大自然が遣わした正義の使者は異世界最強 作:Hetzer愛好家
「ああ、その、なんだ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか……」
「おいおい、南雲。もしかしてお前、非戦系か? 鍛治職でどうやって戦うんだよ? メルドさん、その錬成師って珍しいんっすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前、そんなんで戦えるわけ?」
「さぁ、やってみないと分からないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ~?」
実に嫌らしく檜山大介がハジメに絡む。よく見渡せば、主に男子生徒達がニヤニヤと嘲笑いをハジメに向けていた。
俺はそんな様子に腸が煮えくりかえる思いがする。が、そんな俺に構うことなく檜山はハジメに尚も口撃を叩き付けた。メルドの様子から見ても彼のステータスが低いことは分かりきっているというのに、檜山は尚も嫌らしく絡みつく。
強い者には媚を売り、弱い者には強く当たる。小者という存在の典型的な例と言っても過言ではないだろう。
「……メルド団長。戦いはこの場でも開始出来るか?」
「ん? ああ、出来ないことはない。俺も特に用意する物はないからな。それがどうか……ああ、そういうことか」
「察してくれて助かる」
怒りのゲージが振り切れたことで俺の額には醜い手術跡が浮かび上がっている。見る者からすれば、鬼の形相とも捉えられるだろう。
メルドはきっと、俺の底知れぬ怒りを察してくれたに違いない。
俺は上着を脱ぎ捨て、タイフーンを露わにして風を送り込んだ。
すると、一瞬で俺の皮膚は二つ目の物へと変化し、仮面の自動生成をイメージしていたことで俺の手には傷を隠すための道具が現れた。
特徴的なタイフーンの起動音によって喧騒が一気に収まり、全員が俺とメルドの事を注視する。
「その姿が、お前の本来の姿なのか?」
「そうだ。人としての姿はあくまでも仮の物。俺の本当の姿はこれだ。名前も本郷猛ではない。大自然が遣わした使者、仮面ライダーだ」
仮面を被り、クラッシャーをガチャリと装着して変身完了。俺は肩幅より少し狭めに足を開き、何時でも飛びかかれる準備をする。
メルドは腰に差していた長刀を抜き放ち、独特な構えで俺の事を真っ直ぐ睨みつけてくる。メルドの立ち振る舞いは明らかに“できる”と分かる物であり、彼がこの世界で最強の一角に数えられるのも納得がいった。
「……行くぞぉ!」
メルドが吠え、その勢いそのままに突進してくる。俺は左肩側を沈め、右手首でメルドが振るってきた長刀を受け止める。
ガキンッ! と硬質的な音が鳴ったことにメルドは驚きが隠せないらしい。が、すぐに彼は立て直して鞭のような剣打を俺に叩き込む。
右から来る剣打は右手首。左から来る剣打は左手首。いずれにせよ、俺が道具を使うことなく徒手空拳のみで対応しているのは明らかである。
徐々に生徒達もザワつき始めた。特に檜山やその取り巻きは、ペタリと地面にへたり込んでいる。その理由は、俺の化物のような姿を見たからなのか、それとも化物のように剣を素手で弾き飛ばしているからなのか……。
「く、はは。何て奴だ。どうやら私は、君のことを見誤っていたらしいな」
「だから言っただろう。あのステータスは本物だとな」
ガキッ! と音を立てながら左手で長刀を握り止め、遂にはガラスでも割るかのような速さで握り潰す。ハラハラと地面に落ちていく鉄の屑を見て、メルドは乾いた笑みを浮かべた。
対する俺は、右拳のストレートパンチを繰り出す。更にタイフーンに貯蓄されていた風力をパンチがメルドに直撃する一瞬前に一部開放させた。
──ライダー
暴風のようなエネルギーと共に放たれたストレートパンチをマトモに受けたメルドは、何処か清々しい表情をしながら後方へ吹き飛んだ。勢いは柱にぶつかった程度では衰えず、遂には隕石でも地上に落ちてきたかのようなクレーターを壁に作り出すにまで至る。
呆気なく終わった模擬戦に、誰しもが黙りこくる。そんな中、俺は檜山の事を真っ直ぐ見つめて口を開く。
「弱い者を虐めるお前には、俺が直属で精神から鍛え直してやっても良いんだぞ」
「ひぃっ!?」
「嗤っているだけで止めようとしなかった他の人も同罪だ。今後同じ事を続けるのであれば、俺が全力で精神から叩き直してやる。以後、気をつけるように」
先生として、俺は本気で怒る。普段は愛子先生が小さい体を精一杯使って怒りを露わにするが、それでは効果は認められないだろう。
ならば、一度ぐらいはキツいお灸をすえてやった方が効果的なはずだ。この模擬戦は、メルドが俺の力を推し量るために行ったのが表向きの理由であるが、本来の理由はハジメへの侮蔑を止めようとしない生徒達への静止のかけ声と本気の説教をするための物だったのである。
クラッシャーを取り外し、仮面をも外した事で露わになった俺の顔。醜い手術跡。生徒達は一歩、後ろに後退った。特に動揺が酷かったのは光輝と檜山だ。きっと、思うところがあるはずだ。逆に後退らなかったのはハジメと香織ぐらいだろう。
俺は大きなため息をつき、第二の皮膚を引っ込めると上着を身につけ、未だに満足げな顔をして気絶しているメルドの治療をしに行くのだった。
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夜
「あの、猛先生。相談があるんですけど」
「ん、ハジメか? 相談とは?」
あの後俺は、知識を得るために図書館で本を読みまくっていた。この世界にはどんな国があるのかや、魔法の仕組み、エヒトとやらについて等である。
一通り必要な知識を脳に叩き込み、そろそろ図書館が閉館するので休憩してから出ようとしていた所にハジメがやって来た。
相談の内容には薄々気がつきつつ、俺はハジメに続きを促す。
「あの、僕のステータスは見ましたよね?」
「確かに見たが……それがどうかしたか?」
「僕、このままじゃ嫌なんです。何としてでも強くなって、皆の役に立てるようになりたいんです。そのためにも……!」
「稽古をつけてくれ、か?」
「いえ、違います。僕を……僕を、先生と同じ改造人間にしてください!!」
ハジメがガバリと頭を下げた。俺がメルドと模擬戦をしたのが昼過ぎ。そうなると、ハジメは今のさっきまで自問自答を繰り返し、とても悩んだ上に出した結論なのだろう。
だが、「改造人間にしてくれ」という文言に俺が納得出来るはずがない。事情は異なるとはいえ、志郎に頼まれた時も一度は断っている。今回も例外ではない。
「ダメだ。人間でありながら人間ではないという苦しみを味わうのは俺一人だけで十分だ」
「でも、如何しても僕は強くなりたいんです! 皆に迷惑をかけないためにも。それに、ある人を守るためにも……!」
「ある人を守るため? お前には守りたい人が居るのか?」
ハジメにも守りたい人が居るとは初耳だ。俺の授業以外は基本的に寝ており、何事にも無関心そうな態度であったハジメにも大切な人はクラスメイトの中に居るらしい。
「……僕の知り合いには、心を壊してしまった友達が二人居るんです。一人は男の子。もう一人は女の子です。二人ともクラスメイトで、教室内では滅多に話しません。が、三人で集まっては他愛のない話をして気がつけば夜なんて事はよくある。そんな仲です」
「そうか。それで?」
「二人とも、とても辛い過去を持っています。先生に比べたら小さい苦しみかもしれないけど、辛い過去を持っているんです。そんな二人が戦争に参加して更に心を壊す所は見たくない。戦争の事を僕は何も知りませんけど、戦争が人を壊すことぐらいは分かります。だから、二人が戦争に参加する必要がなくなるぐらいに僕は強くなりたいんです!」
彼の言う二人が誰なのか、俺には分からない。分からないが、少なくともハジメは戦争に参加するという重い事実を正面から受け止めており、それでいながら彼は大切な人をこれ以上傷つけないために壮絶な覚悟を決めている。その事だけはよく分かった。
ハジメが強くなりたいという覚悟は、生半可な物ではないということだ。
俺は目を瞑り、これまで共に戦ってきた仮面ライダー達のことを思い出す。
俺を含め、仮面ライダーは何かを守るために命をも投げ出して戦ってきた。最初こそ“人類の自由と平和”を守るために戦ったが、最終的には個人それぞれの理由に変わっていった。
例えば一文字隼人。彼は貧しい国に住んでいる子供達の笑顔を守るためにという理由で今も戦い続けている。子供達に化物だと恐れられても、一文字は悲しみを仮面の下に隠してふとした瞬間に表れる子供達の眩しい笑顔を守っているのだ。
また、仮面ライダーストロンガーこと城茂は戦死した相棒の墓を守るために戦っている。破天荒な発言が多い城茂だが、戦死した相棒に対しての愛情は非常に深く、時折埋められている遺体を狙ってやって来る輩を撃退しているらしい。
それぞれが、己の正義のために戦っているのだ。ハジメもまた、己の正義のために自ら進んで茨の道を歩もうとしている。その心意気を無辜にするのは如何な物だろうか……。
「………お前の覚悟は分かった」
「じゃあっ」
「それでも、俺と同じようになるのはダメだ。到底許すことが出来ない」
「そんな……」
「五体を切り刻まれ、骨を鋼と変えられる。筋を脈を肉を毛皮を強靱な物に造り変えられ、体は兵器と成り果てる。残されたのは魂だけ。そんな思いをするのは俺だけで良いんだ」
見るからに落ち込むハジメ。だが、俺はそこで言葉を切ることなくそのまま続ける。この話にはまだ続きがあるのだ。
「一つ問おう。ハジメは、心からその友達を守りたいと思っているんだな?」
「当たり前です! 例え人の身を失うことになったとしてと、僕は二人を守りたいんです!」
「……そうか。後悔もないんだな?」
「二人を守れるなら……後悔なんてするわけがないですよ。僕はあの二人が笑顔で居てくれるならそれで……!」
「……分かった」
俺はハジメからクルリと背を向ける。俺と同じ改造人間になることは断じて許すことは出来ない。が、道は幾らでもあるのだ。
「ハジメ。君は、仮面ライダー4号結城丈二のことを知っているか?」
「ライダーマンのことですか?」
「そうだ。彼は溶かされた右腕のみに改造手術を施している。俺が何を言おうとしているか、想像つくか?」
「……まさかっ!」
俺は頷く。ハジメの声の調子が上がったことを感じ、彼も俺の言わんとしていることを察することが出来たのだろう。
俺はハジメに、これから必要となる事項を彼に伝えて図書館を出るのだった。
ライダー逆風パンチは萬画版で披露されたライダー逆風キックを元にしています。映像版の必殺技や萬画版はもちろん、オリジナル技も幾つか出していくつもりです。
次回はハジメの過去について書こうと思います。
本郷猛と結ばれて欲しい人は?
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香織&シア
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ユエ&ティオ
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雫