満を持して、『アズカバンの囚人』編開始です。
他の章と違って、ちょっと盛り上がりに欠けるんですが、まあ、原作3巻自体が例のあの人復活への前座みたいな話でしたから、しょうがないです。
改めて注意を。
本章から改めて、元祖いたずら仕掛人が登場しますが、彼らの扱いが一貫してよくありません。今更ではありますが、さらに良くないことになります。
ここまでお付き合いいただいた皆さんはお気になさらないでしょうが、少しでも気に入らない方はやめておいてください。
ここでしっかり警告しておきます。かっこいい彼らが見たい方は、他の作品に行かれた方がいいですよ?いいですね?警告しましたからね?
で、執筆にあたって疑問。
Q.リリーさんって、旦那とその友人2名がアニメーガスで、ルーピンさんが人狼って知ってたのかな?
A.アニメーガスの件は、知ってたなら登録に行かせたと思うから、知らなかったのでは?(優等生女子で、闇の魔術絶対許さないガールだったようだし)
ルーピンさんの件は、卒業後にひそかに聞かされた可能性はあると思います。
以上のような推測をもって執筆しましたので、ご了承ください。
【1】セブルス=スネイプと、エイブリーの魔法野菜
「ザマーミロ!ダンブルドアー!」
漏れ鍋の一室で、エイブリーが祝杯を挙げていた。
久しぶりに会った同窓と、つい食事に流れてしまった。時間もあったので、セブルスとしては問題ないわけで。
「おら、スネイプ!飲め!こんなめでたいことを祝わずにいられるか!」
「・・・貴公、はしゃぎ過ぎではないかね?昼間から酒というのはいかがかと思うがね」
そのすぐそばに座るセブルスが呆れたように言うが、エイブリーは構わずエールをあおった。
「細かいことは気にするな!っつーかお前、ホグワーツで教師とか、よく採用されたな!」
「私の場合は、スラグホーン教授からの推薦もあったからな」
「ああー、あの。隠居したんだっけか?」
「うむ」
視線をさまよわせたエイブリーの言葉に、セブルスはうなずいてジンジャーエールに口づけた。
「しかし、ルシウスの奴、やってくれるぜ!あいつだろ、ダンブルドアに停職突き付けたの!日刊預言者新聞が盛り上がりまくってたぜ!
噂だが、魔法大臣の覚えもめでたいし、事業も軌道に乗ってるらしいしよ。
俺も負けてられねえな」
笑ってエイブリーは、再びエールをあおる。
「貴公の方も、商売は順調なようだな」
「ああ。おかげ様でな」
セブルスの言葉に、エイブリーはニヤッと笑った。
「借金もなくなって、領地も買い戻せてな。もう少しかかると思ってたんだがな。
今はマルフォイやブラックと提携して、新しい品種の野菜や果物、それを用いた製品の研究・開発中でな!
約束通り、新しく栽培に成功した奴は、いの一番に届けてやる!」
「可能ならば夏の間にしてくれ」
「おいおい、野菜には旬ってもんがあるんだぞ?無茶言うなっての」
などと雑談と近況報告を交えながら、二人は飲み物とつまみを食べる。
やがて、ジョッキが空になったため、エイブリーは給仕を呼びつけて、お代わりを頼んだ。
手を伸ばした拍子にエイブリーのローブの袖がめくれ、左腕があらわになる。そこに、蛇とどくろを組み合わせた禍々しい印は、ない。
エイブリーと再会したのは、今より数年ほど前に調薬材料の関係で出入りしていたノクターンであった。そのあとにちょっとしたトラブルもあったのだが、それは本筋とは関係ないので、省かせてもらう。
なお、彼もまた、一目でセブルスをそうだと見抜いてきた。スリザリン生は、懐に入れたものに対して情が厚いのだ、と再確認できる出来事でもあった。
ただし、当時の彼は経済的に苦労しているようだった。
ローブの裾は、頻繁に
服従の呪文で操られていた、と言い訳してアズカバンを免れたとはいえ、元死喰い人に協力したがる者がいるはずもなく、両親の残した資産を食いつぶしているらしかった。
闇の帝王に対する資金の献上と、魔法省に対する罰金で、代々の領地も削られ、没落も時間の問題、という状態だったらしい。
かなり苦労していたのだろう。ノクターンの犯罪にも手を出しているのかもしれなかった。
セブルスは、聖杯ダンジョンで稼ぐという裏技があるし、魔法薬学の研究という表向きも立派な稼ぎもあるので、現在は経済的にはさほど苦労はしていないのだ。
ただ、学生時代は苦労した。工場夫である父の収入はさほど多くなく、さらにはセブルスは虐待されていたので、最低限の学用品しか買えなかったのだ。
ゆえに、エイブリーの苦労が理解できてしまった。
かつて、リリーはセブルスに、エイブリーやマルシベールとつるんでいることを非難してきた。
だが、セブルスからしてみれば、どうであろうか?
闇の帝王が幅を利かせている中、死喰い人の子供もいる、純血貴族も大勢所属する寮。それがスリザリン、セブルスの所属する寮である。
そんな中、ただでさえもマグル出身のリリーと仲良くしているセブルスは異端中の異端であった。実力があって、マルフォイに目をかけてもらっていたから、まだマシだっただけだ。
で、ここで彼女の言うとおり、エイブリー・マルシベールと手を切り、マグル擁護の光の陣営の主張に彼が同調していればどうなったか。
完全に居場所をなくし、スリザリン寮内でもいじめられていたに違いない。
セブルス本人がそこまで保身を考えていたかはさておき、そういう一面もあったというのは確かだ。
そういった保身もあったとはいえ、つるんでいたエイブリーが一応、自分を気にかけていたことに、セブルスも少々驚いた。
死喰い人になってるだろう、と思われていたことに最初は少しムッとしたが、あの当時の自分を思い返せば無理もないか、とセブルスも思った。
実際、ヤーナムに行ってなければ、ノクターン入りして挙句死喰い人と、堕ちるところまで堕ちていったに違いない。
ともあれ、そういった旧知の間柄であり同情できる部分もあり、つい、セブルスは仏心を出してしまったのだ。
まず、元死喰い人ということで苦心しているそうなので、治験段階の闇の印を消す処置を実施。元々これは、レギュラスのために開発中の処置で、安全確認がしきれてないものだった。セブルスとしても貴重なデータの採集にもなって、一石二鳥だった。
エイブリー本人も、いろいろ迷ったようなのだが、話に乗ってきたので、利害は一致した。問題はない。
治験も成功して、闇の印は消えた。後に、レオ=ノワールとレギュラス=ブラックが同一人物では?と疑われた彼が、闇の印の有無を見せつけ、別人です!と言い張るのにもつかわれた。
余談だが、闇の印はかなり複雑な術式と、帝王本人の魔力識別式が組み込まれているらしい。生半なことでは消せず、エイブリー本人もかなり苦心したらしい。
セブルスが開発した闇の印の除去というのは、闇の印のある場所に、特製の魔法薬を注射して、専用の呪文を唱えて、術式を強制分解するというものだった。
その際に用いられたマグルの医療器具、
さすがに幼児のごとく泣いて暴れる、ということはしなかったが、かたくなに針先を見ようとはしなかった。
こうして、闇の印を消すことに成功したエイブリーだが、ただでやってもらうわけには!と、セブルスに「借りは返す。何か希望を言え」と言ってきた。
そして、セブルスはしばし考えたのちに答えた。
「貴公の領地の辺りでは、野菜の栽培が盛んだと聞く。美味い野菜を分けてもらえないか」
「野菜だ?」
「うむ」
怪訝そうに聞き返したエイブリーに、セブルスは淡々と答えた。
ここで、一つ、不幸にして、幸運な食い違いが起こった。
昨今のセブルスは、冒涜的な世界一周中に、各地で食べた料理のおかげもあって、食事を娯楽としてとらえているのもあり、食事を作ってくれているメアリーに、いい素材を渡せたらいい、ぐらいの軽い考えであったのだ。
だが、エイブリーの中のセブルスは、いまいち食の細い・・・そもそも、そんなことに興味がない男、というイメージが抜けきらなかったのだ。
エイブリーの中のセブルスは、魔法薬には興味と技術がずば抜けていた。だから、野菜を用いた魔法薬でも作るのか、という斜め上の発想に行ってしまった。
さらに、エイブリーは在学中、薬草学を上位成績でパスしていた。つまり、魔法系植物の栽培・交配・品種改良に関する知識があった。
そうして、彼は、やらかした。
魔法薬にも使えそうな、野菜の開発をしてしまったのだ。
だが、この野菜が凄まじい効果を発揮した。
マンドレイクのごとく叫んだり(即死や気絶効果こそないものの)、完熟したら種を散弾銃のごとくぶっ放したり、岩盤まで根を伸ばしたりするとんでもない生育過程を経る代わりに、とても美味しい、そして栄養もあって、美容と滋養によい、最高の野菜を生み出してしまったのだ。
エイブリーの魔法野菜、とブランド化されたこの野菜は、純血貴族はもちろん、各地の食事処などにも高値で取引されるようになった。
なお、この野菜に一番に目をつけたのは、昔のよしみで野菜を仕入れたルシウス=マルフォイの奥方、ナルシッサで、美肌効果がある!小じわが減った!とその効果に即座に食いついた。いちいち魔法薬を調合したり、購入するより、日々の食事できれいにできるなら、その方が便利である。さらに併用すれば、効果もアップする。
いつの時代も、女性は美容にはうるさいものだ。ナルシッサからの口コミは、純血貴族の女性たちを中心にあっという間に広まった。
何よりも、これらの野菜は通常品種よりも長く保存できるし、美味しいというのが大きかった。
こうして、エイブリーは収入を確保し、マルフォイやブラックがその販売を手助けし、また自領でも購入することで、見る見るうちに販路は広がり、他所の領地でも、エイブリーのところとまではいかずと、野菜や穀物の品種改良、果てはそれらを用いた食事メニューの改善に挑戦し始め、イギリス魔法界は近年まれにみる野菜・美食ブームの到来となっていた。
・・・なお、そのきっかけ作りとなった男は、「魔法薬に野菜など用いるか。馬鹿め」と呆れた。でも野菜は美味しく食べさせてもらった。メアリーの作ったポトフは最高であった。
さて、エイブリーを実験台被験者として治験に参加したことで、
一番最初の目標たるレギュラスはもちろん、さっさと行った。
「先輩、どこでこんなものの扱い方を知ったんですか?!」
注射器を不気味そうに見やるレギュラスに、セブルスは「ヤーナムだ」と淡々と答えた。
なお、セブルスは使用に当たって注射器に滅菌魔法を施して、部位にもアルコール綿花で消毒を行っている。マグル界の医学書にもその必然は書かれていたのだから、当然である。
余談だが、魔法族にとって血とは魔力を媒介させる強力な触媒の一つであり、本人のひな型にもなりうる、万能素材の一つである。一滴手に入れれば、気軽に持ち主を呪うことさえ可能であるのだ。
ゆえに、血を他者が容易に扱えるようになったり、やり取りしたりする器具はこころよく思われないのだ。
で、それがセブルスがホグワーツに向かうざっと1年ほど前の話になるわけで、今からすれば4年ほど前の話となる。
死の印を消したのは、エイブリーとレギュラスの二人だけであった。
もう一人、セブルスの知る持ち主としてはルシウスがいるのだが、彼は帝王が復活してしまえばそちらにつく可能性も高く、その場合ヘタに印を消していればどんな目にあわされるかわからない。消した場合のリスクが高すぎる、といった方がいいだろうか。
彼自身のために、あえて死の印を消さずにおいたのだ。・・・といえば、聞こえはいいが、メイソン一家との交流もあって、セブルスも言い出せずにいたのだ。
が、もうそうも言ってられなくなった。
何しろ、前年度が前年度である。
ルシウスも、まさか自分が放流してしまった闇のアイテムが闇の帝王の分霊箱だったなんて、知らなかったに違いない。知っていたとしたら、うかつすぎる。
“禁じられた森”はアクロマンチュラのことで調査を入れたら、キメラやらスフィンクスやらの他の各種危険魔法生物の合成(しかも未知の新種まで作ろうとしていたらしい)やら飼育やらの痕跡も発見され、被害状況が把握できるまで、厳重に立ち入りが制限されることとなった。
ハグリッドの刑期がまた増えた。
来学期からは、魔法省が森番を派遣することにするらしい。正確には、監視になるのだろう。
で、それらの調整にホグワーツ理事代表のルシウスはてんてこ舞い状態らしい。
これ、来学期始まるまでに何とかなるの?
そうつぶやいた魔法省職員らは、蒼白で仕事を頑張っているらしい。本当は校舎である城(校長室以外の)の方にも調査を入れたかったのだが、それはダンブルドアが校長権限で断固拒否したらしい。たとえ停職中であろうと、魔法契約で部外者を締め出そうとすれば締めだせるあたりが、実に厄介だった。
ルシウスとしては、とりあえずダンブルドアに対して疑心と悪印象を植え付けて、厄介な手足の一つをもぐことに成功したから良しとする、ということらしい。
とにかく、ルシウスに確認をとると、8月初めにはどうにか落ち着くので、その頃にセブルスは定例の食事会ついでに、分霊箱破壊の話を持ち掛けるつもりだ。
その気がなかったにしろ、分霊箱破壊のきっかけを作り上げてしまった以上、ルシウスにはもはや、後はない。
よしんば闇の帝王がルシウスを許したとしても、その代価として何がしか要求され続けるに違いない。
拠点の無償での提供とか、息子を死喰い人にして、ダンブルドアを暗殺して来い、とか。無茶苦茶言われそうだ。
ルシウスがしぶったら、その辺をついてみる予定だ。もっとも、分霊箱の件を聞いただけで、ルシウスは広い額を更に広くしそうな顔をすることだろう。純血名家当主というのも、大変らしい。
そんなこんなで、エイブリーとの食事を終え、『漏れ鍋』の外からダイアゴン横丁に出てみれば、拡大呪文のかかったカバンから、新聞を取り出しながら
「号外号外!“例のあの人”の右腕!シリウス=ブラックが、アズカバンから脱獄だ!
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途端に、セブルスは眉間にしわを寄せ、エイブリーは折角飲んだエールが台無しだと言わんばかりの、不味そうな顔をした。
ざわざわと通行人たちも顔を見合わせ、われ先に配達員に殺到していく。
それをしり目に、セブルスはエイブリーと歩き出した。
二人とも、この後買い物があるので、薬問屋までは一緒に行こう、となったのだ。
「あのブラック兄が、闇の帝王の右腕?何だそりゃ、新手のギャグか?」
「表向きは、そう見られているということだな」
「は!セーギノミカタが、アクノマホウツカイの大幹部か!ざまあ、ブラックざまあ!」
ケケケッと性格悪そうに笑うエイブリーに、セブルスは憮然としたまま何も言わなかった。
シリウス=ブラックの、アズカバン投獄の際に行われた裁判は、異様なスピード裁判であった。
これは、当時では、シリウス=ブラックに限ったことではない。“闇の帝王”失脚に伴い、大勢の“死喰い人”が逮捕・起訴され、その処理を魔法省がほとんどやっつけでこなしたからだ。グズグズと時間をかければ、純血貴族の横やりが入るかもしれないし、他にもやることがたくさんあって、悠長にそこに時間をかけられなかったからだ。
光も闇も荒らすだけ荒らして、その復興はうっちゃらかしにしていたのだから、後片付けの魔法省は涙目であった。
魔法省はともかく、話をシリウス=ブラックのことに戻せば、なぜか彼は死喰い人だと強固に誤認されている。
裁判で彼に自己弁護が許されなかったのはもちろんとして、罪状がマグル十数名をピーター=ペティグリューともども原型残さず吹き飛ばしたというのもある。
闇の帝王の側近でもある、ブラックの血縁者であるというのも大きい。
が、おそらく、暗黙の了解として、学生時代の行いというのもある。
闇の魔法使いのたまり場であるスリザリン出身だから、闇の魔法使い候補であるスリザリン生だから。そういう主張の下、彼が在学中に、いたずらという名の悪行三昧であったのは、有名である。
それで就職にかかわる大事な資格の取得を邪魔されたり、人間関係に亀裂を入れられたものも少なくなく、第1被害者のセブルス以外でも、彼はあちこちで恨みを買っているのだ。
実は、これに関してはジェームズ=ポッター、リーマス=ルーピン、ピーター=ペティグリューなどの
ただでさえも、学生時代に散々な目に遭わせてきた相手である。たとえ無実の罪であろうと、アズカバン行きにされるなら、多少の留飲は下がるというものだ。
ゆえに、何か知っていようと、口をつぐんだ人間は大勢いた。死喰い人に至っては、不死鳥の騎士団員(要するに敵)を弁護する理由なんてないだろ、とむしろ陥れるつもり満々で、嘘八百の証言もした。
加えて、闇の魔法使いなら死んで当然だ!ザマーミロー!みたいな在学時代のシリウスの言動を耳にした者もいて、単語を換えれば、言ってることがマグル排除主義の闇の魔法使いと同じだ!と、ドン引きした結果、ああ、行きつくところに行きついたんだな、とみられるようにもなった。
「ってか、マーリンはマジで不公平だよな」
「何がだね?」
「何で、性格とか言動で破綻してるやつに限って、金とか権力とか魔力とか持ち合わせてんだよ。おかしいだろ、どう考えても」
エイブリーが言わんとしているのは、停職校長と闇の帝王、ジェームズやシリウスのことであろう。
確かに、アズカバンから脱獄など、実力さえあればできるのだろう。その実力を、なぜ社会の変革に役立てようとしなかったのか。根本的に向いてなかったのだろう、ということにしておく。
セブルスとしては、かかわってこなければ、シリウスなどどうでもいいのだが。
「破綻しているからではないかね?まともに生きようとしているものがのた打ち回るのを、指さして笑い転げているのだろう、マーリンも」
「・・・お前、本当に何があった」
魔法使いの神同然のマーリンを、こうまでクソミソに貶すなど、そこらの魔法使いはまずしないことを、平然と口にしたセブルスを、エイブリーはちょっと引いてる様子で見る。
そんな引くようなことだろうか?とセブルスは思う。
一歩、イギリスから出てみればいい。
湖近くの霧深い廃墟は邪神が巣食い、それを敬う教団の影響で化け物が徘徊しているし、
極東の島国のとある村落は、来訪神の復活を目指す輩と、その血の影響で不死となった化け物の巣窟で、
他にも数えだせばきりのない、啓蒙と冒涜溢れる世界であるのだ。
肝心なイギリスにだって、獣の病が感染爆発して、頭のイカれた医療者どもと、それを玩具にして眺める上位者の吹き溜まる古都があったりする。
本当にマーリンが万能であるならば、まずはそれらを何とかして来い、とセブルスは言いたい。
ともあれ。
シリウスの脱獄で、影響がありそうなのは、セブルスには割と身近にある。それも2か所。
薬問屋に行ったら、さっさと帰ろう。そう決めて、セブルスはエイブリーに「すまないが、少し急ぐ」と言って、足を速めた。
薬問屋を切り上げて、念のため日刊預言者新聞の号外も買い入れてから、セブルスが“葬送の工房”に戻ってみれば、手紙が届いていた。
片方はブラック家のクロワシミミズクで、メアリーが焼いたベーコンを臨時報酬としてくちばしで突いている。
そして、もう片方は、「速達ですよ!」とにっこり笑うブラックウッド配達員からだった。
手紙を見れば、案の定、レギュラスと、メイソン家からだった。
クロワシミミズクが窓から飛び立ち、ブラックウッド配達員が「またのごひいきを!」と出て行くのをしり目に、セブルスはさっそく手紙に目を通す。
まずは、レギュラスの方だが、魔法省、ウィゼンガモットに召喚されて、脱獄したシリウスに関して何か知らないか、と尋問されたらしい。
一応、レギュラス≠レオということは周知させていたし、勘づいているだろうスリザリン出身者も口をつぐんでいるので、そこについての問題はない。
そうではなく、ブラックの現当主として、シリウスとつながりはないか、脱獄の手引きや潜伏先の手配をされてないか、と勘繰られたのだ。
レギュラスは、変装越しに絶対零度の冷笑を浮かべて、「何でそんなことしないといけないんです?過激なだけの馬鹿犬をしつける余裕、ブラックにはありませんよ?そんな手間暇かけるより、他にやることがたくさんあるんですが?」と、切って捨てた。
さすがにブラック本邸のグリモールドプレイス12番地の方を家宅捜査させるわけにはいかない(余人には危険すぎるマジックアイテムが目白押しなので)が、領地や別邸の方の立ち入り調査は許可したこと、しばらく身辺に監視が付くため、分霊箱の調査はしばらくできないことなどが書かれている。
最近のレギュラスは、事業が安定してきたので、ブラックの当主として次代のこと――簡単に言えば、嫁を探して迎え入れる、ということもやろうとしていたらしい。手紙越しで、そのように書かれ、冗談交じりに「ホグワーツによさそうな子、いないですか?」と書かれていたのを思い出した。
この分では、それも当分延期だろう。
可哀そうに。
セブルスはため息交じりに、次の封筒――レギュラスのそれよりも分厚いそれに目を落とした。
メイソン一家からのだ。吼えメールでない分良しとする。
目を通してみれば、どうもシリウス脱獄の一件は、マグル界にまで行き届いているらしい。マグル界の方では、拳銃を所持した脱獄犯と報道されているようだ。
そして。
続けられた内容に、セブルスは思わず武器をもって立ち上がりそうになった。
なんと、メイソン一家が
いつものように姉弟で外出したヘザーとハリーJr.に、妙に人懐っこい黒い大型犬が付きまとってきて、悪い気こそしないので、家で飼えるか聞いてみようか、と話しながら歩いていたのだが、いつまで経っても家に帰れないことにヘザーが真っ先に気が付いた。
メイソン宅には“忠誠の術”でセブルス及び居住家族、そしてセブルスが知らせたことで秘密の共有者となったマルフォイ一家以外の人間は立ち入れないようになっている。
フクロウ便は通じるので、動物は立ち入れる。だが、人間は無理だ。人間は。
加えてこの犬、ヘザーは丸無視で、妙にハリーJr.にばかり懐いている。
これはおかしい、とヘザーは電話ボックスで家族に助けを求めた。
電話を受けたのはリリーであった。
最近、ハリーJr.はますますジェームズに顔立ちが似てきた。髪型と眼鏡の有無で分かりにくいが、気が付く人間は気が付く。ダンブルドアがそうであったように。
加えて魔法で動物に化けるなど、
そんなもの怖くない、あるいは自分に限ってそうはならない、という過信したバカ、あるいはやましいことに使う予定しかない犯罪者などが、登録など出してないのだ。
そして、ハリーJr.が狙われるなど、理由は一つ。
おそらく、闇の帝王に忠誠を誓っている死喰い人の残党が、ハリーJr.を狙っているに違いない!
そう結論が出たら早かった。
わざわざ
一通り事情を訊いたハリーはそう判断し、一度姉弟を人通りの多いショッピングモールに向かわせた。
そうして、自分たちも待ち合わせの体を装って、車でショッピングモールに向かい、とある店舗で合流してから、外で警備員から締め出しを食らっている黒犬姿の
こうして、どうにか“忠誠の術”で守られている自宅に逃げ込むことに成功した一家だったが、拠点にしている街自体がばれてしまったのでは?と気が気でない状態になってしまったのだ。
・・・こうなれば、引っ越すしかないわけで。
いっそアメリカに再度移住しようか?ジュニアやヘザーもアメリカの学校に転入させた方が、と考えはしたのだが、ジュニアもヘザーも現在の友人たちと別れることを嫌がり、ルシウスにも現在進行形で後ろ盾やらなにやらの世話になっているため、国外に出にくい状態なのだ。
そのまま離れるというわけにもいかず、とりあえずイギリス国内のマグル界で、別の町に引っ越そう、となったらしい。
そこで、セブルスに大変申し訳ないが、“忠誠の術”のかけなおしを要請してきたのだ。
ハリーJr.にも、出生の事情を明かし、警戒を促す予定でもあるらしい。
次々と降ってくる問題に、セブルスは大きく嘆息した。
とりあえず、メアリーの用意してくれた紅茶とスコーンは今日も最高で、ささくれだった上位者狩人の気分を幾分かなだめてくれたのは確かだ。
今年のホグワーツも、波乱になりそうである。
続く
【『漏れ鍋』のエール】
パブ『漏れ鍋』の代表メニューの一つ。フルーティーな香りとコクのある、発泡酒。
高価であったワインやサイダーよりも安価で、労働者たちになじみ深い酒を、エイブリーは好んだ。
領地は奪われ、稼ぎもほとんどない、どん底のような暮らしの彼を、いっぱいのエールだけが、慰めてくれたのだ。
原作でヴォルデモートさんに二度にわたってひどい目にあわされたキャラクター、エイブリーさんを大捏造。
モブに毛が生えた程度のポジションですから、捏造しやすかったです。
魔法野菜のくだりは完全捏造ですけど、ああいうのがあってもおかしくないな、とも思いまして。どっかのラノベでは、キャベツが飛び回るらしいですし。このくらい平気ですよね。
Q.尻尾爆発スクリュートは?
A.原作でハリーたちが飼育したのが4年次だったので、今の時点では未作成、ということにしました。
次回の投稿は・・・来週!内容は・・・分霊箱の処分についてwithルシウス。日記の正体が判明した彼のとる行動なんて、一つしかないってことです。お楽しみに!