迷い込んだブーメラン<改>【本編完結】   作:ひえん

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新たな出会い

「なんだ、そいつらは」

 

 もう一人の深井零が言う。そして、一柳隊の前に立つ深井零大尉はこう返す。

 

「こいつらか?現地協力者だ」

「協力者?だからと言って、よく知らない連中を機体の近くまで大勢連れてくるのはどうなのか」

「こいつらはあの化け物と戦う実戦部隊だ。地上で捜索等をしてもらうには最適な人材だろう。それなら今の実情を知っておいてもらった方がいいはずだ、その為にここへ連れてきた。だが、こいつらが不要だというのならば、中尉が自ら化け物蠢く地上で情報収集を行うか?」

 

 それに対して、もう一人の深井零は返事を何も返さなかった。途端に場が静まり返る。すると、一柳隊の面々に対して深井零大尉は言う。

 

「紹介しよう、あれが別世界の俺…深井零中尉だ。見ての通り、名前も姿も同じだから階級で区別した方が分かりやすいだろう」

 

 姿かたち、声も同じ。だが、雰囲気はどこか違う。そう夢結は感じた。

 

「まるでちょっと前の夢結みたいな話し方だったな」

 

 深井中尉の様子を見た梅が笑いながら感想を言う。そして、その感想を聞いた梨璃以外のリリィ一同は同意するように二度三度と深く大きく頷いた。

 

「みんな、待ちなさい。私はあんなに不愛想ではないわ。そうでしょう?」

 

 夢結はそれを見て慌てながら否定した。すると、別の人物の声が格納庫に響く。

 

「一柳隊が深井大尉の協力者に…そんな話は聞いていませんが、いつ決まったのですか?」

 

 タラップの上から史房が困惑したように言う。すると、史房の目に百由の姿が映った。そのまま目が合うと、百由は苦笑いをしながらこう言った。

 

「そうですね、簡単にこの事態を説明すると…ごめーん、全部ばれちった!…えー、報告は以上です。生徒会長」

 

 そして、誤魔化すようにテヘッとウインク。しかし、そんなものを無視しながら史房は百由を睨む。

 

「あなたねえ…」

「いえ、あのその…これは不幸な事故でして…」

 

 滝のような汗を流しながら百由はじりじりと後退る。すると、校舎側のドアが開いた。百由は咄嗟にそちらを見る。だが、そこから現れたのは残りの生徒会長達だった。秦祀と内田眞悠理の二人である。そして、彼女達は格納庫内の様子を見て驚いている。理由はやはり一柳隊の存在であった。

 

「えーと…」

「何故ここに一柳隊が?まさか、百由…また何かやったのか?」

 

 二人の視線も百由へと集まる。

 

「この状況がばれたのは故意じゃないわ!これは事故よ、事故!!」

「百由様、わしを盾にするのはやめてほしいのじゃが…」

 

 百由はミリアムの影にサッと隠れながら言い訳を次々並べる。すると、咳払いが一つ。そして、格納庫内に低い声が響く。

 

「諸君、そろそろいいかな。さて…深井大尉、報告を聞きたいのだが」

 

 声の主は理事長代行であった。そして、彼は整備用のタラップから降りてくる。すると、深井大尉がラフな敬礼をして簡単な状況報告を行う。

 

「フムン。了解だ、少佐。深井大尉および桂城少尉、情報収集活動から帰還。真島百由の案内でヒュージの観察と対ヒュージ戦の視察を実施。なお、その戦闘中に友軍機残骸を確認。現地に展開していたリリィ二個部隊の協力を得て、ヒュージの撃破と友軍機残骸の確保に成功。我に損害無し。詳細は後程レポートにて提出する。以上」

「ご苦労」

 

 その会話を聞いていた夢結が理事長代行に質問を飛ばす。

 

「理事長代行、百由から全て聞きました。あなたの中に別人が憑依しているというのは本当でしょうか?」

「ああ、本当だ。俺はジェイムズ・ブッカー…元FAF少佐だ。そこの深井零中尉の上官だった。なんと言えばいいか…ちょっと前に別世界からどういう訳か精神だけこの肉体に飛ばされたんだ。見た目で説明できるようなこれといった明確な証拠はないが」

「冗談ではないのですよね…」

「これが冗談だったらどれだけいいか…全て本当だよ。ここにある機体がみんな別世界から飛ばされたのも含めて、な」

 

 その言葉に一柳隊の一同は改めて衝撃を受けた。見た目は普段通りだ。しかし、話し方やしぐさはどこか違う。そんな事実がずしりとのしかかってきたのである。

 

「大尉。どこで何の機体を見つけたのか聞きたい」

 

 そんな中、深井中尉が深井大尉に対して静かに質問を投げかける。

 

「残骸はシルフィードの右主翼と胴体の一部、スーパーシルフではなくノーマルのシルフだ。どこにあったかというと…特大サイズのヒュージの背に刺さっていた」

「あの化け物の背に?」

「そうだ、中尉。だから、こいつらにその化け物を制圧してもらう必要があった。問題の残骸は搬送中のはずだ」

「しかし…どういう経緯でそこに刺さったのか、それが謎だ」

 

 深井大尉は頷いて言う。

 

「その謎はこれから調べるしかないな。もしかすると、帰る為のヒントにもなるかもしれない」

 

 それを聞いた深井中尉はふと話題を変える。

 

「そういえば、そちらの雪風は会議を望んでいるようだ。俺やジャック、そこの生徒会長殿に対してそういったメッセージを出してきた」

「会議だって?桂城少尉、どう思う」

 

 桂城少尉は軽く考えると言った。

 

「フム…雪風はこの前のように人間に対して何か提案したいのだろうか?いや…でも、この訳の分からない状況下で何を提案するのだろう」

「まず、雪風は何を望んでいるのか…それを考えねばなるまい」

「そちらの雪風は情報をとにかく求めている。この世界の敵がジャムかどうか。そして、俺達が戦ってきたジャムとそちらが戦っていたジャムが同一の存在であるか。それを知りたいらしい」

「フムン。なるほどな」

 

 深井中尉の一言で深井大尉と桂城少尉の疑問は解決した。これで雪風の求めているものは分かった。

 

「では、ちょうどいい。主な関係者はこの場に揃っているし、各々持っている情報をまとめる為の会議を開こうじゃないか。それでいいか、少佐?」

「ああ、大丈夫だ。だが、深井大尉。会議というが…どうやるつもりだ?」

 

 フム、と深井大尉は考える。そして、しばし間をおいてから案を出す。

 

「雪風に記録された映像を流そう。それを見ながら皆で考えるのはどうだろう」

「いい案だ。こちらの雪風の映像も出す。さて、百由君。映像を出力したいのだが…できそうか?」

「機体のコネクタに通信用のケーブルを繋いでいますから、向こうからデータを送ってもらえればおそらく可能かと。あー、動画のデータがどんな規格なのかが問題か…まあ、ちょっとやってみましょう。駄目ならその時に考えますので。さて、一柳隊のみんな。さあ、お望みの仕事の時間よ!手伝いなさい!!」

 

 会議をすべく、その準備が始まる。百由が指示を飛ばし、ケーブルや資料を抱えた一柳隊の面々が動く。そして、そんな中、夢結は百由に疑問をぶつけた。

 

「いくら相手が異世界人という存在とはいえ、工廠科や防衛軍が何故ここまで深く協力するのかが分からないのだけど…あんな戦闘機を弄ってあなたに何か得があるの?」

「もちろん、違う分野の機械からでも学ぶ事は多いわ。異世界の機械ならなおさらよ。特に航空機は軽さと強度を両立しないといけない性格を持った機械よ。CHARMだって人が持って使うから軽さと強度が求められる…その点での要求される性格は似ているわ。それに機体内部の回路設計や配線の配置、航空機はその点でも制約が多い。いろんな工夫が施されているものよ。そして、CHARMにだってそういう制御系統は存在するのだから大いに参考になる…よって、こういったものはCHARM開発のヒントになるかもしれないという事よ。まあ、そうは言っても肝心なレーダーや機体中枢には触れてもいないけどね」

「なるほど、工廠科も軍もみんな異世界の技術目当てなのね。それなら分かりやすい理由だわ」

「んー、それだけとは言えないのよね…」

 

 そう言うと、百由の作業の手が止まった。

 

「と言うと?」

「そこの機体は超が付くほどの高度なコンピュータを搭載しているのよ。それこそ文章を作って人間と会話することぐらい朝飯前なレベルと言えるほどの物が」

「それぐらいならSFでよくある人工知能みたいな類ではなくて?」

「あれはそんな程度で済む代物ではないのよ。まあ、これはこの機が不時着した日に起きた事だけど…機体内部を調べようとケーブルを配線。機体に対してアクセスを開始した直後にあの機体がこちら側のコンピュータやシステム、通信網を調べてきた。そして、的確に重要部を探り当ててきたの」

「学院のセキュリティは?」

「破られた。まるで電子的な生き物よ、別世界の違う進化を辿ったネットワークに対して易々と潜り込んできたのだから」

 

 作業を続ける一柳隊の面々は二人の会話に聞き耳を立てていた。どうにも二人の会話が深刻な様子であったからだ。

 

「流石に私も防衛軍のスタッフもそんな事態が起こって慌てたわ。そして、雪風…あの機体のコンピュータは一つの警告を飛ばしてきたの」

「警告?」

「ええ。機体に干渉する事をすぐに止めないと電子的攻撃および機体の自爆にて対抗する、って。で、その脅しが嘘ではないという証として、いくつかのシステムが実際に乗っ取られかけた。それが問題になったのよ。で、何が狙われたと思う?夢結」

 

 夢結はそう聞かれて考える。真っ先に狙われるようなものは何か。

 

「ここの警備システム?」

「そんな小規模なものじゃないわ」

 

 そして、百由は眼鏡をかけ直す。

 

「えーと、まず…国内の主要なインフラを管理するシステム類。国内外を繋ぐ通信網の制御機器。軍の防空警戒管制コンピュータ。衛星管制と制御のコンピュータ群。航空管制システム。それから…」

「ちょっと待って、それを全部狙ってきたの?」

「ええ。でも、まだあるわ…都内の守りの要であるエリアディフェンス。それを制御、維持する為のシステムが狙われた」

「そんな、まさか」

 

 その百由の一言を聞いた夢結とその場の皆が絶句した。神琳はその衝撃のあまり、手に持っていたケーブルの束を地面に落とす程だった。そして、会話を聞いていた梨璃は一つの疑問を口にした。しかし、周りの緊迫感とは無縁ののんびりとしたトーンで。

 

「エリアディフェンス…えーと、なんでしたっけ、それ?」

「この重苦しい雰囲気でよくそれを聞こうと思ったな、お主…」

 

 ミリアムが呆れながら言う。そして、夢結は頭を抱えていた。後で梨璃の学習内容に対する理解度を徹底的に確認し、片っ端から総復習させねばなるまいと決心しながら。

 

 すると、背後からフムンと一言。

 

「なんだ、そのエリアディフェンスとやらは。艦隊防空という意味ではなさそうだが」

「面白そうだ。僕らもその詳細を聞きたい」

 

 そこには深井零大尉と桂城少尉の二人が立っていた。そして、百由はため息をつきながら言う。

 

「ぐろっぴ、ちょうどいいから説明してあげなさい」

「その呼び方はどうにかならんか…仕方ない。他にエリアディフェンスを知らないという者はおるか?」

 

 説明を押し付けられたミリアムが聞く。

 

「ごめん、私もよく知らない…」

 

 鶴紗が少し恥ずかしそうに手を挙げた。

 

 




百由様と楓さんがとにかく動かしやすい。


とりあえず、どう飛ばされてきたかとかその辺りの設定は練り終えた。さて、執筆スピードを上げねば。
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