主人公に暴走の力があるのは間違っているだろうか……いいや、間違っていないはずだ、だってカッコイイじゃん 作:遠無/とおな
ついにここに来る事が出来た。ここは、迷宮都市オラリオ。世界で唯一存在するダンジョンの上に建てられた都市だ。
ダンジョンとは、人ならざる者達、モンスターと呼ばれる者達が生まれる地下の建造物であり、未だに誰も最深部に到達していない未知の場所。ダンジョンは階層型の建物であり、地下に進む事に1階層は大きくなっていく。
今、到達最高記録は50階層ぐらいでそれぐらいになると、オラリオと同等以上の大きさがあるらしい。ダンジョンとは、未知、冒険、ロマンの塊であり、命が落ちる事が落ちる可能性があると分かっていても、未だにオラリオに訪れる人は多い。
ダンジョンに潜る人は、冒険者と呼ばれている。冒険者は
神、そう神である。
さぁ、まだ見ぬ冒険をしよう。これから出会うであろう人を助けよう。そして、英雄になるんだ。
──────
……オラリオに来たはいいが、未だに僕を眷属にしてくれる、あの神様とは出会えていない。僕が
過去のとある事件? のおかげで、
僕が相手の立場だったら、見た目が弱そうな人は間違いなく断るだろうし。嫌味で言う人もいるが、その中にも少しだけ優しさのある人もいた。ダンジョンに潜る冒険者の殉職率は、決して低くない。相手が話の通じない
弱い人ほど、殺されやすい。そして、僕の見た目は100人いたら、100人が強くなさそうと思う事だろう。僕がファミリアに入るのを断った人の中には、(見た目は)死にやすいであろう僕を死なせない為に断ってくれているような人はいた。そういう人には、怒りとかは流石に湧かない。
それに、僕が入りたいファミリアは、この世界で生を受けた瞬間から決まっていうる。今はまだ目的の神様がファミリアを結成していないおかげで目的の神様を探すのにだいぶ苦労している。オラリオに来て、1日目はひたすらに断られ続けるという事を繰り返し、それから何日か探しているのだが、まだ見つからない。
僕の中にある知識では、探している神様は
流石に何処で働いていたのかまでは記憶していなかった為、オラリオ中を探しているのだが、未だに見つからない。まだ僕が行っていない店で働いているのかもしれないし、シフトの時間ですれ違っただけなのかもしれない。
とりあえず、オラリオ中のお店を探しているのだが、それでも見つからない。探している神友はそれほど悪い性格をしていなかったはずだから、売り上げが低迷している店は紹介していないはずだ。
一応、食ってはいけるぐらいの給料の店を紹介しているはず。だから、大通りに存在するものや、有名なお店を中心的に当たっているのだが、未だに見つかっていない。
もしかして、
そんな可能性が脳裏を掠めながらも、そんな事は無いのだと自分に言い聞かせていた。
路銀も尽きかけ、そろそろ現実を見る可能性が出て来た。このオラリオには、僕が探す神様がいないのでは無いのではないかと。
夜の路地裏を歩きながら、このまま目的の神と出会えなかった時の身の振り方を。このオラリオから出るというのは、あり得ない。僕が知っている通りにこの世界が動くというのなら、今後、この都市で理不尽な不幸を味わう人は多くいる。それを知っていながらも、ここを出て行くなんていう真似は出来ない。
それに冒険者にならないという可能性もありえない。ついさっき、そこらの冒険者になら勝てると言っていたが、これから対峙するかもしれない敵達はいずれも強敵だ。今の力のままでは、途中で通じなくなるのは目に見えている。
ならば、どこのファミリアに入れてもらうべきだろうか。元々持っていた自分の知識とオラリオに来てから知る事の出来た情報を併せて、どこに入るべきか思案していると、何かに顔がぶつかった。驚いて前を見てみると僕がぶつかったのは、誰かの背中だったようだ。考え事をしていたせいで、周囲への注意力が散漫していた。
「すみません、考え事をしていて── ん?」
これは、完全にこっちの方が悪いので謝ろうとした時だった。
それが目に入った。
地面に倒れる1人の少女。ローブを身に着けていて、顔は分からないがその背丈と体つきからして小さな少女だろうか。この世界には、
そして、その少女を囲む3人ほどの男達。一番目を引くのは、その少女がボロボロだったことだろうか。フードを被っている為、良く見えないがそれでも頬が赤く腫れていたり、口の中を切ったのか、口の端から赤い液体が垂れていた。
そして、男達はその顔に嫌な笑みを浮かべていた。自分達を強者だと信じて疑わず、自分達は他人を搾取する側なのだと確信している、そんな笑みだった。
これで倒れていた少女を発見して、心配しているとかだったら良かったのだが、どうやら違うようだ。この子をボロボロにしたのは、この男達なのだろう。
「ん? なんだガキかよ。今なら見逃してやるから、とっととママの所でも帰ってろよ。見ての通り、俺達は忙しいんだよ」
僕がぶつかってしまった男が、何か言っている。まさか、オラリオに来て数日でこんな場面を見る事になるとは思ってもいなかった。彼ならば、こういう場面に遭遇したらどう行動するのだろうか。
この事態を起こした悪人をしばくのか、それとも言葉で諭すのだろうか。こ暴力はいけない事だと。だが、こういう輩の中に変わる者達はいない。前世ならば、これで捕まって刑務所に入るのだろうが、それでも反省する事はないだろう。
それ以降、悪事に手を染めなくなったとしても、それはもう二度と捕まるのが嫌だからという理由であって、改心した事にならない。改心するようなのは、元々罪悪感が心の奥隅にありつつも、悪事に手を染めてしまったような者達だけだ。その罪悪感が大きくなる事でもう二度とやらないように改心するのだろう。
つまりだ。自ら、好き好んで暴力を振るうような奴は、今後一切変わるような事はないのだろう。きっと、自業自得で命の危険に陥ったとしても「なんで自分が」みたいな事になるのだろう。
「早くどっか行けって言ってんだろ、ガキ。それとも、お前もこんな目に遭いたいのか?」
地面に倒れる子を足蹴にしながら、そう言う男。周りの男も似たような事を思っているのか、似たような笑みを浮かべていた。
あぁ、心底腹が立つ。義憤に燃えるとかいう訳ではない。これは、なんていうのが正解なのだろうか。そんな悶々とした感情を抱えながらも、その場から逃げる事などしない。これを見てしまった以上、そのままにしておけるほど、俺は非情な人間ではない。
「ちっ、なんだよ。ビビッて動けねぇのか!?」
一歩も動かず、何も言わない僕に男が苛立ったのか、男が拳を振り下ろしてきた。その拳の速度から察するに、どうやらこの男は冒険者らしい。冒険者とただの人。普通なら、どっちが勝つのかなんて決まり切っている。間違いなく、前者だ。
だが、生憎と僕は未だに冒険者ではないが、ただの人でもない。
その振り下ろされた拳を片手で受け止めた。多少の衝撃を感じたが、それだけだ。男は、掴まれた拳を動かそうとするが、微動打にしない。その事に焦っているのは、顔を見ればよく分かった。
この男の仲間であろう2人の男が、後ろから声援? を飛ばす。
「おい、遊んでないでさっさとやれよぉ。長居してると、誰か来るかもしれないぞ」
「わ、分かってるよ!」
仲間は、どうやら男が遊んでいるとしか思ってもいないようだ。間違っても、僕みたいなガキに負ける訳は無いのだと確信して。だが、男の方は少しだけ己の危機を悟ったらしい。冷や汗を滝のように流してるのが、僕には見えた。
ここは、裏路地とは言え、誰かが来てもおかしくない。圧倒的にあっちが悪いとしても、冒険者にもなっていない僕が冒険者の拳を受け止めたなんてあれば、僕も疑われてしまう。さっさと、終わりにしよう。
黒い靄のようなものが僕の体から、少しだけ発せられる。闇夜の今ならば、目の前にいる男には見えるかもしれないが、離れた所にいる人達には見えないだろう。その黒い靄は、僕の体を少しだけ強くしてくれる。過去の事件で身に着けた技だ。
掴んでいた拳を握りつぶすように力を込める。流石にそのまま握りつぶして、R18Gみたいな事にはなりたくないので、流石に潰す事まではしないが、それでも拳の骨には罅が入るぐらいの力は込めている。
拳の骨が内側で滅茶苦茶になっているのが、手から伝わってくる感触で分かるが、男は唇を噛む事で痛みによる呻きや叫びが出るのを抑えている。冒険者だから痛みに慣れているのだろうし、それに仲間の前で僕みたいな子供に傷を与えられたと思われたくないのだろう。
「失せろ」
少しだけの威嚇を込めて、手を離した。少しだけ怯えを孕んだ目で僕を見つめた後、舌打ちして裏路地の奥へと消えて行った。仲間もそんな男の様子に戸惑っているようだが、置いておかれたくなかったのか、男の後を追っていった。
「大丈夫? ……って、あれ。いない?」
男達にやられていたであろう子供がいた場所を見ても、そこには誰もいなかった。いつの間にか、何処かへ行っていたようだ。男達の意識が僕に向いている間に、逃げたのだろう。出来れば、あの子の容態をこの目で見てみたかったのだが、逃げれたのであればそれで良しとしよう。
とりあえず、泊っている宿に向かおうとしたその時だった。
「ちょっと、そこの君! 大丈夫かい!?」
声を掛けられた。先程の静かな騒ぎを誰かが見ていたのだろうか。
振り向けば、そこにはホルターネックの白いワンピースを着た黒髪ツインテールの美少女がいた。こんな夜更けに子供1人でいる事を危惧する人もいるかもしれないが、それは大丈夫だろう。目の前にしたからこそ分かる。その体から感じ取れる神々しさが。
あぁ、ようやく会えた。ずっと、探していた神様に。
「さっきすれ違った人の会話を聞いて、慌てて来てみたんだけど…… どうしたんだい?」
跪いて、その神との目線を同じ高さにする。それは、多くの人が子供と同じ目線にする為の行為だが、僕は目上の人だから目線を合わせた。
「騒ぎはもう収まりましたから大丈夫です。それより、あなたは神様ですか?」
その言葉を聞くと、神様は目を見開いた。騒ぎが収まった事に驚いているのか、それとも神様だと言い当てられた事に驚ているのだろうか。恐らく、どちらも正解なのだろう。
「どうして、僕が神だと分かったんだい?」
どう返すのが正解なのだろうか。元々知っていたというのもあるし、この目で見て神様だと思ったというのもある。前者を言っても不審がられるだろうし、後者を言う事にしよう。
「この目で見て、あなたが神様だと分かりました。あなたが神様なら、僕をあなたのファミリアに入れてください」
そう言うと、また目を見開いて驚いていた。無名のファミリアに入ろうとしている事に驚いているのだろうか。
「えぇと、まだ僕のファミリアは団員が1人もいないんだよ? 君が入っても、先輩がいないから満足なサポートは出来ないし、金銭的な余裕もないんだよ? それでも──」
「神様。今日、初めて会ったばかりの男で信用できないかもしれません。だけど、これだけは本当です。たとえ、サポートがなくとも、お金がなくとも、僕はあなたのファミリアに入りたい」
神というのは、嘘であるか、そうでないか分かるらしい。そして、今の言葉は本心だ。僕の今の言葉が本気であると、納得してくれるといいのだけれど……
「最近まで下界に降臨しても神友の脛齧ってた駄目女神だよ? 下界に降臨したばかりで伝手も殆どないよ? 僕自身、自分で働いて金を稼ぐぐらいにはお金がないよ? それにホームは廃教会の地下にある小さな部屋だよ? それでもいいのかい?」
そんな事、もう知ってる。生まれた時から知っている。確かにあなたのファミリアに入りたいのは、僕の知る未来がそこから始まるから、それ通りに動きたいというのもある。だけど、あなたの人柄に惹かれたから、こうして僕はあなたに言うのだろう。
「だとしても、僕はこう言います。僕を、ベル・クラネルをあなたの
その日、僕はヘスティア・ファミリアの初の団員となった。
未だにヒロインを決めかねている……
候補はアイズかヘスティアかティオネ。どれにしようか本当に迷う。どれも良い子過ぎるんだよぉ。もしかしたら、アンケート取るかも