セブルス=スネイプの啓蒙的生活   作:亜希羅

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 Q.闇の魔術に手を出してて、同級生と呪いをかけて回っていたらしい、陰気で小汚い幼馴染(差別発言経験ありの、差別思想持ち。数年前に退学して失踪)が、怪しい恰好でいきなり家にやって来て、同じくいきなり家にやってきた闇の帝王の内臓を素手でぶち抜きました。どうしますか?


 A.ドン引いて警戒MAXになる。誰だってそーする。俺だってそーする。


 ↑を念頭に置いておきましょうね。


 誤字報告、ありがとうございました。

 修正しましたが、多分他にもあると思います。読みづらかったなら、すみません。


 2021.02.17.追記

 ちょっと指摘を受けたので、ラストシーンを追記しました。


【3】セブルス=スネイプは、再会を果たす③[2.17.加筆]

 一つだけ、セブルスにはダンブルドアがそうしようとした理由に、心当たりがあった。

 

 「予言、が原因かもしれないな」

 

 「え?」

 

 「?! スネイプ、どうして知ってるの!」

 

 「落ち着け、ハリーが起きるぞ。

 

 たまたま耳にしただけだ。私は“闇の帝王”に義理立てする必要はない」

 

 立ち上がって険しい視線を向けてくるリリーに言って、セブルスは紅茶に口づける。

 

 ややあって、リリーは座り直す。左手のことを思い出したのだろう。

 

 「あれがなされたのは、ホグズミード村のホッグズヘッドだ。当然、防音防諜の対策などされていない。

 

 たまたまそこにいた私にも聞こえてしまった、それだけだ」

 

 「先輩、予言って何ですか?」

 

 「そもそも、“闇の帝王”がなぜ、ポッター家を襲撃したか。不思議ではなかったかね?

 

 ポッター夫妻は確かに“不死鳥の騎士団”に所属する、力ある魔法使いの一員だ。

 

 だが、当主はろくに職に就きもせずに、魔法省にも縁がない。そんなところを、なぜ直々に襲ったのだ」

 

 「その理由が予言ですか」

 

 「そうだ」

 

 うなずいて、セブルスは小耳にはさんだ予言を諳んじて見せた。

 

 「『闇の帝王を打ち破る力を持ったものが近づいている

 

 7つ目の月が死ぬとき、帝王に三度抗った者たちに生まれる

 

 そして“闇の帝王”は、その者に自分に比肩する者として印すであろう。

 

 一方が他方の手にかかって死なねばならぬ。

 

 何となれば、一方が生きうる限り、他方は生きられぬ。

 

 闇の帝王を打ち破る力を持った者が、7つ目の月が死ぬときに生まれるであろう』」

 

 余談となるが、正史であれば“闇の帝王”へ奏上するべく中座して、後半を聞き逃しているセブルスは、この世界ではすべて一通り聞いてしまっている。

 

 

 

 

 

 この上位者は、記憶に疎くないか?何度となくそういう描写が登場したと思われるだろうが、セブルスは地頭は悪くない――どころか、むしろいい方だ。魔法薬学だけを見れば、ホグワーツでもトップの成績を収めていたのだから。オリジナルの魔法もいくつか開発していることもあって。

 

 今回の予言はすんなり覚えていたのは、割と直近にあったことだからだ。

 

 まあ、上位者となっただけでなく、ヤーナムでの濃すぎる日々に、啓蒙と冒涜で記憶と人間性が摩耗されたのが、長期記憶に疎い大きな要因かもしれないが。

 

 くどいようだが、この予言に関しては、セブルスはダンブルドアが何とかするだろうし、リリーとその息子が対象になるとは思ってなかったのだ。まさかダンブルドアが見過ごすとは思わなかったが。

 

 

 

 

 

 「それがハリーだと?」

 

 「さて?少なくとも、“闇の帝王”はそう判断したからこそ、あの襲撃を起こしたのだと思うがね」

 

 胡散臭そうに眉をひそめるレギュラスに言って、セブルスはターキッシュデライトを一つつまむ。

 

 なるほど。これは取り合いが起こってもおかしくない・・・端的に言ってしまえば、美味しいというものだ。

 

 「じゃあ、ハリーは・・・?」

 

 「どうだろうな?結局闇の帝王を殺したのは、ハリーではない。

 

 生まれて間もない赤子にそんなことができるなど、どうかしている。魔法でもできないことはある。そうだろう?」

 

 上位者ならまだしも。

 

 「どうしてそれを・・・新聞記者も、ダンブルドアも、まるでそれを信じてないようだったのに・・・」

 

 唖然とするリリーはまじまじとセブルスを見やってから、ハッとその服装を見つめ、続けてコート掛けにかかっている漆黒のインバネスコートを振り返った。

 

 「まさか・・・?」

 

 「・・・貴公が無事で何よりだ。あの鐘を鳴らしたのは、賢明だったな。

 

 まさかあんな形で会うことになろうとは、私でさえも思ってなかった」

 

 「・・・っ、スネイプ、あなたは・・・?」

 

 「ホグワーツを出てから、いろいろあったということだ。

 

 少なくとも、“死喰い人(デスイーター)”になろうとは、もう思わんよ」

 

 身を震わせるリリーは、セブルスをしばし見つめた後、大きく息を吐いて目を伏せ、ややあってから顔をそらした。

 

 「・・・助けてくれたことにはお礼を言うわ。

 

 でも、それだけよ。勘違いしないで」

 

 リリーはどこか憮然とした様子でそう言った。

 

 身体の震えを無理やり抑えつけているようにも見えた。

 

 セブルスは少し怪訝に思った。あの反応には覚えがある。

 

 そうだ、サイレントヒルでノコギリ鉈で化け物を血祭りにあげた直後の、女性警官の反応と同じだ。

 

 拳銃向けてこようとしたけど、話が通じるとわかるや、嫌悪感でドン引きしそうなのを無理やり押し殺している、という感じの反応だ。

 

 そんなにおかしいだろうか?とヤーナムから脱出したばかりの当時は思ったものだ。大分感覚がマヒしていたのだ。

 

 

 

 

 

 一方のリリーはリリーで、ソファに悠然と足を組んで座る変わり果てた幼馴染・・・であった男をちらっと見たが、すぐに視線をそらした。

 

 『君は、いつまでホグワーツに在校しているのだね?』

 

 『いい加減卒業したまえ。私はとっくに、そこから抜け出したぞ。

 

 そこにいるレギュラスもな』

 

 などと偉そうに言ってのけていたが、闇の帝王の腹に貫き手を差し込んで平然とするような、残酷極まりない殺人犯にだけは言われたくない。

 

 自分は大人になりました、君はいつまでも子供でちゅね~とでも言うつもりかしら!たとえ命を救われたのだとしても、謝罪なんて受け入れてやるもんですか!

 

 死喰い人でなくても、どうせまた、闇の魔法にどっぷりはまっているんでしょう?変な格好までして!

 

 そんな悪態を胸に、リリーはセブルスとはけして目を合わすまいと固く決意した。

 

 今の彼女には、ハリーしかいないのだ。ハリーだけは、何があっても守り切ってみせる。

 

 特に、目の前の残酷極まる殺人犯からは!謝ったら許されると?だったら、警察も、魔法省も、不死鳥の騎士団も、いらないじゃない!

 

 

 

 

 

 セブルスは、目の前のリリーが一段と分厚く心を閉ざしたことを察し嘆息した。

 

 そんなに自分が嫌なら出て行けばいい、と言いたくなるのをぐっとこらえる。

 

 ダンブルドアならば、命を奪うようなことはないだろう。彼の元へ戻ればいい。逃げだして助けを求めてきたのは自分だろうに。

 

 とはいえ、彼女を必要以上に怒らせ、傷つけるのは本意ではない。

 

 何度も言うようだが、セブルスはリリーに感謝しているのだ。

 

 セブルスの摩耗しきってわずかにしか残ってない人間性の、根幹を形作ってくれるのは、リリーとの思い出の日々なのだから。

 

 目の前の彼女には、その恩がある。だから、それを返す。それだけだ。

 

 「あの・・・それで、どうしてその予言が、ハリーとポッター夫人を引き裂くことにつながるんです?」

 

 ムッとしたらしいレギュラスが、それでも平静を保とうとしながら話題を引き戻す。

 

 「いえ・・・その予言が前提にあるのなら、ダンブルドアはハリーが“闇の帝王”を倒したと本気で思い込んでる?

 

 それでその・・・自分に比肩する者として印された、一方が他方の手にかかって死なねばならない、一方が生きうる限り、他方は生きられない、とかいうのを、本気で信じてる?

 

 だから、ハリーをポッター夫人から引き離そうとしている?

 

 万が一、“闇の帝王”が生きていた時に、切り札にするために?

 

 ポッター夫人がいると、その邪魔になるから?」

 

 「馬鹿を言わないで!ハリーはまだ赤ん坊なのよ?!“例のあの人”と戦わせるですって?!

 

 冗談じゃないわ!」

 

 ダンっとテーブルに手をついて、身を乗り出して怒鳴るリリーに、ふぇっと声が上がる。

 

 ハリーが起きてしまったらしい。

 

 「ああ、大丈夫よ、ゴメンね、ハリー」

 

 慌てて、抱き上げてあやすリリーに、セブルスは変わってないな、と少し目元を緩めた。

 

 ああして短気で怒っても、すぐに誰かを気遣えた。

 

 基本的に、身内には優しい女性なのだ、リリーは。

 

 「推測の域を出ませんが・・・ダンブルドアは正気ですか?」

 

 「あの老人の特定人種に対する人間性が低いのは、今に始まったことではない。

 

 人間、耄碌すると頑迷になる」

 

 「ああ・・・お年ですもんね」

 

 辛辣なセブルスの言葉に、さもありなんとレギュラスはうなずいた。

 

 とはいえ。

 

 「君は、これからどうするんだね?酷なことを言うようだが、このままイギリス国内にいては、ダンブルドアからも“死喰い人”の残党からも逃げ切れるとは到底思えないが」

 

 セブルスの問いに、リリーはハリーを抱っこしたまま、視線を伏せた。

 

 行き当たりばったりの逃避行に出てしまったリリーは、文字通りの身一つだ。金も持ち物もナイナイ尽くしで、おそらく頼れる連絡先も見張られていることだろう。

 

 ブラック邸がノーマークであったのは、現在の館の主たるヴァルブルガがマグル嫌い(マグル出身者含む)であることに加え、シリウスが勘当されてアズカバンに投獄されているからに他ならない。

 

 ならばリリーがシリウスの無実を叫べばいいかもしれないが、新聞で大々的に錯乱が報じられた彼女がやったところで、気の毒がられて聖マンゴでの療養を強要されることになるだけだろう。今度こそ、ハリーと完全に引き離されて。

 

 証拠にして証人となる、ペティグリュー本人の行方が分かっていないのも、痛い。

 

 「ああ、今更ですけど、僕はある事情からヴォルデモート卿に逆らって闇の陣営から離反していますので、あなたのことを誰かに漏らすつもりは毛頭ありませんので、ご心配なく」

 

 肩をすくめるレギュラスに、リリーはどうだか、とでもいうかのようにちらっと視線をよこしただけだ。

 

 まるで信用していません、という彼女の態度に、レギュラスは必死に唇をかんだ。

 

 そんなにいやなら出て行け!と言いたげにしているようだ。おそらく、家主であるセブルスが何も言わないので、必死に我慢しているのだろう。

 

 「・・・国内が無理なら、国外に逃げるわ。アメリカとかなら、どうかしら?

 

 さすがに海外なら、ダンブルドアも“例のあの人”も追ってこれないと思うわ」

 

 「あなたも正気ですか?身一つの赤ん坊連れの女性が、いきなり海外に行くなんて。働き先もろくに見つからずに、路頭に迷うことになりますよ。

 

 まあ、長く匿えば匿うほど面倒ですし、渡米の手配くらいなら考えないでもないですけど」

 

 と、レギュラスが言った。彼は本当に、リリーとハリーの二人がどうなろうが、基本的に興味がないのだろう。

 

 ただ、自分たちが面倒を抱え込む方がごめんなのだ。

 

 「それなら」

 

 ここで、セブルスが口を開いた。

 

 「数日待ってほしい、Mrs.ポッター。

 

 その間は、我が家に滞在してもらっても構わない」

 

 「何か当てがあるんですか?先輩」

 

 「アメリカに、友人がいるのだ」

 

 しれっと言ったセブルスに、リリーとレギュラスは二人してギョッとする。

 

 その反応に、セブルスは軽く眉をひそめた。そんなに自分はおかしなことを口走っただろうか?

 

 

 

 

 

 相変わらず、自分が第3者にどう思われているかなど、興味の範疇外に置いている男である。

 

 セブルスは確かに、ホグワーツ時代から友人と呼べる存在は数少なかった。

 

 どこかの馬鹿ども4人組のせいで、近寄ろうものなら巻き添えを食らうと、恐れられていたのもあったし、セブルス本人もリリーへの執着が凄まじすぎて、他に興味を持たなかったというのもある。

 

 ホグワーツ時代のセブルスの印象が大きい二人からしてみれば、そんな彼に海外の友人がいるというのは、かなりの衝撃だったに違いない。

 

 

 

 

 

 「彼に、Mrs.ポッターとハリーの身元引受人になってもらえないか、相談してみよう。

 

 手紙のやり取りがいるからな。少し待ってほしいのだ」

 

 「アメリカって・・・その、何でまた?」

 

 「ホグワーツを退学してから、世界一周(グランドツアー)に出ていて、その途中で知り合ったのだ。

 

 彼はマグルだが、私のこともあって、魔法族へはそれなりに理解があるはずだ」

 

 「世界一周(グランドツアー)?」

 

 「昔の魔法使いの風習の一つですよ。

 

 魔法学校を卒業して成人した魔法使いは、見聞を広めるために世界一周をする、と。

 

 先輩、ヤーナムとかいうところに行ってただけじゃなくて、そんなこともしてたんですか」

 

 「いろいろあったんだ」

 

 興味深そうに目をキラキラさせるレギュラスに、セブルスは静かに目をそらした。

 

 いくらレギュラスにヤーナムのことを話したといっても、それ以降の世界一周(グランドツアー)もかなり啓蒙と冒涜に満ち満ちていたので、やはり必要以上に話したくはない。

 

 大きな出来事はサイレントヒルや羽生蛇村のことだが、他にも偶然迷い込んだ雪山が悪霊あふれる危険地帯だったり、通りかかった森が発狂済みの魔女の怨霊の支配するヤベエ領域だったり、うっかり足を踏み入れた閉鎖されたアニメスタジオではインクでできた不死の化け物が徘徊してたりと、洒落にならない出来事が頻発したものだ。

 

 あんな事連続で体験したら、まともな人間は発狂してしまうだろう。

 

 セブルスは、ヤーナムで上位者になってたから、問題なかっただけで。

 

 「彼はシングルファーザーだからな。面倒見もよくて、生半な魔法使いよりも、よほど度胸がある」

 

 「・・・よほど、そのマグルのことを気に入ってるんですね、先輩」

 

 「まあ、そうだな。もう少し彼と早めに会うことができれば、マグルに対する見方も違っていたことだろうな」

 

 若干面白くなさそうなレギュラスに、セブルスは苦笑気味にうなずく。

 

 「・・・本当に、只のマグルなのね?」

 

 「マグルではある。いろいろ規格外だがね」

 

 疑わしげなリリーにしれっと答えて、セブルスは黒檀のデスクに座り直すと、引き出しの中から羊皮紙製の便箋と封筒を取り出した。

 

 ・・・ただし、リリーはセブルスに手紙の内容を見せろとせがみ、隅々まで確認したうえで、透明インクの出現呪文やら、他隠蔽暴露や鑑別魔法の類を散々かけまくったことを記しておく。

 

 

 

 

 

 さて、セブルスの言う、アメリカにいるシングルファーザーの友人とは、言わずもがな、サイレントヒルで出会った、ハリー=メイソンである。

 

 行方不明になった娘を探して、サイレントヒルを走り回ったこの男、ごく普通の小説家を自称していたが、どこの世界に化け物を鉄パイプで殴り倒し、銃殺した挙句、右足の死体蹴りでとどめを刺す小説家がいるのだろうか。

 

 そこにいたのだが。

 

 加えて、メイソンは魔法に対しても、大変寛容で、セブルスが明かりの魔法や開錠魔法を使った時、便利なものだと感心するだけで終わらせた。小説家だからこそ、あっさり受け入れられたのかもしれない。

 

 はぐれることもあったが、時折行動を共にしたセブルスとメイソンは、最終的に神を称する化け物を二人がかりで殺す羽目になった。

 

 正直、セブルスはあれは、直前に浴びせられた霊薬と母体となった少女の抵抗が大きかったのが、容易に勝てた要因だと見ている。

 

 霊薬の存在と母体の抵抗がなければ、あれはもっと面倒な相手であったに違いない。

 

 セブルスが、帰国してから間もなく、サイレントヒルから来たというハワード=ブラックウッドと名乗る黒人系の郵便配達員がメイソンからの手紙を届けてきたのだ。

 

 まさかまたあの町で面倒に巻き込まれたのか、と戦々恐々としていたが、内容は暢気なもので、ポートランドという町に住むことになった、引き取った娘はシェリルと名付けた、今はここまで大きくなった、新作を書いたから、目にする機会があれば感想を聞かせてほしい、などの近況報告だった。

 

 そして、これまた律義なセブルスも、ぎこちなくはあれど近況報告の手紙を書いた。イギリスの片隅に家を構えたこと、大学をスキップ卒業して、魔法薬学の研究職をしていること、もし、娘の周囲で奇怪なことが起こって困っているなら連絡しろ、多少ならば自分も手を貸す、とも。

 

 そんな感じに、セブルスとメイソンは手紙をやり取りする、いわゆるペンフレンドとなったのだ。

 

 ・・・なお、その送り届けは、メイソンからのものは、例のブラックウッドという郵便配達員が届けて、セブルスからのは“使者”を通じて届けるようにしていた。

 

 

 

 

 

 巻き込むようで、メイソンには申し訳ないが、背に腹は代えられない。

 

 それに何より、セブルスはメイソンに関してはいくつか、気がかりがあり、すでに本人には手紙で忠告していた。

 

 それは、メイソンが連れて一緒に逃げだした、神の母体となった少女の転生体の赤子のことだ。

 

 セブルスとメイソンは、確かに“神”を殺した。だがそれは、病気で言うところの対症療法に近く、根本的な解決にはなっていない可能性がある。少女の身体が熟達すれば、その中に巣食う“神”の因子が再び活性化する可能性があるのだ。

 

 加えて、“神”の降臨をなそうとした、サイレントヒルの“教団”もいる。元凶となった、少女の母は死んだが、他の狂信者が、転生体の赤子を利用しようとしないわけがない。

 

 十分気を付けるように、忠告はしておいた。

 

 もっとも、化け物を蹴散らし、神すら殺したあの男が、そこらのマグルに押し負けるなど、到底あり得ない。

 

 あの男なら、娘への思いさえあれば、ヤーナムでも十分やっていけるのでは?とセブルスはひそかに思っていたほどだ。

 

 リリーの件は、メイソンにとっても助力となりうるかもしれない、リリーは魔法使いとしても優秀なので、いざという時はメイソンの力になるだろうという下心もあり、セブルスは手紙で相談することにしたのだ。

 

 

 

 

 

 存外、メイソンからの返事は早かった。

 

 例のごとく、ふらりとやってきた、いつもの郵便配達員が、「速達で届けてくれと念を押されてね。いやはや、国を越えるのも大変なんだがね」とおどけるのをよそに、セブルスはさっそく受け取ったそれに目を通した。

 

 メイソンからの返事は、快諾だった。

 

 セブルスは、行き違いがあっては困るからと、断ってもいいと念押しした上で、“闇の帝王”と予言についてのことまで、把握できている限りのことをきちんと説明したのだが、あのお人よしと度胸の塊のような小説家にとっては、些事であったらしい。

 

 夫を亡くした上、子供まで奪われそうになるなんて、自分でよければ力になるとむしろリリーを気遣うようなことまで書かれていた。自分だって子育てで大変だろうに。

 

 これで、リリーは大丈夫だろう。

 

 早速、セブルスは、子育ての片手間にメアリーの手伝いをしているリリーの元へ、返事の内容を伝えるべく、足を向けた。

 

 あとは、ダンブルドアの目を誤魔化すだけだ。

 

 何しろ、ダンブルドアは若いころにアメリカにも伝手を作っているらしいと、セブルスでも聞いたことがあるのだ。

 

 いくらメイソン家がマグル界にあるとはいえ、念には念を入れておくべきだ。

 

 実に、古典的(クラシカル)な二番煎じだが、策がないわけでもないのだ。

 

 

 

 

 

 それからしばらく後、日刊預言者新聞がまたしても号外を出した。

 

 錯乱して、我が子を連れて行方不明になっていたリリー=ポッターとその息子となるハリー=ポッターがロンドンの一角で発見される。

 

 不死鳥の騎士団のメンバーに保護されそうになるが、これを拒否。

 

 このままダンブルドアに息子ともども利用されるくらいなら!と言い放ち、彼女は大爆破呪文(エクスパルソ)で子息ともども自爆。

 

 遺体は原型の全くない、無残なもの――焼け焦げた挽肉のようだったという。

 

 

 

 

 

 この直前、セブルスがリリーの髪の毛入りポリジュース薬を飲んだことも、赤ん坊ほどの大きさの布の塊に幻覚魔法をかけたことも、聖杯ダンジョンから爆発金槌で焼き挽肉にした獣の死体をいくつか引きずり出したことも、普段は保管箱の肥やしにしている“使者の贈り物”をコートの懐にしまったことも、けして無関係ではないだろう。

 

 

 

 

 

 その同日に、レギュラスの根回しもあり、ポッター家の金庫から持てるだけの金を引き出しておいたリリーがハリーを連れて偽装のためにマグル側の空港からイギリスを離れ、アメリカに旅立ったことなど、闇の帝王の魔手から生き延びた英雄的母子を失って悲しみに暮れるイギリス魔法界に伝わることはないだろう。

 

 

 

 

 

 さらにそれからしばらく後、セブルスのもとに例の郵便配達員が、一通の手紙を届けてきた。

 

 リリーとハリーの身元偽装ともろもろの身辺整理のために結婚しました、というメイソンからの手紙である。

 

 ・・・彼は、亡き妻だけを愛している。これは、お互いの子供たちのための、白い結婚である、と。

 

 どんな形であってもいい。

 

 どうか、今度こそ、リリーが彼女なりに幸せに暮らせますように。

 

 そんなことを思いながら、セブルスはその手紙を、他の手紙をしまっているレターボックスに、そっとしまい込んだ。

 

 「レギュラス」

 

 顔を上げて、セブルスはカウチにいたレギュラスを呼んだ。

 

 「何ですか?」

 

 「Mrs.ポッターを助けるのに協力してくれて、感謝する。彼女に代わって、礼を言わせてくれ」

 

 「・・・別に、彼女のためじゃないですよ。先輩には、借りがありますから。彼女のためじゃなくて、先輩のために、協力したんです」

 

 「それでも、だ」

 

 苦笑気味に言ったセブルスに、レギュラスはふんと一つ鼻を鳴らした。

 

 「彼女、本当に図々しかったですね。僕が言うのもなんですけど、礼の一つも言わずに、出て行きましたよ?

 

 いくら何でもあんまりじゃありませんか?」

 

 「・・・私が相手だからな。あれで甘えていたんだろう」

 

 「あれで?!」

 

 ぎょっとするレギュラスに、セブルスは緩く頷いた。

 

 「いやなら出て行けばいい。警戒こそすれど、普通に食事をして、部屋に滞在していた。

 

 ・・・私が、彼女に危害を加えないと、確信していなければ、しないことだ。

 

 本人に自覚があったかは、定かではないがね」

 

 「いや、先輩、それポジティブに受け止めすぎです」

 

 しょうがないな、と言うかのようにレギュラスはため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 それからしばらくは、安寧に時間は流れた。

 

 3年後、リリーがサイレントヒルに行くと言い残して、失踪したとメイソンから連絡が入るまでは。

 

 

 

 

 

続く




【ハリー=メイソン】

 無印SILENT HILL主人公。大体は文中で語っている通り。

 黄金の右足を持ってて、神殺しまでやってのけた最強のパパ。

 SILENT HILL3でお亡くなりになってしまうが、無印~3までの間に、襲ってきた教団員を返り討ちにしているなど、小説家(正確には作家らしいですが)という割にポテンシャルは高め。

 セブルスさんのおかげで、魔法族のことも知ってしまったけど、さっくり受け入れる。寛容さは菩薩級。




【ハワード=ブラックウッド】

 海外製SILENT HILLでは常連キャラらしいです。本作では、8作目に当たるDOWN POURに登場した彼をモデルにしています。

 大体主人公に手紙を届けて回る、アドバイザーキャラらしいですが、本作では次元だろうが国境だろうが、さっくり超えられるチートキャラとして登場。

 あの町に関わった人間の前には、チラチラ姿をお見せになるらしいです。

 ・・・なお、彼には上位者であるはずのセブルスさんが工房に施している偽装結界とマグル除けが通用しない様子。





 次回、サイレントヒル2編、スタート!

外伝(ポッター家周辺惨殺現場、予言、シリウス裁判関連のあれこれについて。ブラボ要素はほぼ皆無)を読んでみたいですか?

  • もちろん!すぐに!
  • サイレントヒル2編の後で!
  • 第1楽章終了後で
  • むしろプリンス家関連の話の方がいい
  • 興味ないです
  • その他!
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