大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「先生、今日も稽古ありがとうございました」
「ああ。幸利と恵里は……そこで休んでるのか」
「すみません、結果的に三人の稽古見てくれて。でも先生のおかげでかなり強くなれましたよ!」
明るい表情でステータスプレートを取り出し、俺に渡してくるハジメ。
手渡されたステータスを見ると……
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南雲ハジメ 16歳 男 レベル:3
天職:錬成師
筋力:80 [最大値:130]
体力:60 [最大値:90]
耐性:60 [最大値:90]
敏捷:50
魔力:50
魔耐:40
技能:錬成[+鉱物系鑑定][+精密錬成][+イメージ補強力上昇]・右腕強化・痛覚耐性・言語理解
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大幅に上昇していた。ハジメに第二の皮膚を贈ってから早くも三日。幸利と恵里も交えて俺は稽古をつけていた。無論、この事はイシュタルはもちろんだが光輝達にも内緒である。
ハジメはカセットアームを使った柔軟な立ち振る舞いと、基礎的な格闘術を叩き込んでいる。カセットアームを変形させるのに必要な時間は約一秒。戦場ではその一秒が命取りなため、最低限近接格闘は出来るように仕込んでいる。
幸利と恵里は主にハジメの後方支援が主だ。幸利は闇属性に適性があり、敵に弱体化をかけられることに目を付けた俺は、幸利が狙った相手に弱体化魔法をかけられるように何度も何度も標的として動きまくった。
恵里は火属生に適性があるので、ハジメが倒し損ねた敵を逃さず倒せるように魔法の精度やコントロールを徹底して練習させた。無駄な魔力を使わないような魔法の扱いの方法を掴んだのか、今では俺が見る中だと随一の魔法コントロールを身につけている。
「ステータスその物は光輝には及ばない。だが、その分ハジメはカセットアームで補える。光輝はメルドに稽古をつけてもらってるらしいが、実戦経験は少ないだろう。俺が教えている事は全て実戦経験からだから、もしかしたらお前の方が強いかもしれないな」
「天之河くんはやりようによっては勝てそうですよね。彼は真面目だから、少し煽れば……」
「激情して動きが直線的になりそうだな」
その分、ハジメは幸利との模擬戦で散々に煽られては弱体化魔法をかけられている。煽り耐性はバッチリだろう。ちなみに闇属性魔法は対象の心の状態が強く関係しているらしく、激情していたり悲しんでいたりすると簡単に術中にはめる事が可能らしい。
「さて、この後はヘルシャー帝国からの使者と模擬戦か?」
「ですね。強い人なんて先生以外居ないですから、多分先生目当てでしょうけど」
ヘルシャー帝国とは、およそ三百年前の大規模な魔人族との戦争中にとある傭兵団が興した新興の国で、強力な傭兵や冒険者がわんさかと集まった軍事国家らしい。実力至上主義を掲げており、かなりブラックな国のようだ。
力のある者に従うのが当たり前な帝国に、俺は兎に角危機感を抱かずにはいられない。
「何でもメルドより強いという皇帝が直々に来るらしいな。どのぐらい強いのやら」
「先生とやり合うなら“人間”の域を確実に出ないと無理そうですけどね」
「……否定はしない」
そんなこんなでハジメと、そのうち幸利や恵里とも雑談をしながら体を休めていると時間がやって来た。俺は腰を上げ、タイフーンを露わにして歩き出す。
すると、ハジメが何やら悪戯を思いついたかのような表情で俺に耳打ちをしてきた。
俺はハジメから話された“お願い”をはたしてやる必要があるのか疑問符を浮かべつつ、可愛い生徒のお願いだし偶には茶目っ気を見せてやろうかと思うのだった。
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「お前が、本郷猛か?」
「如何にも」
模擬戦の会場となる武舞台を中心として、凄まじい威圧の嵐が辺りを駆け巡る。既に戦いとは無縁の王室関係者の多くは意識を刈り取られてしまっていた。
光輝達やイシュタルは意識を保っているらしいが、その顔は見るからに引き攣らせて唇を噛みしめており、意識を保つだけで精一杯らしい。
俺の目の前で構えらしい構えを取ることなく此方を睥睨するのはヘルシャー帝国の皇帝ガハルドだ。だが、構えを取っていなくても彼にはメルドと同じく“できる”雰囲気があった。
ガハルドを一言で表すなら、“野性味溢れる男である”。短く切り上げた銀髪に狼を連想させる鋭い碧眼、スマートでありながらその体は極限まで引き絞られたかのように筋肉がミッシリと詰まっているのが服越しでもわかる。
「……ふん、やはり只者じゃねえな。お前、一体幾つの戦場を駆け抜けて来たんだ?」
「さあな。数えるのも嫌になる」
「お前達が元いた世界とやらは平和の権化とも言える世界だったらしいじゃないか。それなのに、そこまで戦ってきたというのか?」
「俺からすれば異世界を移動するのはこれで二度目だ。元いた世界は貴方のような力のある者がのさばり、弱い者を支配しようと活発に動いていた。俺はそんな世の中に反抗していた。それだけの事さ」
「なるほどなあ。ある意味、お前は弱者達のために戦う勇者なのかもしれねえな」
ガハルドとの会話の内容は、恐らくハジメ以外には意味の分からない物だろう。特に光輝は面白いぐらいのアホ面を晒している。
俺はガハルドの言う“勇者”という言葉を反芻して、首をゆっくりと横に振った。
「勇者なんて大層な者じゃないさ。俺は、ただの血塗れた化物だ」
「ハッ。どうやら名前だけの勇者くんとは違うみたいだな。しっかり人を殺している事を自覚し、それでも尚覚悟は揺らがないという目をしてやがる。ますます楽しみだ」
ガハルドは西洋剣のような長刀を抜き放った。瞳はギラギラと輝いており、口元はこれから始まる戦いが楽しみで仕方がないのか、三日月のように釣り上がっている。
俺はというと、腰をほんの少し捻りながら右腕を斜め上に掲げ、左腕を尾てい骨に合わせた。そのまま右腕を時計回りにゆっくりと移動させ、描く線が扇になるように動かした。
そして、左側へ腕が到達した次の瞬間……
「……変身っ!」
最初に取っていたポーズと鏡となる形を取りながら、俺は吼えた。精神統一のために吼えた。これがハジメからお願いされた事柄でもあるため、特に恥ずかしがることも躊躇うこともなく吼えた。
タイフーンが回転し、俺の体が第二の皮膚に包まれる。仮面も後ろから包み込むように現れて俺の顔を包み込んだ。最後にバッタのような赤い複眼が光り輝く。
「ほう。その姿が、お前の本当の姿か」
「ああ。少し前の人の姿は仮初め。この姿こそが、本当の俺だ」
「ならその力、試させてもらうっ!」
常人には目に見えないであろう速度で突進してくるガハルドを、俺は亀が歩くようなゆっくりとした速度で捉える。
右に左に動くガハルドに合わせて体を動かし、縦に斬りつけられたと思ったらいつの間にか横薙ぎの剣撃となっていた長刀を軽く受け止める。
刮目するガハルドに構わず、俺は二発のボディーブローに上段の回し蹴りと中段の後ろ回し蹴りをぶつけてから手加減したサマーソルトキックをガハルドの顎に叩き付けた。
彼の手にあった長刀は氷細工のようにへし折れ、ガハルドの体その物は天井まで跳ね上がり、天井にクレーターを作ってから武舞台に落ちてきた。
「どうあっ!?」
「……派手に飛んだな」
「つつ、いってえな。だが、手加減しやがったな? 何で手加減なんかしやがった。本気で来てくれなきゃ面白くねえだろ」
「本気で戦え、だと? 死にたいのか?」
風が俺の元へ集束する。特徴的な音を立てながらタイフーンが回転し、俺の身体には莫大という言葉でも足りないぐらいのエネルギーが充填されていく。
正義の使者を名乗ったところで、俺の身体は化物同然。複眼が怪しく光り、尋常ではない威圧感を与える。
「……本気で戦えと言うなら、お前は死ぬことになる。風は叫び唸り声を上げる。俺の身体の中で渦を巻き、嵐になる。大自然のエネルギーは全て俺の力だ。大自然の力の前に、お前のような弱者を虐げる者が勝つという未来は万に一つもない」
「……お、おいおい。何だそのデタラメな力。今まで見たことねえぞ」
「これ以上は止めておけ。死にたくなければな」
「……そうだな。忠告受け入れよう。今日いきなり死んだら国も崩壊するだろうしな」
「良い判断だ」
半ばからへし折れた長刀を鞘に納め、苦笑いをしながら引き下がるガハルド。俺も戦闘態勢を解いて変身を解除した。
すぐには引っ込まない俺の手術跡を見て、ガハルド「なるほどな」と頷いた。どうやら何かを察したらしい。
ガハルドは俺に背中を向けると、駆け寄った部下達を諫めてから何も言わずに立ち去った。その様子を多くの人が呆気に取られた表情で見送る。が、俺が武舞台から飛び降りた音で我に返ったらしい。先ほどの戦いに関しての感想がそこかしこで飛び交った。
そんな中、ハジメが俺の傍に近寄る。
「……七十五点です」
「何だと? あと何が足りなかった?」
「変身する時に“ライダー変身!”と叫んでなかったのでマイナス二十五点ですよ。本当ならそこから跳び上がってほしかったですけど……」
「……次からは善処する」
予想外の攻撃に、俺は少し狼狽えた。
更に追い打ちをかけるようにメルドの声が周囲に響き渡る。
「明日から、実戦訓練の一環として【オルクス大迷宮】へ遠征に行く。必要なものはこちらで用意してあるが、今までの王都外での魔物との実戦訓練とは一線を画すと思ってくれ! まぁ、要するに気合入れろってことだ! 今日はゆっくり休めよ! では、解散!」
「………はあ」
追加で大きいため息が出てくるのだった。
アンケート結果の通りに今後は話を動かします。次回は原作でいう“月下の語らい”です。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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雫