アンケートへのご協力もありがとうございました。
第2楽章がトップだったので、引き続き本編をお楽しみ下さい。
新章開始。満を持して、ホグワーツが舞台となります。
『賢者の石』開始の1年前からとなります。
【1】セブルス=スネイプ、ホグワーツへ行く
必要なものを詰め込んだトランクのふたを閉め、セブルスは顔を上げた。
このトランクは魔法界でも有名なカバンメーカーのもので、複数あるカギで開け閉めすることで、鍵に応じた収納スペースを呼び出すことができ、大量収納と整理整頓に便利、という謳い文句が付いていた。
確かに、血の遺志に還元すれば好き放題持ち歩くことはできるが、ある程度は見える形で持ち歩いている格好をしていないと、不審がられるのだ。
狩道具や、装束の類は、トランクの中に保管箱に直結させたスペースを設けたので、そこから出し入れする予定だ。そうそう使うことはないだろうが、手元にない方が不安になるのだ。
続き、右手を振って魔法をかける。埃避けと、劣化防止の魔法だ。これらの魔法は便利だが、効果中は物を動かせなくなるので、長期留守に用いるものなのだ。
特に、本棚周りには念入りにかけて、虫除けの魔法もかけおく。魔法界の書籍は、大半が羊皮紙製だ。放置しておけば、虫食いに遭いかねない。
最高で11か月は留守にするのだ。その間に何かあっても困る。
一足早く出発したレギュラスは、今頃はグリモールドプレイス12番地――ブラック本邸についたころだろう。
さすがに10年も経てば、戻っても大丈夫だろうと、セブルスが留守にする間はブラック邸に身を寄せることにしたのだ。
「狩人様」
「支度はできたかね?」
「はい。予備の服と、使い慣れた道具、あとは・・・ホグワーツにあるかわかりませんでしたので、お気に召されていた茶葉を」
静かにうなずいたメアリーに、セブルスはうなずきを返し、その頭をボンネット越しに撫でた。
しばらくは、聖杯ダンジョンさえもお預けになる。耐えられるだろうか?
事の起こりは数か月前にさかのぼった。
レギュラスが、探りを入れていた分霊箱の器――早い話、ホグワーツ創始者所縁の品の行方が分かったのだ。
やはり、ヴォルデモート卿による強奪の憂き目に遭っていたらしい。
スリザリンのロケットは破壊したので、残るはハッフルパフのカップ、レイブンクローの髪飾り、グリフィンドールの剣、である。
グリフィンドールの剣については除外するべきだろう。あれは真のグリフィンドール生のみが組み分け帽子から取り出せる、とセブルスたちが在学時からひそかに噂になっていたのだ。
生粋スリザリン生のヴォルデモート卿や、その配下の死喰い人に入手は無理だろう。
ハッフルパフのカップだが、こちらは子孫の手に継がれていたのを、襲撃に遭い、強奪されたらしい。その際に死者も出ているので、分霊箱にされている可能性が極めて高い。その後の行方はまだわからないが、スリザリンのロケットのことを思うと、厄介なところに隠されている可能性が高い。
残すは、レイブンクローの髪飾りだが。
「本人に、直接尋ねる他あるまい」
「ですよね」
ため息交じりに、二人は意見を一致させた。
レイブンクローの縁者は、二人とも面識がある。レイブンクローの寮付きゴースト、“灰色のレディ”だ。彼女は、創始者たるロウェナ=レイブンクローの娘なのだ。
だが、ここで難題が持ち上がった。
セブルスもレギュラスも、ホグワーツを中途退学し、そこに立ち入る術をもってないのだ。
ルシウスならば、ホグワーツ理事ということで立ち入れるかもしれないが、彼は家の存続を最優先する。つまり、ヴォルデモート卿が復活したらそちらにつく可能性が高く、彼に分霊箱破壊の話を持ち掛けるのは得策ではない。
手詰まりか、と二人が頭を抱えかけた時、フクロウによって届けられた二通の手紙が打開策をもたらした。
片方は、Hの字を囲む、獅子、大鷲、アナグマ、蛇の封蝋をつけた、羊皮紙製の手紙。
セブルスは初めてそれを見た時の心躍るような気持ちは、すでに失ってしまったが、懐かしさはかろうじて覚えていた。
開けてみれば、ダンブルドアからの手紙で、ホラス=スラグホーンに代わり、魔法薬学教授にならないか、という打診だった。・・・大方、脱狼薬の改良でセブルスの名前が有名になり、スリザリン生をかばうことの多いスラグホーンよりもコントロールしやすそうだ、と目星をつけてきたのだろう。
もう片方は、噂のスラグホーンその人からの手紙で、そろそろ研究一筋に打ち込みたいから、自分の後釜で魔法薬学教授になってみないかという誘い文句が書かれていた。・・・ものすごくやんわりと、ダンブルドアからそろそろ隠居どうよ?みたいなことを言われ続けているとも書かれている。
そうだろうな、とセブルスは思った。
純血魔法使いの家系が多く、それに同調して、闇の魔法使いになりやすいスリザリン生を警戒してか、ダンブルドアは就職にもちょっかいをかけていたらしい。(ルシウスからの愚痴で聞いたことだが)
ルシウスのように家業を継げばいいものはともかく、その充てのない次男以降の子供たち、あるいは中小家庭などは就職先を探さねばならない。というのに、それを潰されては話にならない。食うに困れば、闇にも落ちる。
どこかの極東の武将も言っているが、飯があれば人は生きれる、尊厳があれば人は耐えれる、だが両方なければ、もはやどうでもよくなる、何にでもすがる。そういうことなのだ。
たとえ、すがる先が、闇の魔法であろうとも、今日の破滅を先延ばしにできるなら、何でもやるのだ。
スラグホーンがそれを悟っていたかはともかく、彼は懸命に生徒たちにすがる先を探してくれたし、すでに死喰い人に入りそうな生徒であろうと、成績が優秀であれば、相応に目をかけてくれた。
すがる先を潰す側からしてみれば、禍根を残してばらまくようなものだ。邪魔にも思うだろう。
話を戻す。
引継ぎや、カリキュラム把握の打ち合わせもあり、最初1年は助教授という形でスラグホーンを補佐しつつ、業務内容を把握していき、翌年から本格的に教授職を引継ぎという形になるらしい。
これは渡りに船である。
子供の相手はあまり得意ではないが、分霊箱探しのカムフラージュになる。
謹んでお受けするという返事を、セブルスは両者に宛てて返した。
ダンブルドアにヴォルデモート卿の分霊箱について打ち明けるかと、二人も話し合ったのだが、あの爺、変に鋭いからどうせお見通しだろ、と放置することにした。
むしろ、話を持ち掛けたが最後、気づいておったなら話は早い!ようこそ“不死鳥の騎士団”へ!と巻き込まれてはたまらない。
レギュラスはダブルスパイに仕立てられて今度こそ殺されかねないし、セブルスはセブルスで面倒は御免だった。
分霊箱は、見つけ次第セブルスの仕掛け武器で壊してしまえばいいわけで、わざわざダンブルドアに協力を仰ぐ必要はないだろ、という結論が出たのだ。
こうして、家中を片付け、セブルスはホグワーツへ出立することとなったのだ。
なお、メアリーは自立型魔法道具の一種として、同行させることになった。魔法は使えないし、狩人たるセブルス以外にはちょっとした小間使い程度に思われるだろう。
先方にも、すでにそれは伝えているのだ、問題はあるまい。
さて、付き添い姿現しで一気にホグズミード村まで移動した一人と一体は、そのままホグワーツへ向かった。
管理人のアーガス=フィルチは相変わらず陰険で陰湿そうな雰囲気を醸し出しており、セブルスが名乗るなり、少し驚いたように目を見開いたが、それだけで済ませ、さっさと彼らを連れて職員室まで歩き出した。
今はまだ夏休み中であるが、教師は学期始めよりも1週間ほど早めに来て、カリキュラムの準備や年内行事の打ち合わせを行うのだ。
さて、到着した職員室で、セブルスとメアリーは教授陣の前で改めてあいさつを行うことになっている。
ほとんどは、セブルスが在学時から変わってない。魔法族は長寿なので、そうそうメンツは変わらないのだ。約一学科を除いて。
セブルスが知らないのは、約2名だ。若い女の教授と、頭に紫のターバンを巻いた男だ。後者については、見覚えがあるような気もする。ひょっとしたら、同級生か、在校期間が重なっていたのかもしれない。
何やら教授陣からはジロジロと見られているような気もしたが、狩り衣装が珍しいだけだろうと、セブルスは切って捨てた。
彼に、在学時代からの態度と雰囲気の変化に驚愕されているという自覚はない。
「あれは、セブルス=スネイプですか?」
「まるで別人に見えますな・・・」
「彼はもっと陰気な人物と思っておりましたが・・・」
ひそひそと言葉を交わす教授陣を一顧だにせず、セブルスはそのまま一歩進み出た。足取りはしっかりしており、獣を思わせる静かながらも力強さを感じさせるものであった。
「おお、セブルス。来てくれたか」
「・・・お久しぶりです、ダンブルドア」
いつからファーストネーム呼びされるほど親しくなった?そう言ってやろうとも思ったが、セブルスは既のところでこらえ、淡々とそう返した。
そうとは悟られないように慎重に閉心術で心を読まれないように幾重にも防壁を巡らせるが、欠片も面にも表にも出すことなく。
セブルスは、在学時と何ら変わらずニコニコとほほ笑む好々爺に、内心で眉をひそめる。
目を合わせるなり、仕掛けられたのは開心術。いくらなんでも、あんまりではないだろうか。真っ当な人間なら、あまりの失礼振りに激怒していてもおかしくない。
心のうちなど、プライバシーの塊である。下世話が過ぎるのでは?あるいは、よほど他者が信用ならないか。だとしたら哀れなものだ。
とはいえ、相応に痛い目は見てもらおう。セブルスは軽く息を吸って、無言のまま閉心術を緩める。
途端に、ダンブルドアの無遠慮な魔力が、侵入してきた。
同時に、ダンブルドアは笑みを消し、こわばった顔になるやわなわなと震え始めた。
ところで、読者諸氏は追い込み漁というものをご存じだろうか?
主に、イルカやクジラなどの大型の海洋生物を採るための漁獲方である。網や船などで逃げ道を塞ぎ、入り江や浜辺に追い込み、獲物を捕獲するというものだ。
今、セブルスがわざと閉心術を緩めたのは、別に彼の魔力に屈したわけではなく、この追い込み漁に沿ったようなことをしたためである。
すなわち、そんなに見たいなら、勝手に見ればいいと、一部の記憶を彼にわざと見えるようにしたのだ。
見えるようにした記憶は、ヤーナムでも実に啓蒙高いエリア、“狩人の悪夢”の実験棟である。
廃墟になった病院のような施設、そこをうろつく顔も頭髪もない、肥大した皺だらけの頭を持つ患者たち。
奇声を上げながら大挙して襲い掛かり、ある時はかがみこんでないはずの目玉を探したり、メソメソとマリア様に助けを求め、やっとのことで逃げ込んだ病室ではベッドに拘束された患者たちが、苦痛に悶えて助けを求める有様。
単なる肉塊スライムと思いきや、しゃべったことからその頭部の肥大した患者たちの成れの果てと判明し、椅子にしばりつけられた血の聖女からは、脳液を要求される始末。
実に、いろいろ衝撃的で、うろついているだけで啓蒙が高まりそうなエリアだった。
なお、患者たちに殺された時の恐怖と苦痛もおまけでつけておいた。見たいものを見れたのだ。さぞ満足したことだろう。
「ウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
直後、ダンブルドアは悲鳴を上げて、口から泡を吹いて、白目をむいて突っ伏した。
奈落の底から響くような甲高い叫びは、ミコラーシュのそれと似ているな、とセブルスはひそかに思った。
「アルバス?!どうしたのです?!」
「校長?!お気を確かに?!」
「マダム・ポンフリー!」
慌てふためく他の教職員は、続けてセブルスに、何をした?と言いたげな視線を向けてくる。
セブルスはと言えば、心配そうに少し眉を下げ、不思議そうに軽く首をかしげて見せただけだ。何があったかさっぱりわからない、と惚けて見せたのである。
が、間もなくそれどころではなくなった。
校医であるマダム・ポンフリーの、
「アアアアアッアアアアッアッアッアッアアアアアアアア!!」
言語にもならない叫びをあげながら、杖を引き抜くや、呪いを周囲に乱射し始めたのだ。
至近距離にいたマダム・ポンフリーと、副校長のミネルバ=マクゴナガルは回避できずに命中。それぞれクラゲ足と、全身石化で動けなくなってしまった。
われ先に逃げるものと、
こんなばかばかしい事態を回収するのに、魔法を使うまでもない。
無差別乱射される魔法をよけながら高速移動呪文で瞬時に間合いを詰め、左手を振り上げる。
その指の甲には、分厚い鉄塊が付けられている。ガラシャの拳という狩道具の一つだ。
だが、はっきり言って、産廃以下だと、セブルスは思っている。
校長を仕留めるに魔法はいらぬ。産廃以下でぶん殴ってやればいい。
・・・なお、膂力と耐久が桁違いの獣だから、よろめかせるので精いっぱいのそのメリケンサックじみた武器は、只人相手に使えば、簡単に顎が変形する。(そして装備者であるセブルスの筋力が99になっているのも忘れてはいけない)
結果、哀れ、アルバス=ダンブルドアは顎が砕け、歯も何本か失い、きりもみ回転で全身に長い髭を巻きつかせながら吹っ飛ぶことになった。・・・ついでに、むち打ちにもなった。
「アルバスゥゥゥゥ!!」
「す、スネイプ、感謝はしているが、やり過ぎだ!」
慌てふためいて、呪いを受けてしまった者たちを助けて回るものと、ダンブルドアを医務室に運ぶべく、手当てを始めるもの。
すっかり挨拶どころではなくなってしまった。
こうして、そんなグダグダな出来事が、セブルスの二度目のホグワーツ生活のスタートとなったのである。
「か・・・セブルス様、ホグワーツとは、騒がしい場所ですね」
「今回のはアクシデントだ。それに、教授方は普段はもっと静かなのだ」
「わかりました」
常と変わらず淡々としているメアリーだけが、癒しである。
なお、彼女はホグワーツにいる間は、セブルスをちゃんと名前で呼ぶように言いつけられている。
なお、半分近く、セブルスが悪いというのは、言うまでもない。
さて、グダグダではあったが、そのままセブルスとメアリーはスラグホーンとともに、城内を見て回った。
懐かしさもあったし、だいぶ忘れている部分もあって、少々驚きながら見て回った。動く階段に驚いて、こけそうになった時には、スラグホーンに「一体どうしたんだい?!こんなの君なら既に慣れているだろうに!」などと呆れられてしまった。
・・・どうも一部、記憶が廃城カインハーストとごっちゃになってしまっているらしい。窓に手をかけそうになって、そっちじゃないぞ、とスラグホーンに注意されることもあった。
メアリーは、夢の外を、しかもこんなに広い場所を自由に動き回るのは初めてであるため、珍しそうにあちこちを見回している。
なお、スラグホーンはメアリーを紹介した際、珍しげに眺めてきたが、普通に小間使い程度に認識したらしく、スラグホーンは「よろしく頼むよ」と一声かけただけだ。
さて、一応校長に詫びを入れた方がいいだろう、と頃合いを見て医務室に行った。
その頃には、ダンブルドアは回復して落ち着いていたものの(どうも忘却術を自己使用したらしい)、セブルスには謝る気は皆無だった。
というか、むしろダンブルドアが錯乱しなくても殴る気満々だった。
「あの拳は効いたのう、ずいぶん鍛えたようじゃな、セブルス」
ほっほっほと鷹揚に笑うダンブルドアに、早く謝れ、と言わんばかりに鋭い目を向けるほかの職員一同だが、セブルスは淡々と言ってのけた。
「そうですか。私としては、後2~3発殴ってやろうかと思っておりましたが」
「セブルス?!」
隣でスラグホーンがぎょっとしているのを無視して、ダンブルドアは困ったように眉尻を下げた。
「はて?儂は何か、お主の気に障るようなことをしたかのう?」
とりあえず、開心術があるのだが、それだけでもない。
「・・・リリー=ポッターとその息子のことを、もうお忘れですかな?」
途端に誰かが息をのんだ。
「“このままダンブルドアに息子ともども利用されるくらいなら!”・・・確か、新聞にはそう載っておりましたな?」
「何言うちょる!スネイプ!あんときのリリーは、錯乱しちょった!正気じゃなかったんだ!!」
ハグリッドが吼えるのを、セブルスは黙殺した。実際見てもいない、聞きかじっただけの分際が、何を知ったかのように偉そうに。
だが、この場ではセブルスもその“実際見てもいない、聞きかじっただけの分際”としてふるまうので、何も言えないのだ。
隣でスラグホーンがおろおろしているのをしり目に、ダンブルドアは笑みを消して黙り込んだ。
半月眼鏡の奥の目の輝きは消え失せ、疲れたように急に老け込んで見えた。
「・・・お主、まさかリリーのことを?」
軽く俯いてから、静かに尋ね返すダンブルドアに、セブルスはふんッと鼻で笑う。
「だとしても、あなたに答える義理も義務もありませんな」
肝心なことは何も言わないダンブルドアに、セブルスとて、何か言ってやる気は微塵もない。
何よりも。
「これ以上のことは何もお伝えするつもりはありません。
私の記憶も、魂も、思いも、私一人のもの。誰ぞに気軽に伝える気は、毛頭ありませんな。
大義のために、彼女に犠牲を強いた相手には、特に」
「貴様あああああ!!」
「ハグリッド!」
今にもセブルスにつかみかかろうとしたハグリッドは、ダンブルドアの怒声に動きを止め、不満げにそちらを振り返った。
「・・・何か、他に儂に言うことはあるか?」
静かに、どこかすがるようなダンブルドアに、セブルスはフンッと再び鼻を鳴らす。
「これ以上の断罪が欲しいならば、よそを当たることですな。私はここに、勤務先としてきているのですから。
採用を取り消すというなら、それもよいでしょう」
そうして、彼は踵を返す。
「本当に、あなたを殴るべきは、私ではない。そんなことは、お判りでしょう」
振り向きもせずに、セブルスは吐き捨てた。ゆえに、彼にはダンブルドアがどのような顔をしているかはわかるはずもなかった。
・・・ダンブルドアは、取り消すとは言わなかった。
その後、場所を魔法薬学教授室に移したセブルスは、スラグホーンと今年いっぱいのことについての打ち合わせを行った。当分、セブルスはスラグホーンの補佐として、授業の補佐や、手伝いを行っていくのだ。
ちなみに、メアリーもまた、人員として手伝いに回る予定ではある。
学生としては中途退学し、紆余曲折あれど(一応)教師として戻ってきたセブルスを気遣う人間はスラグホーン以外にも、意外といた。
マクゴナガルは、痩せ気味で小汚い、ついで生傷の絶えなかったセブルスが、あいさつもなしに退学したことを気にしてたらしく、後で個別あいさつに行ったときに、「立派になりましたね。あの時、もう少し何か言えていれば、と後悔もしてたんです」と涙ぐみながら微笑んでくれた。
意外なところでは、フィルチもだろうか?スクイブであるのに広い校内をほぼ一人で管理する彼は、嫉妬で生徒に難癖付けて回っているのだが、セブルスはいたずら仕掛け人のやらかしの片づけを、自分の手当てと片付けついでに手伝うこともあったためか、そこまで嫌われていなかったらしい。
「ふん。いい思い出など一つもないだろうに、物好きなことだ」と嫌味を言っただけだが、ソフトな対応であろう。
なお、他の教師は無難に挨拶を返してくる程度だ。思い入れもない、陰気な元一生徒相手なら、こんなところだろう。
罵倒や殺意マシマシの戦闘突入ありの人付き合いをヤーナムで学んでしまえば、大抵のことには寛容になれるものだ。
ただし、自分の手を汚さない、教唆犯除く。やるなら手前の手でやれ、と声を大にして言ってやりたい。
その点、ヴォルデモートは評価できる。ただし、リリーに手を出した時点で、その名の書かれた墓碑を突き立てることは確定事項である。
その後、当初の目的たるレイブンクローの髪飾りの情報を得ることには成功した。
まだ学期の始まらない城内で、やっとのことでレイブンクローの寮付きゴーストである“灰色のレディ”に接触した。
気位の高く不愛想なゴーストは、セブルスを見るなり話しもせずに素通りしようとし(教師となったとはいえ、新米であるうえ、元はスリザリンのいじめられっ子である)、髪飾りのことを持ち出しても、すげなくされた。
中国の故事“三顧の礼”のごとく、何度か足を運んで根気よく話しかけ――途中、何度か銃とノコギリ鉈で力業に出たいという欲求が出かけたが、どうにか、“灰色のレディ”を説得することに成功した。
彼女が言うには、生前固執して、アルバニアの森に隠していた母の髪飾りを、とある学生が取りに行ってくれると約束してくれたらしい。真摯な態度と、巧みな話術に魅せられた彼女は、その学生に髪飾りの在処を告げた。
だが、約束は果たされなかった。その学生は、教職を求めてホグワーツを訪れた時、髪飾りについて尋ねた“灰色のレディ”に、そんなものは知らない、と惚けて見せたのだ。
裏切られた、と強く失望したレディは、以降、誰にもその話は言ってないらしい。
・・・間違いなく、その学生は学生時代のヴォルデモート卿なのだろう。
が、情報はそこでストップだった。
肝心の髪飾りがどこにあるのか、さっぱりわからないのだ。
“灰色のレディ”から髪飾りの外観について聞きだし、何かわかれば、必ず知らせると約束した。
ひとまず、今のセブルスにできるのは、そこまでだった。
想像していた以上の長期戦になると、セブルスは覚悟を新たにした。
続く
【ホグワーツからの手紙】
羊皮紙製の封筒に、獅子、大鷲、穴熊、蛇がHの字を囲むような赤い封蝋が施されている。
宛名はセブルス=スネイプとされており、ホグワーツで魔法薬学教授就任要請の依頼が、丁寧な字で書かれている。
かつて、セブルスは確かに、この封筒に入った手紙を受け取った。ここではない、新たな世界に行くのだと、胸躍らせた気持ちを、セブルスはもう、思い出せない。
学期開始1週間前から、教職員は準備開始というのは、捏造です。
生徒と一緒に9月に来て、はい始めってわけじゃないでしょう?教師なんだから、寮監だったりしたら、もっといろいろ打ち合わせとかあるだろうし、と思いましてね。
はい採用、今日から先生やってね!いやいや、いきなりは無理でしょ。と。
実は、私、教員免許習得のためにあれこれ勉強してた時期があるので、あれこれ勘ぐってしまいまして。
というわけで、捏造満載パートでした。
3巻でホグワーツ特急に乗り合わせたルーピン先生?どうにかつじつまを合わせていきたいです。
次回は、外伝の方を更新しましょうか。
「メアリーさんちの今日のごはん」です。お楽しみに♪