大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
今回は前半が猛視点。後半は三人称です。
さて、シアの件で一悶着はあったが、俺達は何とか宿へと移動する事が出来た。
シアを攫おうとした奴らはトラウマを抱えたのか、目が覚めてシアの姿を見るなり逃げ出してしまった。成敗している場面を見ていなかったので、彼女がどんな風に戦ったのかは知らない。だが、穏やかじゃない事をしでかしたのは明白であろう。
御陰様で、町ですれ違った人々に怖がられる始末である……。
老婆に貰った地図で顔を隠しながら、何度溜息を吐いたか分からん。
「……此処か」
「あ、あの師匠。騒ぎを起こして申し訳ないですぅ……」
声に疲れが多分に含まれていたらしく、シアがウサ耳をペタリと倒して謝ってくる。
別に怒っている訳ではない。ただ、人々から向けられる視線に疲れた。かつて浴びた、バケモノを見るような好奇の視線に。
軽く手を振ってシアに返事をしたが、彼女には怒っているから素っ気ない返事をしたのだと捉えられてしまった。益々落ち込んで香織に泣き付いている。
宿に入った瞬間に物凄い数の視線を向けられはしたのだが、如何せん気分が落ち込んでいるのであまり気にならない。視線を無視して、俺はカウンターらしき場所へ行くと、十五歳くらい女の子が元気よく挨拶しながら現れた。
「いらっしゃいませー、ようこそ〝マサカの宿〟へ! 本日はお泊りですか? 其れともお食事だけですか?」
見ているだけで元気を貰えそうな女の子だ。ちょっとだけ落ち込んだ気分が戻った。
「宿泊でお願いするよ。このガイドブックを見て来たんだけど、記載されてる通りで大丈夫かな?」
「ああ、キャサリンさんの紹介ですね。はい、書いてある通りですよ。何泊のご予定ですか?」
「一泊で。其れと食事に風呂もお願いするよ」
「はい。お風呂は十五分百ルタです。今のところ、この時間帯が空いてますが」
俺の申し付けに、女の子はテキパキと作業をしながら質問してくる。
チラリと女性陣を見てから少しの間考え、夕食後の一時間をお願いした。女の子は「え、一時間!?」と驚いているが、理由を説明すると納得してくれた。理由と言うのは、男と女で分けて入れば丁度良い塩梅になると言う物だ。
「其れでは、お部屋はどうされますか? 二人部屋と三人部屋が空いてますが……」
「そうだな……二人部屋を三つ頼もうかな」
「了解です! こちら、ルームキーになります。お夕食はこの時間からですので、其れまでごゆっくりとお過ごしくださいませ!」
チェックイン終了。部屋分けを適当に行うと、俺はハジメと共に部屋へ入った。
見ればハジメもかなり疲労している。視線に疲れたのは俺だけではなかったようだ。
「流石に疲れました……」
「やっぱりか。まあ慣れないよな。あんな感じの視線」
「先生は慣れてそうですよね。ちょっと失礼な言い方になりますけど、普通の人とは根本から違いますし。主に頭脳面が」
否定はしない知能指数600ともなると、周りと考えが異なる事がかなり増える。改造される以前から、好奇の視線に晒されて来たのでかなり慣れっ子だ。
でも疲れるのは変わりない。普通じゃない視線に常時晒されていて、精神的に疲弊しない人間はまず存在しないだろう。
互いに疲れていた事もあり、俺達はベッドに寝転がってご飯の時間まで睡眠を取る事にした。よっぽど疲れていたのか、一時間程で目覚めた俺に対し、ハジメは恵里が起こしに来ても相変わらず熟睡していた。
「あの、先生。ご飯此処まで持って来てもらっても良いですか?」
「……ああ。分かった、頼んでみるよ」
仲の良い事は素晴らしい事だ。愛し合ってるなら尚更。可愛い生徒のために、此処は一肌脱ぐとしよう。
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「ん、うう……あれ、恵里じゃないか」
「起きた? 先生が夕食を持って来てくれたよ」
膝枕されていた事に気が付いて、ほんのり顔を赤くしたハジメは上体をムクリと起こす。
ちなみに猛はかなり苦労して夕食を部屋へ持って来る事に成功した。受付嬢に頼み込んだのだが、その際に事情を説明しなければならなくなってしまったのである。そして発生した嫉妬と羨望の視線に晒され、階下に居たのはごく短時間でありながらも彼は疲れてしまった。今は香織達が居る部屋で眠っている。
「ごめん、相当疲れてたみたいだ」
風呂の時間はまだ来てない事に安堵したハジメは、謝罪しながら皿に乗った夕食を口にしようとする。
が、スプーンとフォークを電光石火のような早さで恵里に奪われてしまった。
困惑するハジメを恵里は無視。奪い取ったスプーンでスープを掬い、そのままハジメの口元まで持って行く。
「……あーん」
「えっ?」
恵里が猛にわざわざ部屋に夕食を持って来させた理由はこれだ。誰にも邪魔されない場所でハジメとイチャつきたかったからである。其れを猛も察し、苦労してでも夕食を持って来た。
目が覚めたら恋人の膝枕で寝ていて、更に「あーん」までしてくれるこの状況。オタクであるハジメからしたら夢にも見たシチュエーション。ちょっと現実的じゃない事もあり、今は困惑の方が上回ってしまっているが……。
文句を言ってスプーンとフォークを取り戻そうとしたハジメだったが、恵里のキラキラと輝く瞳に一瞬で陥落。諦めて口を開いた。
「恵里って凄いよね。全身で“好き“を表現してるって言うのかな」
「……? ハジメの事は愛してるから、態度に出るのは当然だよ。愛してなかったらこんなにはならない」
「そーゆーとこだって」
「……良く分からないや。あ、私とお風呂は一緒に入るよ。先生にも頼んであるから問題ない」
愛情のストレートパンチ。効果は抜群だ!
この後、ご飯を全て「あーん」で完食したハジメは抵抗せずに恵里と混浴した。ついでに部屋割りも変更され、オルクスの時のように恵里と同じベッドで眠った。
しばらくはリハビリのようなお話が続きます。ご容赦ください。
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