大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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三人称視点です。時折こうして清水くんsideを描いていこうと思います。


清水sideその1

時は少し巻き戻る。

 

「はあ? 八重樫が幼児退行した?」

 

ハイリヒ王国に到着し、とりあえず城に入って生還報告でも……と思っていた幸利に帰ってきて早々にリリアーナが捲し立てた新事実に彼は困惑の声を上げる。

 

しかし、リリアーナの服の裾を掴んで話さない雫を見て納得せざるを得ない。

 

幸利は大きなため息を付いて何があったのかを尋ねる。

 

「何でまた……」

「……実は、光輝さんが雫の事を襲おうとしたんです。その時のショックと、これまで溜め込んできたストレスが原因らしいです」

「おいおい、あのクソ勇者がやらかしたのかよ。じゃあ何だ。王国がお通夜みたいに静まり返ってるのはそれが原因なのか?」

「正確には、光輝さんと檜山さんが行方不明になったからです。その、お二人は光輝さんが雫を襲った翌日に姿を眩まして……」

「クソ勇者と檜山のバカが行方不明程度でお通夜ムードとかやってられねえな。これじゃあ戻らない方が幸せだったかもな」

 

本当なら顔を出すだけにして、すぐに愛子の元へ向かおうと思っていた幸利。しかしいざ帰ってみればとんでもない厄介事を知ってしまった。

 

自分の決断を後悔しているわけではないが、それでも「あのクソ野郎共……」と言わずには居られなかった。

 

チラッと雫を見れば、それこそ幼子のように幸利の事を震えて見ているため更に幸利のため息は大きくなる。

 

「で? 俺に如何しろって言うんだよ。俺は猛先生やハジメとは違って精神崩壊した人の心を癒すなんて芸当は出来ないぞ。いや、白崎なら多少は出来るか……?」

「え、やっぱり皆さんご無事だったんですか!?」

「は? 当たり前だろ。猛先生が一緒なんだぞ。逆にあの人の事を何だと思ってるんだよ」

 

幸利の口ぶりからオルクスに潜った全員が無事だと分かったリリアーナの心に久しく光が差す。雫の事は勿論心配しているが、ショッカーの事を調べ始めてからはその巨大な力故に基地を潰しに行った猛達を心配していたのである。

 

まあ、幸利からすれば猛が居れば自分達が死ぬことはまず有り得ないと思っているのだが……彼はそれを口に出す事まではしなかった。それに近しいことは吐いたが。

 

「まあ精神崩壊したならご愁傷様と言ったところだな。だが俺には関係ない。そっちはそっちで頑張れよ。俺は愛子先生の元へ行くからな。今日も一応顔を見せに来ただけだ」

「そ、そんな事言わないでくださいよ! 同じクラスの仲間でしょう!?」

「いや、仲間じゃないね。俺の仲間はハジメ達だけだ。困っているのは分かったが、それでも俺に如何にかしろと言うなら却下する」

「だ、だったら雫を連れて行ってください!」

「はあ?」

 

リリアーナは必死だった。悲しいが、彼女では雫の心を取り戻すことは不可能なのだ。しかしこのまま放置しては何時か雫が死んでしまう。それは何となく察しているリリアーナは、こうして現れた最後の希望に願いを託したかったのである。

 

だが幸利からすれば、精神崩壊した雫はただの足手まといだ。邪魔でしかない。他の同級生とは違って雫の事を美人だとも可愛いとも思っていない彼からすればクソ以下の価値の申し込みだ。

 

ちなみに幸利が可愛いと思っているのはハジメの前の恵里とユエ。そして猛の前の香織とシアである。

 

「俺に何の得がないじゃないか。同郷の者だからって何でもすると思っているのか?」

「でも、貴方しか居ないんです! 雫が他人の前に出て泣かないのは貴方ともう一人しか居ないんですよ! そのもう一人も神出鬼没で頼めないんです!」

「勘弁してくれよ。何度も言うが、俺はカウンセラーじゃないんだ」

「愛子さんの元に送り届けてくれるだけで良いんです! どうか、どうかお願いします!」

 

遂には土下座をしてまで幸利に頼み込むリリアーナ。流石に女性、しかも王女に土下座されたとなれば幸利も焦る。

 

……と思いきや、意外にも幸利は冷静だった。

 

幸利はリリアーナが「雫を送り届けるだけで良い」と言ったのを確かに聞いた。送り届けるだけなら、後は愛子に丸投げすれば良いだけだ。

 

そうとなれば其処まで面倒でもない。そう感じた幸利はまた大きなため息をついた。

 

「……で、愛子先生は何処に居るんだ?」

「え、え? あ、えっと……今は湖畔の町ウルに向かっています」

「そのウルとやらは此処から何日ぐらいだ?」

「馬車で大体二日ぐらい……でしょうか」

「そうか。ならバイクならあっという間に到着するから八重樫の着替えなんかは最低限で良いな」

「え……?」

「間抜け面晒す時間があったら早く準備を始めてくれよ。今日中に八重樫を送り届けたいんだ」

 

分かりやすいぐらい目を輝かせたリリアーナに幸利が向ける視線は冷たい。しかし、それでもリリアーナは歓喜せずにはいられなかった。

 

そのままバタバタと奥の部屋に引き返してリリアーナが雫の荷物の支度を始めたため、場には幸利と雫だけが残された。

 

雫は泣くことはなく、ペタリと地面に座ってジッと幸利の事を見つめている。悪い人なのか否かを見極めているようだ。

 

特に幸利は言及することもなくリリアーナを待つ。雫にはとことん興味がないらしい。某金髪でツンツン頭のソルジャーの言葉が聞こえてきそうだ。

 

「俺は何してるんだか……」

「あい?」

「いや、お前には何も言ってない」

「おにいちゃ、だれなの? おなまえは?」

「本当に幼児退行したんだな。名前すら覚えていないか」

 

思っている数倍は幼児退行だ進んでいたことに驚く幸利だが、「まあ仕方ないか」と割り切ってすぐに自分の名を名乗った。

 

「清水幸利だ。まあ、好きに呼びな」

「ゆきおにいちゃ?」

「……まあ、それでも良い」

「ゆきおにいちゃ。ゆきおにいちゃ」

「うん、何て言うか……複雑な気分だな。同い年に兄呼ばわりされるなんて思ってもみなかったぞ」

 

もの凄く微妙な表情である。悪い気がしないと言えば嘘になるが、それでもむず痒いことには変わりないため幸利の表情は微妙な物になる。

 

そうこうしているとリリアーナが小さなバッグに荷物を詰め込んだのか、額に汗を浮かべながら向かってくるのが見えたので幸利はもう一度「仕方ない」と呟いて前を向くのだった。

 

 

雫の荷物をバイクの収納スペースに放り込み、雫本人は自分の前に座らせて幸利は地図を眺めながらバイクを発進させた。

 

その様子を、カメラを構えた男はパシャリとシャッターを切るとそのまま颯爽とその場を立ち去った。

 

男は幸利に期待しているのがすぐに分かる含み笑いを浮かべていた。

 




清水くんの性格は原作の魔王ハジメに近い物があります。が、魔王ハジメよりも分別を付けられる大人でもあります。周りの大人って大切です。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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