大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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遅くなりました。更新です!
前回、もう一度オルクスに潜るとは言いましたが……ただ潜る訳ではありません。最早原作の形すらありませんが、これでも良いのかしら()


第十三話 戦士に休みはない

翌日

 

オルクス大迷宮の入り口近くにある広場は騒然としていた。

 

いや、入り口付近の広場が騒然としているのは何時ものことらしい。正確には、悲鳴や怒号が彼方此方に飛び交っているといったところだ。

 

その理由は……。

 

「「「「「アーッ!!」」」」」

 

特徴的なフェイスペイントにベレー帽と。胸にはこれまた特徴的なマーク。黒い服が四体に赤い服が一体。旧ナチスのような敬礼をする変人が人間とは思えない力で暴れ回っているからである。

 

俺はその場に到着して、思わず目を見開いた。いや、目を見開いているのは俺だけではない。ハジメや幸利、香織も目を見開き、驚愕を露わにしている。

 

「そんな、まさか。何故ここに居るんだ」

 

正直言って信じたくない。その名前を口にすらしたくない。俺にとって、奴らは忌まわしき者でしかない。

 

だが、俺の目の前で起きている出来事は確かに現実であった。認めざるを得ない。

 

「何故、ショッカーがここに居るんだ?」

 

そもそも、何で俺達がオルクスの入り口付近に居るかである。が、別にその理由は大した物ではない。今日は前日にかなり疲労したので自由行動なのだ。結果、俺達含めて全員が広場の露店にでも行こうということになったのである。

 

そして、来た結果がこれだ。

 

俺達は、というより俺は不幸や厄介事を引き寄せる何かでもあるのだろうか。

 

とりあえず、ショッカーが人を襲っているのを黙って見ていられる訳がない。

 

「待てショッカー! 俺が相手だ!!」

「「「「「イーッ!!」」」」」

「来い!」

 

俺の声に反応してすぐに取り囲んでくる戦闘員達。どうやら、ショッカーの者で本当に間違いないらしい。

 

此奴らが何故この世界に居るのかは謎だが、このまま放置しては多くの人の尊い命が犠牲になってしまう。そんなことは許せるはずがない。

 

「幸利、恵里。他の生徒も一般人の避難誘導を頼む! ハジメは来い!」

「変身はした方が……って、右腕なら案外余裕ですね」

「スゲえな。ハジメ、右腕だけで戦闘員を殴り倒してるぞ」

「無駄話してる暇があったらそこに居る小さい子を運んでくれない?」

 

それぞれが各自で行動をする。俺は手慣れたように戦闘員を蹴り飛ばし、ハジメも負けじと右腕で何度も殴って戦闘員を戦闘不能にしている。

 

しかし、倒しても倒しても戦闘員達はどこからともなく現れる。これぞショッカーの戦闘員だ。一体どこから湧いて出てくるのだろうか。隼人によれば、此奴らは半分クローン人間で半分は改造人間だから幾らでも作れる……らしい。

 

その話を聞いたときに、ブラック企業に勤める平社員みたいと思ったのは内緒である。

 

「〝パワーアーム〟! 先生、此奴ら何体居るんですか!? もう十以上は沈めましたけど!」

「無尽蔵だと思え! これだけ戦闘員が倒されたとなれば、必ず作戦執行のための怪人が出てくるはずだ!」

「か、怪人って。もしかして露店の屋根に立っているカメレオンみたいな奴の事ですか!?」

「……ああ。何時の間に現れたのか。隠れてたみたいだな」

「先生ぇ!?」

 

ハジメが指さした場所には、確かに見覚えのある造形をした怪人が不気味な笑い声を上げながら此方を見ていた。

 

ハジメの言葉通り、怪人の姿はカメレオンをそのまま人間にしたような見た目である。端的に言えばすっごく不気味。リアルすぎて怖く感じる。

 

「カメレオン男。まさか、お前が居るとは思わなかったぞ」

「……!? 貴様、何故この私の名を知っている。さてはスパイか、それとも裏切り者か? 貴様の名前を言ってみろ……!」

「俺か? 俺は……本郷猛。貴様らショッカーに歯向かう人間であり、大自然が遣わした正義の使者だ」

「ふざけているのか、貴様。我らがショッカーに歯向かえる人間などこの世には存在しない」

「それはどうだろうな」

 

ビシッ! と音が鳴る勢いで右腕を斜め上に上げ、左腕は拳を作って腰に当てる。

 

「ライダァァァア……」

 

右腕をゆっくりと時計回りに動かし、叫びながらカメレオン男の事を威圧して動きを封じる。そのまま俺は鏡写しのようにポーズを反転させた。

 

「変身ッ! トオッ!!」

 

ゴウンッ! と何処からか音が鳴り響く。俺は跳び上がり、空中で身体を改造人間の物へと変えてカメレオン男の後ろに降り立った。

 

「貴様、その姿は我々と同じか?」

「ショッカーに身も魂も売った怪人と一緒だと? 冗談は休み休みに、寝言は寝て言え」

「貴様っ!」

 

殴りかかってきたカメレオン男の腕を掴み、露店の屋根から引きずり下ろす。

 

カメレオン男。そして俺の姿を見てパニックになった人々を何とか抑え込んでいる幸利と恵里が居なかったらかなり戦いにくい状態であった。

 

「トオッ! ハアッ!」

「フゥ! ヒィーヒッヒッ……!」

 

バキッ! バキッ! と拳がぶつかり合う。その度に起こる風で露店の一部が吹き飛ばされる。

 

その風を利用してカメレオン男は後ろへ下がり、カメレオンのような長い舌で俺の首を締め上げてきた。

 

息苦しさに耐えつつ、俺は奴の舌を握り締めて周囲を見渡す。

 

ハジメは戦闘員を全て片付けたのか、一般人の避難誘導に加わっている。先に避難誘導をしていた二人も今ではパニックに陥った人達を沈静化させていた。

 

唯一気になるのは、本来なら謹慎を言い渡されたはずの光輝が俺とカメレオン男の、特にカメレオン男の事を食い入るように見ていることだ。

 

が、気にしている場合ではなかった。

 

すぐに視線を逸らし、カメレオン男の舌を手刀で切断。俺は悶絶するカメレオン男に向かって跳び上がった。

 

だが、跳び蹴りが着弾する一歩手前でカメレオン男の姿が消えた。どうやらカメレオン男は、その名の通りカメレオンのように姿を消すことも出来るらしい。その反面、近接の格闘は苦手のように見えるが……逃げ足の速い奴め。

 

「む? 何処へ……」

「あ、あれ? 消えた?」

「……いや待て。消えてはいない。まだ気配や足音が残っている」

「気配が……は? 気配と足音ですか?」

「足跡は……おい待て。大迷宮に続いてるじゃないか。早いところ追いかけるか」

「あ、ちょっ。先生!?」

 

改造人間の特性をフルに活かしてカメレオン男が何処に逃げたかを見破ると、サイクロンを呼び出して運転席に跨がり、俺はスロットルを全開にして入り口に立っていたお姉さんを無視して大迷宮へ突入した。後からあの場に居た生徒達が慌てて追いかけてくるが、一切を無視してカメレオン男に追い縋る。

 

途中で戦闘員達が足止めのつもりか立ち塞がるも、犯罪者のように轢き殺して階段をバイクで駆け下りる。足跡は二十階層のグランツ鉱石の近くで途絶えていたため、おそらくは転移を使ったと見て俺も迷いなく鉱石に触れて転移魔法陣を起動させる。

 

「待てぃ!」

「げっ、貴様っ!?」

「今度は逃がさんぞ!」

「ぐ、くく。そう強気で居られるのもここまでだぞ!」

「なに?」

「今度は私一人ではないのでなあ!」

 

すると、確かにカメレオン男以外の強い気配を感じた。それも一つや二つではない。ザッと八つはあるだろう。

 

対する俺は一人。ハジメ達が到着するにはもうしばらく時間が必要だろうし、そもそも役に立つかも分からない。百歩譲ってハジメと今朝パワードスーツの予備を渡した幸利や的確な援護が出来る恵里は戦力になるが、後は厳しい。

 

ベヒモスの強さがデルザー軍団の怪人と同じぐらいだとすれば、目の前に立っている怪人軍団は個々がその三分の二ぐらいの強さだ。しかし、数が多いため少々厄介である。

 

というか、この場に謹慎しているはずの光輝がやって来たら余計に面倒になる。怪人に挑発されては特攻して死ぬ未来が余裕で思い浮かぶぞ。

 

「驚いたか? ショッカーの改造人間は貴様ら如きに遅れを取る訳がないのだ」

「そうだ。まさか改造手術を施したベヒモスが倒されるとは思わなかったが、これより下の階層はショッカーの秘密基地。何度倒そうとも、破損箇所を再改造して蘇るのだ!」

「貴様に勝ち目は万に一つもない!」

「遅れを取る訳がない、だと? フッフッフッフ……ハァーッハッハッハッハッハッハッ!」

「っ、何がおかしい!?」

 

だから、少しでも時間を稼ぐために俺は挑発的に嘲笑う。

 

カメレオン男含む怪人軍団は俺が笑うとは思っていなかったのだろう。明らかに動揺したと分かる佇まいをする。中には一歩、無意識に後退る怪人まで見受けられた。

 

内心でほくそ笑み、俺は更に笑う。

 

「クックックッ。ショッカーは何者にも負けない、と言いたいのだな? そうだとすれば、片腹痛いぞ!」

「何だと!?」

「この世に悪が栄えた例など一つもない! そんな現実にも目を向けず、都合の良い夢だけを見ている貴様らはこのように笑い飛ばされるのがお似合いだ!」

 

隼人や茂ならどうやって挑発するか。それを必死に考えながら言葉を口にしていく。俺はそこまで挑発をする人間ではないため、不慣れには変わりないが……どうやら井の中の蛙になっているこの世界の怪人には効果てきめんのようだ。

 

そして、俺の剣幕に怪人達が気圧されている間に、漸く俺の心強い味方が到着したらしい。

 

「先生! 待たせました!」

「げえ、何だ此奴ら。テレビで見る数百倍は気色悪いデザインだな……」

「そんなこと言ってる暇があるなら早く戦闘準備しなよ。役立たずとはいえ、他のクラスメートが到着するまでもう暫く時間はかかるよ。ザッと見てあと五分かな」

 

どうやらハジメパーティーだけは俺の行方を察知して鉱石を使った転移をしてきたらしい。彼らの言動から知るに、他の生徒達は悠長にも階段を使っているのだろう。

 

だが、必要な役者はこれで揃った。

 

「変身ッ! ヤアッ!!」

「変……身!」

 

ハジメは漆黒のスーツを纏ったスカルマンに、幸利は十字が施された仮面を被ってハジメとは対照的な白いスーツを纏う“十字火面(クロスファイヤー)”へと姿を変えた。

 

ハジメが近から亜中距離特化の武器を多数所持しているのに対し、幸利には幅広い間合いに対応出来る武器を託している。一例を挙げると狙撃銃剣やカッターブーメランである。

 

「先生、一つ質問です。あの化け物達は……人間ですか?」

「……人間だ。救われなかった、人間だよ」

「そう、ですか」

「幸利と恵里は奴らを倒すとは考えるな。足止めしてくれるだけで良い。俺とハジメで奴らを倒す。ハジメ、出来るな?」

 

わざわざ指示を飛ばしたのは言うまでもなくハジメから事情と覚悟を聞いていたからだ。それとなく、俺は彼の覚悟をもう一度見せてもらおうとしているのである。

 

彼が返した言葉は、俺の思った通り。いや、想像以上に良い物であった。

 

「男なら出来る出来ないじゃないですよ。やるかやらないかでしょう? それに、先生なら僕が如何するかなんて分かってるはずです」

「……そうか。悪かったな」

「他のクラスメートが到着する前にケリをつけましょう。それでは、お先に!」

 

すっかり逞しくなったようだ。

 

俺は仮面の中で滅多に零さない笑みを浮かべ、ハジメの後に続いて怪人軍団に突撃するのだった。

 




とりあえず戦闘員は旧1号時代の者です。叫び声が「アーッ!」なのはカメレオン男の配下だから。あと初期は叫び声が固定ではなかったからです。ついでにカメレオン男にした理由は、透明化というわりかし扱いやすい能力があったから()
怪人軍団はトカゲロン以外の旧1号勢です。今のところはショッカー(ゲルも?)のみのつもりですが、今後他の勢力も出す……かも。

※なんか運対という理由で検閲済みの感想が見受けられますが、私個人としては毎回の感想が本当に嬉しくありがたいです。評価の色を付けて頂いた皆様も本当にありがとうございます。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ

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