大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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原作では帝国兵と戦う場面です。


第二十七話 ロンリー仮面ライダー

ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。

 

途中で魔物が襲ってくるも、俺のその辺の石ころの投擲かハジメの射撃によって全ての魔物が近づくことすら許されずに死んでいった。

 

破裂音が響くか風切音が鳴るたびに魔物がバタバタ倒れていくため、大多数のウサミミたちは畏怖の表情を浮かべている。もっとも、年端の行かない子供はまるでヒーローでも見たかのように目を輝かせているが。

 

俺はたまに子供たちの頭を撫でてやりながら尚も進む。ハジメは子供から純粋な視線を送られてむず痒いらしく、しきりに頬をカリカリと掻いている。

 

遠目には既に出入口へと繋がる中々に立派な階段がある。岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。

 

そして階段を上った先には多くの帝国兵が居るらしい。完全武装しているようなので衝突は避けられないだろう。

 

俺の剣呑な雰囲気を感じ取ったのか、カムが心配そうな顔でこちらを見てきた。

 

「あの、猛殿。本当に同族と争いになるのですか?」

「何を今さら言うのです。助けると言ったら助けますよ」

「しかし、そう簡単に割り切れる物ですかな。同じ種族の者を、その……迷いなく殺しに行くなど」

「僕が守りたいのは美しい大自然と命の輝きです。それ以上でもそれ以下でもないです」

 

あくまでも決意は変わらない。元より人殺しは経験してきてる。殺した人間の数が増えたところで何てことない。

 

カムの言葉にも迷いを含ませることなく言い放つと、彼は少し驚いた表情を作った。悪いが、そんなに俺は優しい人間ではないぞ。軽蔑されようが関係ない。俺は何時の時代も独りだ。

 

何時までもロンリー仮面ライダーである。荒野を渡る風は飄々と。独り行くは仮面ライダー。悲しみを噛みしめて独り戦う。それが俺だ。

 

一行は階段を登りきる。登りきった崖の上、そこには……

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており俺たちを見るなり驚いた表情を見せた。

 

だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

その視線が気持ち悪かったのか、香織たち女性組は俺の背中かハジメの背中の陰に隠れてしまった。

 

目の前に立っている人型をした何かは、きっと誰かを思いやる気持ちなど持ち合わせないのだろう。良識の欠片すら持ってすらいない。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族……じゃあねぇよな?」

 

ようやく俺の存在に気が付いたらしい。隊長と呼ばれていた男が俺に視線を向けた。

 

よっぽど俺は幽鬼のような表情をしているのだろう。隊長と呼ばれた男は顔を青ざめさせて一歩後退った。

 

「な、なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

「勘違いも甚だしい。貴様らと同じにするな」

「……なんだと?」

「その耳は何のために付いてるんだ? 飾り物か?」

 

間違いなく俺の顔には醜い手術跡が浮かび上がっている。俺が一歩踏み出す度に兵士たちは後ろへ下がった。もしかしたら眼も怪人のように赤く充血しているかもしれない。

 

タイフーンが少しずつ風車を回す。特徴的な回転音が辺りに響き渡る中、俺はやけに通る声で問い質す。

 

「平和に暮らしていた者を虐げて楽しいか? 罪のない子供や老人を傷つけて楽しいか? いたいけな女性を辱めて満足か? 貴様ら、本当に何とも思わんのか?!」

「は、はあ? 亜人は魔力を持たない哀れな種族だぞ! 本来なら皆殺しにされてもおかしくない種族だ! それを俺達は、唯一有効活用する方法を取っているだけだ!」

「ッ! それでも……それでも同じ赤い血の通った人間か!!

 

姿が化け物に変わっていく。足が。胴が。腕が。変わっていく。最後に顔を仮面が覆い、俺の怒りと悲しみが入り混じった表情を隠す。

 

残された人間的要素は、この口から発される声と言葉を考える脳だけである。

 

悲しみを仮面の裏に隠し、俺は一歩前に踏み出す。俺の怒りに呼応するかのように風が吹き荒れる。大自然の怒りは俺の怒り。その怒りは俺の力になる。

 

「この悪魔達め……! これまで辛酸を舐めさせられた者のためにも、この俺が裁いてやる! 貴様らを地獄へ送る時が来たぁ!!」

「や、止めろ! 近づくなっ! おい何をしている!? お前ら助けろ!!」

 

金縛りに遭ったかのように隊長以下の兵士は動かない。動けない。技能の〝威圧〟によって魔力を放射し、物理的に動きを封じ込めているのである。もっとも、心臓を直接鷲掴みされたかのような息苦しさも襲ってくるが……。

 

風が右拳に集束し、目に見えてエネルギーが充填していくのが分かったのか、隊長は慌てて命乞いをしようとする。

 

「わ、分かった! 分かったから! 此奴らには手を出さない! だから止めてくれっ」

「聞けないお願いだな。既に剣を抜いている貴様らに後退の二文字は許されない」

「そんなっ」

「戦わないと死ぬぞ? それでも良いのか?」

「う、うわあああああああああ!!!」

 

剣を抜いて我武者羅に突進し、俺のことを殺そうとする隊長。どうなら半端ながら覚悟は決めることが出来たらしい。だが、半端なのが残念ながら命取りである。

 

大上段に振りかぶって振り下ろされた剣。それを俺は軽く殴って木っ端微塵に破壊し尽くし、茫然自失としている隊長の顔に回し蹴りを叩き込む。

 

蹴った方向に隊長の首が飛び、そのまま峡谷の底までクルクルと落ちていった。

 

「ッ……」

 

何度やっても慣れない感触だ。戦争地域に赴き、そこで何回も俺は生身の人間をこの手で殺している。幼い子供達を守るためとはいえ、俺は同族を殺してきている。

 

その感触は何度やっても慣れない。堪らなく虚しい気持ちが俺を襲い、胸の奥から悲しみが少しずつ吹き出してきた。

 

「よ、よくも隊長を!」

「行くぞお前ら! 隊長の仇を取るぞ!」

 

隊長が殺されて漸くスイッチが入ったらしい。前衛職の者が俺に直接襲いかかり、魔法組は詠唱を開始する。きっと最上級魔法を叩き込む心づもりなのだろう。

 

万が一、俺が魔法を受けても傷一つ付かないだろう。しかし、二次災害で後ろで震えているハウリア達は魔法の余波で吹き飛ばされてしまうかもしれない。速やかに片付ける必要がある。

 

人を殺すと決めた時。そして、戦闘に対して渇を自分で入れる時。俺は腕を横水平に揃えて叫ぶ。

 

それは、俺の決意のを表すためと能力の一時的な強化のための物だ。

 

「ライダーファイト!!」

 

腕を自分から見てL字になるように構えると肩のスイッチが起動してタイフーンが回転し、蓄えたエネルギーを解放する。

 

複眼が紅く光り、体から蒸気が噴出した。そして腰のダイヤルスイッチを捻ってとある機能を動かしてから俺はその場を動き出した。

 

地面を踏み抜いた瞬間に剣を振りかぶろうとした兵士の懐に潜り込み、一突き正拳を見舞ってからすぐにその場を離れてその隣にいた兵士を蹴り飛ばし、浮かせた体を踏み台にして後方で未だ詠唱している魔法使い達の頭蓋骨に踵落としを見舞っては再飛翔して次の魔法使いに踵落としを叩き込む。

 

地面に激突してストンプされ、血飛沫が飛ぶ前に離脱して未だに振り向けない前衛の兵士を後ろから殴って撲殺した。

 

……まあ、普通の兵士が振り向けないのは無理もない。俺が地面を踏み抜く前にダイヤルスイッチを捻った行為は、俺の体が通常の千倍の速度で動くための行為なのだから。正確に数値化するのは面倒くさいが、百メートルが0,006秒ぐらいだ。

 

あまり、というか殆ど知られてない能力だが、仮面ライダーには高速移動装置が取り付けられている。これまで表舞台では使ったことないが、実は戦争地域に赴いていた時は頻繁に使用して多くの命を救ったという俺にとっては思い入れの深い機能だ。

 

数秒が経過した頃には一人を残して帝国兵は無残な死体へと成り果てた。俺はダイヤルスイッチを元の位置に戻して動きを止め、最後の一人の目の前に粛然と立つ。

 

「ひ、ひぃ!?」

「何が起きたか分からない、か? それもそうだろう。貴様らは普通の人間なのだから」

「お、おおお前は……お前は何なんだ!?」

 

震えながら腰を抜かし、地面を濡らしながら俺に問う最後の兵士。

 

俺はツェリスカを抜き、弾を込めて安全装置を解除させる。漆黒の銃口を兵士の頭に向け、ただ端的に質問に答えた。

 

「大自然が遣わした正義の使者だ」

「し、使者?」

「そして、またの名を……」

 

仮面ライダー

 

ドゴアン!

 

答えと共に放たれた弾丸により、帝国兵は全滅した。脳骸を撒き散らし、後ろに倒れる帝国兵を見つめながら、俺は天を仰ぐ。

 

俺の心境とは真逆で、空は憎たらしいほどに澄んだ蒼色だ。

 

押し寄せる虚無感に耐えながら、俺は仮面の中で涙を流すのだった。




仮面ライダーは理解者こそ居ても何時の時代も独り。それが仮面ライダー。

ちなみに仮面の中で涙を流すのはクウガのオマージュです。そして高速移動装置は設定のみ存在する仮面ライダーの機能です。速度はファイズアクセルフォームと同等と言ったところです。

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