大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「彼奴ら、この迷宮内に基地があるみたいな発言していたよな。折角だし、このまま潰しに行こうかと思うんだが……」
俺の発言に真っ先に反応したのはハジメだ。まだ口にはしていないが、オルクス内に在ると思われるショッカーの基地を放置するとどうなるのかを理解しているのだろう。
当然、ハジメは同行すると声高らかに宣言した。そしてハジメが同行するとなれば、恵里と幸利も自然と同行する流れになる。
ここまでは想定の範囲内だ。この先は完全に予想が出来ていないが。
「……あの、猛さん。私も行きます」
「香織もか?」
「猛さんの作る薬品だけで完全回復は難しいはずです。恵里ちゃんも何方かと言えば攻撃魔法寄りですし、ヒーラーが居ないと苦しくなると思いますよ?」
「そうか。それもそうだな」
香織を誘おうか迷っていたが、彼女自身から付いていきたいとの願望があるなら断る必要はないだろう。実際問題、俺の作る薬品だけでは回復にも限界がある。とてもありがたい提案だ。
しかし、その事に異を唱える者が当然ではあるが出てきた。
まずは我らが勇者である。
「待ってくれ。香織がパーティーを抜けるなら、誰が俺達の回復をしてくれるんだ? 先生達は強いんだから、回復役なんて要らないじゃないか」
「「はあ?」」
「それに香織。先生の姿は見ただろう? 先生は危険な化け物だ。元々は人だった怪人でも躊躇なく殺すような化け物なんだぞ? そんな奴に付いていったら君の命が危ない」
何を言っているのか分からない。端的に言うならば、光輝は俺が殺しを躊躇うことのない狂人だと言いたいのだろうか。
……ふざけてるのか? 俺が好き好んで殺しをするなど有り得ない。怪人を放置したら、より多くの命が消えてしまう。その事を十全に理解しているから、俺は自分の手を汚してでも人々の未来を守ろうとしているのである。
仮初めであっても平和というものを実現させるなら、誰かの犠牲が必ず必要だ。その犠牲に、俺は進んでなっているのだ。好き好んで人を殺すなど、断じてない。
「そ、そうだぜ白崎。こんな化け物の側に居たら、白崎も化け物になっちまうぞ?」
「檜山の言う通りだ。香織、どうか思いとどまってくれ。これは君のために言ってるんだ。あんな化け物に付いていっても不幸になるだけだ!」
更に檜山が加勢した。流石に腹が立った俺は、一言文句を口にするために仮面を外そうとする。
が、それを香織が何故か止めた。いつも通りに見える笑顔で。ただし、背中には日本刀を持った白夜叉を背負って。
暗に口出しは不要と悟り、開きかけた口にチャックをする。
「……さっきから黙って聞いていれば、好き放題言ってくれるね。光輝くん達がそんな人だとは夢にも思わなかったよ」
「か、香織?」
「幻滅したよ。私は、光輝くんは誰にでも手を差し伸べる優しい人だと思ってたのに。本当は自分と少し違う人は嫌っていたなんて。表沙汰にならないだけで、本当は障害を持っている人や肌の色が違う人を差別しているんじゃない?」
恐ろしい形相で光輝に詰め寄る香織。とんでもない迫力に、俺ですらも動けずにいる。
「檜山くんもだよ。猛さんの事を何も知らないのに、どうして化け物だと言い切れるの? 貴方は猛さんの何を知ってるの? それとも人を見た目で判断しているのかな? かな?」
「ち、違う! 彼奴は誰が見ても殺人鬼だろ! 俺は白崎のためにっ」
「うん、確かに猛さんは強いよ。誰も敵わないぐらいね。でも、それと猛さんが殺人鬼なのは話が違う。ましてや、猛さんは自ら望んだ訳ではない力で戦っている」
「それが、何だって言うんだよ!?」
「望みもしない力で自分の生き写しを殺すという現実と、人ではない身体にされたという事実で誰よりも辛い思いをしてきた猛さんが殺人鬼になるはずがない。なれるはずがない。世界中の誰よりも苦しんで、悲しんで。だけど誰よりも人の命の尊さを知っていて、誰かのために手を差し伸べる。世界一優しくて孤独な真のヒーロー。それが本郷猛さんだよ」
……驚いた。昨晩、俺は香織にこれまで辛かったことを全て吐き出しているが、ここまで見られているとは思わなかった。
俺が戦う理由の大半は“誰かのため”だ。自分のためじゃない。それを知っているのは隼人ぐらいだったのだが……香織にはつくづく脱帽した。
「……何も知らないのに、猛さんの事を見た目や上辺の行動で判断して化け物呼ばわりする貴方達と一緒には戦えない。ここまで言っても止めるなら、私は貴方達を殺してでも猛さんと共に歩んでいくから」
「そ、そんな……」
香織はクルリと背を向けて、俺の元へやって来た。呆気に取られている俺に向かって、先ほどの悍ましい空気は何処に行ったのかとツッコみたくなるぐらいの笑みを浮かべて。
さっきまで言い縋っていた二人は、どうやら香織の決意が固いことを理解したらしく、誰が見ても分かるぐらい落ち込んでいる。
……いや、気分が悪いのは俺もだからな?
という言葉はとりあえず呑み込んでおく。何故なら、光輝は懲りることなく恵里と幸利に話題を振ったからだ。
「な、なら中村と清水はこっちに残ってくれないか? 南雲なんかの傍よりも絶対に居心地が良いし、何より二人が抜ける穴は大きすぎる」
「……ふざけてるのか?」
「ふざけてなんかない! 先生と香織。そして南雲の三人が居ればパワーバランスは十分だろ? それに比べてこっちは『これ以上、干渉してこないでよ。この偽善者』ッ……!?」
半ば呆れて物も言えない俺の代わりに恵里が絶対零度と錯覚する声音で割り込んだ。
恵里の瞳からは生気が完全に失われており、はたして生きているのか? と思わずにはいられない。まあ、恵里はハジメにドップリ依存しているので引き離されそうになったら断固拒絶するのは分かり切ってる。
……分かってはいたが、流石に身震いする。女ってのはやっぱり怖い。
「そんなに驚く必要はないでしょ。君は偽善者だし嘘つきだよ。そんな人の傍に居たら毎日嘔吐して過ごしてしまいそうだからお断りだね」
「賛成だな。俺もお前と一緒にパーティーを組むなんて血を吐いてでも断るぞ」
とんでもない断り方だ。そう思う反面、二人の言い分にも納得してしまう辺り俺も偽善者なのかもしれない。
ただ、恵里と幸利の様子が尋常ではない。長く人の負の感情に触れてきた俺だからこそ分かるぐらいに僅かな物だが、二人の瞳の奥には今にも射殺しかねないほどの殺意があった。
そしてその理由は、幸利の次の言葉によって知ることになる。
「第一、俺と恵里の事を大多数と違うからって除け者にしたお前らとは戦いたくないね。恵里は知らないが、少なくとも俺は何度も何度も自殺行為に及んだんだが? その謝罪も、自覚もされてない奴らと一緒に過ごしたい人の方がどうかしているだろうよ」
空気が凍る。
ハジメにどういう事かと尋ねてみると、恵里は一人称が「ボク」で女なのに男っぽい髪型だから。幸利は誰も知らないような漫画やアニメが好きだからという幼稚な理由で学校中から除け者にされていたらしい。
そしてその中心に居たのは、いつも光輝と檜山だったという。
いや、実際には表だって行動していたのが檜山であり、いつも傍観者で止めようとせず、余計に火種を撒くのが光輝だったそうだ。
流石の俺もドン引きする。
「謝罪しない。反省もしない。自覚すらない。人の気持ちを一切考えられない奴らと仲良しごっこするのは当たり前だけど無理なんだよ。俺と恵里が信用しているのはハジメと猛先生だけさ」
「ボクもだよ。何より、ハジメと引き離そうなんて納得いかないから」
最早取り付く島はない。手段を片っ端から折られた光輝は愕然としている。
いや、愕然するのはおかしいと思うけどな。
とりあえず、これで邪魔者は消えた。一応、念のため香織に、
「雫と別れの挨拶しなくても良いのか?」
と聞いたが彼女は満面の笑みで既に話は付けてるからと答えられた。オマケにメルドとも話を付けてると言われて、俺は思わず苦笑せずにはいられない。一刻も早く立ち去りたいという無言の訴えでもあるのだろう。
香織の意向もあるので、俺はクルリと背中を向けてサイクロンを押しながら橋を渡る。目指すはこの先に多く待ち構えているであろうショッカーの基地だ。
餞別代わりに飛んできた火球や斬撃をスイスイ躱し、俺達は六十五階層を抜けて下へ下へと下っていくのだった。
ようやく次回からオルクス潜りです。表の迷宮はサッサと駆け抜けるように終わらせるつもりです。基地と言えば地下ですし。
そろそろキャラクター紹介に一話使おうかな()
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫