大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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オルクス大迷宮の大トリです。


第二十二話 切り札

扉の先はこれまでに見ない超巨大な空間になっていた。此処まであった基地では見られた機械類は一切なく、ただ巨大なだけの空間である。強いて言うなら、巨大な洞窟だろうか。

 

数百メートル先は行き止まりをになっている。いや、行き止まりではなく、それは巨大な扉だ。全長十メートルはある巨大な両開きの扉が有り、これまた美しい彫刻が彫られている。特に、七角形の頂点に描かれた何らかの文様が印象的だ。

 

そして目の前の扉と俺達との間に、巨大な魔法陣が現れた。赤黒い光を放ち、脈打つようにドクンドクンと音を響かせる。その魔法陣を守るように、すっかり見慣れたショッカー戦闘員が此方に殺意を飛ばしてくる。

 

「……先制狙撃。良いっすか?」

「無論だ」

 

ドパアアアアアン!!!

 

俺の言葉に頷き、狙撃銃を構えた幸利。何故か戦闘員は殺意こそ飛ばすが動かないため、彼は難なく戦闘員の頭蓋骨に銃弾を命中させた。

 

バタバタと倒れる戦闘員から視線を外した俺は、一層輝きを増す魔法陣を注視する。

 

すると、魔法陣は俺の視界を潰すかのように強烈な光を放った。咄嗟に腕をかざし目を潰されないようにする。光が収まり、目を開いて腕を退けると、そこに現れたのは……

 

体長三十メートル、六つの頭と長い首、鋭い牙と赤黒い眼の化け物。例えるなら、神話の怪物ヒュドラだった。随分と神々しい。

 

「……なるほど。ここに来て、随分とファンタジーな世界らしくなったな」

 

サイクロンに跨がってそんなことを呟く。ツェリスカはとりあえずベルト横に取り付けた収納ケースに放り込み、ヒュドラの出方を様子見する。

 

すると、ヒュドラの中心にある赤い紋章が刻まれた頭がガパリと口を開いた。何か攻撃が来るのかと思って身構えるが、それは見当違い。予想外の出来事が発生した。

 

『貴様らか。我らがショッカー首領の崇高なる目的を邪魔する不届き者の屑は』

「……喋れるとは驚いたな」

 

なんと、ヒュドラが喋った。あの見た目だと喋れないとばかり思っていたため、少々度肝を抜かれた気分だ。

 

どうやらヒュドラは直接喋ってる訳ではなく、テレパシーのように脳内へ声を送り込んでいるらしい。つまり、この声は俺達にしか聞こえない。

 

「崇高な目的だって? ふざけるのも大概にしてくれ! お前らは何の罪もない一般人を襲うために怪人を送り込んでたじゃないか! そのせいで何人もの死人だって出たんだぞ!」

『真の世界平和を目指すためには大なり小なり犠牲は出る物だ』

「嘘をつくな! お前らが世界平和だなんて一ミリも『ハジメ、落ち着け』っ、でも!」

「ヒュドラ。貴様らの首領が唱える世界平和とは、どんな物だ?」

 

俺の知るショッカーは、世界征服を目論む悪の秘密結社。しかし、その裏には全ての人類を改造人間にすることでより効率的かつ平和的に世界を進化させるという目的があるのだろうと俺は予測している。

 

改造人間というのはあくまでもその手段だ。人類をより発展させ、一人が支配する事で考える必要のない永久の世界平和が訪れる。きっと、そういうことのはずだ。

 

『より発展した人類を首領が支配し、二度と争いの起こる事のない世界を作るのが我々の目的だ。人類は争いすぎたのだよ』

「なるほどな。確かに人類は性懲りもなく争いを続ける。貴様らの首領がそう考えるのも無理はないかもしれないな」

『それに、邪神エヒトルジュエの魔の手から人類を救うためでもあるのだよ』

 

邪神エヒトルジュエ? なんか聞いたことあるようでない名前だ。もしかして、教皇のイシュタルやこの世界の多くの者が信仰するエヒト様とやらのことか?

 

「エヒトルジュエ? それって教皇達が信仰しているエヒトとやらのことか?」

『その通りだ。エヒトルジュエとは、エヒトの本名よ』

「へえ。まあ、狂信しているみたいだから怪しいとは思っていたが、エヒトルジュエとやらはそんなに悪い神様なのかい?」

『……エヒトルジュエは。いや、奴を含めたこの世界の神は、人類同士で争わせることを遊戯と表して楽しんでいる』

「なに?」

 

何やら聞き逃せない言葉だ。この世界の神であるエヒト達は、救いようのない屑なのだろうか。

 

ヒュドラに先を話すように促した。念のため、今にも飛び出しそうなハジメには釘を打った上でだ。

 

『もう何百年、何千年、何万年と神々は人間を駒にして争わせ、それを楽しむという遊戯をしているのだ。それを止めるために立ち上がったのが我らの首領だ。そして私は、首領に同調して自ら望み改造された。既に千年以上は此処を守り続けている』

「なるほどな。貴様らの首領。そして貴様ら改造人間は曲がりなりにも人類を何とかして救おうとしているのか」

『理解してくれる者が現れるとはな』

 

まあ、正直言って今更驚くこともない。何事もアクションを起こすなら動機が必要だ。ショッカー首領はバカではないため、人類を救おうと動いていたとしてもおかしいことではない。

 

そう、おかしくはない。やり方は間違っていると思うが。

 

「……その話が本当なら、俺もエヒトは間違っていると思うさ。だが、首領のやり方が正しいとは残念ながら思えない」

『なんだと?』

「首領のやり方は、多少の犠牲が出ても目的を果たそうとするやり方だ。それは、尊く美しい人の命を失うことも厭わないということだ。俺は、誰一人として死なずに世界平和を目指したい。綺麗事だと分かっていても、だ」

 

エンジンを掛ける。けたたましい排気音が鳴り響いた。

 

仮面の中にある俺の表情は、誰が見ても複雑その物と言えるだろう。ショッカーの考えと俺の考えは似ているようで、実際は相容れない物。一つ違えば分かり合えるのに、それは不可能。その事実が、俺の心境を複雑にしている。

 

しかし、それで悩んで戦うことを躊躇うことはない。俺が守りたいのは美しい人の命の輝きと自然だ。それを守るためなら、何処までも突き進む覚悟がある。

 

「俺の考えと、貴様らの考えは決して相容れる事のない物。本質は一緒なだけに残念だが、俺はそれでも貴様らショッカーを壊滅させる」

『……そうか。貴様とは、相容れぬ存在同士か。誠に残念だ』

「来世では共に道を歩めることを祈る。だが、今は殺し合いの時間だ。此処で出会ったが運の尽き。互いに生きるか死ぬかだ」

『そうだな。何方が先へ進むべきか、此処で白黒させようではないか』

 

ヒュドラの頭が全て此方を向く。それぞれが目に殺意を宿しており、並の人間なら睨まれただけで心臓を止めるぐらいのプレッシャーを放っている。

 

俺とヒュドラの雰囲気に触発されたのか、ハジメ達もまた絶大な殺意を目に宿した。

 

一触即発。正にそんな空気。訪れる静寂。

 

その静寂を破ったのはヒュドラ。これで最後と言わんばかりの声音。

 

『……貴様の名前を聞いておこう』

「俺は、改造人間本郷猛。全ての悪の敵。そして人類の味方。大自然が遣わした正義の使者だ」

『貴様も改造人間、か。本当に残念だ。こうしてでないと出会えなかったとは……!』

 

クワッと目が見開かれた。本能で何か来ると悟った俺は、アクセルを全開にした。

 

そしてその少し後、

 

「「「「「「クルゥァァアアン!!」」」」」」

 

不思議な音色の絶叫を上げると同時に赤い紋様が刻まれた頭がガパッと口を開き火炎放射を放った。それはもう炎の壁というに相応しい規模である。

 

俺はサイクロンを走らせ、壁を登ってから宙に飛び出した。

 

その場を飛び退いたハジメとシアは直接頭を叩きに行き、幸利は青い文様の頭が口から散弾のように吐き出した氷を目にも止まらない早撃ちで相殺していく。

 

緑の紋章が刻まれた頭が繰り出す風の刃は、魔力よりも純度の高い〝霊力〟を使用した恵里の魔法によって吹き飛ばされ、その隙をついたユエの炎の槍が頭を貫いた。そして消耗した二人を即座に香織が回復させる。

 

しかし、絶命したはずの緑頭は白い文様の入った頭が「クルゥアン!」と叫ぶと何事もなかったかのように復活してしまった。

 

ほぼ同時刻にサイクロンで跳び上がった俺が黒い紋章の入った頭を轢き潰したが、やはり復活された。さらに、黒頭に睨まれると改造されてから目が覚めた時に味わった電撃の感覚が甦る。

 

どうやら黒頭はその人のトラウマを穿り返す能力があるらしい。

 

「ッ、たかが昔の出来事だ!」

 

強引にマイナスビジョンを振り切り、サイクロン後部に取り付けられた六つのマフラーを全噴射させて空を飛ぶ。そしてツェリスカを抜き、旋回しながら引き金を引いた。

 

が、その弾丸は割って入り肥大化した黄頭によって防がれる。多少の傷は負ったらしいが、それも白頭によって無意味とされた。攻撃に回復に防御に弱体化とバランスの良い奴らである。

 

ハジメとシアがタイミングを合わせてダブルキックを赤頭にぶつけたが、やはりと言うべきか白頭によって振り出しに戻された。

 

白頭を狙って銃撃しても、黄頭が邪魔をして攻撃出来ない。更に言えば、黄頭は周囲にある岩壁を即席の壁に出来る錬成のような能力まであるようだ。正直言って面倒である。

 

直接噛み付いてきた黒頭を〝風爪〟で切り裂き、口内に銃弾をぶち込んでから俺は近くに居た恵里と共に策を練る。

 

「同時攻撃が必須、か? いや、最悪攻撃役と黒頭は後回しでも良いか。それなら黄色と白を早急に叩くべきか」

「それなら、ボクが道を開くよ。突破は先生とハジメとシアに任せたい」

「……よし、分かった。ハジメ! シア! 一緒に行くぞ!」

 

サイクロンの座席から跳び上がり、ハジメ達と合流する。俺の真横を恵里の〝螺炎〟が通り抜け、黄頭を前に出させたのを見計らって一足先に突撃した。

 

肥大化した黄頭に張り付き、抵抗のつもりか頭を振り回されるので落ちないように目を握り潰しながら取って代わりにする。絶叫を上げる黄頭だが、白頭がすかさず回復させようとした。

 

そこへ間隙を縫うように現れるのはハジメとシアだ。

 

「〝ネットアーム〟! シアさん!!」

「了解ですぅ! うりゃあ!」

「グルゥウウウウ?!」

 

ハジメのネットアームでがんじがらめにし、動けなくなった白頭にシアの美しいフォームから繰り出される二段回し蹴りが直撃した。兎人という特性を存分に活かした強烈な回し蹴りは、一撃目に白頭の意識を刈り取り、二撃目に脳骸を飛び散らせた。

 

そして俺は、ツェリスカの銃口をを黄頭に接地させて四回引き金を引く。連続した発砲音が鳴り響き、鉄壁を誇った黄頭は遂に力を失って地面へ落ちていった。

 

ここまで行けば後はすぐだ。俺は幸利達の後方支援に後を任せる。

 

「存分に食らいな」

 

カッターブーメランを投げた幸利は、それを狙撃で銃撃して一気に加速させ、黒頭と緑頭の首を落とす。

 

「これでサヨナラだ――〝緋槍〟」

 

恵里の繰り出した炎の槍が、青頭の繰り出す氷の弾幕を均衡から突破に持っていき遂には消し飛ばす。

 

「……!!」

 

目を力強く見開いたユエは、六つの放電する雷球を赤頭を前取り囲む様に出現させた。そして次の瞬間、それぞれの球体が結びつくように放電を互いに伸ばしてつながり、その中央に巨大な雷球を作り出す。

 

ズガガガガガガガガガッ!!

 

中央の雷球は弾けると六つの雷球で囲まれた範囲内に絶大な威力の雷撃を撒き散らした。当然逃れる術はなく、赤頭は呆気なく融解した。

 

「はい、回復だよ――〝回天〟」

 

そしてアフターケアも完璧だ。香織の回復魔法により、消耗した恵里とユエは完全回復。俺達の精神も同時に癒された。どうやら詠唱もなく精神を癒す魔法も放ったらしい。

 

ハジメ達は互いに健闘を称え合っているが、俺だけはヒュドラの残骸に目を向ける。どういう訳か、未だに生命反応が消えないのだ。俺の本能が、まだ気を抜いてはいけないと警告を発っしている。

 

そしてそれは、間違ってなかったらしい。

 

音もなく七つ目の頭が僅かに残った胴体部分からせり上がり、此方を睥睨してきた。どうやら目を離さなかったのは正しい選択だったようだ。

 

『中々やるな。しかし、これはどうだ!』

 

ヒュドラの声と共に、七つ目の銀色に輝く頭がノータイムで絶大な破壊力があると思われる極光を俺達目がけて発射した。

 

ハジメ達からすれば突如放たれた極光であり、全員が茫然としている。そんな中、俺だけはこの場に居る全員が生き残るための手を打った。

 

タイフーンの風車が通常とは逆向きに。つまり反時計回りに回転を始める。独特な音を立てて回るタイフーンにより、俺の体に蓄えられていた全エネルギーが一気にベルトへ集まった。

 

「風よ叫べ! そして唸り声を上げろ! 俺の身体の中で渦を巻き、嵐になれ! 全てを吹き飛ばす暴風となれ!」

 

極光が目前まで迫ったと同時に俺の咆哮がビリビリと周囲を震わせる。そして、半ば飲み込まれながらもタイフーンから尋常ではない旋風が飛び出し、極光を押し返しながら吹き荒れた。

 

仮面ライダーV3の切り札である逆ダブルタイフーンと原理は大体同じだ。ベルトの風車を逆回転させ、全エネルギーと引き換えに超強力な旋風を発生させる。正に切り札だ。

 

切り札という名は伊達ではなく、ヒュドラの放った極光を押し返して均衡状態まで持っていった。そして、奴の極光が徐々に細くなっていくのと同時に旋風も収まっていく。

 

「ぐっ……」

「猛さんっ!」

「「「先生!」」」

「師匠!」

「……!」

「大丈夫だ。この戦い、勝つぞ」

 

仮面が消え、第二の皮膚も奥へ引っ込み俺の生身の肉体が表に出た。駆け寄る仲間を制し、俺はただ「勝つ」と伝える。

 

切り札を使えば変身は丸一日不可能だ。だが、それはあくまでも仮面ライダーに変身不可能なだけである。

 

実は、仮面ライダーとしての姿は怪人としての姿を不完全に現しただけに過ぎない。完全な怪人に変身してしまえば、理性が失われてしまうため、これまでは不完全な怪人態へ変身していたのである。

 

その為には厄介なプロセスを取る必要があり、風力を取り込まないと理性を抑えられなくなるのだ。原理は不明だが、兎に角風を使わないと正真正銘の怪人になってしまう。

 

怪人に変身するだけなら風力は必要ない。必要なのは、強い気持ちだけ。今の場合なら、何者にも動かせない「勝利」への気持ち。

 

「ハジメとシアは俺が万一トドメを刺せなかった時の保険で構えろ。幸利達は援護を頼む」

「猛さんは……如何するんですか?」

「俺か? 俺は……バケモノになるさ」

 

服を脱ぎ捨て、強く「勝利」を願い思う。すると、体内からビキバキと骨格が変形していく音が聞こえてきた。

 

目が充血し、全身の筋肉が膨張する。腕の外側やふくらはぎ裏からは鋭い刃が生え揃い、手足の指には鋭利な爪が伸びていく。そして、バッタのような触覚が額から二本生えてきた。

 

想像を絶する痛みが俺を襲い、思わず地面に膝をつく。口元は鬼のように裂けて広がり、その奥にある歯は全て牙へと変わる。体色はバッタでよくある緑色へ変わってしまった。

 

少しずつ、意識が失われていく。

 

俺の脳内に浮かぶ文字が変わっていく。

 

「潰せ」

 

「戦え」

 

「闘え」

 

「殺せ」

 

殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。コロセ。コロセ。コロセ。コロセ。コロセ。コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス。

 

「ア゙ア゙ヴヴヴガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!゙」

 




本郷さんが最後に変身したのはバッタ男。見た目は仮面ライダー真とほぼ同一です。相違点はベルトが付いてるのと第三の目がないことです。
ヒュドラの声は渋めのおっちゃんボイスを想像してください()

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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