大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「此処か。先生が滞在しているってのは」
サイクロンを止め、幸利はボソッと呟く。
彼の目の前には、〝水妖精の宿〟と記された看板が。昔、ウルディア湖から現れた妖精を一組の夫婦が泊めたことが由来だそうだ。ウルディア湖は、ウルの町の近郊にある大陸一の大きさを誇る湖だ。大きさは日本の琵琶湖の四倍程である。
湖畔の町ウルの中でも特に人気のある宿だと幸利は聞いている。
「……!?」
「おにいちゃ?」
「いや、何でもない。気にすんな」
愛子先生に会うのは久しぶりだな、何てボケっと考えていた幸利だったが、不意に強烈な威圧感を感じて目を見開いた。
目敏くその様子を捉えた雫の言及を躱し、警戒態勢を敷く幸利。
プレッシャーの大本があるのは宿内。これまで感じた事のない強烈な威圧感に吐き気を催し、更に額に脂汗が滲み心臓が激しく動悸する幸利だが、覚悟を決めて宿の扉を開いた。
「お、来たな」
彼を出迎えたのは、扉の近くにある席に座っていた一人の男の軽い一言であった。しかし得体の知れない威圧感を放っているのを幸利は見逃さない。
幸利が感じている威圧感は、彼の尊敬している人物が持っている物と似ている。
幾つもの戦いを生き延びた人物だけが放つ、「何をするか分からない」圧迫感。幸利を出迎えた男は、その圧迫感を放っていた。
目を剣呑に細め、何時でも迎撃が出来る態勢を取る幸利。だが、此処で大きな誤算が生じた。
「おにいちゃ!」
「おうおう。元気にやってたか? 前よりは顔色が良くなってるみたいだが」
「……は?」
雫が男に抱き着いたのである。
彼女は鮮明に覚えていた。かつて城へ無断で入り、リリアーナと少しだけ会話をしていた男の存在を。
心が壊され、極度の人見知りへとなってしまった雫が、泣いたり拒絶せずに受け入れる数少ない人物を。
「姫さんの言いつけ通りにしたみたいだな。にしても、この娘を運ぶのがお前さんで良かったよ」
「ちょ、ちょっと待て。何であんたはリリアーナ姫からの言いつけを知ってる?」
一方で幸利。何も聞かされてなかったので困惑している。
「見てたからな。お前さんが依頼を受けてるのを。あ、見えたり感じなくても当然だぞ。相当離れた場所から俺は見てたからな」
「離れた場所って。てかあんた、纏ってる空気が尋常じゃない。何者だ? 見た感じ日本人だけど、俺はあんたみたいな人知らんぞ。俺達と一緒にこの世界にやって来たのって、愛子先生と猛先生だけのはずだが」
「俺? 俺は一文字隼人。フリーのカメラマン。パシャっと」
困惑を深めるばかりの幸利。本来の目的を放り出し、この一文字隼人と言う人物について色々と聞き出したいと思いだす。
だが、写真を撮った一文字にこんな言葉を投げかけられて我に返った。
「お嬢さんを先生とやらに引き渡すんじゃなかったのかい?」
「っ、そうだった。先生は……其処だな」
彼の視線の先には、個室のように部屋の一角を仕切っていたカーテン。
その奥に目当ての人物が居るのを確認し、幸利はカーテンを引きちぎる勢いで開け放った。
シャァァァ!!
存外大きな音が鳴るがお構いなし。ズカズカと奥へ踏み入り、目的の人物の前まで歩く。
「よお、先生」
「し、清水くん!?」
畑山愛子。本郷猛と同じく、異世界へ転送された人々の中では数少ない大人である。
幸利の目的は二つ。まずは雫を愛子の元へ届けて保護してもらう事。そして、戦争の食糧事情を一変させられる彼女の護衛をする事だ。
「ぶ、無事だったんですか! 他の皆さんは……」
「全員ピンシャンしてるよ。あの後ショッカーの基地をぶっ潰すついでに迷宮を攻略した。その後は俺だけ別行動をしてる」
「そう、なんですね。本当に良かった……猛先生が皆を引き連れて大迷宮に潜ってから全く音沙汰なかったので心配してたんですよ? ここ最近、八重樫さんが幼児化したり、天之河くんと檜山くんが失踪と悪い噂しか聞いてなかったのもあって、何か大事があったのかと……」
「八重樫の事は聞いてるのか。なら話は早い。姫さんに頼まれて彼女も連れて来た。先生にも八重樫の心を治すために協力して欲しいらしいぞ」
取り敢えず伝えるべき事柄は伝えた。そう思った幸利は勝手に其処で話を切り、一文字の元へ向かおうとする。
愛子としてはもっと彼から色んな話を聞きたかった。だが、不意に視界に入った雫の様子を見て考えを改める。今は雫のケアが最優先。そう思ったのだ。
「あんなあっさりで良いのかい? 久しぶりに会った知り合いだろ?」
「今はあんたの事の方が気になる。俺の話なんて何時でも出来るから後回しだ」
「ふうん。で、俺の何が気になる?」
「その異常なまでのプレッシャーだ。あんた、普通の人間じゃないだろ」
幸利の言葉に一文字が僅かに表情を顰める。その変化は微々たる物であったが、幸利は見逃さなかった。
反応からして一般人ではない事を見抜いた幸利は様々な仮説を立てる。
「軍人、ではないな。殺し屋でもなさそうだ。だとしたら……猛先生と同じとか?」
「ほう? 同じと言うと?」
「改造人間だ」
一瞬で空気が重たくなる。一般客は突然重たくなった空気に驚き、そして困惑した。
一文字の顔は笑っている。だが、目の奥が笑っていない。
気まずい沈黙を払拭しようと、何か言葉を口にしようとする幸利であったが……。
ドォゴオオオオオオオン!!
突然の轟音で思考を停止せざるを得なかった。
真っ先に反応したのは一文字。席を立ち、大急ぎで扉を開けて外へ出る。
慌てて幸利も立ち上がり外へ出た。猛烈に嫌な予感がしたので、何時でも戦える心構えを持って。
「な、何だこりゃ」
空を埋め尽くさんばかりの銀色の輝きを放つ女、女、女。唖然とする幸利とは対極的に、一文字は不気味なぐらい冷静だ。
「今の轟音は奴らが仕掛けた物だな。南東三十キロ地点に着弾してる。近くに民家があったようだが、あれではダメだろう。誰も生きちゃいない」
一文字の顔に変化が表れ始める。それを見た幸利はギョッとした。
彼は見た事がある。この変化を、表情を、間近で。
風神の如きその眼差しを、確かに見た。
「あんた、やっぱり……」
確信めいた何かを持ち、一文字を見やった幸利。彼の正体を、幸利は何となくだが察したのだ。
ゆっくりと降りてくる女達。莫大な殺気を纏いながら徐々に幸利達の居る場所に降りて来る。
ジッと遠くを睨むと、此処以外にも女が侵攻しているらしい事が分かり、二人は全く同じ思いで同じ行動を取る。
「変身だ」
「……よし!」
ベルトのダイヤルを捻って強化服を纏った幸利。右手には狙撃銃を持ち、天空を睨んで狙撃する対象を吟味する。
対する一文字は両腕を右側にビシッと揃えた。そしてゆっくりと腕を回し、
「変身ッ!!」
左腕はガッツポーズを、右腕は胸の前に添えるような形へと変えていき、そして叫んだ。
「トオーッ!!」
飛び上がると同時に風が舞う。彼の肉体を強化服と本来の〝改造人間としての肌〟が包んでいく。
女の正体は神の使徒であり、かつて猛を襲ったのとほぼ同一の個体である。猛との戦闘データは神の使徒の中で共有されており、仮面ライダーの姿と言うのも脳に刷り込まれているのだが……。
「貴方は……!?」
一人の使徒が驚愕の声を漏らす。他の使徒も同様だ。
「平和に生活する人を不幸に陥れるようなその行為。断じて許さんぞ!」
使徒の前に舞い降りた、もう一人の大自然が遣わした正義の使者。
名前は彼と同じだ。
本郷猛も。南雲ハジメも。清水幸利も。結城丈二も。アマゾンこと山本大介も。皆がこの名前で呼ばれる。
仮面ライダーと。
「やっぱりか。あんたも猛先生と同じ、仮面ライダー」
「敵は多い。だが、俺達が力を合わせれば殲滅も出来るだろう」
「ああ、協力は得意分野だ」
〝水妖精の宿〟の屋根に二人して飛び乗ると、幸利が開戦の合図となる言葉を発する。
「見せてやろうぜ。仮面ライダーの力をな!」
次回に繋がります。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫