次回は新章突入で、いよいよホグワーツ・・・の前に、いくつか外伝もあるのですが、どうしましょうかね?
アンケート次第、としておきます。よろしければ、ご協力ください。
フェンリール=グレイバック(あの時は人狼姿で気が付かなかったが、後日セブルスから聞いた)が、尊敬する先輩によって連れ帰られ、地下室に押し込まれてから、数日。
レギュラス=ブラックは時折、
一体何が起こっているのか、レギュラスとて興味がないといえば嘘になる。
だが、彼は兄とは違い引き際をわきまえていた。余計な好奇心を自制できるタイプでもあった。
大体、血まみれになって帰って来て、内臓を引っこ抜いた云々という発言を聞いた時点で、レギュラスはそれ以上のツッコミを放棄することにしたのだ。
そもそも、魔法使いにとって、必要以上の流血は野蛮かつ下品、非効率的である。
なぜなら、魔法使いには、悪事をなすときには禁じられた呪文3つがあるからだ。
その3つさえあれば、大抵の用は片付く。
聖28家に代表される純血の魔法族であればあるほど、暴力沙汰はともかく、必要以上の流血という行為そのもの自体を厭う傾向は強い。
さらには、魔法ではない、必要以上に道具を使うなんてマグル的だ!と厭う風潮もある。
“闇の帝王”やその配下の“死喰い人”など、その代表だろう。
話を戻すが、とにかく、レギュラスもそういう事情もあって、狂犬と名高いフェンリールの身を案じるより、自身の精神衛生を優先した。
彼は狡猾なスリザリンの出身である。見知らぬ何某を慮る高潔さより、わが身とその周囲を大事にする思いやりの持ち主なのだ。
そもそも、フェンリールは“闇の帝王”に対しては従順だったが、死喰い人に対しては、所詮人間風情、とどこか見下している節さえあった。“闇の帝王”の命令があったから、こちらに牙を向けなかっただけだ。
あんな奴がいるから、余計に人狼は差別されるのだ、とレギュラスは思う。
そんなレギュラスは、今日もブラックの荘園の管理や、傘下企業の運営者と打ち合わせをすべく、レオ=ノワールの変装をして出かけようとしていた。
「行ってらっしゃい、レギュラス様」
「・・・うん、行ってくるよ、メアリー」
思わずレギュラスが言いよどんでしまったのは、メアリーのほっそりした人形然とした両手に、抱えられているものを見てしまったからだ。
それは、残飯だった。
幼少から高級なものに囲まれて、贅沢に舌を慣らしてきたレギュラスは、少なくとも、それをそう判断した。
鍋の中にあるのは、粥状にどろどろの何かで、野菜やら何やらが細かくされて入っている。だが、その色は不気味なヘドロのような虹色のマーブル模様をしていた。
・・・これは、セブルスが日本を訪れた時に知った雑炊という料理だが、いかんせん、残飯やら、果物スパイス、他適当に賞味期限が切れそうな素材を入れて作っているので、凄まじく不味そうに見えるのだ。
そして、これを食べさせられるのは、地下室でいまだに拘束されて、無駄な抵抗に励んでいるフェンリールらしい。
セブルス曰く、栄養学的に問題はないはず、とのこと。
最初は真面目に作っていたのを、セブルスが言うことをきかん検体にやる飯なぞ、適当でいいと言い放ったせいで、こうなった。
ハンストすら許してもらえない、哀れな人狼が心折れるのも時間の問題だろう。
レギュラスは、魔法使いであるくせに、らしくもなく十字を切って、アーメンと唱えたくなった。
さて、それからさらに半月程後に、ようやくフェンリールは地下室を出ることの許しをもらえたらしい。
地下から出てきて、リビングを兼ねた書斎に入ってきたセブルスの背に従うように、フェンリールはついてきた。
だが、その首には革製らしい大きな赤い首輪がかかっている。
「改めて紹介しよう、レギュラス。
脱狼薬の治験に協力してくれることと相成った、フェンリール=グレイバックだ。
貴公ならば、見知っていると思うがね」
「あ?」
ガラの悪い声で聞き返すや、フェンリールはじろりと黄色い目でレギュラスを睨む。
「レギュラス・・・レギュラス=ブラック?
あのお方からの大仕事の後、出奔したっていう?」
「あのお方、と言ったかね?」
そのすぐ隣のセブルスが、ゴトンッと、右手に出現させた教会の石鎚で軽く床をついた。
「ひぃっ?!いえいえ、や、闇の帝王殿でさあ!月香の旦那!」
瞬時に顔を青くしてブンブカ首を左右に振るフェンリールは、完全に縮こまっている。人間姿ならばないはずの狼耳がぺたんと下がり、尻尾も丸めているような幻視すら覚えてしまった。
完全に、虐待された後の犬のようだ。狂犬フェンリール=グレイバックが、何という有様。
「ふむ。何度も言うようだが、私はあの男が好かん。私の大事なものに手を出そうとしたからな。ゆえに、私の前であの男を崇めるような言動を取れば、どうなるか・・・もう一度腸管を引きずり出されたいかね?」
「っっ!!!!」
ズザッとフェンリールは大きく飛びのいた。
同時に、首が取れんばかりに大きく左右に振っている。
ああ、これは、地下でもう一度、同じことをされたんだな。可哀そうに。
閉心術できっちり心を閉ざし、無表情のままレギュラスは思う。
「あの、差し出がましいですが、その、彼の首輪は?」
「誰がつながれた犬だ!食い殺すぞ、この野郎!」
そこまで言ってません、とレギュラスはツッコミを入れようとしたが、それよりも早く。
「フェンリール」
「はい旦那!」
静かに呼びかけたセブルスに、フェンリールは気を付け!と言わんばかりにビッと背筋を伸ばした。
「私はむやみに吠えるのは、人獣問わずに嫌いだ。度が過ぎるようなら、もう一度しつけようと思うが、どうかね?」
「すいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいませんすいません」
スッと目を細めて言ったセブルスに、フェンリールは平身低頭謝り倒す。
フェンリールの黄色の目からハイライトが消えた(先輩曰くの蕩けた瞳というのはああいうのを言うのだろうか?)のを、レギュラスは見逃さなかった。
本当に、セブルスはフェンリールに対して何をしたのだろう?
だが、それは少なくとも、レギュラスは知る必要はないのだろう。ただでさえも気苦労を抱え込みがちなところに、これ以上精神的負荷を背負いたくない。
「フェンリールにつけている首輪は、簡単に言えば、この家に奴を縛り付けるためのものだ」
「ええっと、つまり?」
「私は犬はあまり好きではないが、聞いた話では、マグルは犬を飼う際に、首輪で所有権を主張し、勝手に出歩かないように鎖でつなぐらしい」
「あの首輪がそれになるんですか?」
「うむ」
軽く頷いて、セブルスは定位置の一人掛けのソファに座り、二人にも適当に座るように促す。
定位置のカウチの隅に座るレギュラスと、その反対側に不服そうな顔をしつつもおとなしく座るフェンリール。
やってきたメアリーがお茶を淹れ始めるのをよそに、セブルスは続けた。
「あの首輪は、奴用に特別に誂えたものだ。
あれをつけている限り、この家の敷地から外に出ることはできん。庭は敷地に含まれるから大丈夫だ。
ただし、私の机と薬棚、寝室、お前の自室は除く。扉に手をかけたり机に触ったりしただけで、首輪を起点に激痛が走るようになっている。
さらに、無理やり外そうとすると仕込んでおいた
「うわぁ・・・」
なんという、えげつない拘束具。装備者たるフェンリールはさぞかし気が気でないに違いない。
ホグワーツ在学時から、オリジナルの呪文を作るほどセブルスは優秀だったが、その彼が優秀な方面をあれな方向に発揮すると、こうなる。
ちなみに、フェンリールは字の読み書きができないので、手紙などをこっそり出されることは全く心配していない。
「・・・あの」
ふと、レギュラスは聞きたくなった。この優秀な先輩なら、こんな面倒なものを作らなくっても。
「
「ふん。あの呪文は人間相手に使うとな、多幸感のせいで現状把握ができなくなる。
そんな中で、正確な脱狼薬の使用感など聞けると思うか?」
しれっと吐き捨てたセブルスだが、その言葉にレギュラスは聞き捨てならない言葉が混じっているのを、聞き逃さなかった。
「何で
「貴公はやらなかったのかね?
スリザリン寮内では、互いに
・・・今思えば、なかなか悪質であったな」
「知りませんよ?!そんな遊び!いくら何でも質が悪すぎます!」
しれっと言ったセブルスに、レギュラスは思わずドン引きした。
かつて所属していた寮と、見知った仲間と団らんしていた場所とはいえ、そんな危険な遊びが流行っていたとは思わなかった。
・・・確か、あの呪文は人に対して使えば、それだけでアズカバン行きであったはずなのだが。ばれたら退学確実の、何と危険な遊び(そもそも遊びの範疇に入るのか?)をしているのやら。
これでは、グリフィンドールのことを何一つ非難できないではないか。
「そうかね?私は呪文に抵抗して、ノットの歌えという命令を拒否して、呪文を破った。
あれはあれで貴重な経験になったと思うがね」
おかげで、あの呪文をかけられても、多少時間はかかろうと破ることができると、セブルスは自信があった。
「・・・あんた、やっぱり闇の魔法使いだったのか?」
ホグワーツの教員方の目を盗んで行われた当時のそれを思い返しながら言ったセブルスに、フェンリールは呆れたようにつぶやく。
人間相手の使用を禁じられている呪文を、平然と人間相手にぶっ放せるということは、闇の魔法使いだと、彼も知っているのだ。
「あれと同類扱いとは、実に啓蒙低いことだ。
貴公、手足を叩き潰され過ぎて、ついに脳髄にまで支障をきたしたかね?」
「あ゛あ゛ん?!」
セブルスに侮蔑の眼差しで見られ、フェンリールはドスの利いた声でメンチを切ったが、すぐさま相手の視線の前に、さっと目をそらして背を丸める。
そうして、彼はすぐさま思った。あんな危険な凶器と狂気を携えた奴が、闇の魔法使いなんて、お行儀のいい存在なわけがない、と。
「さて、一段落ついたら、我が家を案内しよう。部屋は空き部屋を適当に使いたまえ」
「いいんですかい?」
「協力的な検体には、相応の代価は用意するものだ。
魔法薬学の発展にその身を捧げるのだ。当然のことだ。
何度も言うようだが、私はあの偽医者とは違う。治験と称して、貴公に一方的なことはせんよ」
少し驚いた様子のフェンリールにしれっと言って、セブルスは紅茶に口づけた。
それから約2年ほどをかけて、フェンリールと彼の旗下コミュニティの人狼たちの協力(という名の人身御供)を得たセブルスは、脱狼薬の改良に成功した。
ダモクレス開発の脱狼薬のレシピは、トリカブトを主原料としており、満月の1週間前から毎日コップ一杯服用すれば、変身後も理性を失わない、というものだった。
ただ、この薬はいろいろ制約が厳しい。
まず、非常に苦い。砂糖を入れたら効力が失われるのだ。
次に、毎日服用するということ。一日でも飲み忘れてしまえば、効果がないのだ。たった1回の飲み忘れで、他の6回の苦い苦労(文字通り)が水の泡となる。
そこでセブルスはさまざまな改良を施した。
まず、味の方は水薬形式なのがいけないのだ。丸薬、あるいは錠剤、最低でも粉薬にしてしまえばオブラートに包んで飲むことができるはず。
・・・この辺りの発想は、ヤーナムで医療協会発祥の薬品に触れたことが大きい。オブラート云々は、ペンフレンドのハリー=メイソンが手紙の中で触れてきたことに起因する。
ともあれ、セブルスはそのために新規に水薬を錠剤に加工する――錠剤加工呪文まで開発した。魔法薬自体が含む魔力と干渉しあわない絶妙な塩梅が必要で、マグルで言うところの糖衣(錠剤外部を覆う薬効のない無害な素材)に当たる材料も用意しなければならない、極めて難しい魔法だ。その代わり、他の魔法薬にも応用が利く、幅広い呪文だ。
人狼たちからの評判も上々である。この魔法のおかげで、薬を携行できるようになったため、飲み忘れが大幅に減ったということだ。
さらに言えば、セブルスはレシピ自体もかなり手を加え、本来なら難しく複雑な手順も改良して、調合者にも優しいレシピにした。
残念ながら、満月の1週間前から毎日服用、という期間については経口薬の場合はいまだに手を付けられないが、これもそのうちどうにかしていきたい、とセブルスは思っている。
さて、そんなセブルスは、新規の呪文とレシピの発表に当たって、一人の専門家の知恵と後ろ盾を仰いだ。
それが、ホラス=スラグホーン教授である。ホグワーツでも魔法薬学の教鞭を執るこの教授は、成績でえこひいきするものの、寮で差別をせず、セブルスのことを気にかけてくれた恩師でもある。
権威に弱い一面もあるが、その分その方面での足運び――駆け引きなどについて頼れるだろうと声をかけ、改良版脱狼薬と錠剤加工呪文の発表について、新人で後ろ盾も何もない自分よりも、経験豊富な教授と共同開発という形にしたい、と話を持ち掛けたのだ。
・・・要は、後ろ盾でもあり、面倒を押し付けられる、前盾にもできるようにした。
スラグホーン教授とは大学の授業の一環で参加した魔法薬学会で再会した。
例にもれず、セブルスはスラグホーンの顔も忘れかけていたが、「あれからその後の音沙汰を全く聞かなくて心配した」「君に最後まで魔法薬の神髄を伝えられなかったことは、私の大きな心残りの一つだ。もっとも、君なら自力でそこまでたどり着いてしまっていただろうがね」などと、心底ほっとしたような顔で話しかけられれば、すぐさま思い出すし、悪い気はしなかった。
その後、魔法薬学会や、欧州魔法薬学連盟の集いなどを通じて、交流は続けていたのだ。師と教え子ではなく、同じ魔法薬学を極める同志として。
セブルスが話を持ち掛けるなり、教授は喜んで飛びついてくれた。レシピと呪文を開発したセブルスをほめちぎり、魔法薬学の歴史が変わるぞ!とまで言って、(自分もその栄誉にあずかれること含めて)大はしゃぎだった。
特に、呪文の存在は大きく、今までは調合したてでないと効果のない魔法薬がいくつかあり、その保存にもなるかもしれない、となって、盛り上がりに盛り上がった。
セブルスも、とりあえず脱狼薬で試しただけなので、他の魔法薬についてはまだ試していない。ひょっとしたら、その逆で、錠剤化したら効果が失われるものだってあるかもしれないのだ。
要研究だ!と魔法薬学オタク同士で盛り上がりまくり、学界でも当然のように話題になった。
さて、こうして、脱狼薬の改良については一段落ついたのだが、ここで検体となったフェンリールとその旗下コミュニティの人狼たちをどうするか、という問題が持ち上がった。
セブルスとしては、まだ脱狼薬のレシピには改善の余地があるうえ、この薬はあくまで対症療法でしかない。そのうち完全根治させる薬も作ろうと思っている。
ゆえに、検体はすぐに呼び出せるように確保しておきたい。だが、とりあえずできることはやってしまったという状態なので、当座の改善は無理、しばらく検体を遊ばせておくのも忍びない、という状態になってしまったのだ。
そこで、レギュラスが言い出した。
「改良版脱狼薬の支給をつけるので、僕のところの荘園に来て、農作業手伝ってください。満月の夜も大丈夫な寝床も用意しますし、脱狼薬とは別に報酬もお出ししますよ」
これには、人狼たちは大喜びで飛びついた。(フェンリールは最初難色を示したが、セブルス怖さに結局首を縦に振った。首輪は敷地内から出られない、という縛りから、脱狼薬を規定時期に飲まなければならない、誰かに噛みついてはいけないという縛りに変更された)
人狼であるというだけで差別の対象であり、就職にも困る彼らは、正体を隠して、こっそりコソコソと暮らすしかない。コミュニティに身を寄せるのは、少しでも危険や就職活動の情報を共有するためでもあるのだ。
それが脱狼薬の治験に参加しただけで、その後の飯の種と寝床まで確保できるなんて!
なお、コミュニティ経由で聞きつけた他の人狼たちが我も我もとやってきたため、ブラック傘下の荘園だけでは雇いきれず、セブルスはルシウスに事情を説明して、マルフォイ傘下の荘園でも同様の条件で雇い入れるよう協力を要請した。
ルシウスとしても、普通の魔法使いよりも安価に雇える人材だということで、異存なく雇い入れてくれた。
その代わり、今後役立つ薬の開発をしたら、マルフォイ傘下の製薬企業に優先的に卸してくれ、と言われてしまった。
さすがは、純血名家当主である。しっかりしている。
さて、それからほどなく、セブルスはルシウスからの定例の食事会という名の愚痴の言い合いの際、リーマス=ルーピンの名を聞くことになって眉を寄せた。
こちらは割とすんなり出てきた。ここ数年ほどはレギュラスと一緒にホグワーツ時代のことや、彼の愚兄について話すことがまれにあったので、それでである。
「どうも、脱狼薬の改良レシピとその開発者について聞いたらしくてな。就職活動がてら聞きに来た。謝りたいとかほざいていたが、どの面下げて、だな」
何ともうかつな。セブルスは軽く眉を寄せる。
確かにセブルスはルーピンが人狼だということを知っているが、退学時の口留めは律義に守っており、誰かに話したことは一度たりともない。
ルシウスがそれを知る由はないはずだが?
いや、彼も純血名家の当主であるのだ。耳目はあちこちに張り巡らせていることだろう。
「で、どうしたのです?」
「お前は、学生時代、かわいがってた後輩や、気にかけている同輩、尊敬している先輩方に悪戯という名の傷害・迷惑をかけまくった一味の一人に、好感を持てというのかね?
お前自身もされたことを忘れたわけではあるまい。
それで少しは申し訳なさそうにして、私に対しても『あの頃はすみませんでした、止められなかった僕も悪かったです』の一言でも言えればまだ違ったが、奴が何としたと思う?」
「さて、啓蒙低い輩の考えなど、私には何とも」
「まるで自分は関係ありません、というような顔をして、『お久しぶりですね。お元気そうで何よりです』と言ってのけたのだぞ?良識を疑うな」
「お言葉ですが、奴もあのグリフィンドールの一員です。心のどこかで、闇の魔法使いの一人、死喰い人をやってたくせに、罪を誤魔化して逃げた卑怯者と蔑んでいるのでは?」
「だから謝る必要など感じない、むしろ罵倒せずに温厚に接している自分は人格者だと勘違いしていると?
フン。まさしく、啓蒙低い、輩だな」
セブルスの言葉に、ルシウスは心底不愉快だと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「まあ、そんな輩だからな。教える価値もないし、ついでに雇い入れている人狼たちを闇の魔法使いの手先として“不死鳥の騎士団”に密告するつもりだろう、また彼に危害を加えるつもりか、と追い払ってやったがね。
違う、本当にスネイプに謝りたいだけだなどと喚いていたが、どこまで本当なのやら」
と、ルシウスは口元を冷笑にゆがませた。
「あんな使い捨てにされているようだというのに、相も変わらずダンブルドアには従順なことだ」
「使い捨て?」
「ずいぶんとくたびれた格好をしていたよ。聞いた話、住所も不定だ。奴の父親は魔法省の役人だったはずだが、その家や財産などを受け取ったという話も聞かない。
大方、ダンブルドアからの何らかの依頼で長期留守にし、両親の死去も知らずに、気が付けば家屋財産は司法手続き期間を過ぎて差し押さえされたというところだろう。
奴がまともな職についておらず、生活できている風でないのは明らかだ」
「・・・それは通常、バックアップ体制の一環として、依頼した側がフォローしておくべきでは?」
「私に訊くかね?偉大なる校長殿に訊くべきだろう。ルーピンにそれを命じたのは、まず間違いなく、あの髭狸だろうさ。
そして、今回も」
気の毒に、とはセブルスもルシウスも言わなかった。正直、ルシウスは気分悪そうにしており、セブルスはルーピンなどどうでもよかったからだ。
加害者にとっては過去のことでも、被害者にとってはそうではないのだ。
セブルスは、どうでもいいと捨て置けるが、関わり合いになりたくないとはっきり言うし、ルシウスは言わずもがな。
ルーピンは確かに、直接セブルスに手は出さなかった。だが、それだけだ。気の毒そうな顔で、やんわりと止めようとはするが、結局押し切られて見ているだけだ。
あとで謝りにきたり、手当てをしようとしてくれたり、あるいは力づくでも止めようとしたり、切り上げさせようとしてくれたら、まだ違ったかもしれない。
だが、それもせずに、ルーピンはおそらくは人狼であることを負い目にして、友情を失うことを恐れてたのだろう、傍観に徹した。(ルーピンの秘密は現状、あの4人以外ではセブルスしか知らないのだが。言いふらすつもりもない。教授陣については論外だが)
被害者にとっては、傍観者も加害者と何ら変わらない。
いかにセブルスにとっては、100年近く昔のことに相当するのだとしても、あれと仲良しこよしは御免である。
いずれにせよ、セブルスには、関係ない。
目障りなだけだ。
続く
【改良された脱狼薬】
ダモクレスが開発したレシピを、セブルス=スネイプが改良した、錠剤状の魔法薬。
満月の1週間前から1日1錠服用すれば、人狼化しても理性を保つことが可能。
錠剤魔法薬の記念すべき一つ目であり、セブルス=スネイプの名を魔法薬学会、人狼コミュニティ、双方に広く知らしめることとなった。
フェンリール=グレイバックは言った。クソ不味い脱狼薬も水で丸呑みできるなんて、人狼が侮られる要因がまた一つ増えてしまった、と。
服従の呪文辺りの事情は捏造です。
のちに死喰い人に名を連ねるスリザリン生なら、人間相手にかけるなら大丈夫そうな服従の呪文なら、練習がてら使っててもおかしくないかも、呪文破りの練習にもなるし、と思いまして。
ルーピン先生、まだ出番がないっていうのに、この扱い、ひどいですか?
3巻初登場時に、何でスネイプ先生この態度?って思ってからの、スネイプのクズがこの野郎、となって、6巻でそりゃそうなるよな!って猛烈に納得した覚えがあります。
むしろ、あんな目に遭わされても、自分の感情は我慢して仕事上の付き合いを頑張って続けようとするあたり(ボガートの一件でコケにされてなお)、凄い人だなあ、と思います。
ルーピン先生、一言でも謝ったんでしょうか?謝ってないとしたら、スネイプ先生の態度にものすごく得心が行くんですよね。(謝ってない理由も、やっぱり死喰い人だったから、と説明つけられそうですし)
ちなみに、セブルスさんが服従の呪文に抵抗できた、というのも捏造です。ハリーちゃんが抵抗できたんだし、陰の主人公みたいなセブルスさんだって抵抗できたはずさ!と。
夢見過ぎですかね?
アンケートの外伝の詳細は本日の活動報告にのせてますよ!
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