この特殊戦に機体と人員を送り込んできたのだ。当の特殊戦は厄介事としか考えていなかったにも関わらず。結果として、特殊戦指揮下の臨時防空小隊が結成された。この場の説明はその為に行っているのである。
「ブッカー少佐、質問があります」
航空宇宙防衛軍団所属の女性が手を挙げて問う…彼女の名は郭神琳中尉。そして、その隣にはフライトオフィサの王雨嘉中尉が座っていた。雨嘉はどうやら内向的な性格らしく、周囲の様子を探りつつも神琳の質問を黙って聞いている。
「白井少尉のペアはどちらに?たしか、スーパーシルフも複座だったと記憶していますが…」
「ああ、その事か。彼女の機は少々特殊でな。人は一人しか搭乗しない」
そうブッカーは返答する。あの機体の後席にはコンピュータを載せているが、その点には触れなかった。
「なんじゃそれは、気になるのう。ブッカー少佐、その機体を見学してもいいか?」
戦術空軍所属のミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス中尉がそう聞いてくる。どうやら、彼女はフェアリイ星に来る前のブッカー少佐を知っているらしい。
「いいや、中尉。君の御父上には世話になっているが、だからと言ってうちの機体をおいそれと見せる訳にはいかん」
ミリアムの隣に座る人物が続いて質問する。
「では、少佐。その機は他のシルフと同等の任務を実施する事が可能なのでしょうか?」
質問したのは楓・J・ヌーベル中尉。彼女はミリアムの相方であり、機体の機長である。
この場にいるのは見るからに品の良い面々、おそらくは全員志願してFAFにやってきた面々だろう。外の人間に対して訳ありの人物を出す訳にはいかない…そんな思惑もあって志願組から人材を特殊戦に送りこんだのだろう。しかも、年は夢結と同じぐらい。それでいて中尉という階級である…皆、エリートと言ってもいいだろう。
「機体についてはスペック上、スーパーシルフと同等とされている。よって、任務を遂行する上で問題は無いと思われる」
ブッカーがそう答えると、皆の質問は止んだ。一方、夢結は溜息をつく。周囲は皆上官、一番の格下は自分。どうやっても居心地は悪くなる、そう考えるとただただ憂鬱である。
すると、ブリーフィングルームの戸をノックする音が響く。
「ブッカー少佐、よろしいでしょうか?」
「ああ、構わんよ」
その言葉の後に戸が開く。すると、二人組が入ってきた。そして、その内の一人がブッカーに話しかける。FAFの事務方が着る制服の女性である。
「少佐、調査隊の方がご挨拶したいとの事でして…」
「今ちょうど説明は済んだところだ、問題は無い…それで君は?」
「あっ、申し遅れました。FAF広報局の二川二水少尉と申します」
「なるほど、広報局…それで、後ろの方が調査隊の?」
すると、二水の後ろにいた人物がブッカーに話しかける。
「ええと、ブッカー少佐。よろしくお願いしますね。私は…」
部屋の前の方では、白衣を着た如何にも科学者といったような黒髪の女性がブッカー少佐に話しかけている。夢結はそれを一瞥すると、視線を眼前の資料と詳細なデータが表示されている端末へと移した。同じ隊になる人員の事ならともかく、部外者に興味は無い。
「それでは、護衛部隊…いえ、臨時防空小隊の隊員を紹介しましょう。手前の右から楓・J・ヌーベル中尉、ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス中尉。次に郭神琳中尉と王雨嘉中尉です。そして、その後ろに座って下を向いているのが…私の部下で白井夢結少尉」
「えっ!?」
科学者が何故か驚いたような声を上げ、こちらに速足でやって来る足音が聞こえた。何事かと夢結は顔を上げる。そして、顔を上げた夢結はそのまま驚いた表情を浮かべた。
「百由…?」
そこには確かに見知った学友の顔があった。
「やっぱり!夢結じゃない!!まさか、こんな所にいたなんて…」
真島百由、高校時代のクラスメイト…そんな人物が眼前に立っている。しかも、地球ではなくフェアリイ星で。
「ええと…その、久しぶりね。まさか、フェアリイ星で出会うなんて」
「私も驚きよ。あー、通りで同窓会の知らせを出しても音沙汰が無い訳だ…」
そんな二人の様子に場の面々は困惑する。そうして、ブッカーが話しかける。
「もしかして、白井少尉とお知り合いでしたか?」
「ええ、同じ高校の同期です」
「そうでしたか…凄い偶然もあるものですね…」
流石のブッカーも理由を聞いて、ただ唖然としていた。一方、百由は二水を呼ぶ。
「二水さん、すみませんが…外で警備の方と待っている連絡官を呼んでもらってもいいですか?」
「はい、少々お待ちを」
そうして、二水は戸の外から人を連れてくる。その入室した人物を見て夢結の表情は再び驚愕へと変わる。
「おい、百由。いきなりどうした…警備と打ち合わせ中だったんだが」
「ちょっと、そこのパイロットの顔を見て頂戴」
「え?おい、まさか…お前、夢結か!?」
そこにはもう一人、高校のクラスメイトの顔があった。
「梅…何故、あなたまでここに…」
「それはこっちのセリフだ。大学卒業したと同時にいきなり音信不通になったんだぞ。同期のみんながどれだけ心配したか…」
すると、咳払いをしてブッカーが聞く。
「その、すみませんが…あなたは?」
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません、ブッカー少佐。国連から連絡官として派遣された吉村・Thi・梅です。あー、その…この二人とは同じ高校の同級生で」
続く偶然にその場の面々は顔を見合わせた。
「えー…勝手に同窓会気分にしてしまい、申し訳ありません。では、計測機器の現物を見に行きましょうか」
百由は科学者として、計測設備の管理責任者の立場らしい。そんな彼女と共にエレベータに乗って地上へと向かう。すると、見た事の無い人物が一行に混じっている事に夢結は気づく。金色の髪に事務方の制服。しかし、事務方の制服には似合わず物騒なアサルトライフルがその背にはあった。
「少佐、そこにいる女性は何者でしょうか?」
「ああ…彼女は情報軍の安藤鶴紗少尉。警備として同行している」
「また情報軍ですか?」
雪風の後席に座り、今は空を飛んでいる人物も情報軍からやって来た人間だ。
「だが、桂城少尉とは部署が違うらしい。彼はロンバート大佐の部下で諜報専門、一方で彼女はリンネベルグ少将直属である実動部隊だと…資料にある。まあ、簡単に言えば荒事専門の部署だな」
「つまり、ボディガードには最適な人材と」
「そうなるな」
納得したように夢結は頷く。すると、細かい揺れと共にエレベータの扉が開く。そして、一行は停車してあるバスに乗り込む。設備が置いてあるのは基地の端の方らしい。
「隣、失礼しますわ」
楓が夢結の隣に座る。
「白井少尉、先程は色々大変でしたわね」
「いえ…」
後ろの席に座る神琳が会話に加わって来た。
「特殊戦のパイロットはまるで機械の様に冷酷だと聞いていましたが、どうやら噂だけだったようですね」
「それはどういう意味でしょう、中尉?」
「いえ、悪い意味ではありませんよ。先程の様子を見て、表情豊か…噂は当てにならないなと思っただけです」
微笑みながらそう言う神琳。一方、それを聞いた夢結の頭の片隅には先に会った桂城少尉のあの無表情な顔と、特殊戦隊員達の黒い噂の数々が思い浮かぶ。そして、溜息を一つ吐き出すと言う。
「郭中尉、これは忠告ですが…特殊戦のパイロット達は他人を全く信用しないような人間ばかりですよ」
「ご忠告どうも。でも、少尉は真島さん達にそういう態度は取っていませんでしたよね?」
「私は私。他の隊員は他の隊員です。そこまで冷血ではないだけですよ」
フム、と神琳は顎に手を当てると口を開く。
「白井少尉、一つ提案ですが…この隊の中では堅苦しいのは無しにしませんか?」
「はい…?」
階級の差を気にするなという意外な提案に夢結は困惑する。
「いいですわね、それ」
楓も同意するように頷く。
「うん、白井少尉はいい人そうだし」
今まで静かだった雨嘉も頷く。
「じゃあ、決まりじゃな。年齢も大差無いし、その方が気楽に違いない」
ミリアムがそう言うと、夢結は困惑しつつも口を開く。
「ええと、じゃあ…その、よろしく」
バスは暫く走ると停車、百由に続いて皆が降りる。すると、エプロンの隅に置かれた大型コンテナがそこにはあった。これが目的地であるようだ。
「さて、このコンテナに設備が一通り収まっています。で、ここからの情報は私が管理する端末に送信され…」
百由が説明する中、ブッカーに無線が飛ぶ。
「少佐、緊急事態です」
「どうした?」
特殊戦司令センターからの無線である。
「B-1の信号途絶。直前に警戒飛行中、ジャムをレーダーにて探知。追尾する旨の無線がありました」
「なんだと?だが…」
雪風が消えた。その知らせにブッカーは特殊戦区画の方を見る。かなりの距離がある…すぐに戻れないのは明白であった。しかし、機からの信号途絶が即墜落を示す訳ではない。通信環境の悪化、特殊戦機であれば妨害電波の使用等も考えられる。
「いいか、可能な限り情報を集めろ。すぐには戻れそうもない」
「了解。なお、最後に確認出来た地点にはB-13を向かわせています」
「何か分かればすぐに知らせろ。あと、迎えの車を出してくれ」
ブッカーが一足先に司令センターに帰る為、百由に話しかけようとした時である。彼女が仰天した様子で端末を凝視する。
「何この反応…一気に数値が跳ね上がった!?」
すると、鶴紗が叫ぶ。
「ブッカー少佐、誘導路の向こうで何か動いています」
「何!?」
鶴紗の指差す先、そこには奇妙な物体の群れが蠢いていた。動物の様に見えなくも無いが、その体表は金属のような光沢をもっている。
「あれは、まさか…」
ここ最近、フェアリイ星の各地で目撃されている銀色の生命体…直感的にブッカーはそれだと判断した。そして、先に聞いた未確認情報の通りなら、あれが安全な相手だとは断言できない。
「退避だ、白井少尉!皆をバスに退避させろ」
その言葉を聞いた夢結は百由の手を引く。
「百由、梅。すぐに逃げるわよ」
「どういう事?フェアリイ星には恐竜みたいな動物がいるとは聞いているけど…」
「あれは最近発見された危険な生命体よ」
「何!?危険ってどれぐらいだ?」
「機関砲を浴びても無傷らしいわ」
その一言に梅は絶句する。そして、一行は駆け足でバスへと急ぐ。
「よし、もうすぐだ」
しかし、青い閃光が突如として周囲を包む。それと共に衝撃と轟音が襲い掛かり、皆は転げるように地に伏せた。
「いったい何が…」
夢結は頭を上げる。すると、目の前のバスが奇妙な状態になっている事に気が付く…車体後方が消えてしまっている。そして、バスから少し離れた辺りにその残骸が転がっているのが見えた。
「これは…あの化け物がやったの?」
「ああ…まるで怪獣映画だ。あの一番大きいやつがビームらしきものを撃ってきた」
困惑する夢結に対してブッカーが言う。その一方で、神琳とミリアムがバスの運転手をバス前方の残骸から見つけ出し、引っ張り出した。
「どうしますか、少佐」
伏せた姿勢でアサルトライフルを構えた鶴紗が聞く。
「できる事は少ないな、相手は銃が効かないという噂だ。どこか身を隠せる所まで退避しよう」
「あの格納庫はどうでしょう?」
楓が指を差して言う。ここからかなり離れているが、そこに逃げるしかない。だが、問題はそこまで安全に移動できるか、という点だ。しかし、他に逃げ込める場所は無い。
「よし、行こう」
すると、背後で轟音が鳴った。
「今度は何!?」
仰天した百由が叫ぶ。
「味方の攻撃ですよ。基地防空システムの…対空機関砲の水平射撃です」
機関砲の掃射によって、小さなサイズの化け物の群れは木っ端微塵に破壊された様子だ。しかし、大きなサイズの化け物は傷一つ無いように見えた。
「噂通り…ですね、少佐」
「ああ、残念ながら」
残った化け物は二体。再度、機関砲が吠えるが全く効果無し、跳弾した曳光弾が空しく空に飛んで行く。そして、お返しと言わんばかりに光線が撃ち込まれて機関砲は爆散。そんな光景に一行は沈黙する。すると、無線が鳴った。
『夢結、無事?』
「その声…ユリ?」
『うん、こちらB-14リリィ。今から援護するね』
「待ちなさい、ユリ。何をする気?」
すると、突如化け物が爆発。そして、黒い機影が一瞬で頭上を飛び去って行った。ジェットエンジンの轟音と共に。
「今のは…まさか」
「ええ、B-14です。少佐」
間違いない、あれは自分の愛機である。夢結は一瞬の機影を見て直感でそう判断した。あの機を操縦しているのはユリに違いない…離陸しながらミサイルを化け物に叩き込んだようだ。
「効いていないか」
しかし、銀色の化け物は無傷である。すると、ユリから無線が飛ぶ…その声色は先程と違って無機質だ。
『少佐、申し訳ありません。すぐに用意できたのがAAMのみで撃破に至りませんでした』
「いや、構わん。ユリ、機体を操縦しているのはお前か?」
『はい、少佐。その通りです』
「機体の操縦はB-14に任せろ、オートマニューバ・システムを起動。そして、お前は情報収集に専念。敵の正体を探れ」
『了解、機体の操縦はB-14に一任。情報収集行動開始』
<You have control.>
<I have control.>
<RDY Frozen eye.>
<Roger.>
命令を出し終えるとブッカーは溜息を吐き出した。
「想定外の初陣だ、しかもパイロットは抜き…それでもあいつらが勝手に飛んだのはSSCとSTCがまた何か裏でやったのだろう」
「ユリとリリィは大丈夫でしょうか?」
「おそらくな。アイツらは未熟だが…あの化け物に戦闘機の類を落とせるとは思えん。しかし、スクランブルや他の隊は何をしているんだ」
「地上の敵なんて想定外なので混乱しているのでは」
二人の会話を聞いていた他のパイロット達が困惑した顔色を浮かべながら口を開く。
「少佐、今飛んでいるのが白井少尉の愛機なのでしょうか…?パイロット抜きと聞きましたが、まさか…」
「ああ、今飛んでいるB-14に人間は乗っていない。白井少尉の相方はコンピュータ…機械知性体だ。人の代わりにならないかとシステム軍団で作っていた訳ありの代物だよ」
「特殊戦は凄いですわね…」
楓がそう呟く。そして、鶴紗が目の前の扉を開ける。B-14が隙を作った結果、一行はなんとか目標にした格納庫にまで辿り着いたのである。
「お二人とも、お先に中へ」
百由と梅、続いて負傷したバスの運転手を格納庫内に入れる。そして、ブッカーは鶴紗に地下へ降りるエレベータを探すように命令を出した。すると、ユリから再び無線が飛ぶ。
『少佐、こちらB-14。空間受動レーダーに反応有』
「何、ジャムか?」
『不明…いえ、航空機と思しき反応を探知』
その言葉を聞いたブッカーは扉を開けて外に飛び出した。その刹那、機影が頭上を飛び抜けた。
「あれは…まさか」
シルフィードでもファーンでもない、独特な機影…間違えようがない。そして、その機影を有するのはレイフかメイヴ…雪風のどちらかしかいない。だが、雪風は通信途絶。レイフはその捜索に出ており、この空域にはいない。では…あれは?
「こちらブッカー、B-14へ。その不明機は何者だ」
『不明機はB-1、雪風。なお、こちらでは雪風が通信途絶状態であるという情報を得ています。よって、この機が本物であるかどうか断定できません。少佐、どうしますか』
ユリは相手がジャムではないかと疑っているらしい。
「待て、コンタクトを取れ。何があったのかを詳しく聞き出せ。そして、司令センターのクーリィ准将に報告、指示を仰げ」
『了解』
ブッカーが上空を見ながら無線で指示を出している間、夢結は化け物の様子を監視していた。あれがこの建物を攻撃してくる可能性はゼロではない。万が一に備えて…そう考えての行動であった。しかし、突然背後に妙な気配を感じて夢結は咄嗟に振り返る。
「あれは…?」
視線の先では陽炎のような靄が浮いていた。あれは何だ…という疑問が脳内に浮かんだ瞬間、そこから何かが飛び出してきた。
「少佐!何かが後ろから!!」
そう叫んだところで、飛び出してきた物体の正体に夢結は気づく。
それは少女だった。明るめの髪色、小柄な体格。しかし、その手には巨大な大剣のようなものを抱えている。そして、その足は常人とは思えない程に速い。あっという間に化け物の方へと突っ込んでいく。
「何だ、あの子供は!?どこから現れた!」
「分かりません、突然飛び出してきて…」
「お二人とも、あれを!!」
楓が叫ぶ。そして、到底人間にジャンプ出来るとは思えない程に謎の少女が高く跳び上がると、その手に握る大剣を一気に振り下ろす。そして、皆はその光景にただ唖然とするしかなかった。
機関砲やミサイルを浴びても無傷だった化け物がその少女の一撃で真っ二つに切り裂かれたのだ。そして、化け物は崩れ落ちてピクリとも動かなくなる。もう一体の化け物がそれに気づいて少女に襲い掛かる。しかし、少女は大剣のような武器を構えると発砲。そして、相手が怯むと懐に入り込んでその勢いのまま斬り付けた。
そうして、奇妙な戦闘は終わる。この場の誰しもがあれは夢だったのではないかと咄嗟に考えるが、燃え盛る破壊された基地の設備を見てこれが現実なのだと嫌でも実感させられた。
「あの子は?」
雨嘉が声を上げる。すると、黒煙の中であの少女は立っていた。だが、どこか様子がおかしい…そう思っていると、少女はふらりと倒れ込んでしまった。
夢結はそれを見ると駆け出した。何かを考えて動いた訳ではない。最早、無意識に体が動いていた。後ろでブッカーが何か叫んでいるが、耳に入らない。意識は正面で倒れている少女にだけ向いていた。息を切らしてその少女に駆け寄ると、その体を揺らす。すると、うっすらと目が開いた。
「あなた、大丈夫!?」
FAF語でそう叫ぶが、相手から聞こえてきたのは確かに日本語だった。
「お姉様…?」
少女はそう呟くと再び目を閉じた。
「おい、いきなり飛び出すな…安全かどうかも分からないのに。で、その子の様子は?」
「意識がありません。脈も呼吸もありますが…」
「医療班を呼ぼう。ヌーベル中尉、任せた」
呼吸も脈もあるという知らせにホッとしたブッカーは、少女の傍らに転がっていた剣のような奇妙な物体をまじまじと見る。あの少女はこれを軽々と持っていたが、とても軽そうには見えない。そして、こんなもので大口径の対空機関砲を弾き返すような怪物を斬れるとは到底思えなかった。
「何なんだ、これは…」
余りにも異質な物体と眼前に広がる光景に、ブッカーの口からは自然とそんな言葉が零れ出た。
やっと投稿できた…