大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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さ、寒い……()
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第十二話 撤退

「か、勝てたんですかね?」

「さ、流石に大丈夫だろ? 確かに奈落の底へ落ちていったし」

「うん。それに、蹴り飛ばされた直後の奴の目は死んでいた。大勝利だと思うよ」

 

落ちていくベヒモスを見て、ハジメは骸骨の仮面を外しながら不安げに言葉を口にする。が、心配しなくても恵里の言うように俺達の勝ちだ。ベヒモスはショッカーどころかデルザー怪人並の耐久力があったが、ライダーダブルキックを食らって生き残る者は存在しない。

 

「そう、か。良かったあ……」

「おい、まだ気を抜くな。あの骸骨戦士達は一応健在だからな。この階層、いや大迷宮を抜けるまで油断はするなよ」

「分かってますよ。ただ、二人が傷つかなくて良かったと安心したんですよ」

 

屈託のない笑顔でそんなことを言われると、俺であっても何かを口にすることは出来ない。

 

仮面の中で苦笑を零すと、俺はクルリと反転しサイクロンに跨がってハンドルを手にすると、未だに骸骨戦士達と戦っている生徒の元へ行く。

 

爆音上げながらサイクロンは疾風の如く走り抜け、立ち塞がろうとした骸骨戦士の体を木っ端微塵に破壊し尽くした。

 

ハジメもやがて追いつき、電磁ナイフを取り出して上へ行く階段目指して走りながら斬り捨てていく。その姿は通り魔のようだ。

 

どうやらハジメが倒した骸骨戦士が最後の一人だったらしく、ハジメが電磁ナイフで粉砕するとパタッと敵の出現が止まった。魔法陣は輝きを失っており、在庫切れしたらしい。

 

「……どうやら、攻略出来たらしいな」

「あ、ああ。そうだな。全く、なんて奴だ」

「とりあえず撤退だ。魔力回復薬も少ないだろうし、元よりここに来るのはイレギュラーだったからな」

「そう、だな。よし、お前ら疲れてるかもしれないが早いところ撤退するぞ! 今日の訓練はこれで終わりだからな!」

「座り込みたい気持ちも分かる。が、これから上に戻るなら再び魔物に遭遇することになる。道は俺とメルド達が切り開くから、もう少し頑張るんだ。良いな?」

 

何時もの聞き慣れた、頼りにしかならない団長の喝。そして俺の言葉に、沈んだ表情をしていた生徒達に多少だが生気が戻った。

 

仮面を外したいところだが、この場で外すと未だに浮かび上がっている顔の傷跡で再び気持ちを落としてしまう可能性があるため、俺はサイクロンのハンドルを握り最前線に立つ。

 

複眼でゴールまでの最短距離を捜しだし、現れる魔物を一撃で屠る。体にも心にも来るのは、ひたすら階段を登る事だけ。それ以外は兎に角生徒達に災厄が降りかからないように進む道に立つ魔物一匹も逃すことなく蹂躙していった。

 

 

どのぐらいの時間が経ったのだろうか。

 

 

気がつけば、俺達の上方には魔法陣が描かれた大きな壁が現れた。メルドが駆け寄って確認をし、魔法陣の式通りに詠唱して魔力を流し込む。すると、扉が忍者屋敷の隠し扉のようにクルリと回転して奥の部屋を出現させた。

 

扉を潜ると、そこは随分と懐かしく感じる元の二十階層の部屋だった。

 

気が抜けたのか、次々と本格的に座り込んでしまう生徒達。それを見たメルドは悩んだ表情を見せつつももう一度だけ喝を入れた。

 

「お前達! 座り込むな! ここで気が抜けたら帰れなくなるぞ! 魔物との戦闘はなるべく避けて最短距離で脱出する! ほら、もう少しだ、踏ん張れ!」

 

少しくらい休ませてくれよ、という生徒達の無言の訴えをメルドはギンッと目を吊り上げて封殺する。それでも尚、立とうとしない生徒に対しては俺が仮面を外して睨むことで強制的に起立させた。ため息が量産される。

 

そこから一階層までの道のりは、短いようでとても長く感じた。正面門をくぐって外に出た俺は、そこで漸く一息つく。誰かを守りながら戦うというのは疲れるのだ。

 

「だあ……やれやれ。先が思いやられる実戦訓練だったな」

「すまないな。お前さんに何から何まで手伝ってもらってしまった。騎士団として面目ない」

「そう頭を下げるな。人として、当然のことをしたまでだからな」

 

俺は階段を登り切って今度こそ地面にへたり込み、緊張が解けたからか泣き出す生徒達を見ながらメルドに受け答えする。

 

すると、俺の滅入った表情が気になったのか、ハジメがクイクイっと俺の裾を引っ張った。

 

「なんだ?」

「あの、言い忘れてたんですけど。ベヒモスと戦う前に変身ポーズ取ったじゃないですか」

「……ああ、確かに取った。あれで正解か?」

「もちろんです! しかも跳んでいたので百点満点どころか百二十点です!!」

 

前回とは違ってしっかりと百点満点どころか百二十点を頂いた。そのことを嬉しく思いつつも、俺はとある懸念事を口にする。

 

「なら良かった。だが、これから変身する時は彼処まで時間かけないと思うぞ」

「え、そうなんですか?」

「そうなんですかって、お前な。変身にそこまで時間はかけられないだろう? 今回は慌てふためく生徒達を落ち着かせ、ついでに骸骨戦士への威嚇のために彼処までゆっくりやったがな」

「ううん……あ、でも威嚇目的には使えそうですね。先生の声ってよく通りますから」

「もっと他に威嚇の方法はあるだろうに……」

「ダメです! 先生も少しはロマンというのを分かってくださいよお!」

 

「先生はロマンが分かっていない!」……と、なんかハジメから叱られてしまった。先生はロマンというのが足りないらしい。

 

リアリストにそんなことを言われても困るんだけどなあ……どうしよう。

 

──────────────────

 

夜 宿場町ホルアド

 

「くっ。何で思い通りにならないんだ……」

 

勇者(笑)である光輝は、自分の部屋で一人ブツブツと今日の出来事に文句を垂れる。

 

光輝は、今日起きたクラスメートの危機に対して何の反省もしていなかった。あれは、檜山が先に触ったから自分のせいではない。自分は檜山を止めに行っただけ。そう思い込んだのである。

 

光輝にとって、正しいのは常に自分なのだ。仮に本物の勇者(ヒーロー)が現れても彼は信じようとしない。あくまでも。ヒーロー(勇者)は自分一人としか思っていないのだ。

 

「俺は間違っていない。正しいのは俺だけだ。正義は俺なんだ……」

 

完璧超人として持て囃された光輝にとって、生まれて初めての挫折。たった一度の挫折が、光輝のメンタルを完膚無きまでに破壊していった。

 

自分よりも強く、またヒーローである先生の存在。そして、無能だと心の何処かで馬鹿にしていたクラスメートが見せた八面六臂の活躍。対して光輝は何をしていたのだろうか……。

 

「……夜風に当たりに行こうかな」

 

居ても立ってもいられなくなった光輝は立ち上がり、扉を開けて外に出る。そこで彼は、一人の見慣れた少女を目撃した。

 

「香織、か? こんな時間に、あんな服装で如何したんだ……?」

 

それは、ネグリジェ姿の香織だった。随分と危なっかしい姿の香織に、光輝は思わず声をかけようとする。

 

が、彼の言葉は喉まで来たところで止まってしまった。香織がノックした扉。そこから現れたのは、本郷猛その人であったのだ。

 

光輝の頭が真っ白になる。

 

茫然と立つ光輝には気がつかず、香織は猛の部屋へ入っていった。

 

気がつけば、光輝は元いた部屋にフラフラと戻っていた。ブツブツブツブツと、壊れたオモチャのように言葉を発しながら。

 

「なんで……。なんでっ。なんでっ。なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして……」

 

香織は彼にとって幼馴染みである。小さい頃から親同士での付き合いがあり、とても長い間一緒であった。だから光輝は香織の事を何でも知っているつもりでいた。そして、超自然的に香織は絶対に自分の元を離れないという、変な確信めいた感情まで持っていた。

 

しかし、現実はどうだろう。彼女は、彼が見たことのない表情を先生である猛に見せていた。その表情は、間違いなく“女”の物だった。その事実が、光輝の精神を完全に破壊する。

 

 

召喚された当時の、夢と希望を守る勇者の姿はそこにはない。そこに居たのは、ただの殺人鬼のような顔をした少年だった。

 

地獄と絶望を呼び寄せるかのような表情をし、光輝は独り頭を掻き毟って夜通し呟き続けた。

 

心には、猛に対する呪詛を抱きながら。

 




次回は猛の部屋に入っていった香織がメインです。あと恵里とハジメについても書きます。

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本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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