大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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別作品と並行で進めてる関係上、更新が遅れる可能性大です。ご了承ください。その別作品と言うのは以前「その音色は異世界まで響き」を完結させた直後に予告していた作品です。先にこっちを始めたのはお許しください……。


第三十四話 ブルックの町へ

遠くに町が見える。周囲を堀と柵で囲まれた小規模な町だ。街道に面した場所に木製の門があり、その傍には小屋もある。おそらく門番の詰所だろう。小規模といっても、門番を配置する程度の規模はあるようだ。

 

「ふむ、結構充実した買い物が出来そうだな」

「ですねぇ。調味料とか買えそうですかね?」

「だな。今までは大味な事も多かったが、これで料理の味もより美味しく出来るだろうな。生憎なことに、俺は料理は出来ないけど……」

 

独り暮らし出来るぐらいには料理が可能だが、それでも香織やシアのように凝った料理は出来ない。ちなみに俺の好物は梅干し入りおにぎりとカレーライスだ。

 

もうそろそろ遠目から俺達の事が町からも見えそうなので、俺はゆっくりブレーキをかけてサイクロンの速度を徐々に落としていった。

 

テクテクと歩いて行くと、遂に町の姿が大きく見えるようになった。

 

案の定、門の脇の小屋は門番の詰所だったらしく、武装した男が出てきた。格好は、革鎧に長剣を腰に身につけているだけで、兵士というより冒険者に見える。その冒険者風の男が俺達を呼び止めた。

 

「止まってくれ。ステータスプレートを。あと、町に来た目的は?」

 

規定通りの質問なのだろう。どことなくやる気なさげである。

 

「ちょっと買い物と、あとは一日の宿泊だな。旅の途中なんだよ」

「ふうん……えっ?」

 

ガサゴソと懐を弄ってステータスプレートを出して、男に手渡したところで「しまった」と思った。

 

ステータスプレートには隠蔽機能があり、能力値や技能を隠せることも可能なのだが、それを俺は忘れてしまった。

 

やってしまった感が凄まじく、俺は内心で冷や汗をダラダラと流す。しかし、それを顔に出しては終わりである。

 

さて、どうしようか……。

 

「え、と。こんなステータスは見たことないんだが……」

「……ああ、それか。実はな、さっき魔物に襲われた拍子に岩石にぶつけてしまったんだ。それから表記がおかしくなってな」

「ああ、つまり壊れたってことか。聞いたことないけどな」

「ステータスプレートを新調したいってこともあって町に来たんだ。それに、俺が指先一つで世界を滅ぼせるような男に見えるかな?」

「はは、見えないよ。そうだな、何事にも初めてってもんがあるよな!」

 

人の良い男で助かった。嘘を付くのは心が痛むが、改造人間でありながら一般社会に溶け込んでいる時点で既に他人に対して嘘を付いていることになっていると思い込んで自責の念を掻き消す。

 

その後、俺は「連れは魔物の襲撃でプレートを紛失した」ともう一つ嘘を付いて無事通してもらえることになった。ついでに素材の換金が出来る場所も聞き出してそのまま町へ足を踏み入れた。

 

町の名はブルックと言うらしい。ホルアド程ではないが、かなり活気づいた町らしくそこかしこに露店が展開されている。人々の表情も明るく、住み心地は良いと分かる雰囲気だ。

 

明るい雰囲気というのは自然と気分を高揚させる。見れば香織達も楽し気な表情だ。あのユエも僅かにだが表情を緩めているのが決定打である。

 

「あれ、もう恵里は何か買ったの?」

「……焼き鳥を貰った。ハジメも食べよう」

「え、お金は? ……あ、もしかしてあのおっちゃんが無料で渡してくれたの?」

「うん。彼氏さんとお幸せにって」

「ぶふっ!?」

「んぅ……」

「あ、ああ。ごめんねユエ」

 

何とも仲睦まじい姿を見せているハジメ達。先生は二股することは否定しない。まあ、二股するからには両方を幸せにしろとは言うが。

 

他国では重婚を許可する所もあるが、決まって「全員を平等に愛せ」となっている。その考えは俺であっても変わらないのである。

 

ハジメ達の様子を見て楽しみながらメインストリートを数分歩くと、一本の大剣が描かれた看板を発見した。かつてホルアドの町でも見た冒険者ギルドの看板だ。規模は、ホルアドに比べて二回りほど小さい。

 

何の躊躇いもなく、俺は重厚そうな扉を開ける。

 

中は意外と清潔であり、左手には飲食店が、正面にはカウンターがある。ギルドに入るとすぐに視線が集まったが、それらを全て無視して俺はカウンターに向かった。

 

カウンターには大変魅力的な笑顔を浮かべた老婆がいた。恰幅がいい。だが、人を見た目で判断してはいけない。この笑顔を見るに、きっとこの人は優しく知的なんだと思う。

 

「おや、アンタはこれまでの冒険者とは一味も二味も違うね。まるで文句の付け所が見当たらないよ」

「それは嬉しいですね。それよりも、素材の買取をお願いしたいんですが」

「素材の買取だね。じゃあ、まずステータスプレートを出してくれるかい?」

「あれ、買取にステータスプレートが必要なんですか?」

「おや、アンタは冒険者じゃなかったのかい? ステータスプレートを提示して冒険者だと分かれば買取額は一割増されるんだよ。他にも、宿の値段が安くなったり少し良い部屋に泊まれたりするね」

 

どうやら特典がかなり多いらしい。これは冒険者登録するのもアリだろう。

 

その旨を伝えてから登録費用は買取額から引いてくれと言うと、老婆は「可愛い子を大勢引き連れているのに一文無しなのかい? しっかり上乗せしとくから安心しな」と言われた。やっぱり良い人である。今度はしっかりと隠蔽してからステータスプレートを老婆に手渡した。

 

老婆が登録の手続きをしている間に、俺は適当な素材を取り出す。買取してもらう素材はとりあえず樹海やライセン大峡谷の魔物の魔石や毛皮、そして爪や牙である。すると老婆の表情が面白いぐらいに変化した。

 

「これは……とんでもない物を持ってきたね。この毛皮と爪は樹海の、魔石と牙はライセン大峡谷の魔物だね?」

「ですね。こう見えても腕っぷしには自信があるんです」

「だとしてもこれはとんでもないよ。滅多にこんな良質な素材を持ってくる冒険者は居ないんだ」

 

まあ、樹海は動くことすらままならないしライセン大峡谷は魔法が使えないしで滅多に持ってこれる人間が現れないのだろう。

 

ちなみに此処で真のオルクス大迷宮の魔物の素材を出すという選択肢もあったがそれは我慢した。そんな事したら大騒ぎになって面倒になるだろう。

 

「本当に大した人間だね、アンタは。まるで邪気や煩悩を感じらないのに誰よりも強いだなんて初めて見たよ」

「それは褒めすぎですよ。僕はそんなに大層な人間ではないです」

 

肩を竦める俺に老婆は苦笑いした。本心を喋っただけなのにこれは如何に。老婆と言い結城と言い、俺の事を過大評価しすぎだと思う。

 

老婆は苦笑いしながらも査定を終えたのか、金額を提示してくれた。合計金額は六十万七千ルタ。結構な額になった。

 

このルタというのはありがたいことに日本の円と同じ計算方法を取るので非常に楽だ。つまりに俺が受け取れる金額は日本円で約六十一万円ということだ。

 

「これでいいかい? 中央ならもう少し高くなるだろうけどね」

「いえいえ、大丈夫ですよ。査定ありがとうございます。あ、そうだ。この町の簡単な地図って貰えますか? 折角なので少し観光したくて」

「ああ、ちょっと待っといで……ほら、これだよ。おすすめの宿や店も書いてあるから参考にしなさいな」

 

手渡された地図は、中々に精巧で有用な情報が簡潔に記載された素晴らしい出来だった。これが無料とは、ちょっと信じられないくらいの出来である。

 

感心して「凄いな……」と呟くと、老婆は書士の天職持ちなのでここまで精巧な地図が作れるという話を聞いた。しかもこの地図、なんと趣味で書いたらしい。とんでもなくハイスペックな老婆である。

 

受け取った通貨を上着のポケットの入れ、地図を一通り見てから俺は老婆に一礼してその場を立ち去った。

 

……そして、すぐに顔を顰めることになった。

 

「はあ、しつこいですよ。私は貴方の奴隷なんかまっぴらごめんです」

「……シア、何があったんだ。」

「あ、師匠。この粗大ゴミ達が私の事を連れ去ろうとしてきたのでちょっと気絶させたんです」

「お、おう。何というか、お疲れ?」

「はいですぅ!」

 

すっかり失念してたが、兎人族は愛玩用奴隷として大人気だ。シアはそんな兎人族の中でもトップクラスに見た目が良いのでフラフラと釣られる男が後を絶たないのだろう。

 

シアの戦闘能力を考えれば心配は無用だが、それでも大切な弟子が攫われそうになったという事実には頭を抱えたくなった。シアだって大切にしたい人だ。勝手に居なくなられたら困る。

 

思わぬところで現れた厄介ごとに俺はため息を量産するのだった。

 




次回は再び清水くんSIDEです。定期的に挟まないと放置になってしまうのでこれもご了承を。
ちなみに原作では「オバチャン」と表現していた所は全て「老婆」に変えています。本郷さんがオバチャンと言う姿はちょっと想像できなかったです……。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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