大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「………」
「そっか。辛かったね。でも、これからは僕達が居るからね」
「……!」
ハジメに抱きつく女の子。それを優しい手つきで撫でてやるハジメ。なんか女の子はハジメの首筋に噛み付いて何かを吸っている。
口を離すと、ついさっきまでやつれていたのが嘘みたいに回復していた。どうやら吸血鬼というのは本当のようだ。
現在、俺達はサイクロプスと蠍の肉を切り分けて毒処理をし、袋に入れてからサイクロンに放り込んで四十九階層にある拠点に来ていた。
一糸纏っていなかった女の子に俺の予備の服を着せているが、大きさが合ってないので上着のみでくるぶし付近まで隠れてしまっている。何とも愛嬌のある姿だ。
しかし、今はそんなこと考えている場合ではない。
「あの、話しても大丈夫ですか? 正直言って話すの躊躇うぐらいなんですけど……」
「……話してくれ。だが、話すならその娘を抱き締めて落ち着かせながらが条件だ」
「お安い御用……とは言えませんね。恵里、後で君にもするから睨まないでくれよ」
胡座をかき、その上に女の子をポスンと乗せるハジメ。こう見ると年の離れた兄妹に見える。だが、簡単な説明だけで判断するとこの娘は吸血鬼。実際の年齢はハジメよりも遥かに上であろう。
と、まあ年齢の事を考えるのは止めよう。女性と年齢の話はタブーである。
ハジメの様子からして、彼女の過去はかなりどころか想像を絶する物なのだろう。此方にもそれなりの覚悟が必要だ。何やら不老不死に近い力である〝自動再生〟という力を持っているらしいが、これがどうやら災いの種だそうだ。
「……彼女の話だと、少なくとも三百年以上はあの場所に拘束されていたみたいです。吸血鬼族が滅びたのは丁度三百年前。滅びると同時に捕まえられた。さらに、怪人はその時期よりもずっと前から存在していたことも分かりました」
「怪人もか。それが本当ならショッカーは世界を最低でも三百年裏から支配していたことになる」
「ですが、幾ら怪人とて人体実験は必須。そのために使われたのが……」
「そういうことか。付いていた傷は、そういうことなんだな」
ショッカーのやることだ。今更驚くこともない。俺が見てきたショッカーという組織は、幼気な子供や動けない老人を捕まえては殺すぐらい平気でやる。
残虐非道。血の色は黒色。人間と似ているが実際は大幅に異なる。それがショッカーだ。
「それに加えて、ショッカーの協力者や下っ端の戦闘員達の欲求を解消するためにも使われたみたいです。今では、女性としての機能は完全に失われてしまったそうで……」
「再生の力でもダメだったのか?」
「再生の力は魔力に依存しています。ちょくちょく魔力回復をさせられていたみたいですけど、それでも限界があります。魔力が枯渇してしまえば普通の女の子と同じなんです」
「そうか。大方の内容は理解した。で、その娘は如何するつもりなんだ?」
俺達があの部屋に入った時点で、あと一発でも攻撃を受けたら危なかった。そんなことを予想しながらも、俺は感じた疑問をハジメにぶつけた。
俺と女の子は無関係だ。女の子を助けたのも、助けようと決意したのもハジメである。更に言えば、女の子と意思疎通を図れるのもハジメだけである。どうやらモールス信号らしき物で意思を伝えてるらしいが、俺には分からない。
故に、この娘の処遇は一番関わりの深いハジメに委ねるのが妥当だ。
まあ、心優しいハジメのことだ。大体どういう答えを出すのかは察している。
「……僕が責任持ってこの娘を守ります。もう放っておけません」
「これ以上守る人を増やしても大丈夫か? ただでさえお前は無茶しがちだ。死んだりでもしたら世界が滅びるぞ」
比喩表現なんかじゃない。これは本気で忠告している。俺が改造人間だとしても、悲しみによって力を引き出した恵里を止められる気がしない。
間違いなく俺は殺されるだろうし、そのまま世界を滅ぼすとしても何ら不思議ではない。
それでもハジメの決意が揺らぐことがないのは承知の上だが……。
「僕は死にませんよ。死ぬ気もありません。最悪死んでも戻ってきます」
「その自信は何処からだ?」
「先生の作ったこの腕ですよ」
絶対なる意思を込めた彼の瞳は、何よりも強烈な光を放っていた。
これ以上の押し問答は不要。というより、誰が何を言ってもハジメを動かすことは不可能だろう。それに、此処まで覚悟をしているなら問題だってないはずだ。
ハジメを信じよう。
「……決めたからには、最後まで守れ。良いな?」
「無論です」
「………?」
「ああ、君のことは僕達が必ず守るよ。裏切りなんかしないさ」
「……!」
「わわ、急に抱きつかないでよ!」
裸エプロン同然の女の子に抱きつかれてあたふたと慌てるハジメに、俺はクスリと笑みを零した。
その後、名前を付けて欲しいとおねだりされたハジメは女の子に〝ユエ〟と名付けた。名前はハジメの故郷で〝月〟を表す言葉をそのまま使用したらしい。なんでも、最初女の子を見たときに彼女の姿が夜に浮かぶ月に見えたから、だとか。
懐いた小動物のようにハジメに引っ付いたユエは、ニコニコと笑みを作る恵里と目線だけの壮絶な戦争を繰り広げていた。なんか、二人の背中から幽鬼と雷龍が見えた気がした。
結局、一時休戦してお互いの身の上話をハジメの通訳付きでしていた。幸利は何かを振り払うかのように拳銃で撃った弾丸を同じ場所に連続で命中させる練習をしていた。
……うん、幸利にもきっと甘酸っぱい春がやって来るよ。
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オルクス大迷宮に潜入し、ショッカーの基地を潰し始めてから早くも二週間が経過した。五十階層を超えてからは概ね二階層に一度はショッカーの基地が設置されており、発見の度に全員で文字通り叩き潰していった。
この時に判明したのが、ユエは全属性に適性があり魔物と同じく魔力を直接操作する事が出来るということだ。しかも保持している魔力の量は俺よりも多く、推定でも5000はあると見られた。
大魔力と異常なまでの発生速度を誇るユエの魔法攻撃は強力無比であり、格段に基地を潰す速度がアップした。その代わりにユエは近接戦闘は苦手という弱点があるが、そこは腐っても近接戦闘のプロである俺とハジメ。まだ発展途上だが随分と強くなったシア。そして完璧な援護をする幸利が居る。
結果、後衛には香織、恵里、ユエの三人態勢になり、中衛に幸利。前衛に俺とハジメ、そしてシアになった。苦戦どころか全戦圧勝で階層を下げていくことが出来たのは何とも言えない。
そんなこんなで裏の大迷宮も百階層まで辿り着いた。
百階層の入り口は大層な扉がデンと構えてあり、その先にはこれまでとは一線を画す空気を感じられた。何か嫌な予感がしたため、俺達は一つ上の階層に何時もの如く簡易の拠点を制作し、そこで道具を揃えて鍛錬を繰り返し、なるべく万全かそれ以上の状態を作ろうとした。
ハジメはドンナーの十倍以上の威力を持つ対物ライフルを作ったり、幸利は俺とほぼ同等の射撃腕前になったり。シアは推定ステータスがオール4000になっていたり恵里は降霊術を活かした霊的物質でより強力かつ精確な魔法を使えるようになったり、ユエは恵里ほどではないが微細な魔法コントロールが出来るようになったり。
兎に角色々あったが、全員が強くなったのは間違いないだろう。参考なまでの俺の現在のステータスはこんな感じだ。
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本郷猛 27歳 男 レベル:???
天職:風の使者
筋力:17500
体力:14000
耐性:14000
敏捷:21000
魔力:5000
魔耐:5000
技能:変身[+仮面自動生成]・改造人間・魔力操作[+魔力放射][+魔力圧縮][+遠隔操作][+体力変換][+身体能力向上]・徒手空拳・剣術・人工筋肉活性化・脚力強化・風属性適性[+魔力消費減少][+効果上昇][+持続時間上昇][+雷属性]・風力吸収[+身体能力強化][+体力変換]・物理耐性・毒耐性・胃酸強化・天歩[+空力][+瞬光][+縮地][+豪脚]・纏風[+常時発動]・纏雷・薬物生成[+合成][+調合][+高速調合]・手術[+執刀]・気配感知・魔力感知・熱源感知・気配遮断[+部分遮断]・風爪・毒耐性・麻痺耐性・石化耐性・金剛・威圧・念話・暗視・限界突破・言語理解
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ある時からレベル表記はされなくなり、魔物を食べても能力が上がりにくくなった。初めて見た魔物なら食べたら能力が上がり技能も手に入るが、それ以降は完全にただの食料と化した。この点はハジメ達も同様である。唯一ユエだけは魔物肉を食べていないため、俺達のような急成長はしていない。まあ、その分ユエには豊富な知識があるため何の問題もない。
長ったらしくなったが、これだけ準備をしておけば万事にも対応可能だろう。最悪対応不可能になってもアドリブでどうにかなる……はず。
俺らしくもない雑加減だが、きっと何とかなるだろう。そう信じてる。
「……大丈夫だな。うん、きっと大丈夫」
「……!」
「ん、どうした? ……私達ならきっと大丈夫と言いたいのかい?」
「……っ!」
「はは、そうか。そうだよな。俺達ならきっと、誰にも負けないよな」
ユエに力強く頷かれた俺は、癖一つない彼女の頭をポンポンと叩く。変化が分かりにくいが、確かに笑ったユエに俺は微笑み返すと、第二の皮膚を発現させて仮面を被り、サイクロンのハンドルを手にした。
俺に倣い、ハジメと幸利も仮面を付けた。香織と恵里は魔法の杖を手にする。シアは籠手をガチリと鳴らす。ユエは黄金の魔力を身に纏った。
戦闘準備は完了した。後は、ただひたすらに駆け抜けるのみ。
俺は、目の前に立ち塞がる扉にその拳を叩き付けるのだった。
次回は原作で言うヒュドラ戦です。が、当然ショッカーが絡んでるので一筋縄では行かず…?
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫