大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「あ、猛さん。ここ分からないんですけど……」
「そこか? そこはさっき説明した定理をそのまま当てはめればすぐに解決するぞ」
「定理を当てはめて……あ、本当だ! ありがとうございます!」
「また分からない所があれば言ってくれ」
香織の教科書とノートを覗いては質問に答え、問題が解決したら俺は読書に戻る。とは言っても、読んでいるのは香織の部屋にあった漫画だ。香織が何冊か貸してくれたので、俺は時間が許す限り読書をしている。
ちなみに現在俺が読んでいるのは「仮面ライダー萬画版」である。どうも既視感のある表紙絵だったので開いてみたところ、俺の半生をそっくりそのまま描写していたので思わず目を見開いたのは内緒だ。
食い入るように読書に集中してしまうと、香織の声を度々無視してしまうことすらあってよく彼女に苦笑いをされてしまうのが今の悩みである。
「っと。これで宿題は終わりですね。あ、そうだ。今日は近くの河川敷で夏祭りがあるんですけど、猛さんも来ますか?」
「夏祭りか。行くのは一向に構わないけど、智一さんは何て言うかな」
「それなら心配ないです! お父さんとお母さんも夏祭りに行くので、猛さんが行っても問題はありませんよ!」
「それなら、行こうかな。念のため智一さんには伝えておくよ」
本を閉じて栞を挟んでから棚に戻し、俺は智一さんから貸してもらっている服を着込んでから彼の元に行く。
智一さんに祭りに行く旨を伝えると、「どうか家の
薫子さんに諫められて大人しくなった智一さんに思わず苦笑しつつ、俺は二つ返事で彼の言葉を守ると約束した。その言葉に智一さんの表情がもの凄く輝いていたのは言うまでもない。
「河川敷まではそこまで遠くないらしいが……バイクを持っていくか。いざという時は仮面を被ることも出来るしな……」
「あの、準備出来ましたよ!」
「ああ、それじゃあ行こう……俺の目の前には天使が居るのかい?」
およそ俺らしくもない言い回しで香織の姿を評した理由は、そのぐらい香織が魅力的に見えたから他ならない。着物に身を包んだ香織は、普段の清楚な彼女をより一層磨き上げており、中学生だというのに何処か色っぽさまでもが出ている。
直視することが不可能になった俺は、香織にヘルメットを渡してからバイクの後ろに乗せ、なるべく背中に当たる感触を無視して河川敷へと向かう。どうやら香織は友人と待ち合わせをしているらしいので、俺はその場所に直行した。
道行く車と車の間をスイスイと通り抜け、待ち合わせ場所の近くにあった川を偶然見つけた出っ張りを利用して飛び越える。後ろから黄色い悲鳴が聞こえるが、振り落とされていないことだけを確認して俺はバイクを着地させ、峠を攻めるかのようなドリフトを決めて停止した。
「着いたが……生きてるか?」
「は、ひ。すごかったれふ……」
「か、香織? 白目むいてるけど、本当に大丈夫? というか、貴方は誰よ?」
香織の頭に乗っているヘルメットを外すと、目を回した香織が現れた。俺が少し過激すぎたと反省していると、ポニーテールにした長い黒髪が特徴的な大和撫子が現れた。
香織の名前を知っているところから察するに、きっと彼女が待ち合わせしていた相手なのだろう。
「俺は本郷猛。訳あって彼女に勉強を教えている家庭教師のような者さ」
「あら、そうなの? そういえば最近、家庭教師に勉強を教えてもらってるとはきいてたけど、貴方だったのね」
「君は……彼女の友達か?」
「ええ、そうよ。私は八重樫雫。これでも香織の親友ね」
フワリと優しく微笑んだ大和撫子は八重樫雫と名乗った。女性にしては高めの身長であり、引き締まった体格や一瞬見えた掌のたこを見るに、彼女は剣道をやっているのだろう。藤兵衛が剣道の達人であったため、そのぐらいの見分けは付く。
目つきもどちらかと言えば鋭いので、彼女を見た人はもしかしたら「格好良い」と思う人がいるかもしれない。
そんな雫を見て、俺はルリ子さんの面影を少し思い出した。彼女もまた、強い女性であった。父をショッカーに殺され、自分自身も危険に巻き込まれてながらも気丈に戦い続けた、とても強い女性である。
「うう、ん。ご、ごめんね雫ちゃん。ちょっと目が回ってたよ」
「川を飛び越えてきたしねえ。目を回さない方が不自然よ」
「でも凄かったよ! 車と車の間を通り抜けたり、飛び出してきた乗用車を飛び越したり! 風がビシビシ当たって気持ちよかったよ!」
「そ、そうなの。逆によく振り落とされなかったわね」
とはいえ、香織には好評だったらしい。もしも次、頼まれたら夜中の人通りが少ない時間帯にやると俺は決意した。
密かに決意している俺に構わず、香織たちは一歩前をどんどん歩いて行く。彼女たちが通ると、すれ違った人が思わず振り返っているところを見て俺は今日何度目かの苦笑を零す。
が、その苦笑もすぐに消えることになった。
「おいテメェ! なにぶつかってるんだこのガキ!!」
「兄貴にぶつかるたぁ、随分な野郎だなあ?」
「す、すみません家の孫が……」
「おいババァ! このスーツはよぉ。滅茶苦茶高かったんだぞ!!」
「すみません……すみません……」
「これはスーツ代と慰謝料を払ってもらわないとなあ」
「兄貴にぶつかり、スーツ汚した落とし前はつけて貰わないと、なあ?」
「お、お金は勘弁してください……」
「アア? なんだあババァ。口答えすんのかあ?」
「良い度胸してるぞゃねえか。ああ?」
「こ、これで……」
「20000円だぁ? これっぽっちも足りねえよこの野郎が!!」
「あ……財布ごとは勘弁してください!!」
どうやら年端もいかない子供がヤクザの末端の者にぶつかってしまい、挙げ句手に持っていたタコ焼きのソースで服を汚してしまったらしい。
子供はワンワン泣きじゃくる。子供の祖母と思われる女性は縮こまる。ヤクザたちはそれを見て、更に人目はばかることなく恫喝する。
強者が弱者を虐げる。力を振りかざして自分の思い通りになるように全てをコントロールしようとする。そんな姿を見て、俺が気がついたときには体が自然と動いていた。
「止めろ。そこまでにするんだ」
「ああ? 何だてめぇ」
「俺達に指図するってか? 良い度胸してやがるなあ?」
「君達こそ、良い度胸しているよ。こんな大勢の前で見苦しく恐喝してるんだからね」
ショッカーにも似た心構えを持っているであろう彼らに対して少しずつ怒りを呼び起こしながら、しかしなるべく顔に出さないようにして諫める。
が、どうしても感情を抑え込むのは限界があるらしい。言葉には何処となく刺が含まれてしまった。更に、周囲の人達が俺の顔を見ては一歩後退っていることから、きっと俺の顔には醜い手術跡が浮かび上がっているのだろう。
「あ、兄貴。あれはヤバくねえか?」
「う、うるせえ! あんな野郎、俺の跳び蹴りで一発だ! それに、あんな野郎に負けたとなりゃあ親父さんが黙っちゃいねえぞ!」
「兄貴……」
「やい、ふざけた野郎! 俺と一対一だ! 逃げることは許さねえぞ!」
どうしても衝突は避けられないらしい。既にヤクザの男が周囲の人達に大声で命じて俺とヤクザ達を囲う円を作っており、被害者を連れて逃げることはまず不可能だろう。
だとすれば、俺が出来ることはヤクザ達になるべく怪我を負わせることなく戦意を消失させ、この場から退散させることだ。
そして、被害者の二人は巻き込まれない位置に退避させるのも俺の仕事である。俺は、一番近くに居た中学生ぐらいの男の子に声をかけた。
「君。二人を連れてこの場から離れてくれ」
「ぼ、僕ですか? 貴方は……?」
「大丈夫だ。殺すつもりはない。殴るつもりもない。出来る限り穏便に済ませるから、警察には連絡しないでくれ。こんな顔で信用出来ないかもしれないが、頼む」
「……分かり、ました。優しい瞳をしている貴方を、僕は信じますね」
男の子は確かに頷くと、優しさを多分に含んだ微笑みを浮かべて被害者二人の元へ走って行き、そのまま迅速にこの場から退避をした。
それとほぼ同時に、ヤクザの男が助走をつけてから跳び上がって不格好な跳び蹴りを繰り出してくる。俺は一歩下がって回避をし、地面に這い蹲った男のことを上から見下ろす。
「ひ、ひぃ!?」
「最後の忠告だ。財布をこの場に置き、ここから今すぐに立ち去れ。もう一度言うぞ。財布を置いて立ち去れ。さもなくば……」
「わ、わわ分かった!」
「お前もだ。話は聞いていただろう。早く立ち去るんだ」
「は、はひぃ!」
ヤクザ二人を怪人を睨みつける勢いの視線で射貫くと、二人はアッサリ陥落した。醜い手術跡のある顔に剣呑に細められた目というのは中々に怖かっただろう。
その事を十全に理解している俺は、一つため息をついて周りの人達に「お騒がせしました」とだけ謝ってこの場を立ち去った。
香織とも顔を見合わせたが、俺はすぐに顔を背けて彼女から離れる。とてもではないが、今は一人になりたかった。
俺の全身に残された手術跡は感情が昂ぶると勝手に浮かび上がる。こればかりはどうすることも出来ない。特に顔の傷は、誰にでも見えてしまうのが厄介だ。顔の傷を隠すためにも、仮面を俺は被ってきた。仮面だけが、傷跡を……俺の心を、これまで隠してくれていたのだ。
しかし、この世界で仮面を身につけることは出来ない。ショッカーやデストロンといった怪物を生み出す組織がない以上、俺の仮面を被った姿は化物と変わらない。
一度、情報操作をされて“仮面ライダーは化物”と認識した人類に迫害されたこともある。あの時は落ち込む後輩達に檄を飛ばすので忙しかったが、本当は俺だって傷ついていたのである。
人というのは、自分と少し違うだけで忌み嫌う。そんな生き物だと俺は薄々勘づいてしまっている。
そんな経験も相まって、俺は仮面を被ることを踏み切れずにいたからこそ、俺は好奇の視線で見てくる人々の場から逃げてきたのだ……。
「あの……大丈夫、ですか?」
「……君は、さっきの」
人通りの少ない河川敷に座り込み、ぼーっと川を見ていると隣にはいつの間にか男の子が座っていた。声からして、ついさっき騒動に巻き込まれた被害者二人を連れて立ち去った人だろう。
「元気がなさそうでしたので。大丈夫ですか?」
「まあ、うん。大丈夫だ」
「そうですか。さっきの二人、何度も貴方にお礼を言いたいって言ってましたよ」
「そうか。とりあえず無事だったならそれで良かった。君もありがとうな。急に話題を振った俺の頼みを聞いてくれて」
「いえ、困ってる人を見たら助けるのは当たり前ですから。仮に、顔が怖かったとしても助けないなんていうのは有り得ませんよ」
彼の方を見れば、屈託とまでは行かなくても良い笑顔が浮かんでいた。
改めて彼の顔を見ると、かなり整った顔をしているように見える。所謂美男子という感じではないが、優しげに輝く瞳が平凡な顔を数割増にしているのだろう。
「でも、その顔の傷が何なのかは気になりますね。手術跡にしては箇所が多すぎる気がするんですけども……」
「そうだね。普通に手術を受ければこんなに手術跡は出てこないさ。普通の手術なら、ね」
彼になら話しても大丈夫かもしれないと思った俺は、香織やその家族に話した“俺の身体”についてより詳しく話す。
「君はサイボーグを知ってるかい?」
「サイボーグ、ですか。体の一部を機械へ置き換えたり、動物の能力をそのまま移植するって奴ですよね?」
「そうだ。ここまで話したら想像はつくだろう? 俺はサイボーグなんだよ。ショッカーによって無理やり人外にされたんだ」
「ショッカーって……まさか、仮面ライダーのショッカーですか? 待てよ、貴方の姿を萬画で見たことがあるような、ないような……まさか、異世界転生してきたんですか?」
「異世界転生……」
「この世界とはまた別の世界から何らかの理由があってやって来る現象ですよ。貴方の場合はどうしてこの世界にやって来たのかさっぱりですけどね」
俺の話を聞き、一切否定することなくファンタジーな推測を話してきた男の子。異世界転生という言葉は小耳に挟んだ程度の知識しか持っていないが、何となく理解は出来た。
俺は、何らかの力が働いて異世界にやって来てしまったのだと。
その理由は不明だが、兎に角俺は異世界転生をした。これは間違いなさそうだ。眠りにつく際に、一文字にはコッソリと「脳死させて何処かに埋めてくれ」と指示を出しているので時間としては一文字に地面に埋められてから転生したと考えられる。
「あの、仮に貴方が異世界転生をしたとしたら……貴方の名前は本郷猛、ですか?」
「その通りだ。何故、俺の存在が創作物で有名なのかは知らないが……俺は確かに本郷猛さ。そうだ、君の名前は?」
「僕ですか? 僕は……」
南雲ハジメ。その辺に存在している、ゲームや漫画が好きなありふれた中学生です。
彼は頭を下げながら自己紹介をするのだった。
次回から時系列的にはありふれのプロローグです。仮面ライダーTHE FIRSTと同じように本郷猛さんは先生になります。
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本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫