大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「うーん……中々に難しいな」
拠点の一室に俺の声が響き渡る。拠点を制作して早二日。俺は魔物肉に含まれる毒素を普通の人間が死なない程度にまで中和する方法を研究していた。
とりあえず中和するための方法こそ見つけることが出来たものの、人間が死なないレベルでかつ肉体変化の効力が失われない程度まで中和するのはかなり骨が折れる。
ちなみにトライアンドエラーを繰り返している間に、俺は二尾狼の肉も食らっている。そしたら、纏風と似た技能の〝纏雷〟というのを覚えた。ステータスは大して変動なかったのは残念だ。
「あの……」
「ん? シアか。どうかしたか?」
「汗、凄いですよ。お水持ってきたので飲んでください」
うむむ……と唸りながらどうするか考えていると、シアがコップに入った水を差しだしてきた。この娘はここ数日の間、なるべく俺や兵器開発に勤しんでいるハジメの事を邪魔しないようにと無言だったのだが、何かあったのだろうか?
俺はシアの事を何も知らない。ただ、ショッカーに攫われて改造されそうになり、今はメンタルが不安定という認識しかしていない。とても失礼だが、特に積もる話もしていないので仕方がないだろう。
そういう意味では、シアが水を持ってきてくれたこのタイミングは彼女の事をよく知る絶好の機会と言える。俺は水を口に含み、飲み込んで作業を続けながらシアに問うた。
「なあ。君のことをもっと教えてくれないか?」
「私のことですか?」
「ああ。生憎なことに、俺は君のことを何も知らないからな。少なくともこの魔物肉を何とかするまでは此処を動くつもりはないから、少しでも君のことを知れたらと思ってね」
試験管に液体にした毒を入れ、燃焼石という石炭にも似た鉱石を発火させて火にかける。きっと彼女は困惑した顔をうかべているだろうが、俺はお構いなしだ。
すると、シアはポツリポツリと話を始めた。
まず最初は、彼女の家族のことだ。ハウリア族という兎人族の中でも大きな集落に生まれた彼女は、異端児ながらも家族に大切にされてきたという。
「父様も母様も、私が異端児と知っても他と変わらず愛情を注いでくれました。ちょっと過保護ですけど、とても恵まれていたと思います」
「自分の娘は他と変わっていても守る、か。素晴らしい家庭だな」
「えへへ。何だか嬉しいですぅ」
ウサ耳がピコピコ動く。何とも可愛らしい。
十分に熱した毒をハジメが制作した顕微鏡モドキで見ては様々な薬品を足しつつも、俺は彼女の家族に心底感心した。
他と違う。それだけで自分の子供であっても差別的な視線を向ける親は少なくない。特に差別意識の高いこの世界では尚更のはず。しかし彼女の家族は親として、大人として立派な人物らしい。
「でも、兎人族は気性が大人しくて亜人の中でも差別されています。それに、人間の愛玩用の道具として売られてしまうことも少なくないです」
「それはまた……」
「私を改造しようとしたのも人間。正直言って、人の事を信じられなくなっているんですけどね。貴方やお仲間の皆さんは信用することが出来そうです」
「そいつは嬉しいな。この迷宮を出て、君の安全が確保されるまでの付き合いだが……信頼してくれるのはありがたい」
薬品を混ぜた毒を飲み込み、表情筋を緩めながら頷く。シアの話を聞きながらも、俺はようやく人間が死なない程度かつ効力が現れる状態にまで毒を中和することが出来た。
あとは魔物肉の状態でも同じ事が出来るかを試すの繰り返しだ。ハジメ達が食べられるようになるまでもう時間はかからないだろう。
と、此処までやって一息ついた所でシアが俺の隣に腰掛けてきた。
「あの、折り入って頼みがあるんです」
「頼み? 言ってみてくれ」
「私もこのまま足手まといは嫌です。最低限戦えるように、稽古をつけてくれませんか?」
どうやら彼女は戦えるようになりたいらしい。表向きの思惑の裏には、これまで迷惑を沢山かけてきた家族を今度は自分で守りたいという思いも伝わってくる。
ハジメと似たようで、また違った意思の強さを感じ取れた。どうやら俺の周りには、意思がとんでもなく硬い者が集まるらしい。
シアが強くなる事にデメリットは特にないため、俺は軽く頷いて了承した。ハジメによれば、兎人族は気配操作に長けているらしいので死角から常に急所を攻撃する格闘家にでもしてみたら面白いだろう。
そんなことを考えていると、にわかにバタバタと足音が此方に近付いてきた。
「先生! 遂に完成しましたよ!」
「兵器か?」
「はい! 日本にいた頃に見た兵器を参考にして色々と制作してみましたよ!」
嬉々とした様子でハジメが俺に手渡してきた兵器。それは、ほんの少し。本当に少しだけ俺の表情が曇る兵器だった。だって、原理は違うとは言え俺は此奴に似た武器に殺されたんだ。表情が曇るのも致し方ないだろう?
全長は約三十五センチぐらいで、この辺りでは最高の硬度を持つらしいタウル鉱石を使った六連の回転式弾倉。長方形型のバレル。これは、何処からどう見てもアレだ。
「……拳銃?」
「正確にはリボルバー式拳銃です!」
「なるほどね。剣と弓矢と発動まで時間のかかる魔法が主な世界では驚異的な強さを誇るだろう」
「どうしてもカセットアームを取り替えるタイムラグが気になっていたので攻撃の手を緩めないためにも開発してみたんです。あ、先生の拳銃も作りましたよ」
「え、俺のも?」
「はい!」
興奮した顔でズイッと差し出された、最初に手渡された拳銃よりも一回り大きな拳銃。
オーソドックスな見た目であるが、銃身長だけでも350mmぐらいある。全長を見るなら550mmは間違いなくあるだろう。銃口も大抵の拳銃は7mm程であるのに対して此奴は25mm近くある。もの凄くデカい。
デカすぎて拳銃として扱うには不向きな気がしてならない。重量も狙撃銃並にはある。本当に人間が扱う兵器なのだろうか?
「それはパイファー・ツェリスカという世界最強の拳銃を元にして作ったんですよ。普通の拳銃と比べて弾速は遅いし反動も悪いですけど、破壊力は象すらも一撃で屠れるぐらいです。猛先生なら反動なしでかつ超精密射撃が出来そうなので思い切ってみました」
「思い切り過ぎだと思うんだが……」
「デザートイーグルと悩みましたよ。結局、デザートイーグルを模倣した拳銃は幸利に渡しました」
「……というか、これとハジメの拳銃を制作するのに何日かかった? まさかまる二日寝てないとかないよな?」
「寝てませんよ? 流石に今日はこのまま寝ますけど」
「早く寝ろ。なんなら恵里に膝枕してもらえ。可及的速やかに眠りに着きなさい。殺されるぞ」
なんとハジメくん。まる二日は寝てなかったらしい。その間は恵里とも構ってやれなかっただろう。きっと彼女のフラストレーションは溜まっている。
一度集中したり決意したら何があってもそれに付きっきりなハジメに呆れ半分感心半分を覚えつつ、俺はツェリスカを模倣したという拳銃を握ってシアを促し、早速彼女に稽古をつけるのだった。
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ハイリヒ王国 王宮にて
「……はあ」
訓練を終え、自室に戻った雫は一つ大きなため息を付く。
親友である香織や最も信頼している大人である猛がショッカーの基地潰しに出かけて早三日。雫の心労は既にマックス近くである。
香織と恵里に手酷く……はないが、まあボロクソに言われた光輝は寝ているのか起きているのかよく分からない表情でブツブツと訳の分からぬ事を呟いており、檜山に至っては部屋に閉じ籠もったきり出ようとすらしない。
最悪の場合、檜山は放置しても問題ないと考えている雫だが、問題はメンタルブレイクを起こした光輝である。
「何時まで夢と現実の区別を付けられずにいるのかしらね、光輝は。必死に光輝の事を笑わせようとする龍太郎が可哀想だわ……」
龍太郎の様子を思い出した彼女は再びため息を付いた。いい加減見捨てようか本気で彼女は考えている。
幼馴染みがイジメに実は加担していたという現実を叩き付けられ、雫も心に迷いが生じているのだ。ずっと、光輝のことは手のかかる弟のような者だと思っていた彼女だが、ここに来て完全に拒絶してしまいそうになっている。
それでも拒絶せず、光輝にあれやこれやと手を焼いているのは人が良すぎる雫の性格が災いしている。雫は、あまりにも優しすぎるのだ。それも年不相応に。
猛と雫はある意味で似ている性格だ。困っている人は勿論だが、性格に難があっても矯正し、人間社会に入っても困らないように手助けをしようとする。違う点と言えば、雫と猛では圧倒的に生きてきた年月の差があることか。
「猛先生って、本当に凄いのね。光輝なんて比較にならないぐらいの人間と正面から向き合っては改心させて。私も彼のようになれたら……」
香織を苦しめることも、ハジメ達に地獄を見させることもなかった、とまでは口にしない。
が、それは事実であるのも彼女は理解している。故に、今夜も雫は眠れない夜を過ごす。過ごすはずだった。
コンコン
「……だれ?」
「雫、俺だ。光輝だ」
「……はあ。こんな夜中に何用よ?」
ガチャリと扉を開けて光輝を睨みつけようとした雫。だが、彼女の表情は氷のように固まってしまった。それは光輝の目が原因だ。
何処までも深い闇。ヘドロのように濁りきった瞳。ドロドロと粘着質な視線を発する目。
雫の肌にブワッと鳥肌が量産された。
それに構わず、光輝は雫のことを抱き締めようとする。咄嗟に彼女は手持ちの短刀の持ち手部分で光輝の胸を他叩いて押し退けた。
「雫……? 君も、俺のことを拒絶するのか?」
「光輝、どうしたのよ! 気をしっかり持ちなさい! どう見てもおかしいわよ!?」
「そうかそうか。君も拒絶するんだな。香織のように、俺を裏切るんだな。それなら、誰の手にも渡らないように、この手で俺の物に……」
「ヒイッ!? ど、退いて!」
途轍もなく嫌な予感が走った雫は、扉近くに立てかけてあった長刀を握って光輝が怪我すること構わず居合抜きのような動作で彼の横を駆け抜けた。そして後ろを振り返ることもなく、彼女はその場を逃げ出す。その顔には、恐怖が貼り付けられていた。
逃げ出して大正解。雫があのまま棒立ちしていれば、光輝にレイプされていた。元より光輝は、ただ一人残された雫を自分の物にしようと彼女の部屋へ押しかけたのだから。
雫は廊下を走り、王女であるリリアーナの寝室まで向かった。寝室の扉を蹴破る勢いで開け放ち、リリアーナに泣きながら抱きついた雫は、そのまま一週間は目を覚ますことがなかった。
雫が逃げ去った場にポツリと残された光輝は、翌日になって檜山と共に姿を消した。彼の部屋には、一枚の紙が残されていた。
そこに書かれていた内容に、リリアーナは口に出来ない程の恐怖を覚えた。
「本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる本郷先生を殺してやる南雲を殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる」
暗雲立ちこめるハイリヒ王国内。その暗雲を晴らす救世主は、今は居ない。
誰もが待ち望む。
救世主の帰還を。
猛さんが拳銃を使う理由は、仮面ライダー1971-1973で仮面ライダーはバルカン砲だったりハンドガンだったりで魅せるシーンがあったからです。ツェリスカをチョイスした理由はロマンと猛さんなら扱えそうだから。
光輝はとことん堕とします。もう堕ちきった気もしますが、まだ堕とします。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫