大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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アレルギー性鼻炎が辛い()
今回からオルクス大迷宮です。色々と構成は考えてますので、お楽しみください。


第九話 発言と責任

翌日

 

俺達は早速、【オルクス大迷宮】へと出かけた。

 

まるで博物館の入場ゲートのようなしっかりした入口があり、受付窓口まであった。制服を着た女性が笑顔で迷宮への出入りをチェックしている。テーマパークみたいだと、俺は密かに思った。

 

なんでも、ここでステータスプレートをチェックし出入りを記録することで死亡者数を正確に把握するのだとか。戦争を控え、多大な死者を出さない措置だろう。 

 

入口付近の広場には露店なども所狭しと並び建っており、それぞれの店の店主がしのぎを削っている。ちょっとした祭りのようだ。

 

どうやら【オルクス大迷宮】は初心者から上級者の冒険者達に人気の訓練場とも言えるらしく、日々多くの冒険者がやって来ているらしい。その冒険者達に物を売ることが出来れば、店としては大繁盛に繋がるだろう。

 

俺はサイクロンを押しながら周りを見渡し、戦いとは無縁の人々達がこのまま無縁で居られるように密かに願うのだった。

 

──────────────────

 

外の賑やかな様子とは対照的に、迷宮内は不気味なぐらい静かである。俺は何時でも敵が出ても良いように風をタイフーンに集めておく。

 

ハジメも人外に変わり果てた右腕を擦り、目を目一杯に開いて索敵を厳かにした。王都郊外の実戦訓練では〝錬成〟で地面を操り、確実に魔物の身動きを封じてから剣で腹を突き刺すという戦法を取っていたため、腕の力を俺や恵里達以外が見るのは初めてである。

 

ちなみにメルド達にも内緒にしている。折角なのでサプライズにしようと言いだしたのはハジメその人だったりする。

 

少し歩くと、俺達はドーム状の広場に出た。改造された耳に物音が引っかかり、俺は気を引き締める。程なく、壁の隙間という隙間から灰色の毛玉が湧き出てきた。

 

「よし、光輝達と猛が前に出ろ。他は下がれ! 交代で前に出てもらうからな、準備しておけ! あれはラットマンという魔物だ。すばしっこいが、たいした敵じゃない。冷静に行け!」

 

俺はサイクロンに跨がる。物珍しげに俺のサイクロンを見てくる生徒達を無視して俺は突貫を開始した。それなりに場が開けているので、サイクロンを扱うのも問題ないだろう。

 

サイクロンをウィリー状態で突っ込ませると、車輪の下に入ったラットマンとやらを轢き潰す。ネズミのような姿形であり、何故か二足歩行で筋肉ムキムキなラットマンであるが、サイクロンの重量の前にはその筋肉も無力であった。

 

潰した後は前輪を軸にして逆ウィリーを作り出し、ハンドルを勢い良く切って後輪でラットマンを薙ぎ払う。アフターバーナーも駆使してかなりの数を殺すと、ようやく光輝達が追いついた。

 

光輝が純白に輝くバスターソードを振り回し、雫は抜刀術で斬り伏せる。龍太郎はその巨体を活かした重たい一撃をお見舞いしていく。そして俺も、サイクロンを超角度で旋回させて相も変わらず轢き殺していく。

 

後衛の魔法使い組が構える暇もなく、ラットマンは一部を残して全滅してしまった。その一部は、俺が意図的にハジメの方向へ流した物である。

 

「ハジメ、行け!」

「あ、待て! 坊主にその量は無理だ!」

「それはどうかな……?」

 

サイクロンの上で不敵な笑みを浮かべる。ハジメは顔以外を真っ黒なパワードスーツで包んでおり、普段の姿とは明らかに違っている。本来なら骸骨の仮面を被るのだが……ハジメは今は必要ないと思ったのだろうか。

 

ハジメは右腕を前に突き出すと、己の最大の武器を呼び覚ますために吼える。

 

「見てろよ……〝ロープアーム〟!」

 

すると、ハジメの右腕がひょうたんのような形に変わる。先にはカギの付いたロープが収納されており、見るからに鋭いと分かるだろう。

 

ハジメはロープを一気に伸ばしてラットマン数匹を絡め取り、一思いに振り回す。壁に激突してグチャグチャになったラットマンの亡骸を残ったラットマンに放り投げ、更にハジメはダッシュで接近しながら腕を変えた。

 

「〝ショットガンアーム〟!」

 

ドガアン! ドガアンドガアン!!

 

「な、おい!? 南雲、それはっ!?」

「ほう。ショットガンも作り出せるようになったのか。使いこなすのが随分と早いな」

「せ、先生! 何で南雲があんな武器を持っているんですか?!」

 

この世界に来てから動揺ばかりしている光輝。それもそのはず、ハジメは生徒達の間では〝無能〟という認識をされている。

 

そんなハジメが、突然腕を変幻自在にチェンジさせながら戦い、無能とは思えない戦いっぷりを見たとなれば……動揺は避けられないだろう。特に、生徒内では最強である光輝は突然に現れた“自分を超える可能性のある同年代の人物”が目の前に出てくれば驚くのも無理はない。

 

ショットガンを使った近接戦闘により、俺が敢えて残しておいたラットマンはすぐに全滅した。ハジメがショットガンから立ち上る煙を「フッ」と吹き消す。

 

すると、何を考えているのだろうか。光輝がズカズカとハジメに歩み寄り、憤怒の形相でハジメに詰め寄った。

 

「おい南雲! それは何だ!」

「これ? ショットガンだけど……」

「俺が聞きたいのはそんなことじゃない!」

「……それじゃあ、何さ」

「ショットガンなんて卑怯な道具を使うな! 正々堂々と戦え! 早くその道具をこっちに渡すんだ!」

「ちょっと何が言いたいのか分からないよ。君だってバスターソードを持っているのに、何で僕が武器を手放さないといけないのさ? 僕が武器を持っていることがそんなに気に入らない?」

 

ウンザリといった様子でハジメが返す。俺に関しては呆れて物も言えない。

 

確かに剣よりも銃の方が強い。だが、ハジメはこの武器を人外になることを承知してまで手に入れている。ましてや、この武器はそもそも銃ではないという変なオチもつく。

 

あまりにも支離滅裂で、何故そんなことを口にしたのかも分からない。が、ハジメの覚悟を知らないのに彼の覚悟を踏み躙ろうとしている気がして俺は腹が立ってきた。

 

あっという間に手術跡が露わになり、俺は黙って第二の皮膚を表面化させてから仮面を装着した。

 

その間にも、光輝はヒートアップする。気がつけば、檜山のようなハジメを嫌う者達も光輝に賛同して「銃を使うのは卑怯だ」と言いだしている。

 

「あのさあ。僕はステータスでは皆に敵わないから、猛先生にも手伝ってもらって武器による戦闘を試みてるんだよ。魔法に適性がないなら代替案を使用するのは当然でしょ?」

「卑怯な手段を使ってでも強くなるなんて間違っている! 第一、何で先生も南雲に加担しているんですか!」

「ハジメが強くなりたいと頼んできたからだ。ステータスでは到底敵わないから、せめて自分の唯一の才覚である〝錬成〟を駆使して武器を作りたい。そのためにも協力して欲しいと言われた。それだけだ」

「だ、だったら先生が南雲の分まで戦えば良いじゃないですか! 先生は誰よりも強くて力があるから、南雲程度のカバーは出来るでしょう!? それに、そこまで強いなら戦闘経験だってあるはずです!」

「……なんだと?」

 

逆鱗に触れられた。

 

俺は仮面を外してハジメに投げ渡し、ツカツカと光輝の元に迫る。既に怒りはメーターを振り切れており、止まることは絶対にない。

 

光輝の胸ぐらを掴んで持ち上げると、俺は身の丈をぶちまける。

 

ふざけるなぁ!!!

「ッッ!?」

「力があるからカバーしてやれだと? 誰よりも強いから俺が動けば良いだと? お前はあの日、『俺が世界も皆も救ってみせる』と言っただろう! 自分の発した言葉すら忘れたのか!」

「そ、それはっ」

「第一に、だ。俺は強くなりたくて強くなったわけじゃない! 好きで戦うわけでもない!

 

望みもしないのに勝手に身体を弄くられて、扱いきれない力を手にしてしまっただけだ! そして、俺と同じ悲しみを味わう人が少しでも減るように戦った。それだけだ!

 

救えなかった人も多く居る。それでも、俺は少しでも同じ悲しみを味わう人が減るように戦った。断じて、戦いたくて戦場に身を置いたわけではない。出来ることなら戦いたくないし、俺と似ているようで異なる者を殺すのも辛かった。

 

それでも。それでも、戦ってきたのだ。

 

しかし、誰かに「戦ってくれ」と言われて戦おうとは思わない。思えない。

 

「お前にとって、ハジメはどうでも良い存在なのか! どうなんだ?!」

「ち、違います! 俺はっ」

「違うなら何故、俺に押し付けようとする! 最近、少し力を手にしたからって調子に乗りすぎだ! そんなことじゃ、戦場で皆の足を引っ張ることになるぞ!」

 

ゴツンッ! と光輝の脳天を一発チョップする。地面に盛大なクレーターを作りながら蹲る光輝に、俺は最後に一言吐き捨てた。

 

ヒーロー(勇者)なら自分の発言に最後まで責任を持て」

 

と。

 

檜山達がまだ睨みつけてくるも、逆に睨み返してこれ以上の反論を完全に封じた俺は、メルドに迷惑をかけて申し訳ないと口にして先へ進むことを促すのだった。

 




勇者(笑)はひとまず(笑)の状態です。というか、本物のヒーローが現れたので光輝の立場が危うい気がする()

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