大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
一行は足音しか響かない暗い道を行く。あまりに静かすぎて、自分の心音が喧しい。
「……なあ、香織。一つ気になることがあるんだけど」
「え、何ですか?」
気分転換のためにも、俺はサイクロンを偵察に出してから香織にずっと疑問に思っていたことを尋ねてみた。
「雫を同行させなかったのは何故だ? こんなこと言うのもあれだが、あの地獄のようなメンバーの中に人の機微や心を読める雫とは相性最悪なはずだが……」
「……私も、何度も一緒に行こうって誘ったんですよ? でも、雫ちゃんが頑なに断ってきたんです。『私が居なかったら誰が止めるのよ』って」
「……ショッカーの基地を壊滅させたら雫に何か甘い物でも買ってあげよう。雫は甘い物全般が好きだったはずだよな」
彼女のためにも、なるべく早く基地を壊滅させのうと決意する。あの連中のストッパーになるのであれば、尋常ではない負担が心にかかるだろう。
それを請け負うと自分から切り出すのだから、彼女の精神は軽く人間離れしてる。
「……お、帰ってきたな」
雫は何を食べたらメンタルヘルスが回復するだろうかを一心に考えながら歩いていると、聞き慣れた爆音を鳴らしてサイクロンが帰ってきた。
「結果はどうですか?」
「……いや、ダメっぽい。この階層に基地は存在しなさそうだ。魔物一匹すら居ないのは不気味すぎるけどな」
六十六階層は外れだ。そうなれば、早いとこ階層を下げるべきである。
俺達はサイクロンが見つけた下へと続く階段を使って更に下へ行く。六十六階層に滞在した時間は僅か十分程度だった。
その後も下に降りては探索を続けるが、少なくとも六十六階層から八十五階層までは基地や強化された魔物どころか戦闘員すら見当たらない。見つけられたのは、七十七階層と八十階層にあった基地らしき跡地のみである。
念のために跡地も隈無く探索してみたが、めぼしい物は殆どなかった。一応サイクロンに押し込んであるのは改造人間の造り方についての説明書だけだ。役に立てば良いが……使いたくはない。
さて、ここまで特に収穫もなく淡々と下った訳だ。しかし、今やって来た八十五階層は階層に降りた途端に雰囲気が明らかに変わった。
「む……」
「これは、居ますね」
「ハジメも分かるか。気をつけろよ。間違いなくこの階層には怪人と戦闘員が居る」
長年の戦闘経験が警告を発している。と言うのも、八十五階層は入り口からいきなり基地のような見た目なのである。如何にも居ますよ! みたいな雰囲気だ。
しかも、電気に当たる機材がつい最近付け替えられたような痕跡も見られる。間違いなくこの階層には何かある。
そして、この階層に何かあるのを裏付ける“多数の声”が俺の耳に入った。
そのうち一つの声は、しきりに「止めて!」「誰か助けてください!」と叫んでいる。他の声は「栄あるショッカーに選ばれた英雄よ」という物。間違いない。此処には、改造人間を生み出すための道具が置いてある!
一目散に俺はサイクロンで走り出した。目的は当然、声がした場所だ。
ブウゥゥゥゥゥウウン! ドゴアン!!
サイクロンで声がした場所の扉を突き破り、中へ突入する。ついさっき居た場所からそう遠くはないため、ハジメ達もすぐに追いつくだろう。
が、問題は目の前の光景である。
白衣姿の人間が「侵入者だ!」とか「殺せ!」と叫んでいるが耳に入らない。
「……なん、だと」
何故なら。何故なら、俺の目の前にある手術台に拘束されていたのは、まだ中学生ぐらいのウサ耳少女だったからだ。
まだ、何処からどう見ても子供である。特に手術跡が見受けられないことから、まだ手術に及んでいなかったことに安堵する。が、それと同時に俺の怒りは臨界点を超えた。
襲いかかってきた戦闘員の顔面を掴み、難なく握り潰す。後ろから羽交い締めにしようとする戦闘員は肘鉄で胸に穴を開ける。腰が抜けた白衣姿の人間は容赦なく手足と喉仏を踏み抜く。
少女を改造しようとしていた者は、僅か数秒で全滅してしまった。
「……あなたは、誰ですか」
「………怪物さ」
少女の質問に、俺は端的に答えた。
とても短い会話。ほんの数瞬だけ合う視線。マトモに顔すら見ていないが、少女は随分と綺麗だなと思う。少し青みがかった白髪に透き通るような碧眼。白磁のような肌を持つウサ耳美少女。何故、こんな場所で拘束されているのかは謎であるが、並の男なら速攻で堕とされるぐらいには可憐である。
とりあえずウサ耳美少女の手足に付けられた枷を素手で破壊。何故か少女は裸だったのでサイクロン内から予備の上着を手渡す。
そのタイミングで、息を切らしたハジメ達が到着した。
「た、猛さん? その人は?」
「ここに拘束されていた。理由は知らないけど、見捨てることは出来なかったんだ」
「そう、ですか。それにしてもウサギの耳ですか? その子の頭にあるのって」
「さあな」
手術跡は見受けられないので大丈夫だとは思うが、実はウサ耳は改造で取り付けられたとか言われたら目も当てられない。
が、その心配は杞憂だったらしい。
「あ、このウサ耳は元からの物ですよ。私は兎人族の者なので……」
「兎人族……と、いうことは亜人族か?」
知識だけは頭に入っている。確か、亜人族というのは半分人で半分動物みたいな見た目をしていたはずだ。
人間というのはつくづく呆れたもので、人間とは見た目が違い魔力も基本的には持たない亜人の事を酷く差別しているらしい。特にヘルシャー帝国ではショッカーの奴隷のように働かされているそうだ。しかと、奴隷扱いされているのは帝国だけではないのである。
目の前に佇むウサ耳美少女は、外に出れば忽ち欲に汚れた人間に捕まってしまうことだろう。その内に、偶然ショッカーが居たのだろうか。
……いや、ショッカーが人を攫って強制的に改造手術を施すのは、優秀な人材を見つけた時だ。現に俺も、そうしてショッカーに目を付けられたからこうして改造人間なのである。
だとすれば、このウサ耳美少女は何か他と比べても優れている点があるのだろうか?
「失礼を承知してお尋ねしたい。君は、他の亜人と違う部分や優れた部分があるのか?」
「………はい。残念ながら」
「やはりか」
「本来なら魔力を持たないはずの亜人族に生まれたのに、何故か私は魔力を保持しているんです。それも、その辺の人間では敵わないぐらいの魔力を保持しています。それに、自分固有の特殊能力まで持っているんです」
話を聞くに、このウサ耳美少女はステータスで表せば1000を超えるぐらいの魔力を保持しているらしい。それに加え、〝未来視〟という能力まで生まれ持っているそうだ。そこだけ見れば、光輝や俺の魔力量を軽く超えている。
なるほど、確かに彼女は並の人や亜人よりも優れているだろう。この場合は皮肉にも、という但し書きが付くが。
「何時、何処で捕まった?」
「えっと……ボンヤリとしか覚えてませんけど、何時ものように寝ようとしたら突然寝室に黒ずくめの人間が入ってきたんです。叫ぼうとしたら猿ぐつわを付けられて、抵抗する事すら許されずに運ばれたところで私の意識は途切れました」
「……堂々と不法侵入して攫ったのか。ショッカーのやる常套手段だな」
「あ、あの。さっきからショッカーについて色々知っているような素振りを見せてますけど、貴方はショッカーの関係者なんですか? もしそうだとしたら、私を如何するつもりですか?」
不安げな顔で俺のことを見上げる少女。彼女の目から見れば、俺の姿はつい先ほどまで己を改造しようとした化け物と何ら変わらないだろう。
ハジメ達にも目配せをし、俺はクラッシャーを外してから仮面を脱いだ。ハジメと幸利も仮面を外す。更にハジメは、恵里を連れて基地内の探索を始めた……って、大人しくしてくれよ。
次々と現れる人間の顔に、少女は目を白黒させている。
「俺はショッカーの改造人間さ。脳改造される前に脱出したから洗脳はされていない。今はショッカーの裏切り者として人類のために戦っている。君に何かするつもりは毛頭ない」
「ショッカーの、裏切り者……」
「俺達はこの迷宮内にあると思われるショッカーの基地を潰しに来たんだよ。君に危害を加えるつもりは一切ないから安心してくれ」
「……分かりました」
一応は信用してくれたらしい。まだ半信半疑ではあるみたいだが、完全に信用されていないよりは遥かにマシと言えよう。
そうだ。そういえば目の前に佇むウサ耳美少女の名前を俺はまだ聞いていなかった。
少なくともこの迷宮内の基地を潰しきるまで、この少女を保護した方が良い。そう考えた俺は、彼女に名前を尋ねることにした。
「お嬢さん。君のことをこの迷宮内にある基地を潰すまでの間は護らせて頂く。それに辺り、君の名前を教えて欲しい」
「保護、してくれるんですか。私のことは放っておいても構わないのに……」
「そうも行かない。厄介なことに、俺は目の前で困り顔をしている人を放置は出来ないんだ」
「……自分のことを厄介って。貴方も変わってますね」
クスリと笑った少女。なんか香織がふくれ面しているのが気になる。え、優しくし過ぎですか? 参ったな。君も俺の性格はよく知っているだろうに。
……はいはい分かった。後で構うよ。
で、改めて聞こう。君の名前は?
「……シアです。シア・ハウリア。兎人族の忌み子として生まれた者です。短い間ですが、よろしくお願いします」
性格が違うのは出会ったばかりなの攫われたのがショックだから。後々に皆さんのよく知る性格に戻ります。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫