大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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ライセン大迷宮攻略編ですが、原作のように長くは描けないのでかなりあっさりしてます。


第三十七話 イライラ

ライセン大迷宮は思ってた以上に厄介な場所であった。

 

まず、魔法がマトモに使用が出来ない。ライセン大峡谷以上の魔力分解が働いており、俺程度ではタイフーンに微風を送るぐらいが限界である。

 

魔法の扱いに長けているユエと恵里ですら、中級魔法を数メートル圏内で何とか発生させるので精一杯だ。これが並みの魔法使いであれば、一瞬で置物状態にされてしまうだろう。

 

以上の理由から、これまでのように魔法で一撃必殺で決める訳にはいかなくなった。身体能力強化系統の魔法は変わらず扱えるため、近接戦闘が特異な俺とシアが攻略のカギになる。

 

で、そんな俺であったが……。

 

「顔見たら絶対に殴ってやる……」

 

まあ冷静ではなかった。改造人間の特性を最大限に生かして人の気配を探り出し、最速で其処に辿り着くためのルートで前進と言う手法を取っているのだが、久しぶりにはらわたが煮えくり返ってるので時折現れる文字が書かれた壁を徹底的に破壊していた。

 

あの空間から道なりに進んだ俺達の目の前には、如何にも大迷宮と言うに相応しい、迷路のようなゴチャゴチャの道が現れた。しかし、一刻も早くミレディを殴りたかった俺は、迷路に付き合わないでためにも上述の方法を取っている。

 

人の気配が存在している事から、ミレディは生きているであろうと思われる。いや、性格の悪いミレディだ。しぶとく生き残っているに違いない。

 

数十歩進む毎に罠が作動する。円形のノコギリにロープで繋がれた斧。岩に落ちる天井。ショッカーの基地で見たような物ばかりだ。全部真正面から受け、そして破壊して進んでいるので何の問題もない。

 

……問題のだが、俺の後ろを歩くハジメ達の事は随分と怯えさせてしまっている。後で埋め合わせをしなければなるまい。

 

さてさて、迷宮攻略を開始してからおよそ数時間。見知らぬ気配はもう随分と近い。所要時間は二時間と言った所か。

 

「た、猛さん。少し休みませんか?」

「……疲れたのか?」

「いや、私達は大丈夫ですけど。それよりも気を張り詰めてばっかの猛さんが心配なんです」

「俺の身体なら気にするな。改造人間は疲れや痛みの神経を自由に操れるから、急に倒れたり眠ったりはしないぞ」

「それはっ! ……そうかもですけど。でも、やっぱり休みましょう? 幾ら疲れや痛みを感じないとしても、心までは分からないじゃないですか」

 

……大丈夫。それは間違いない。人の心を持っている事は改造人間として致命的な欠点であるのだが、この欠点は割と簡単に克服できてしまう。

 

だが、それを行ったら彼女が間違いなく悲しむのも事実。俺を信じてくれているハジメ達にも迷惑が掛かってしまう。

 

幸い、此処までノンストップだったので時間はタップリある。ハジメ達は一切消耗をしていないので、何時戦闘になっても問題はない。

 

「……分かった。少しだけ休むとしよう」

 

だから、俺は香織の提案を受け入れた。

 

敵の影が無さそうな場所を、壁を殴る事で無理やり作り出す。ほんのちょっと皆が引いてしまっているが、これが一番早く場所を確保できる。

 

「せ、先生ぇ。別に消耗してなかったですし、僕が錬成しても良かったんですよ?」

「阿呆。ハジメが錬成を使ったら魔力が根こそぎ持ってかれるだろうが。最終試練と真正面から戦える戦力はなるべく残しておきたいから、奴の居る場所に辿り着くまでは俺に任せてくれ」

「分かりましたけど、何だか退屈ですね……」

 

退屈で良い。出来るだけ君達から命の危険が及ぶ事から遠ざけたい。

 

不満顔のハジメ。そして恵里。それを苦笑しながら宥めている香織。

 

その様子を眺めていると、ユエが胡坐をかいている俺の上にスッポリ収まるように密着してきた。

 

「ユエも退屈だったか?」

「んっ……」

「そうか、それは悪かった。普通に歩いていても魔力が抜け落ちていく状況なのに、動けないと来れば退屈で仕方ないよな」

「んぅ」

「そう拗ねるなって。生きているであろうミレディを見つけたら、存分に暴れて良いぞ。それまで我慢してくれ」

「……ん」

「ふふ、こうして見ると完全に親子ですねぇ」

 

ならば、隣で見ているシアはお姉ちゃんと言った所か。彼女は兎人族の子供と仲良しだったので、子守りはかなり得意そうである。

 

そんな俺の気持ちを感じ取ったのだろうか。ユエは俺の上からシアの膝の上に移動した。

 

そして……

 

「……おねぇ」

「「んん!?」」

 

喋った。言葉を。失語症であった、あのユエが。

 

暫くの間、驚きから俺は動けなくなってしまった。

 

──────────────────

 

「……なるほど。少しは言葉を口に出来るようになったんだな」

 

硬直が解けるまで軽く十分使った。

 

シアの口から驚愕の事実を聞かされたハジメ達三人も驚きから固まってしまったので、どうやらユエが喋れるようになった事は誰も知らなかったらしい。

 

見た感じ、ユエは単語程度なら喋れるようだ。まだ長文は無理そうだが、それは時間が解決してくれるだろう。何にせよ、彼女の容態が快方に向かっていて嬉しく思う。

 

休息も十分に取れたので、俺達は探索を再開した。ハジメの強い要望もあったので、今度は彼が先頭に立っている。

 

少し歩くと、俺達はそれなりに豪奢な扉の前に辿り着いた。それをハジメがヤクザキックの要領で蹴倒すと、部屋の内装が明らかになった。

 

その部屋は長方形型の奥行きがある大きな部屋だった。壁の両サイドには無数の窪みがあり騎士甲冑を纏い大剣と盾を装備した身長二メートルほどの像が並び立っている。部屋の一番奥には大きな階段があり、その先には祭壇のような場所と奥の壁に荘厳な扉があった。祭壇の上には菱形の黄色い水晶のようなものが設置されている。

 

「奥の扉は封印済みと。先生、どうしますか? この騎士甲冑達、途轍もなく嫌な予感がするんですけど」

「部屋の真ん中ぐらいで起動するんじゃ『ガコンッ!』……やっぱりな」

「ああ……」

 

トラップ発動の時と全く同じ音が鳴り響くと共に、騎士達の兜の隙間から見えている眼の部分がギンッと光り輝いた。そして、ガシャガシャと金属の擦れ合う音を立てながら窪みから騎士達が抜け出てきた。その数、総勢五十体。

 

騎士達は、スっと腰を落とすと盾を前面に掲げつつ大剣を突きの型で構えた。窪みの位置的に現れた時点で既に包囲が完成している。

 

俺はすぐさま指示を飛ばした。

 

「ハジメとシアは俺と来い。騎士を殲滅する」

「「了解(ですぅ)!」」

「ユエは封印の解除を。恵里と香織はその手伝いと護衛だ。道は俺が切り開くから任せたぞ」

「はいっ! 任されました!」

「ユエ、行こう」

「んっ!」

 

ツェリスカを手に、俺は真っ先に包囲網の一角に向かって飛び出す。そして、祭壇へと続く道を塞ぐ騎士に向かって躊躇いなく発砲した。

 

ドガアアアン!!

 

一発に聞こえる銃声。だが、実際に発射した弾丸の数は五発。魔法を全く使用しなくても異常な貫徹力を誇る弾丸は、騎士甲冑であろうとお構いなしに打ち砕いていく。

 

一瞬で包囲網が崩壊し、封印解除メンバーが通り抜けられるぐらいの隙間が出来た。そこを三人が一気に駆け抜けていく。

 

扉の封印の解除を邪魔しようと騎士甲冑は襲い掛かるが、俺を含めた三人がそれを許さない。

 

「シアさん、左の甲冑をよろしくね! 行くぞ、パワーアーム!!」

「はいですぅ! でぇやぁああ!!」

 

ドォガアアア!!

 

流石は弟子達。ハジメは右腕で、シアは拳一つで騎士甲冑を粉砕してる。

 

俺も負けてはいられないな。

 

「ライダーファイッ!」

 

真正面の騎士甲冑にまずは正拳突き。ヒトを遥かに超えた鉄拳が巻き起こす突風によって何体もの騎士がバランスを崩したのを見て、俺はすぐに跳び上がった。

 

騎士の胸元を、頭を、肩を。蹴って破壊しては跳び上がり、次の獲物に向かって急降下を繰り返す。

 

破壊した傍から徐々に再生しているが、それでも一時的に数が減るのは間違いない。最初はほぼ密集していた騎士甲冑であったが、今は所々に穴が生まれていた。

 

ハジメとシアの戦いぶりも素晴らしい。

 

ハジメは騎士が再生すると知った瞬間、パワーアームからロープアームへと切り替えた。そして数体の騎士を纏めて縛り上げ、それを振り回して他の騎士にぶつけている。騎士の破壊こそは積極的には行っていないが、敵に攻撃させる隙を全く与えていない。

 

シアは拳打から蹴り技へと移行している。一撃必殺となった彼女の蹴りを受けた騎士は数メートル吹っ飛ばされ、近くに居た騎士を巻き込んで後退していく。シアの蹴り一発で多くの損害を与え、侵攻を確実に食い止めており、かつ体力もそこまで消耗しない戦い方をしていた。

 

「猛さん! 封印の解除が終わりましたよ!」

「うっざ。ミレディうっざ。絶対殴る……」

「んっ……」

 

そして、俺達が戦闘を繰り広げている間に、三人は封印の解除に成功したらしい。見れば奥にあった扉が開いている。

 

そのまま扉の奥へ突入するぞ! と言おうとして、俺はすぐに口を噤んだ。

 

何だか嫌な予感がする。このまま奥へ進んだら、とても面倒な事が起きる。そんな気がしてならない。

 

「シア、一度下がれ」

「うぇ? 騎士はどうするんですか?」

「俺とハジメが抑える。お前はその間に〝未来視〟を使え。この扉の奥へそのまま進んだらどうなるか。そしてミレディの居る場所まで進むにはどうしたら良いか。それを見るんだ!」

 

シアの固有技能。少し先の未来を見る事が出来る〝未来視〟を使うように頼んだ。消費魔力はべらぼうに高いが、それだけの代償を払ってでも使う価値はある。

 

後方に下がったシアの隙間を埋めるように俺とハジメが立つ。

 

「行くぞ!」

「はい、先生!」

 

目指すは最低限の消耗で出来る限りの数を押し戻す事。

 

俺はツェリスカに弾丸を装填する。ハジメは腕をロープアームからガトリングアームに変えた。考えている事は同じらしい。

 

狙いを定め、俺は弾丸を騎士の顔面部に当たるように発射。一体が体勢を崩すと、連鎖的に奥に居た騎士も巻き込まれて後退していく。それが何よりの目的だ。

 

ハジメは最早凶器的とも言えるほどの弾丸を一瞬にしてばら撒いた。理由は俺と変わらない。騎士を少しでも後退させ、シアが邪魔されないようにするためである。

 

ドガアン!! ドガアン!!

 

ドゥルルルルルルルルルル……

 

投擲される盾や槍も意味を持たない。圧倒的な精度と数の弾丸が、全てを尽く後退させていくのだから。

 

「師匠、結果が出ましたよぉ! この扉を通ってから十秒以内に、前方数メートル先にある通路へ辿り着けば、後は道なりですぅ!!」

「でかしたぞシア!」

 

全員が少しずつ扉に寄って行く。ハジメも後退し、比較的動きやすいと思われるショットガンアームに変えている。後は俺だけか。

 

「ハジメ。俺のバイクを持っていたりするか?」

「在りますよ。念の為に回収しています」

「なら出してくれ。そしてシアを除いた女性メンバーを乗せるんだ。自動操縦で運ぶぞ。お前達が出たのを確認したら、すぐに俺も追い掛ける」

 

装填しながら指示を飛ばすと、彼はすぐさま動いてサイクロンを取り出し、俺の指示通りに三人を乗せて扉に歩み寄った。

 

そして、ハジメが「行くよ!」と掛け声を飛ばし、一目散に駆け出した。サイクロンが真っ先に加速して扉の奥へ消え、続いてハジメが。そしてシアが外へ出る。

 

俺はベルトの横にあるダイヤルを捻った。

 

「加速装置……!」

 

抉れるぐらいに地面を踏んで加速。魔力を消耗しているからか、足が若干重い動きをしているシアを小脇に抱え、一跳びでシアの言っていた通路まで辿り着いた。

 

限界まで加速装置を起動させてないため、俺の走る速度は時速数百キロ程度。頑強なシアならギリギリ耐えられるぐらいの速度だ。凄まじいマイナスGが彼女に掛かっているとは思うが、此処は我慢して頂きたい。

 

「うお、先生はやっ!?」

 

走り出しておよそ二秒でハジメに追い付く。サイクロンには後一秒あれば行けるだろうか。それいしても、スーツの力があるとは言え、彼もサイクロンに置いて行かれないぐらいの速度で走っていたのは大した物だ。

 

「ハジメは自分のバイクに乗れ」

「わ、分かりましたぁ!」

 

走りながら自身のバイクを自動操縦状態で取り出し、一歩先を行くバイクにハジメは飛び乗る。

 

それを確認した俺は更に加速。サイクロンに追い付くと、恵里とユエをシアと交代させるようにして降ろし、そしてハジメに向かってパスした。

 

「いや流石に雑すぎますよ先生ぇ!」

 

ごめんハジメ。後で彼女達に謝るから、今はご立腹だと思われる二人の機嫌取りを何とかしてくれ。

 

俺もハジメのようにサイクロンに飛び乗る。そして自動操縦を解除してフルスロットル。通路を一気に駆け抜け、その先に見える光へ飛び込んだ。

 

通路の先は巨大な空間が広がっているようだ。道自体は途切れており、十メートルほど先に正方形の足場が見える。

 

道はない。なら、飛ぶしかなかろう。

 

サイクロンのスイッチを全て入れてから叫ぶ。

 

「降り落とされるなよ? 今から飛ぶぞっ!」

「は、はい!」

「了解ですぅ!」

 

ロケットエンジンが全て点火した。徐々に前輪が浮き上がっている。だが、俺は構う事なくウィリージャンプした。本来設定されていた最高速度を遥かに超えた状態でウィリージャンプを敢行すれば、当然バイクは宙に浮き上がる。

 

ただ浮かぶだけでも良かった。しかし、あのミレディが制作したこの大迷宮。何が起こるか分からん。それなら、万全を期して対策を施すべきであろう。

 

サイクロンのカウル両脇からウイングが生え、まるでグライダーのように緩やかに降下していく。この世界にやって来てから密かに改造していた機能なのだが、問題なく動作してくれて何よりだ。

 

轟音を立てながらサイクロンが足場に着地する。ドリフトするような形でスピードを殺していき、そのまま停止させた。後からハジメも同じような手段で着地した。無事に飛び越えられたようである。

 

「……先生。ちょっとあれは怖かったです」

「んぅ」

 

……降りてすぐに文句を言えるぐらいには元気らしい。

 

「いや、その……ごめんな? 予め言っとけば良かったな」

「気が立ってるのは分かりますけどね。あれはやり過ぎですよ、もう」

 

俺は苛立ったら大雑把かつ乱雑になる。ある意味で新発見である。この欠点、如何にかして直さないといけないな……。




次回、奴とご対面。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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