大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
光輝と檜山が失踪した王国はどうなったのか? そして新キャラも…。
あと「その音色は異世界まで響き」のお気に入り登録が700をいつの間にか超えてました。ありがとうございます!
猛達がオルクスを出た頃。王国はまるで墓場のように静まり返っていた。
希望の星であった勇者とその仲間の失踪。この事実は、教会が隠し通そうとしたが何者かによって情報が外に出てしまい、ハイリヒ王国は大パニックに陥った。
それもそうだ。国民は勇者である光輝とその他のクラスメイトに人類を救ってもらえるとばかり信じていた。それがある日、一番の力を持つとされる光輝が突然失踪してしまい、置き手紙の内容も不穏な物だったのだ。混乱を招いても仕方ない。
しかし一時は騒然となった王国も、今ではすっかり静かになった。いや、静かにはなったが漂う空気が絶望感を感じられる物であるが。一部はオルクス大迷宮入り口付近で無双していた一人の男が自分達を救ってくれると確信めいた思いを抱いていたが、それはほんの一部。多くの者は絶望していた。
そんな国民の様子に、リリアーナは心を痛めていた。父親と母親は教会が告げる神託とやらを妄信しており話を一切聞き入れない。特に父親は、今の国民が最悪皆殺しにされても神が助けてくれると心から信じている。
しかし、リリアーナは心根が優しい少女である。年不相応に大人びているところもあるが、それでも感受性の高いごく普通の少女だ。
「雫も、どうしてこうなってしまったのでしょうね……」
「ん~? おねえちゃ?」
光輝が失踪する前日、彼に襲われた雫は精神を完膚なきまでに壊してしまった。見た目こそ変わらないが、精神年齢が三歳程度にまで幼児退行してしまっている。
一般生活を送るので精一杯なぐらいにまで幼児退行化しており、現在はリリアーナが離れることなく世話をしている。リリアーナ以外の者には徹底した拒絶反応を見せるため、リリアーナの精神も徐々にすり減らされているのが悩み処だ。当然、こんな様子では戦えないので戦線からは遠のいている。
雫の幼児退行化はクラスメイトにも多大な影響を及ぼしている。幼馴染みである龍太郎は光輝の失踪とのダブルパンチですっかり頬が痩せこけており、これまで雫によってバランスがなんとか取れていた他のクラスメイトのメンタルもガクガクと不安定な物になってしまった。癒しの女神とも言える香織が居ないのも一つの原因ではあるのだが……。
そんな空気に耐えきれず、一部の生徒は愛子の元へ同行して王国を離れていった。表向きは〝愛ちゃん護衛隊〟としているが、実態は心を根元から折られた生徒の集まりである。真面に戦えるかと言われれば疑問符が付く。
心強い先生であり、みんなのヒーローの欠落。そして精神的支柱の失踪と幼児退行化。脆い支柱に縋っていた他のクラスメイトの精神が一気に削られるのは想像するのも簡単であろう。
もっとも、リリアーナが精神をすり減らしている理由は他にもあるのだが……。
現状、最も心の負担になっているのは雫で間違いないだろう。友人に対してそんな感情を持つのは許されないとリリアーナは言い聞かせているが、それでも思わずにいられなかった。
純粋無垢な瞳でリリアーナに抱きつく雫の頭を撫でながら、リリアーナは窓の外に見える青空を眺める。
そして、窓を横切った白い鳥を見てポツリと零した。
「私も、あんな風に自由に飛べたら良いのに」
誰ともなく零したリリアーナの弱音。同情してほしいとか、何か意見を述べてほしいとかそんな物はない。一切ない。翼を持って自由に飛び回りたいという、純粋なうら若き少女の抱える弱音であった。
それだけに、彼女の言葉の後に被さるように響いた声にリリアーナはビクリとした。
「おいおい、現状に満足いかないなら自分から行動をすれば良いだろう?」
「ひえっ!?」
「んぅ?」
声がした方向。すなわち扉側を見るリリアーナ。聞いたことのない男の声にリリアーナは警戒心マックスだ。一方で雫は何故か大人しい。
扉にもたれ掛かるようにして立っていたのは、リリアーナも見たことのある“仮面”を小脇に抱えながら片眉を上げている男だった。精彩な顔立ちをしており、身長も高く街に出れば多くの人から声をかけられるぐらいである。本郷とはまた別ベクトルで男前だ。
少なくとも彼女の知る仮面を持つ人物は一人である。しかし、その人物は現在オルクス大迷宮にあるというショッカーの基地を叩き潰している最中とリリアーナは認識している。故に、この場に立っている男は彼女の知る者ではない。
混乱の極みに達したリリアーナを見た男は彼女から視線を外し、今度は雫のことを見やる。リリアーナ以外の者には拒絶反応を示すはずの雫だが、これまた何故か男のことを真っ直ぐ見つめている。
「あ、貴方は……貴方は誰なのですか? どうやって警備態勢が万全の王城に入り、この部屋まで……」
「あの程度で警備態勢が万全? 随分なザル警備……って、ショッカーの基地とまるで違うのは当たり前か。すまん、失言だった」
空いた手で頭をカリカリと掻く男。しかし、リリアーナは男の発したとある組織の名前に反応を示した。直接関係者から聞いたわけではないが、情報を持って帰ってきた幼児退行以前の雫から話は知らされている。父親は何の対策も取っていないが、ただ一人危機感を持っていたリリアーナは独自に調査を開始していた。
その際にショッカーが断片的ながらも恐ろしい組織であることが判明し、早急にでも対策を打ち出すべきと思案していた矢先にこの男が現れた。
ショッカーについて少しでも多くの情報が欲しいリリアーナは、警戒心を少し緩めて男に尋ねる。
「ショッカーの関係者なんですか?」
「ん? 君はショッカーを知っているのか。意外だが……なるほどね。この世界にもショッカーが居るのか」
「この世界……? まさか、貴方は……!?」
この世界という単語。この一つでリリアーナは目の前に立つ男が何者なのか検討を付けた。つい一カ月前に召喚された勇者一行。それと等しい、または近しい存在であるという事を。
彼が勇者なのか、はたまた悪魔なのか。それは分からないが、リリアーナは何故かこの男が何かをもたらしてくれるのではないかと感じる。
男はリリアーナの様子は気にも留めず、ただマイペースに自分の名を名乗った。
「俺は一文字隼人だ。本業はフリーのカメラマン。こんな見た目だが柔道六段、空手五段の改造人間であり、大自然が遣わした正義の使者さ」
「まさか……仮面ライダーですか?!」
「なんだ、知ってるじゃないか」
突如として目の前に現れたもう一人の仮面ライダー。その名は一文字隼人。
本郷を追って異世界に迷い込んだもう一人の勇者は、目を白黒させるリリアーナにこれから進むべき道の一つを示し、彼女が反応を返す前に雫の頭を優しく一撫でしてからベランダに出て飛び降り、場を去った。
最後に、「また来る」と一言残して。
彼が立ち去った数秒後、慌てた様子でリリアーナの部屋に駆け込んだ騎士が「侵入者は!?」と聞くが、リリアーナは上の空で聞き流してついさっきまでは確かに居た男の言葉を脳裏に思い浮かべていた。
「後悔してからじゃ遅い。現状に満足してないならまずは動け」
(私は、どうしたら良いのでしょう。ねえ、雫……)
隼人を見ていた時は大人しかった雫が泣き出したため、彼女の頭を撫でながら尚もリリアーナは悩む。王女としてではなく、リリアーナという一人の人間として決断する時は刻一刻と近づいていた。
そんな時である。にわかに王城の入り口に居た人々が騒ぎだしたのは。何事かと思ってベランダから下を覗いたリリアーナは、入り口付近に佇む人物を見て驚愕を露わにした。
「あれは……幸利さん!?」
見慣れない二輪に跨り、ヘルメットを取って髪をかき上げたのは大迷宮に潜ったはずの幸利であった。腰には見慣れないベルトを巻いているが、紛れもない本物の幸利だ。
リリアーナは居ても立っても居られなくなり、雫の手を引いて部屋を飛び出すのだった。
一瞬だけ現れたもう一人の仮面ライダーはちょくちょく登場します。主役はあくまでも本郷さんですが、彼も重要人物の一人です。
また、王国に舞い戻った幸利視点の物語もたまに書きます。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫