大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
学校も始まったので毎日出せるわけではないです。ご了承ください。
※話数の表記間違えた()
【オルクス大迷宮】
それは、全百階層からなると言われている大迷宮である。七大迷宮の一つで、階層が深くなるにつれ強力な魔物が出現する。
にもかかわらず、この迷宮は冒険者や傭兵、新兵の訓練に非常に人気がある。それは、階層により魔物の強さを測りやすいからということと、出現する魔物が地上の魔物に比べ遥かに良質の魔石を体内に抱えているからだ。
魔石というのは、簡単に言えば魔法の核に成り得る素材だ。良質な魔石を粉末なり染料なりにして魔法陣を描けば、通常の魔法陣の三倍の効果を期待できるらしい。
とはいえ俺は魔法を使うことは殆どない。強いて言うなら風系統の魔法は使う可能性があるかもしれない。が、結局のところ俺の武器は化物の肉体と知能指数600から生まれる独創的なアイディア、そしてバイクの操縦技術である。不慣れな魔法よりも慣れてる徒手空拳の方が遥かに戦いやすい。
「しかし、迷宮内にサイクロンを持って行けるのはありがたいなあ」
生徒達の全員が強力な魔法を繰り出すための道具を支給されているのに対し、俺はサイクロン一つで良いと断っているため荷物は非常に少ない。
その代わりにサイクロンは俺にとって重要な役割を果たす道具なため、道具が少ないとしても問題はゼロである。
【オルクス大迷宮】へ挑戦する冒険者達のための宿場町【ホルアド】で、俺は割り当てられた部屋内でサイクロンの整備を行う。
すると、不意に扉がコンコンとノックされた。
「誰だ?」
「猛さん、香織です。ちょっと、良いですか?」
「……は?」
訝しがりながらも俺は扉を開ける。扉の先には、そこには純白のネグリジェにカーディガンを羽織っただけの香織が立っていた。
女の事に関しての経験は兎に角少ない俺からすれば、香織の姿はとても衝撃的な物である。
思春期男子のようにドギマギしつつ、俺は何か要件でもあるのか? と一番有り得そうな事柄を尋ねる。しかし、香織は首を横に振って俺に点火済の爆弾を放り込んできた。
「その、少し猛さんと話したくて……やっぱり迷惑でしたか?」
「いや、迷惑ではないが……うん。とりあえず立ち話もあれだし、大丈夫だぞ」
男の居る部屋に無防備な姿でやって来たことが気になったが、話したいことがあると来れば突き放すのも心苦しい。気がつけば、俺は扉を開けて香織を招き入れてベッドに座らせていた。
瞳に見え隠れする香織の不安を何となく感じ取り、俺は調合した薬を入れた温かいはちみつレモンのような飲み物をマグカップに注いで彼女に差し出す。
この薬はリラックス効果のある薬であり、明日の大迷宮遠征に興奮気味のハジメに同じ飲み物に混ぜることで試しており、その効果は確かなため問題はない。
むしろ問題なのは、目の前ではちみつレモンモドキを飲んでいる香織である。
「……それで、話したいことって何だ? 明日の事か?」
香織は俺の質問にコクリと頷くと、先ほどまでは瞳の奥にあった不安の色が表立って出てきた。明らかに異常な様子の香織を何事かと思い、俺は気を引き締めて話の続きを促す。
「あの……明日の迷宮なんですけど、とても怖いんです。怖くて、全然眠れなくて……」
「怖い、のか?」
「この世界に来てから心の整理すらついてないのに、いきなり迷宮に行くなんて言われて怖いんです。死と隣り合わせな場所に行くなんて……体の震えが止まらなくて……」
「……そうか」
なるほど、確かに納得出来る内容だ。香織は俺とは違い、日本で平和に争いとは無縁の生活を送ってきている。しかも、香織は聖人かと思えるほど生物に思いやりを持てる優しい女の子だ。
そんな子が、いきなり見知らぬ土地に召喚される。更にその場所で自分勝手な理由を押し付けられて戦争に駆り出される。心の整理がついていないというのに、明日はいきなり死と隣り合わせの場所へ行く。
恐怖を感じない方がどうかしているだろう。
俺が特に何も感じていないのは、単純に潜り抜けてきた戦場の数が違うから。それだけだ。
「私、治癒師なのに。皆を守らないといけないのに。このままじゃ、誰か傷つけてしまいそうで……」
「なるほど、な。お前は相変わらず優しい奴だ」
「猛さん……?」
大人が子供を安心させるように、俺は香織の頭を優しく撫でる。
小さい頃は泣き虫だった俺のことを、母さんはこうして落ち着かせてくれた。遠い過去の記憶を思い出しながら、俺は不安に震える香織の事を優しさで包み込む。
始めこそ香織は不思議そうな表情を浮かべていたが、少しずつ慣れてきたのだろうか。気持ちよさそうに目を細めており、俺の肩に頭を乗せてきた。
「えへへ、温かいです……」
「そうか。俺の肌は“人”の物ではないが、温もりぐらいは感じられるのか」
「たとえ猛さんが人ではないと主張しても、私からすれば猛さんは普通の人間ですよ。心も体も、どっちも強い人間です」
「俺に残されたのは心だけだ。せめてその心だけでも、人らしく在りたい。香織がサイボーグの俺のことを人間だと言ってくれて、俺は嬉しいよ」
せめて心だけでも。魂だけでも人のように在りたい。そんな俺の小さな願いは、どうやら叶えることが出来たらしい。
なら次は、俺が香織の願いを聞くべきだろう。
「……なあ、香織はどうしたい? 明日、メルドに掛け合って此処に残るか?」
「残るのは、ダメです。此処まで来たからにはやらないといけないですから。怖いですけど……」
「怖い、か。きっとこの世界にしばらく滞在する以上、戦いには慣れないといけないのは分かっているはずだ。今は別に構わないけどな」
「分かってます。分かってるんですよ……」
「まあ、仕方ないだろう。香織と俺やメルドとでは踏んだ場数が根本的に違う。怖くなるのも当然の事だろう」
頭を撫でていた手を離し、俺は香織の顔を真っ直ぐと見つめる。相変わらず完璧な配置にある顔のパーツは、今は不安の色に彩られている。
可憐な少女に、こんな顔を何時までもさせるわけにはいかない。せめて年上として、俺は彼女を何とか安心させるために約束を口にした。
「だから、慣れるまでは……俺が香織の事を守ろう」
「猛さんが、ですか?」
「不満かい?」
「い、いえ。全くそんなことないです。ただ……何というか、やっぱり優しいんだなって」
「君には助けられた恩がある。その恩を返すために、俺は君を守る。対価としては当然の物さ」
香織は、キョトンとした表情を作ってからクスクスと笑う。先ほどまで浮かんでいた不安の色は見受けられない。どうやら、不安の気持ちはある程度緩和する事が出来たようだ。
俺はというと、誰か一人のために守ると宣言したことが少し恥ずかしくて香織から目を逸らす。
が、我らが天使様はそんな俺のインターバルすら許してくれなかった。
「ぐわっ!? お、おい。いきなり抱きつくなって!」
「えへへ、ごめんなさい。でも……しばらくこうしても良いですか?」
「うぐっ、それは……好きにしろ」
かなり危ない服装だというのにお構いなし。香織は俺の腕に抱きついてきた。
俺は引き剥がそうとするも、香織の上目遣いと潤んだ瞳によってアッサリと陥落。されるがままになった。
柔らかい感触の物が腕に当てられ、女性特有の甘い匂いが鼻をくすぐる。ハッキリ言って、俺の心中は台風のように荒れ狂っている。
「ふふ。大好きです……」
「!?!?!?」
そして追加で落とされた必殺の爆弾により、俺の心中は更に荒れ狂うことになった。
香織の気が済んで俺の腕から離れ、そのまま自分の部屋へ帰っていった後も、俺の心臓は喧しいぐらいに音を立てていた。
次回はオルクス大迷宮です。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫