大自然が遣わした正義の使者は異世界最強   作:Hetzer愛好家

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三人称視点です。ハジメの過去といってもそこまで大層な物ではないです()


第五,五話 ハジメの過去

南雲ハジメ。彼は、何処にでも居そうな創作物やゲームが好きな男の子である。クラスメイトからはキモオタと認識されているが、別に彼の見た目は“キモオタ”と蔑まれる程に痛々しくはない。

 

髪は短く切り揃えており、言動を見ても普通である。趣味を人生の中心に置いている事を除けば、表向きは極々普通の高校生だ。

 

しかし、ハジメには誰にも明かしてない一面がある。それは、精神を壊してしまった友人が二人居り、その二人の心をこれ以上傷つけないために奔走している事だ。

 

事の発端は、ハジメが小学三年生だった頃と小学五年生だった頃まで遡ることになる。

 

──────────────────

とある雨の日。

 

ハジメは母親から頼まれた買い物を終えて傘を差しながら帰路についていた。

 

家に向かうために鉄橋を渡ろうとした時。彼は誰かが鉄橋から身を乗り出しているのを見つけた。訝しがって近寄ると、身を乗り出しているのは同い年ぐらいの女の子だとハジメは察した。およそ女の子らしくない乱雑なショートカットにしている姿を見たハジメは更に疑念を深めていく。

 

「危ないぞ」と声をかけようとしたその次の瞬間である。女の子は、戸惑うこともなく鉄橋から眼下の川へ自由落下を開始した。

 

まるで走馬灯のようにスローモーションで落ちていく女の子を見たハジメは、心で思うよりも先に体を動かした。買った物を全て放り投げ、鉄橋を逆走して河原に降りると、着水して流されていく女の子をその足で追いかけた。

 

当時から今と変わらない趣味を持っていたハジメは、誰であろうと自殺を図るということは何か闇を抱えていると知っていた。だからこそ、自分はせめてその闇を振り払う手伝いをしたい。そう思ったハジメは、己の危険も顧みずに川へ入り、流されていく女の子の腕を掴まえて自分の胸元に抱き寄せた。

 

「大丈夫?」や「必ず助けるからっ」と力強く励まし続け、川から出たハジメは近くに居た者に救急車を呼ぶように頼み、彼自身は自殺を図った女の子の体を冷やさないために自分が着ていた上着やレインコートを被せた。

 

落ちた場所が川だったこと。そして鉄橋から川までそこまで高さがなかった事が幸いして女の子に目立った外傷はなかった。到着した救急車に乗せられた女の子に同行したハジメも、漠然とだが女の子は助かると確信していた。

 

その予想通り、女の子は命に別状を来すことはなかった。

 

「良かった。助けられた」

 

そう思ってハジメは、白いベッドで寝ている女の子の手を優しく握りながら涙した。すると女の子はハジメのすすり泣く声で目を覚ましたのか、隣で手を握って泣いているハジメの事を見て訝しげな表情を浮かべた。

 

「……だれ?」

 

女の子の反応はごく自然の物だ。それを分かっていたハジメは、迷うことなく自己紹介をする。

 

「僕は南雲ハジメ。偶々近くを通ったら川に落ちた君を見つけた。だから助けたんだ。そういう君は?」

 

女の子は、光の宿らない暗い瞳で名を名乗る。

 

「中村恵里」と。

 

 

ハジメは、なぜ恵里が自殺を図ったのか無理やり聞こうとはしなかった。

 

「苦しいなら。辛いなら話さなくて良い。話したくなったら教えてくれ」というハジメの態度は、全てに裏切られた事で心を閉ざし氷のような表情しか浮かべていなかった恵里の事を少しずつ溶かしていった。

 

ハジメは、王子様のように格好良く現れたわけではないし、約束を誓ったわけではない。ただ、優しく恵里の心の傷が癒える手伝いをしようとした。それだけである。しかし、恵里にとっては着飾らないハジメの態度が何よりの救いであった。

 

何時の日からか、二人はやがてお互いを信頼するようになった。恵里はネグレクト気味であった母親から離れてハジメの家の近くに住む近所のおばあちゃんの家に落ち着き、ハジメはやはり恵里の心の傷を癒すために優しく寄り添い続けた。

 

恵里はやがて、「ハジメは自分の事を裏切らない。求めていた愛情とは違うけど、ハジメは心地よい感情をぶつけてくれる」と思い、彼にだけは心を開くようになった。

 

ハジメは、心を徐々に開いていく恵里に安心しつつ油断は出来ないと心を引き締めるも、彼女に自分のオススメの本を薦めてみるなど少しずつ踏み込んだ関係へ発展していった。

 

恵里が自分自身の過去を話したのは小学四年生になってからであるが、ハジメは黙って彼女の話を聞き、全て話し終えて涙を流し始めた恵里の頭を優しく撫でて彼女が泣き止むのを待つ紳士らしさを見せた。その一件以降、二人の仲は更に距離が縮まっていった。

 

小学五年生にもなれば、恵里はハジメと同じゲームや漫画が好きな女の子へと変わっていった。相変わらずハジメ以外には表情を変えなかったが。

 

そんな時であった。二人がとある男の子と出会ったのは。

 

──────────────────

 

放課後、その日も二人は学校の屋上でお互いに買ってきた漫画を読み合っては感想を互いに述べていた。すると、二人が気がつかないうちに屋上のフェンスに手をかけて、眼下をジッと覗き込む男の子が居た。

 

「何をしてるの?」

「人を見下ろして愉悦感に浸ってる……?」

「恵里、昨日のロードショー見たんだ……」

 

若干ふざけつつも表情が暗い男の子に声をかける二人。目の前に立っていた男の子は、髪を目元まで伸ばしており表情は分からなかった。纏う雰囲気も暗く澱んでいた。

 

ハジメは自殺を図った恵里に姿を重ね、尚も質問をする。

 

「辛いの?」

 

と。

 

その言葉に、男の子がピクッと反応した。ハジメはなるべく優しい声を心がける。男の子が底知れない「闇」を抱えていることを本能的に悟ったハジメは、彼もまた闇を払う手伝いをしたいと思ったのである。

 

「辛いなら、一緒に話そうよ。僕達、漫画を持ってきてるから読まない?」

「漫画……?」

「そう、漫画。僕達は漫画を読んだりアニメを見るのが大好きなんだ。君はどう? 好きな漫画やアニメはある?」

「……ある」

「なら、そのアニメの何処が良いのか教えてよ。漫画やアニメ好きなら仲良くしたいんだ」

「……分かった」

 

これが、ハジメと清水幸利の出会いである。幸利はハジメと同じく漫画やアニメなどを愛するオタクであり、恵里の時とは違ってかなり早いスピードでハジメに心を開いていった。

 

幸利はそれまでイジメられていたが、ハジメ達と出会ってからはイジメに反応する事はなくなり、徐々に彼に対するイジメその物が消えていった。

 

ハジメは何度も幸利に、「イジメの噂は知っていたのに行動どころか君のことを知ろうとしなくてゴメン」と何度も謝った。最初はハジメの事を信用してなかった幸利も、恵里と同じようにハジメの事を心から信頼するようになった。

 

何気ない行動。しかし、聖人のような行いによってハジメは二人の尊い命と心を救ったのである。

 

しかし、ハジメは何となくだが察していた。二人の心の傷はきっと永遠に塞がらない。案外簡単に、治りかけの傷口は開いてしまう、と。

 

だからハジメは、どんなに自分が蔑まされても恵里と幸利には矛先が向かないようにヘイトを一身に買って耐え続けてきた。

 

恵里も幸利も、元は学校の殆どの者から疎まれていた人物だ。そんな二人に突然近づき、果てには仲良くしているハジメの事が気に入らなかった檜山を筆頭とする者達がどんなにイジメても、蔑んでも、私物を壊したとしてもハジメは折れなかった。

 

異世界に召喚されても、ハジメは二人を何としてでも守ろうとした。ステータスがクラスメイトの中で一番低くても、彼はどうにかして二人が戦争に行かなくても大丈夫なぐらい強くなろうと決めたのである。

 

そんな中、彼は自分の尊敬する先生の圧倒的な力を見た。

 

最強とも言われていたメルドを赤子のように捻り潰した彼の姿に、ハジメは感服した。同時に、彼はこう思った。

 

「こんな風に、自分も強くなりたい」

 

と。

 

──────────────────

 

「……まさか、本当に了承してくれるなんてね」

 

ハジメは一人、寝室で呟く。

 

本郷に「自分と同じ改造人間には絶対にしない」と断られて一時は落ち込んだが、その後に彼が言い放った言葉で全てを察してハジメの心中は有頂天である。

 

本郷は、ハジメをライダーマン結城丈二のように右腕のみを改造する事を了承したのである。そのために、本郷はハジメに一番硬い鉱物を貰ってくるように頼み、あの場を立ち去った。

 

「これで……きっと二人を守れる」

 

中途半端に欠けている月明かりが照らす寝室で、ハジメは静かに拳を握って笑みを浮かべるのだった。

 




次回、ハジメの改造手術と説明回です。

本郷猛と結ばれて欲しい人は?

  • 香織&シア
  • ユエ&ティオ
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