大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

47 / 57
お待たせしました。かなり長丁場になってしまいましたので、お時間のある時に読んで頂けたらと思います。


第三十九話 決斗! 超装甲の怪物

先制攻撃を仕掛けたのはシアだった。兎人族の長所である気配遮断と跳躍力を存分に活かし、ミレディの意識が向かなかった方面から奇襲を敢行する。

 

素手での戦闘だけではアドリブが効かないと言うのでハジメに制作してもらった大槌を構え、何の躊躇いもなくミレディ・ゴーレムの顔面に叩き付けたのは流石だ。遠心力を追加して確実に目標を破壊しようとする動きも、それに至るまでの判断も。

 

だが……

 

ガギイン!

 

「むっふふ~、そう簡単に壊れると思ったぁ?」

「く、このっ!」

 

硬い。シアの腕力は相当の物のはずであり、そこから繰り出される一撃は普通の鉄の鎧なら一瞬にしてスクラップになるだろう。

 

だが、ミレディ・ゴーレムには傷一つ入っていない。擦れた跡すらも見えないので、ミレディ・ゴーレムの頑丈さはとんでもない事になる。

 

飛来したモーニングスターを躱すため、大槌の内部に仕込まれたショットガンを使った激発でシアは緊急離脱。そのまま宙に浮く騎士の頭を踏み潰し、これまた浮いている足場に着地した。

 

入れ替わるようにしてハジメがロープアームでミレディ・ゴーレムに取り付き、俺は彼女が手に持っていたモーニングスターを蹴り上げて何処かへ飛ばす。何時か降ってくるだろうが、少しの間だけでも攻撃手段を減らした方が良い。

 

「ファイヤーアーム!」

 

豪火に包まれたハジメの拳。ミレディ・ゴーレムもまた拳を灼熱化させて迎え撃とうとする。

 

だが、それを俺は許さない。ハジメがやろうとしている行動の邪魔はさせん!

 

横へ竜巻のように回転してエネルギーを集め、空を蹴って両足を突き出し、そのままミレディ・ゴーレムの拳へ突撃した。

 

「ライダースクリューキック!」

 

通常よりも遥かに破壊力の増したライダーキックがヒートナックルを押し戻し、僅かながらも隙を作り出す事に成功する。

 

これだけの時間があれば、彼が拳を叩き込むだけの余裕は生まれるだろう。

 

摂氏3000℃の炎の拳によって装甲がほんのり歪んだ。装甲は熱に大なり小なり反応を示す鉱石を使用しているらしい。

 

ならば、彼が取るべき行動は……

 

「〝アイスアーム〟!」

 

一度熱した部位を急速に冷やして凍り付かせ、そして……

 

「これで逝け! パワーパンチ!」

 

力の限り殴る事だ。

 

熱した状態の金属を急激に冷やすと脆くなる。鉱物を扱う錬成師らしい、頭の良い作戦だ。おそらく彼は、自身の技能を使用してミレディ・ゴーレムの装甲を調べ上げ、即座に作戦を練ったのだろう。

 

彼の目論見通り、ミレディ・ゴーレムの装甲はパリンッ! とガラスのように砕け散った。

 

今が好機。攻め入れ!

 

「シア! ハジメ!」

「はいですぅ!」

「〝バンカーアーム〟! シアさん、僕を大槌で吹っ飛ばして!」

 

大槌に足を乗せたハジメをシアが吹っ飛ばした様子を尻目に、俺は後ろを振り返る。

 

そこには、まるで制限など無かったかのように大魔法をぶち込む恵里と、彼女が撃ち漏らした騎士を掃除するユエ。そして、二人を一瞬で回復させる香織の姿があった。

 

少しだけ考え、すぐに俺は答えに至った。恵里は〝霊力〟を駆使しているのだと。

 

詳しい事は知らないが、恵里の持つ〝霊力〟は非常に純度の高い魔力のような物だと聞いている。この迷宮の性質上、魔力は分解されて使い物にはならないが、霊力ならそこまで分解されずに済んでいるのだろう。

 

そもそもの話であるが、恵里は効率良く自身の持つ霊力や魔力を操って魔法を繰り出す天才だ。最低限の霊力で最大限の破壊力を引き出しているに違いない。

 

騎士の再生は全く追い付いていない。出待ち方式で置かれている魔法のせいで、再生した傍から再度破壊されてしまっている。ちょっと可哀そうになってきた。

 

「うおらああああああああ!」

 

ゴォガガガン!!!

 

ハジメは無事にミレディ・ゴーレムへ取り付けたらしい。右腕を変形させたパイルバンカーを起動させ、漆黒の杭を装甲目掛けて解き放った。

 

出鱈目な破壊力を持ったパイルバンカーの一撃。鳴り響く轟音は確かな手応えがあったのだろうと思わせる。

 

だが……

 

「調子に乗り過ぎだよ~」

「うおっ!?」

 

まるで何事もなかったかのように、ミレディはハジメを摘まみ上げて投げ捨てた。

 

ハジメがパイルバンカーを打ち込んだ箇所を睨む。そこには確かにヒビのような物が入っているのだが、その奥に何か見えた。

 

破壊された胸部の装甲の奥に漆黒の装甲があり、それには傷一つ付いていない。その装甲に、俺は随分と見覚えがあった。

 

「アザンチウムか、あれは……」

 

アザンチウム鉱石は、俺達の装備の幾つかにも使われている世界最高硬度を誇る鉱石だ。薄くコーティングする程度でも絶大な効果を発揮する。通常のライダーキックではとても貫けない。

 

「ハジメ、大丈夫か?」

「あ、先生。 ……アザンチウムでしたね、あれ。現状最大の威力を発揮できるパイルバンカーですら弾かれるとは思ってなかったですよ」

 

渋面のハジメ。あの一撃は彼的にかなり自信のある物だったらしい。

 

「うっふふ~、オーちゃんの迷宮を攻略したなら、装甲に使われている鉱石に気が付くのも当然かな? さぁさぁ、程よく絶望したところで、第二ラウンド行ってみようかぁ!」

 

平常時の火力ではトップクラスのハジメですら傷を付けられない。これは由々しき事態である。

 

腹立つミレディの声と共に放たれたモーニングスターを飛び退いて回避しつつ、俺は頭をフル回転させて策を練る。

 

「おっと、何時までも簡単に回避はさせないよぉ」

 

ミレディの声と共に、辺りにあった浮遊する足場がグルグルと高速で回転する。着地を諦めた俺は間一髪でロケットブースターを使って飛翔したが、着地を優先したハジメ達は足場から放り出されてしまった。

 

その隙を最初から狙っていたのだろう。実に嫌らしいタイミングでミレディのモーニングスターが飛来する。

 

ロープアームと〝空力〟で空制動を行い、恵里とユエを抱えて別の足場へ着地したハジメ。大槌のギミックを作動させて爆発を起こし、その反動で移動したシア。となれば、未だに落ちているのは一人。

 

「香織!」

 

粉塵の中であっても変わらない視界を活かして索敵し、足場を見失って落ちていた香織を捕捉。フルブーストで飛翔し、何とかミレディ・ゴーレムの足元が見える前にキャッチした。

 

「ご、ごめんなさい」

「気にするな。それより、あの装甲を砕く策を考えなきゃならん」

 

ハジメが制作したアーティファクトは、最大威力を発揮するのに大量の魔力を必要とするため却下。恵里の魔法でごり押しするのも良いが、リスクが高すぎて見合ったリターンを得られるか分からない。

 

仮に装甲を貫いても、ミレディ・ゴーレムの心臓部となる核の破壊が出来なかったら意味がないのだ。

 

岩石大首領クラスのバケモノであっても、一撃で地に伏せられるだけの一撃を放たなければならない。それが難しいのである。

 

「香織は何か良い案はないか? あの装甲を一撃で貫いて、そのまま勝負を決める方法について」

「案ですか? うーん、猛さんかハジメくんが限界まで風をベルトに取り込んで、そのエネルギーで蹴るとか……?」

「いやお前。それはちょっと脳筋過ぎないか?」

「何も片方だけが攻撃するって訳じゃないですよ? その状態の二人でダブルキックを使えば行けるんじゃないかなあ、って思ったんです」

 

……試す価値はあるかもしれない。エネルギーを貯めるのはかなり大変そうだが。

 

この作戦を遂行するには、魔法組の協力が必要不可欠だ。俺のエネルギーチャージは一人でも何とか出来るが、ハジメのエネルギーチャージは時間が掛かる。完全にチャージが終わるまで、俺とシアでミレディを抑える必要がある。

 

「試してみよう。香織は作戦を伝えに行ってくれるか? 可能ならハジメのエネルギーチャージの手伝いも頼みたい」

「任せてください! 猛さんはどうするんですか?」

「俺は足止めさ。シア、聞こえるかぁ!」

 

ハジメ達が乗っている足場に香織を放り、叫びながらミレディ・ゴーレムの眼前まで飛翔する。

 

俺のエネルギーは、俺の固有技能と戦闘の際に発生する風を集めれば良い。足止めする間にエネルギーは勝手に貯められるだろう。

 

問題はハジメ。この迷宮の性質上、魔法でエネルギーを集めるのは至難の業だ。下手したら恵里が霊力枯渇に、ユエと香織が魔力枯渇に追いやられる。

 

時間もそんなに使えない。ベルトに付いているロケットの燃料はそこまで多くない。もう十分もしたら切れてしまうだろう。そうなれば、俺自身のエネルギーを集めるのも苦労するハメになる。

 

だからこの作戦は一発勝負であり、かつ一か八かなのだ。外れたら死ぬが、当たれば勝てる。そんな作戦。

 

敢えてこの作戦に乗ったのは、これぐらいしかアザンチウムを突破する方法を考えられなかったから。我ながら不甲斐ない。

 

その責任を取ると言うのも兼ね、俺はミレディの真正面に躍り出る。

 

「来い。俺と彼女がお相手する」

「かかってきやがれですぅ!」

 

俺の近くにある足場に降り立ち、大槌を肩に乗せて吠えるシアを見て、随分と逞しくなったなと俺は密かに感心した。

 

出会ってもう数ヶ月。最初の頃こそ危なっかしい場面が目立ったが、今では立派な戦士である。俺の背中を預けるに値する戦士へと育ったのが嬉しくて、外から見えはしないが仮面の中で笑みを浮かべた。

 

人は強くなれる。改造なんかしなくても、本人の努力次第でどうにでもなる。それが証明されたのが、俺は何よりも嬉しい。

 

「何を考えてるのか分からないけど、この攻撃はたった二人で抑え切れるかなぁ〜?」

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!! ゴバッ!!

 

ガタゴトと天井付近が騒がしい。ハラハラと石の破片のような物が降って来ており、猛烈に俺は嫌な予感がした。

 

悪寒を感じてその場を動こうとしたのとほぼ同時に、シアが切羽詰まった声で叫ぶ。

 

「師匠、天井が! 天井が降って来ます!」

 

嫌な予感は的中した。クソッタレ……!

 

ミレディはまず俺とシアだけを始末しようとしているのか、天井の破片が降るのは俺達の周囲だけとなっている。半径にして数十メートルか。

 

このまま何もせずに降り注ぐ天井を受けたらひとたまりもない。すぐにツェリスカを構え、まだずっと先にある天井……と言うより岩石群を狙い撃つ。

 

残弾は二十。そのうち五発が徹甲弾で、後は爆発を引き起こす榴弾。この際、補給の事を考えるのは不要。全弾使い、なるべく多くの岩石を破壊するべきだろう。

 

シアも俺のやる事を察したのか、大槌のギミックを作動させてミサイルらしき物を発射した。数は四発。あの限られたスペースでそれだけの火力を確保したのは流石ハジメと言った所か。

 

炸裂したミサイルと榴弾。そして純粋に貫通をした徹甲弾。この三つの働きもあり、俺の目が岩石群をハッキリと捉える頃には、ビッシリと敷き詰められていたであろう岩石群の所々に穴が空いている。

 

だが、所詮は焼石に水。生き残れる確率がほんのコンマ数%上がっただけで、危険な状態には変わりない。

 

「シア、行くぞ!」

「はいですぅ!」

 

ならばやる事は一つ。岩石を可能な限り破壊して強行突破だ。俺はシアと共に跳び上がる。

 

岩石に拳を突き出すと、特に抵抗もなく木っ端微塵に粉砕された。心の奥底で、岩石の質が異常に高くて破壊が出来なかったらどうしようと懸念していたのだが、そんな事はなさそうで安心した。

 

隣を見れば、シアも多少苦労しながらではあったが岩石を破壊している。時折聞こえる声が大体「重たいですぅ!」なため、この岩石には何らかの重量か重力操作をしているらしい。

 

ちなみに岩石を躱す事が出来そうなぐらいの隙間もあったりするのだが、まあ良いだろう。

 

破壊の際に発生している風をタイフーンで取り込みつつ、無心で岩石の破壊に勤しんでいると、気がついたら結構なエネルギーを手に入れる事が出来ていた。

 

「セイッと。ちょっと拍子抜けだな」

「し、師匠。結構余裕そうですね?」

「お前こそ。話せる余裕はあるみたいだし」

 

岩石の破壊にも慣れて来たのか、息を上げながらもシアが話しかけてくる。

 

この程度で息を上げるのを指摘するべきなのかを悩んでいると、不意に頭上から声が降りて来た。

 

「……なんかムカつくぅ。こうもアッサリ回避されるとむかっ腹が立つねぇ~」

 

その声と共に、降り注ぐ岩石の数が激増した。相当にご立腹のようだ。あのミレディが。

 

してやったり。そう思いながら、俺は降り注ぐ岩石の粉砕に集中する。全ては一撃で雌雄を決すために。

 

──────────────────

 

「〝風神の舞〟……ハアハア、まだ限界にならないの?」

 

場面変わってハジメ達に視点は移る。

 

霊力をほぼ全部使って幾度も風魔法をハジメの腰にあるタイフーンにぶつけていた恵里であったが、遂に悪態をつく。

 

「〝周天〟を維持するのもそろそろ苦しいかな……」

 

所謂オートリジェネの効果を発動できる〝周天〟を使用していた香織の魔力切れも近い。魔力分解の著しいこのライセン大迷宮で、結構な時間魔法を維持していた事は驚異的であったが、その終わりも刻一刻と近づいてきている。

 

途中でユエが恵里と交代し、同じように風魔法をぶつけていたのだが、そんな彼女の魔力残量もそう多くはない。割とピンチな状況だ。

 

タイフーンに蓄積するエネルギーが一向にマックスにならない原因は一つ。猛がタイフーンを制作した際に、人間でもサイボーグと同じぐらいの力を出すためと言う理由から、自身の持つタイフーンの倍以上のエネルギーを蓄積できるようにしたからである。

 

「ハジメ、何とかならない? これ以上魔法を行使してもジリ貧な気がする」

「そう言われても……あ、いや待てよ。これならどうかな」

 

おもむろにハジメが〝宝物庫〟から取り出したのは、手榴弾やロケットと言った爆発物だ。

 

突如現れた物騒な顔触れに軽く引いた恵里だが、すぐに彼が何を考えているのか察する。

 

「爆発させろ、と」

「ちょ、恵里ちゃん!? 幾ら何でもこの量を爆発させたらハジメくんがどうなるか分からないよ!?」

 

作戦は単純明快。爆発する際に発生する爆風を受け取り、それをエネルギーに変えるのだ。

 

サイクロンで走り回る空間が確保できない以上、これしか方法はない。

 

リスクしかない危険な方法ではあったが、魔力や霊力枯渇まで秒読みな事もあり、恵里はすぐに承諾した。

 

「〝火球〟。ユエ、香織。此処を離れるよ」

「んっ」

「わ、分かったよ! ハジメくん、どうか無事でね!」

 

火球が爆発物に着弾する前に恵里は二人を連れて撤退。念には念を入れ、数キロは離れた位置にある足場に着地した。

 

ドオオゴオアアアアアアアン!!!

 

だが、数キロ離れても大量の爆発物が生み出した爆風は強烈であった。咄嗟に蹲る事で難を逃れるが、猛烈な風に吹かれて三人は呻き声を零す。

 

一瞬にして爆発の奥へハジメが消え、香織とユエは心配そうに見つめる。爆発の破壊力を彼女らは良く知っているため、ハジメが消し飛んでしまわないかが心配で仕方がなかったのだ。

 

しかし、恵里だけは特に表情を変えずにその様子を見つめる。

 

「大丈夫。私の旦那様が、あんな爆発程度で簡単に死にはしないよ」

 

絶対なまでの信頼感が、彼女の心から〝不安〟を取り除いたのだ。世界一格好良くて、世界一強い旦那様。南雲ハジメが、この程度で消えるものか。

 

彼は必ず、最高の笑顔で帰って来てくれる!

 

ハジメもまた、恵里の想いを言葉に出さなくとも感じ取っていた。最愛の人の願いと想いを。

 

「……行くぞおおお!」

 

炎が渦を巻いて消える。同時に、回転していた風車も静かに動きを止めた。

 

風。そして炎。何方も吸収してしまったタイフーンに驚きつつも、ハジメの脳内は冷静だ。

 

(先生なら、きっとエネルギー蓄積を終えたはずだ)

 

彼の視線の先には本郷猛とシア・ハウリア。

 

猛は岩石を粉砕し、今はミレディ・ゴーレムのモーニングスターやフレイムナックルをギリギリで躱し、回避とエネルギー蓄積を両立させている。

 

シアは猛が攻撃を自身に向けさせている間に、隙を見て数々の打撃技を叩き込んでいる。ちょくちょくゴーレムの第一装甲が破壊されており、ミレディは少しうっとおしそうな雰囲気を醸し出している。

 

拡大された視界の中で、ハジメは確かに見た。猛の身体から徐々に蒸気が立ち上り、複眼が輝き始めたのが。

 

「相変わらず恐ろしいけど、頼もしい人達だな……!」

 

仮面の中でニィと笑みを零し、ハジメは跳び上がった。

 

シアと入れ替わるようにして猛の隣にハジメは浮かぶ。一回の〝空力〟で相当の魔力が削られたが、今のハジメはそんな事を全く気にしない。

 

猛と同じように蒸気を立ち上らせながら、ハジメは一言だけ告げるのだった。

 

「お待たせしました」

 

──────────────────

 

「お待たせしました」

 

時は来た。雌雄を決する、その時が。

 

「行くぞ、ライダーパワー全開だ!」

「はい!」

 

それぞれが好きなように、更に上空へ跳び上がる。

 

手始めにハジメはバンカーアームを装着。ミレディ・ゴーレムの胸元に杭を突き刺し、目標を定めた。

 

俺は後方に、ハジメは前方にまずは宙返り。続いて俺は空を蹴って前方に二回転し、更にもう一回くの字の姿勢で宙返りをしてから両足を突き出す。ハジメは何度も何度も前方へ回り、シンプルながらも確実にキックの破壊力を上げてから左足を突き出した。

 

──電光ライダーキック

 

──ライダー回転キック

 

これで最後。魔力の消耗を鑑みず、俺は〝纏雷〟を使用する。

 

ミレディは俺達の行動の危険性に気がついたのだろう。最初は余裕そうな雰囲気で俺達の回転を見ていたのだが、蹴りの姿勢を二人が作り終わった辺りで、彼女は大慌てで後退しようとした。

 

だが……

 

「逃がしはしない……! 〝凍柩〟!」

「なっ!? 何で上級魔法が!?」

 

最初から見越していたかのように叩き込まれた氷属性の上級魔法。対象を氷の中へ閉じ込める魔法だ。

 

この魔法を放ったのは恵里。最後の力を振り絞ったのか、彼女の寝息が遠耳に聞こえる。

 

だが、この決死の援護の御蔭で、ミレディに致命的な隙が生まれた。後退を許さず、ほんの少しの魔だけではあったがその場に留めたのだ。数瞬だけでも後退を遅らせられたのなら上出来。戦場においては、ほんの一瞬の隙が生死を分けるのだ。

 

「「ライダーダブルキィィイック!」」

 

打ち込まれた杭。限界まで高め、そして解放した風圧エネルギー。一点突破に適した電光ライダーキックと、純粋な破壊力が抜群なライダー回転キック。

 

全てが噛み合った時、一切合切を塵へと還す究極の一撃が放たれる!

 

ドゴォオオオオオオオ!!!

 

耳を劈く轟音。ひしゃげてしまいそうな勢いでめり込んでいく杭。第一装甲は一瞬で貫通し、アザンチウムで構成されている第二装甲も猛烈な速度で貫いていった。

 

しかし、相当の段階を踏んでも完全な貫通にまでは至らなかった。確かに装甲を貫き進んでいたが、途中で勢いが殺されて止まってしまったのである。

 

「は、はは。危ない危ない。もう少しで完全に貫通をしていたよ」

 

若干、かたい声で、それでも余裕を装うミレディ。

 

だが、今ので分かったぞ。

 

あと少し。ほんの少しで、この装甲は貫ける!

 

「シア、やれぇ!」

「はいです師匠ぉ!!」

 

逆風を起こして少しでも杭を進め、俺とハジメはその場から飛び退いた。

 

代わりに現れたのはシア。ハジメと入れ替わる形で後退をした彼女は、最悪の展開を予想していたのだろう。高所にあった足場に着地し、何時でも飛び出せるようにスタンバイしていたのだ。

 

トドメは弟子に任せよう、なんて割とどうでも良い事を考えつつ。俺はシアがミレディ・ゴーレムへ突撃していく様を見届ける。

 

「おんどりゃああああああああ!」

 

兎人族の長所である脚力。それを最大限に活かした急降下キック。おそらく身体強化も行っているのだろう。彼女とすれ違い、その姿を見た俺は、この勝負の勝ちを確信した。

 

ミレディは何とかして逃げようとしていたが、俺達とシアの入れ替わりがかなりの速さで行われた事から、彼女は逃げる暇はないと悟ったらしい。身動き一つせず、シアを見上げている。

 

シアの放った渾身の蹴りを受け、半ばまでめり込んでいた杭は更に奥へと進んでいき、今度は止まらず装甲を突き進む。

 

そして、ベキリと言う鈍い音と共に装甲は貫かれ、そのままミレディ・ゴーレムの心臓部へ突き刺った。

 

ミレディ・ゴーレムの目から光が消える。心臓部までも貫いた証拠だ。

 

随分と手こずったが、これで終わりである。

 

「やれやれ。まあ、全員が生き残った状態で勝てたのなら万々歳だな」

 

ライセン大迷宮。とても厄介な場所であった。だが、無事乗り越えられた。それで良しとしよう。




ライセン大迷宮を攻略してこの章は終わり……ではないです。次回ではありませんが、この先もう一個イベントを残しています。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。