サイレントヒルコソコソ話
「さーて、今日の来訪者は~?
5人か!いやあ、今日は多いね!大丈夫!我が町は、みんなそれぞれの悩みに合わせて、従業員と環境をカスタマイズできるからね!
1人対象外がいるなあ、気にしない気にしない」
「この方は~?あー、奥さんを介護疲れでね~。うん!じゃあ、理想の奥さんと、スペシャルスタッフをつけちゃおう!
奥さんのいる理想の世界と、罪深い自分の断罪のダブルセット!きっといいんじゃないかな?」
「こっちの子は~?クズなお父さんをね~。ふむふむ。じゃあ、お父さんと、お母さんにも会えるようにして、と」
「あら。こっちの豚は、課外コースをご希望かしら?じゃあ、撃ち殺しても胸の痛まない、サディスティックなスタッフたちを配置して、と」
「で、こっちの方は~、あらぁ、進学先で見初められて、そのまま人生をね~。大丈夫よ?罪深いあなたを断罪してくれる方を用意しますとも!」
「あらら?こっちの方・・・何かしら?情報が途中から全く読み取れないんですけど?まあ、読み取れた分でも十分っぽいから、そこだけ手配しておきましょうか。大体あってるでしょうし」
「ふんふん。順調ですな!」
「え?スペシャルスタッフ付きの方が、拒否?!ちょ?!勝手にしないで?!」
「あれ?情報が途中から読めなかった方が、他の方の領域へ?!ちょ、勝手に干渉しないで?!」
「あー!困りますー!お客さまー!困りますー!」
大体そんな感じかと。
鉄錆と血臭に覆われた牢獄じみたそこは、規模だけは豪邸のように広かった。おそらく、ヴォルデモートに狙われるきっかけとなる予言が出てくる前は、そのくらい大きな屋敷に住んでいたのだろう。
怪物を呪いで倒したリリーは、セブルスの呼び止めも無視し、そのまま奥へ向かう。
セブルスが慌てて扉を開けた時には、彼女は姿を消していた。舌打ちして、セブルスは彼女の後を追うべく、歩き出した。
サイレントヒルが、セブルスとリリーを引き離したがっているのだ。
この街には、そういう一種の魔力、意思のような力がある。
セブルスに従う必要はないのだが、間もなくその足を止める。
たどり着いた、ひときわ大きなダンスホールのような大広間に、それはいた。
体格はセブルスとほぼ同等。肩から胸までを覆うほどの大きな赤い三角形の兜をかぶった、異形。特筆すべきはこん棒のような、異様な武器を持っていること。
魔法の杖だとでもいうつもりだろうか?
くっと、セブルスは防疫マスクの下で嘲りに薄い唇を歪める。
ずいぶんとそれらしく用意したものだ。
「誰も貴公を必要など、一言も言ってないのだが?そんなこともわからんのかね?
貴公、私を気取るならば、もう少し啓蒙高くありたまえよ」
途端にたじろぐように、三角頭が後ずさった。
グイっとセブルスは血の遺志にしまっていたそれを顕現させる。
ローゲリウスの車輪。処刑隊が、カインハーストの穢れた血族の粛正に用いていた仕掛け武器だ。この武器は内蔵されている回転機構を稼働させることで、その真の威力を発揮させることができる。
重量のために大ぶりな攻撃が多いのが難点だが、その分一撃一撃が強力な武器だ。
「わかるかね?私は急いでいるのだ。貴公ごときを相手取っている時間はない」
淡々と語りながら一歩踏み出すセブルスに、三角頭はしかし、あきらめが悪かった。
あるいは、狡猾であったというべきか。スリザリンらしい、と言えばそれまでかもしれないが。
・・・失言をしてしまった己自身を殺したい、罰してもらいたいと、セブルスが願わなかったと言えば、嘘にはなるのだ。だが、そんな過去の産物を引っ張り出されても、セブルスにしてみれば、今更なものだ。
「いやあ!助けて!助けて!セブ!」
三角頭が羽交い絞めにし、その喉元に棍棒を押し当てるのは、女だった。
それは、この街で時折見かけ、そっけなくするセブルスにまとわりついてきた、奇妙な女だった。否、妄想だ。
リリーに拒絶されたころのセブルスが生み出した、理想の(セブルスを拒絶せず、受け入れる)リリー。
サイレントヒルの町が、人間だった頃のセブルスの思考から生み出した、妄想の数々。化け物も、目の前の三角頭も、あの女も、全部。
だが、セブルスは上位者だ。それが妄想だというのは、即座に気が付いた。だからこそ、遠慮のえの字もなく、それらを虐殺にかかったのだ。
過去の、妄想の分際で、私の前に立つなと言わんばかりに。
「馴れ馴れしく呼ばないでもらおう。ついでに、彼女はすでに人妻だよ」
左手で回転機構の稼働部を引っ張るや、ローゲリウスの車輪はガルンガルンと激しい音を立てながら、黒々とした怨念を吐き出し始めた。
穢れた血族を散々轢き潰してきたこの車輪には、その怨念がたっぷりと染みついている。そして、その怨念は生者へ、理不尽な道連れを要求するのだ。
そして、三角頭にも女にもかまうことなく、セブルスは車輪を振り抜いた。
ゴシャァッと、轢き潰れる音がした。
「セ・・・ブ・・・」
「彼女は私をそう呼ばんよ。私の記憶を汚さないでもらおう。汚らわしい売女め」
女の胴を挽肉にしながら、セブルスは吐き捨てた。
どんっと、三角頭は役に立たない女を突き飛ばし、こん棒を構えた。
「その意気や、よし」
セブルスは倒れこんだ女を一顧だにせず、ローゲリウスの車輪を肩に担いで構え直した。
「粘膜をさらけ出すがいい。いやらしい貴様にちょうどいいように、な」
死闘が始まった。
三角頭は、こん棒を振り回し、あるいはそこから呪いじみた光弾を放って、セブルスを狙い撃ってくる。
対するセブルスは、高速移動呪文と狩人のステップで、それらをよけ、三角頭めがけて肉薄する。
残念ながら、三角頭には左手の銃は役立たずになる。
三角頭は動きが鈍く、一撃一撃が大振りなので、ガンパリィを狙って獣狩りの短銃で水銀弾を撃ち込んだのだが、三角兜に弾かれるだけに終わる。
なるほど、これは面倒だ。これでは、狩人の必殺技能、内臓攻撃が封じられたも同然だからだ。
だが、だから何だ。
折れぬ限り、狩人は勝てる。折れるまで、何度でも戦えるからだ。勝つまで戦うのが、狩人だ。
持久戦など、別に初めてではない。
棍棒を振り回す三角頭に、セブルスは一度ローゲリウスの車輪の怨念放出を留め、通常形態に戻してから、振り薙いだ。
車輪の怨念放出は強力だが、使い手の生命力を食らって発動しているので、常時発動は難しいのだ。
途中、何度か殴られることがあったが、負傷は輸血液で癒し、反撃する。
そして。
とうとう、何度目かの車輪の一撃が、三角頭に命中した。もろにバランスを崩し、倒れこむ三角頭だが、セブルスがとどめを刺すまでもなかった。
棍棒の先を自分に向けるや、緑色の閃光を自分に当てたのだ。
それっきり、三角頭は動かなくなった。
・・・呆気のないことだ。あるいは。
ふと、セブルスは思う。あの時の自分は、退学を選んだわけだが、そうでなければ、どうしていたのだろう?自死を選んだか、それでも未練がましくホグワーツでの生活にしがみついていたか。
考えても詮無いことではある。
ただ、今の自分は確実になかっただろうな、とセブルスは思った。
とはいえ、感慨にふけっている場合ではない。
セブルスは、三角頭の死体が持っていたカギを使い、大広間を後にして、リリーの後を追うべく、再び館をさまよい始めた。
ようやく、追いついた。
館の最奥、寝室のような場所だ。
ベッドのような柵に拘束されたような、シャム双生児めいて中途半端にくっついた皺塗れの老夫婦のような化け物――腹部から女の顔が寄生虫のように突き出ているそれに、セブルスはチッと舌打ちする。
あれは、リリーの妄想だ。傷つけられるのはリリーだけ、そして、どうにかできるのも、リリーだけだ。
実際、セブルスがけん制で放った獣狩りの短銃による水銀弾の一撃は、幻であるようにすり抜けてしまったのだから。
『自分のことしか考えない魔女め!かわいいジェームズの次は、何も知らないマグルの男を食い物にする気か!寄生虫め!殺人鬼だと?人殺しだと?どの口が言っているのだ?』
「違う!」
怪物のしわがれた罵倒に、リリーは悲鳴を上げるように頭を抱えた。
セブルスは、とっさに彼女の腕を引いて、怪物の押しつぶすような体当たりからかばう。
「落ち着け、Mrs.メイソン」
「いやよ、もういや!放してよ!
わかってたわよ!私が人殺しだなんて!!あなたのことを非難して、私は違うって言い聞かせ続けて!
思い出したくなかったから、ひたすらかかわりを拒否しようとして!
さぞ軽蔑したでしょう?!」
セブルスの腕を突き放そうともがきながら、リリーは怒声を張り上げる。
「落ち着け!よく思い出し、考えるのだ、Mrs.メイソン!
なぜポッター前夫妻は、あのタイミングでばらしてきたのだ?!」
「え?」
負けじと声を張り上げたセブルスに、リリーは目を瞬かせ、身動きを止めた。
咳き込むように放たれる衝撃波を、セブルスはリリーの腕を引いてよけさせながら、なおも続けた。
「落ち着いて考えたまえ。
あのタイミングで、君に真実を知らせるメリットは何だ?
黙っていればよかったではないか!君は知らなかったのだから!」
「あ・・・!」
息を飲んだリリーに、セブルスは続ける。
「ポッター前夫妻は、君の愛など信じてなかったのではないかね?
事情が事情だ。だからこそ、君がポッターから離れていかないように、最後に釘を刺すことにしたのだ!」
あの時。ポッター前夫妻は、自分たちがもう長くないと悟っていたに違いない。だから、死後に万が一にもリリーがジェームズから離れないように、楔を打つことにしたのだ。罪悪感、という名の楔を。
「・・・私を、わざと怒らせて・・・自分たちを、殺させることで・・・?」
リリーの震える声に、怪物が黙れ!と言うかのように獰猛な咆哮を上げる。再び咳き込むような仕草の後、一斉に無数の虫を飛ばしてきた。
舌打ちとともに、セブルスはリリーを突き飛ばした。
「ああ?!」
リリーが悲鳴を上げたたらを踏みながら振り返ってきた。もっとも、その不快であろう攻撃はセブルスにとっては知覚できる幻のようなものなので、歯牙にもかけず、彼は口を開いた。
「あとは自分で考え、答えを出したまえ。君ならできるはずだ」
「・・・っ・・・」
集り、傷つけようというかのような虫の群れの中を平然と立つセブルスに、リリーは恐れおののいた様子で、後ずさった。
逃げたい、と言うかのように、カチカチと歯を鳴らして震えている。
「Mrs.メイソン。君は、今の家族をどう思うのだね?」
「!」
「君は本当は、どうしたいんだね?それこそが、あの化け物を打ち払う、本当の力になる」
そして、セブルスは虫の群れをすり抜けて壁際に歩み寄り、観戦者であるように向き直った。
くどいようだが、この怪物はリリーの妄想でもあるのだ。だから、セブルスにとっては、幻に近く、攻撃も効果がないものが大半なのだ。
もちろん、夢に侵入出来る狩人の特性から、その気になれば攻撃を加えることはできるだろう。だが、それはセブルス自身が激しく消耗することになる上、何よりも、何の解決にもならない。
これは、リリーの妄想なのだ。始めたのがリリーならば、終わらせるのもリリーでなければならない。でなければ、また繰り返すことにしかならないだろうからだ。
「この街は特殊なのだよ、Mrs.メイソン。
この街には神がいる。記憶を捻じ曲げ、曲解して望みをかなえるが、恐怖と憎悪を啜り、魂を貪る。
その化け物は君が望んだ結果だ。打ち払うには、より強い望みがいるのだ。
もう一度聞こう。君は本当は、どうしたいのだ?」
「私は・・・」
やっとのことで、血を吐くようにリリーが口を開いた。
「ジュニアと、シェリルと、ハリー・・・私の家族のところに帰りたい。
帰って何があったか、ちゃんと話して、聞いてもらいたい」
ぎゅうっと、杖を握りしめ、彼女は袖で顔をぬぐって振り向くと、暴れ回る怪物に向き直った。それをセブルスは、ため息交じりに見やった。
世話の焼ける幼馴染だ。
リリーの放った何度目かの呪いが、化け物に命中した。
「人殺しでも・・・それでも、私は帰るわ。杖のように振り回されるのなんて、もう十分だもの。
自殺の手伝いは終わったはずよ。私はもう、好きにするわ」
涙目でも、凛として言い放ったリリーは、確かに勇猛果敢なグリフィンドール出身の魔法使いだったのだろう。
ボロボロと、風化していくように崩れ去って消えていく怪物は、『ジェームズ・・・ジェームズ・・・』とひたすらに憐れな声で呻いていたが、やがてそれ諸共、空気に解けるように姿を消した。
それを見届けて、リリーはがっくりと膝をついた。
その瞼の裏で、在りし日のジェームズ=ポッターが両親がすまない、と謝ってきている様子を、リリーは見た。
彼は、リリーと付き合うようになってから、思うところができたのか、あるいはおりにつけリリーが叱り、反省を促したからか、だいぶおとなしくなりはした。
その愛情を疑ったことなど、リリーは一度たりともありはしなかった。
セブルスは、そんなリリーを静かに見つめていた。彼女がどう結論を出そうと、彼女の自由だ。極論してしまえば、彼女の心の問題であり、彼女が考えたいように考えてしまえばいいのだから。
ただ、彼女が悔いのないようにあってほしいとは思う。
「・・・さすがは、Mrs.メイソンだ」
「・・・久しぶりに聞いたわね、あなたのそんな言葉」
「お互い離れ過ぎていたのだから、当然だろう」
そう言って、セブルスは膝をついているリリーに歩み寄ると、彼女に向かって右手に持っていた青白い鐘を軽く振った。
リリーは知らないが、それは秘儀“聖歌の鐘”の触媒だ。自分と周囲を癒す効果があるもので、魔法による治癒呪文が至近に寄らなければ使えないのに対し、ある程度距離があっても効果がある。
涼やかな音色とともに、リリーの身体についている大小さまざまな傷があっという間に癒された。先ほどの戦闘でも、何度かその身に受けたものだ。
見たことのない魔道具だ、闇の魔法道具ではないらしい、とリリーは判断する。
・・・そういえば、この幼馴染は生傷が絶えなくて、そのうち治癒呪文を自己習得していた。この魔法道具を持っているのもその延長なのかもしれない、とも思った。
「立てるかね?」
「・・・もう、リリーとは呼んでくれないのね」
“聖歌の鐘”をしまったセブルスの問いに、すっきりした顔をしたリリーは立ち上がりながら、どこか寂し気に言った。
リリーは謝りたかった。血まみれの殺人鬼なんて侮蔑して蔑んでたのに、わざわざ助けに来てくれた。
イギリスで追い回されていた時でも、周囲が敵だらけの中、彼とその後輩だけが、手を差し伸べてくれた。だというのに、自分とくれば礼の一つも言わなかった。
今だってそうだ。背を向けて、見捨てることだってできただろうに、遠回しであれど、リリーの背を押して励ましてくれたのだ。
先ほどの戦闘も少し離れたところで、リリーに無言で治癒の魔法道具を使って、アシストしてくれたのだ。
「・・・人妻の名前を、軽々しく呼ぶつもりはない。君もわきまえたまえよ」
「あの、以前はごめんなさい。あなたは助けてくれたのに、私・・・」
静かなセブルスの言葉に、リリーはひどく悄然とした顔で言ったが、しかし彼はそれに対しては何も言わず、踵を返した。
「早く戻るとしよう」
短くそう言い残して。
くしゃりとリリーは悲しげに顔を歪めたが、何も言わずにそのままそのあとに続いた。
・・・今更だった。今更過ぎた。きっと、彼は、あきらめてしまったのだ。自分が、あきらめさせてしまった。
今更ながら思い出す。そういえば、この幼馴染は、最後にはリリーのわがままを、しょうがないなと許してくれていたな、困っていたら真っ先に助けてくれていたな、と。
・・・心のどこかで、幼馴染なら助けてくれる、許してくれると、甘ったれていたのだ。
本当に今更だ。
「セブ、ありがとう」
その名を呼ぶ資格はもうないけれど。リリーは、小さくそう言った。
背を向けたセブルスに、それが聞こえているかは定かではない。どちらでもいい、とリリーは思う。だって、これは、リリーの自己満足なのだから。
さて、ようやくセブルスとリリーは二人そろったわけだが、“姿くらまし”やポートキーなどの移動系の魔法を使うには、サイレントヒルそのものから一度出る必要がある。
くどいようだが、この街は異常なのだ。通常の魔法はともかく、移動系の魔法は空間に干渉するため、サイレントヒルでは使えないのだ。
セブルスには高速移動呪文があるが、リリーにそれは使えず、箒もないなら、魔法使いらしくもなく、徒歩で移動するしかない。
余談になるが、セブルスは箒はあまり得意ではない・・・というか、好きではない。どこぞの馬鹿者4人組のうち2人が箒が超得意で、飛行術の合同訓練の際に散々ちょっかいをかけられたせいでもある。
箒から叩き落されたこと数知れず、骨折も何回かやらかし、挙句、高速で追い回されてアクロバティック飛行を強要され、呪いをかけられまくった。
あれで好きになれという方がどうかしている。
ザル監督で、箒から落ちたセブルスの方がどんくさい呼ばわりしたフーチは、とんだヘボ教師だとセブルスは思っている。
さらなる余談であるが、正史のセブルスであれば“闇の帝王”から教わった飛行呪文で空を飛ぶこともできるのだが、こちらの彼は帝王の配下になるどころか、彼の内臓をぶちまけているので、そんなものは使えない。
リリーの要請で、枯れ羽帽子と防疫マスクを外したセブルスは、ふと気配を感じて足を止めた。リリーもまた、つられるように足を止める。
その直後、真っ白な霧を割るように、彼は現れた。オリーブグリーンのジャケットを羽織った、茶髪の男――ジェイムス=サンダーランドだった。
「よかった!無事だったのね!」
弾んだ声で話しかけるリリー(彼女もどこかで顔を合わせていたらしい)に、サンダーランドは疲れ切った様子ながら、笑みを浮かべた。
セブルスが最初見かけた時のような一種の病んだ雰囲気はない。どこかすっきりしたように見えた。リリーと同じように、彼も自分の闇を振り切れたのかもしれない。
「君も、無事だったらしいな。捜し人に、会えたかい?」
サンダーランドの言葉に、リリーは黙ってうつむいた。
なお、リリーは最初、サイレントヒルに来たのは、死んだポッター前夫妻から手紙が来て、というように記憶を捻じ曲げていたらしい。
ポッター前夫妻が許せない、ジェームズを愛しているが憎んでもいる、ちゃんと彼の真意を知りたかったというリリーの感情を、サイレントヒルは悪い意味で実現しようとしたわけだ。
「あの、Mr.サンダーランド、あなたの捜し人は見つかりましたか?」
「・・・ああ」
どこか遠慮がちに尋ねたリリーに、サンダーランドはそっと視線をそらし、遠い目をして頷いた。
「君たちは、帰るのかい?」
「そのつもりだ。彼女には家族がいるし、私も家に残している者がいるからな」
サンダーランドの問いかけに応えたのは、セブルスだった。
どちらかと言えば、その言葉は、いまだに二人に邪な誘惑を投げかけようという、サイレントヒルそのものへの言葉だったようにも思われた。
「うらやましいな・・・」
ぽつりと言って、サンダーランドは一歩踏み出した。
セブルスとリリーの脇を通り過ぎ、歩いていく。その方向は、最初にセブルスが彼を見かけた、駐車場の方だ。(その後のトイレインパクトが凄まじすぎた)
サンダーランドは、白線も無視して駐車し、ドアも開け放ったまま、サイレントヒルをうろついていたのだ。
「ああ、そうだ」
何事か思い出したのか、サンダーランドは足を止めて、二人を振り返ってきた。
「ローラという女の子を見たら、彼女を頼む。あの子に何かあったら、メアリーが悲しむだろうから」
「え?あの、あなたは?」
「・・・私には、まだ、やることがあるんだ」
戸惑ったように尋ねるリリーに言って、サンダーランドは今度こそ背を向け、霧の中にその姿を消した。
ややあって、バタバタンと何かを開け閉めする音と、ブオンッと一等大きなエンジン音が聞こえた直後、ドボンッと何か大きなものが水に落ちる音が聞こえた。
「まさか・・・?」
「・・・助けるかね?」
こわごわとセブルスを見上げるリリーに、セブルスは静かに視線を落とした。
「・・・いいえ」
ゆるりと、リリーは首を振った。
「いいえ。きっと、あの人はそれを望まない。多分、あの人の奥さんは、最初からいなかった。
あの人は、最初から死ぬつもりでここに来ていた。
違う?」
「・・・当たらずと、遠からず、であろうな。
真実は、本人にしかわからんだろうさ」
話しながら、駐車場に差し掛かると、二人が来たときは確かにあったセダンが、タイヤ痕だけを残して消えていた。
駐車場のすぐ目の前には、大きな湖がある。トルーカ湖という、サイレントヒルに隣接する湖だ。駐車場と隔てる柵は壊れ、その水面に大きな波紋ができていて、何があったか、想像に難くない。
「きっと私、運がよかったんでしょうね」
ポツリ、とリリーがつぶやいた。
「少し間違えれば、彼のようになっていたかもしれない」
「そうか?君は、それほど柔な女性ではなかったように思うがね」
「買い被りよ」
苦笑して、リリーは視線を湖から引きはがし、踵を返す。
「帰りましょう、スネイプ。家族が待っているもの」
「ああ。そうしよう」
二人とも引き返して、ローラを探そうとは言わなかった。
道中で二人とも、ローラを目の当たりにしていたからだ。
彼女は、この街では大丈夫だ。幼い少女である彼女には、心の闇など無縁であり、精々廃墟で迷子になった、くらいが関の山だろう。
ついでに言えば、散々な目に遭ったリリーは、ローラ一人のためにこの街に取って返す勇気はなかった。
セブルスは単に面倒は御免だというだけだが。
続く
【リリー=メイソンの杖】
リリー=メイソンが、学生時代から愛用している26センチの杖。
柳に、ユニコーンの尾の毛が用いられている。
振りやすく、妖精の魔法に向いていると老オリバンダーは評したが、その持ち主の人生が杖のごとく振り回されたものであったと、誰が知るだろうか。
ブラボ風テキスト。ちなみに、本当は芯材の方は不明。
なお、ジェイムス=サンダーランドさんは、セブルスさんが衣装替えしているため、金色三角頭と同一人物とは気が付かなかったよ!
声も、ねっとりした低音なのは変わらなくても、狂気の高笑い声と、落ち着いた淡々調子と、落差がひどかったからね!
UFOエンディングに、興味はありますか?
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もちろん!読みたいな!
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興味ないね
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第1楽章終了後なら
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むしろ犬エンドはどうした