大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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原作と違って猛さんが優しいのが印象的(なはず)の回です。


第四十五話 夜の襲撃者

ブルックの町から中立商業都市フューレンまでは馬車で約六日の距離である。

 

日の出前に出発し、日が沈む前に野営の準備に入る。これを繰り返して早三日目。折り返し地点だ。俺達は商隊の後方を預かっているのだが、今のところは襲撃もなくのどかに前へ進んでいる。

 

基本的に襲撃してくるのは盗賊と魔物らしく、場合によっては大規模な戦闘になると聞いていたので、少し拍子抜けしてしまっていた。

 

まあ、襲撃してくる可能性があるのはショッカーの怪人も含まれる。気が抜けるのは構わないが、いざという時にはすぐに引き締め直せる範囲に留めておくべきだ。

 

折り返し地点にやって来た今日も襲撃は特に受けず、野営の準備となった。食事関係は基本的に自腹らしく、しかも超簡易な物だ。何でも凝った物を作ろうとすると荷物が増え、戦闘が発生した時に邪魔になってしまうから簡易に済ませるらしい。

 

だが、しっかりと食事をしなければいざという時に力を発揮できなくなる。

 

出来れば誰も死なずにこの任務を終わらせたい俺は、シアや恵里とも相談してこんな提案をした。

 

「皆で一緒にご飯を食べよう。料理はこっちで用意するから、しっかりと食べて英気を養ってくれ」

 

最初は半信半疑であった他の冒険者であるが、二人の作った料理を口にした途端、分かりやすく目を見開いた。

 

この二人が作る料理は絶品だ。何を作らせても必ず満足のいく料理が出て来る。

 

シアは元から一族の料理製作係を担っていたので腕は料理人クラスである。店に出しても問題ないだろうとよく話しており、ハジメ達の住んでいた世界に行ったら料理屋を開店しようと目論んでいるようだ。

 

恵里に関しては花嫁修業で培った技術を駆使して料理をするので、お店の味と言うよりかは母親の味と言うべき料理を作り出せる。口にすると何故か昔を思い出す事が多い。

 

正直言って比べられないぐらいに二人とも技術が高い。そんな二人の料理にすっかり胃袋を掴まれた冒険者達。最初は恐縮していた彼等も次第に調子に乗り始め、今では随分と賑やかな食事となっている。

 

本日の献立はシチューモドキ、ふかふかのパンを添えてである。

 

「カッーー、うめぇ! ホント、美味いわぁ~、流石シアちゃん! もう、亜人とか関係ないから俺の嫁にならない?」

「ガツッガツッ、ゴクンッ、ぷはっ、てめぇ、何抜け駆けしてやがる! シアちゃんは俺の嫁!」

「はっ、お前みたいな小汚いブ男が何言ってんだ? 身の程を弁えろ。ところでシアちゃん、町についたら一緒に食事でもどう? もちろん、俺のおごりで」

「恵里ちゃん、本当に料理が上手ねぇ。同じ女としてちょっと嫉妬しちゃうわ」

「ねえねえ、どうやったらこんなに美味しく仕上がるの? 私達に教えてくれないかな?」

「あ、私も聞きたい! 昔から料理が苦手で仕方なくて……」

 

シアは男に、恵里は女に人気のようだ。

 

事あるごとにシアを口説いている男冒険者であるが、その瞳の奥は基本曇ってない。あくまでジョークの一環であり、シアに「心に決めた人が居るんですよぉ~」と言われて撃沈するまでがセットだ。

 

恵里はちょっと困り顔が増えている。時折ハジメを見て助けを求めている。その姿が女冒険者に庇護欲を搔き立てさせるらしく、余計に質問攻めされる羽目になってるのは内緒である。

 

ちなみに香織はずっと俺の隣から離れない。ユエも人見知りを発動させてハジメの背中に隠れている。ユエはまだ分かるが、香織は別に大丈夫だろうに……。

 

「猛さんと食べたいんですっ」

 

ああ、そうですか……。

 

「先生、ちょっと助けてくれませんか? ユエがコアラみたいになって……」

「はなれたくない」

「ご飯食べにくいんだけどなぁ。ねえ、ちょっとで良いから離れたりは……」

「やっ」

「ええ~、ってか先生も見てないで助けてくださいよお!」

 

……うん、平和だ。ずっとこんな時間が続いてくれたら良いんだが。

 

虚空を見やりながら適当な事を考える。だが、世界と言うのは何時も無情である。それを俺は今更ながら理解させられた。

 

まず、のほほんとした表情を浮かべていたシアが一気に顔を引き締めた。忙しなくウサ耳を動かしているので、何かを探知したらしい。それもあまり良くない物を。

 

「師匠、北東より敵襲です! 数は百以上!」

「……魔物か? それとも怪人?」

「おそらくショッカーの怪人だと思われます。魔物にしては統率が取れすぎてますから」

 

ショッカー怪人が百以上。これだけの数の怪人と相対するのは初めてではないが、商隊を守りながら戦うとなれば難易度は段違いに跳ね上がる。

 

戦力となるのはハジメとシア。冒険者では太刀打ち不可能だ。恵里とユエも戦力になるが、二人の魔法は非常識な速度で滅茶苦茶な破壊力が出てしまうので厄介事になりかねない。

 

変身も控えたい。ハジメはただ装着するだけなので言い訳は利くだろうが、俺は肉体を変化させるため隠すのが難しい。拳銃とサイクロンで何処まで戦えるか。

 

「リーダー。貴方は商隊の死守を頼みます。そっちに飛び火しないように頑張りますが、万が一もあるので」

「え、えっ?」

「早く指示を。そして隊形を整えてください。シア、接敵まで後どのぐらいだ?」

「二十秒です。あ、それと一体の強さは大した事ないのですぐに終わらせられると思いますよ~」

 

シアが大した事ないと言えるなら大丈夫だろう。

 

敵の強さを把握した俺は殲滅までの時間を計算。ざっと二分ぐらいか。

 

ハジメは既に戦闘態勢を整えている。強化服を着て敵が来る方向を睨んでいた。早速左腕を試すつもりなのかもしれない。

 

俺はサイクロンを取り出して跨り、ツェリスカを構える。先制攻撃で出鼻を挫かせてもらおう。装填した弾薬は榴弾だ。倒せるかは分からないが、爆発で足止めぐらいは可能だろう。

 

「……見えた!」

 

ドガアン!! ドガアン!!

 

肉眼でもポツリ、ポツリと見えるぐらいの距離まで近付いた怪人集団を確認した瞬間、俺はツェリスカの引き金を引いた。

 

ヒット確認はしない。当たった、当たらないはこの際どうでも良いのである。

 

ハジメとシアが突貫するだけの時間が確保出来たならそれで良い。あの二人なら、数コンマあればキロ単位で移動可能だろうし。

 

「滅殺ですぅ!」

 

シアの鉄拳が唸る。敵の三割ぐらいは戦闘員らしく、シアの振るった拳が巻き起こす風によって四肢を飛ばされて場から消えている。

 

通常の怪人も居るが、成程。確かにシアの言う通り、其処まで強くはないようだ。合成怪人ではないため、複雑な能力を持っている訳ではないと確信した。夜に襲撃しただけあって夜行性生物が基になってる怪人が殆どだが、まあ何とかなるはずだ。

 

裏拳、回し蹴り、正拳と繋げる連携打でシアは次々と怪人を屠っていく。

 

徒手空拳で圧倒するシア。それに対し、ハジメはカセットアームと分解能力を駆使して一挙敵を葬り去る戦法を取っている。

 

「スイングアーム!」

 

怪人への牽制と戦闘員の殲滅を兼ねたスイングアームの一撃は一瞬にして数体の戦闘員の頭を潰し、更に数体の怪人に踏鞴を踏ませた。

 

何とか搔い潜って攻撃を仕掛けようとしても、今度は分解能力が付与された左の鉄拳が飛来。近接も遠距離も隙が一切ない。

 

背後から音を立てずに近付こうとする怪人も居るが、彼の死角に回ろうとする怪人は全て俺が装甲と装甲の継ぎ目を狙撃して殺害。着実に数を減らさせてもらっている。

 

ブウゥゥゥゥウン!!!

 

「邪魔はさせないからな……っと!」

「ギイヤァァア!?」

「グペッ!?」

 

ロケットで怪人を焼き殺し、更に轢き潰し攻撃を行ってキルペースを加速。残酷な殺し方を選ぶのに躊躇はない。

 

当初の予想通り、二分弱で殆どの怪人が首を飛ばされるか、腹に大穴を空けるか、姿その物を消し飛ばされるかして倒されていった。

 

シアの拳打。ハジメのカセットアーム。そして俺の操るサイクロン。通常の怪人程度なら、これぐらいの戦力で圧倒が出来る事が分かっただけ収穫だ。

 

「ハジメ、シア、トドメだ!」

「はいっ!」

「イエッサーですぅ!」

 

ラスト三体。ハジメは蝙蝠男を、シアはネズミ怪人を、俺はフクロウ人間を相手取る。

 

サッサと決めてしまおう。後ろでポカンとしている冒険者達の魂が何処かへ飛んでいかないうちに。

 

フクロウ人間は自分の羽をミサイルの様に飛ばして来る。地面に着弾すると爆発するので、当たったら痛いでは済まないだろう。

 

だが、サイクロンの機動性があれば避けるのは容易い。

 

走りながら徹甲弾を装填し、アクセルを全開にして一気に肉薄。驚いたフクロウ人間は空へ逃げようとするが、無駄な事だ。ツェリスカの射程距離に入ってる限り、空に逃げようが地面に隠れようが関係ないのだから。

 

「墜ちろ!」

 

ドガアアアン!!!

 

一発にしか聞こえない銃声。しかし、発射された弾丸は五発だ。

 

弾丸はフクロウ男の心臓に連続で命中。そのまま地面に墜落し、息をするのを止めた。

 

さて、ハジメとシアはどうなっているかな?

 

「甘い! サマーソルトキックで終わりですぅ!」

「グゲエエエッ」

 

ネズミ怪人は鋭利な牙と爪を武器としていたらしいが、近接戦の鬼であるシアには一発で見切られたらしく、カウンターのサマーソルトキックで仕留められていた。一発で。

 

流石は兎人族。蹴り技の破壊力が尋常じゃない。

 

「あ、終わりましたね」

「ハジメか」

 

どうやらハジメも終わらせたらしい。跡形もなく怪人が消えてるので、多分だが分解でもしたのだろう。右腕がロープアームに変わっていたので、引き寄せてから左ストレートでもしたのだろうか。

 

何にせよ、特に問題も無く敵を殲滅出来て良かった。

 

出番無しとなった冒険者や、守られている商隊の人々は唖然としている。結構な数居たはずの魔物(怪人)が、ものの数分で全滅してしまったのだから無理もない。

 

見た事のない兵器を繰るのにも度肝を抜かれただろうが、それ以上に殲滅速度の異常さに驚いていると見受けられる。

 

彼らが現実に戻るまで結構な時間が必要だろうし、今のうちに俺達は寝る準備でもしてしまおうか。

 

そう思ってサイクロンを走らせて戻ると、不意に香織が「ちょっと止まって!」と言ってきた。

 

「月と猛さんとの調和性が素晴らしいんですよ! 暫くそのままでお願いします! ほら、シアも早く見て!」

「わあ、すっごいカッコいいですぅ! 月明かりに照らされる師匠の武器が良い味を出してますねぇ!」

「いや何言ってるの?」

 

少しは自重しろ。恵里やユエみたいに……って、二人も似たような事を言ってるじゃないか。

 

「ハジメ、ちょっとストップ。カッコいいから」

「え、ええ? 早く元に戻りたいんだけど……」

「ダメ。十分ぐらいそのままで」

「んぅ!」

「ユエは止めてよぉ!」

 

頼むから自重してくれ。他の人々が置いてきぼりにされてる。ちょっと可哀そうだぞ。

 

この後に起きるであろう大混乱に対する面倒臭さと、自重しない女性陣への呆れから、それはもう深い溜息を俺は吐き出した。

 




次回、フューレンであの人と再会。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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