みんなでシリウスに死亡フラグを立てようとしてて、クスッとしました。
ちなみにシリウスがいたのは、単なる偶然です。脱獄してホグワーツへ北上の旅をしている道の途中にメイソン一家の住む町があって、そこで偶然ハリーJr.を見つけて、うひょーっ!ジェームズの息子が生きとった!ってなってただけです。
彼には高性能なジェームズセンサーが搭載されているので、ジェームズの息子を見間違えるわけがないのです。
書く機会がないと思うので、ここでちょっと補足しておきます。
というわけで続きです。いよいよ、分霊箱の処分が本格始動です。
ようやく、一段落ついた。
マルフォイ邸の書斎で、大量の書類を前に、ルシウス=マルフォイは一息ついた。
杖で軽く机を叩き、ハウスエルフのリジーを呼び出し、紅茶を一杯頼む。
リジーはてきぱきと働くし、来客中にいきなり姿現しで来ることもないし、とっぴな言動もない、ハウスエルフらしいハウスエルフだ。マルフォイ家とは非常に相性のいい子であった。
淹れてくれた紅茶も、最高級の茶葉を使われたいいものだ。当然だ。
さて、何が一段落ついたかと言えば、ホグワーツに関連するもろもろの事情だ。新しい森番は魔法省が派遣し、森の調査は立ち入り禁止のまま、魔法省が学期中も継続が決定した。
まあ、新しい森番というが、要するに監視役だ(さすがに引継ぎがろくにできてないので、複数人1チームを派遣ということになるらしい)。一昨年はドラゴン、去年は詐欺師とスリザリンの後継者騒動と来た。
後者に関しては、ルシウスはけして他人事ではいられないのだが、転がり込んできたチャンスを無駄にしないのもマルフォイだ。迷惑かけてしまった分、アフターフォローはしっかりとやったのだ。問題はない。
とにかく、これ以上の騒動は目に余る、監視をつけざるを得ない、と来たところでシリウス=ブラックの脱獄である。
加えて、彼は獄中で「あいつはホグワーツにいる・・・」などと寝言を言ったらしい。
ブラックが狙いそうなのはポッターの倅なのだろうが、彼は表向き死んだとされている。生き延びていると知っているのは、ほんの一握りの人間だけのはず。
だというのに、なぜホグワーツ?
まったくもって意味不明だ。まあ、あのブラック兄が何を考えているかなど、ルシウスの知ったことではない。
同じ純血貴族というのに、まるで異国人どころか、文字通り異なる世界の住人のように、まったくもって理解不能なのだ。
あれでは、最近手紙のやり取りをする、メイソン氏の方がまだ物分かりもよく、話も通じるというものだ。彼は魔法についてはちんぷんかんぷんだが、マグル界については幅広い知識を持ち、こちらの技術に応用できる部分や、さらなる技術発展のヒントについて、アドバイスをくれたりするのだ。
イギリス魔法界はファッションセンスからもわかる通り、懐古主義的な一面があるが、マグルの技術でまねできる部分は取り入れてもいいように思う。
例えば、検知不能拡大呪文のかかったカバンなど、当の魔法使いも何をしまったかわからなくなってしまうことがあるので、そういう時に中身をリスト化して簡易表示されると便利ですよね、というメイソン氏の一言が原因で、マルフォイ傘下のカバンメーカーの売り上げは、大幅に上がった。
カバンの取っ手についているプレートを触りながら、「
何でもかんでもマグル由来だ!と目くじらを立てるのではない。マグルを利用している、と考えればいいのだ。
面倒な発明や、試行錯誤のステップはマグルがやる、自分たち魔法族はその旨味をさらに、自分たちにあうようにカスタマイズしているのだ。それならば何も問題はない。
血を混ぜ込むのは問題だが、技術を利用し、魔法界の発展に貢献するのは、また別問題だろう。
そういうルシウス氏も、私的な文章のやり取りは、書きやすいマグル製の紙と万年筆をもってやり取りしている。
さすがに公的な文章の類は、魔法契約の関係で羽ペンにせざるを得ないのだが。マグル製の筆記用具は、魔力の通りが悪く、魔法契約で使うには不向きなのだ。
ともあれ、ここしばらく仕事にかかりきりになっていたルシウス氏も、ようやく落ち着いてきた。
最愛の妻であるシシー、かわいい一人息子ドラコを連れて、デヴォンシャーの別荘に骨休めに行くのも悪くない。
さすがに今年は無理だろうが、ドラコはそのうち、ハリーJr.を招待したいとも言っていた。それも検討すべきだろう。来年はクィディッチのワールドカップがあるのだ、その時などいいかもしれない。
その前に、定例のセブルスとの食事会もしよう。昨年は一段と彼には迷惑をかけてしまったのだ。少しばかり奮発してやるべきだ。
加えて、ダンブルドアを蹴落とす切っ掛けも、彼がつかんできてくれた。
おそらく、それも、ルシウスのために。例の闇のアイテムの流出源がルシウスとばれれば、ただでは済まない。スキャンダルを塗りつぶすには、スキャンダルが一番だ。だから、彼はアクロマンチュラのことを知らせてくれたのだろう。もちろん、生徒の安全を慮って、という部分もあるのだろうが。
まったく。借りばかり増えてしまう。悪い気はしないのだが。
弾んだ気持ちで、ルシウスは紅茶に口づけた。
さて、数日後。
少し奮発して、マルフォイ傘下の高級レストランで、セブルスと食事をすることにしたルシウスだが、今ほどこの店でよかった!と安堵したことはなかった。
近況報告ついでの話が、ルシウスが処分したくてたまらなかった、例のアイテムについて話が及んだ時、
・・・一応、ここは特別待遇室ということで、個室で食事をとっていたのだが、それが功を奏したともいえた。
「ルシウス、あなたは分霊箱、という禁術をご存じですかな?」
「は?」
聞いたことがあるようなないような。
詳しく聞いてみたルシウスは、卒倒しそうになった。
闇の帝王の魂――分割されたそれが収められたアイテム?!それが、あの黒い革表紙の日記帳の正体?!
知らず、ルシウスは闇の帝王の命のストックを削るような真似をしてしまったというわけだ。
「どうやら、あなたもご存じなかったようですな」
瞬時に顔をこわばらせるルシウスをよそに、セブルスはため息を吐くように言った。
ルシウスとしてはそれどころではない。その広い額の下に詰まった脳みそを目まぐるしく回転させ、考え始める。
闇の帝王が戻ってくるかは非常に怪しい。そう考えるものも大勢いる。かくいうルシウスもそうだ。
吸魂鬼塗れのアズカバンと、罰金に加えて元死喰い人の烙印と、どちらがいいか天秤にかけて、後者に軍配が上がった。だから、ルシウスは自由でいられる。
だが、いつか、闇の帝王は戻ってくる。ノクターンではひそかにそう噂が流れていたし、あの、何考えてるかわからんクソ狸爺もそう感じているのだろう。水面下で怪しい動きをしまくっているらしい。学校の運営は二の次で。
思い返せば、“闇の帝王”は、死を超越する!と称して、危険な魔術や永続変身に手を出していたらしい。深々とかぶった黒いフードの下は、明らかに人間離れした――頭髪や鼻のない、まるで蛇のような容貌をしており、どんな魔法を使えばそうなるんだ?!と配下の死喰い人たちでもひそかに戦慄した。
あれを、素晴らしいです我が君!とうっとりと見れたベラトリックスはどうかしている。
よほどご自身の容貌がお嫌いであったのだろうか?
見るに堪えないほどの不細工で、周囲にそれが原因で弾圧されまくっていたとか?そのくらいのコンプレックスでもないと、ああまでなろうとはしないだろう。
とにかく、そういった感じであれば、他にも何か尋常でない魔法を保険代わりに使ってて、ちょっとやそっとでは死なないようにしてても、不思議ではない。
実際、ルシウスも聖28家の一員、マルフォイ家の当主として、そういった危険で、魂そのものを破壊しかねない魔法の存在を聞いたことがあるのだから。
魔法を強く正しく使うには、闇の魔法についても知らなければならないから。
だからこそ、ルシウスも闇の魔法について学んだ。まあ、その強力さを知れば、普通の魔法をちょこちょこ使うなどバカバカしくなる者も多いが、自滅の可能性も高いそれらの魔術には軽々しく手を出すべきではない、というのも強く言い聞かされるものだ。
そういったリスクを無視して、ポンポン気軽に使うのは品がない。切り札は有事に切るから切り札であるのだ。
話を、分霊箱と帝王のことに戻す。
知らなかったとはいえ、帝王の分霊箱を放出して消滅の要因を作り上げたなど、大失態では済まない。
しかも、その直接の消失の原因となったセブルスと、ルシウスは現在進行形で友誼を結んでいる。
まずいなんて言葉では片付かない。
闇の帝王が復活しようものなら、絶対確実に、裏切り者として消される。
いや、それ以前にアズカバン行きを免れている時点で自分は帝王への忠誠を反故にしたも同然なので、彼が復活すればどのみち痛い目に遭わされかねないのだ。
リスクをかぶるのがルシウス一人ならまだマシだ。だが、闇の帝王は年々過激になっていったことを考えれば、その咎を妻や息子にかぶせてきてもおかしくない。
当主の失態をその妻や息子に贖わせるという名目のもと、資産をむしられ、ダンブルドアの暗殺をしてこいなどの無茶振りをされては、たまったものではない。
失敗や拒否をしようものなら、どのみち破滅だ。
解決手段はただ一つ。
「セブルス!その分霊箱とやらはどこにある?!どうすれば処分できる?!」
帝王は復活させない。このままひっそりとくたばってもらう。
ルシウスは結論を出すや、前のめりに解決法を持っているだろう後輩を問いただした。
「先日の件を含め、すでにいくつかは処分済みです。そして、他のものについて、あなたにもご助力をいただきたい」
真剣な目でグラスを置いたセブルスに、「無論だ」とルシウスは深々と頷いた。
そうして、食事を少々早めに切り上げた二人は、後日、レギュラスも加えて、場所をもっと密談に適しているマルフォイ邸に移し、改めて情報のすり合わせを行った。
セブルスとレギュラスの話を聞いて、ルシウスは改めて頭痛を覚えた。
ほとんど確信していたとはいえ、実は帝王を殺したのはセブルスだったこと。(怪物邸騒動の時のようにマジックアイテムで呼び出された格好だったらしい)
レギュラス=ブラックが生きているのにも絡んでおり、その過程で分霊箱の存在を知ってしまったこと。
のちに分霊箱が複数あることを確認し、他の候補について調べていること。
破壊済みのアイテムは、
スリザリンのロケット、
ゴーント家の指輪(死の秘宝“蘇りの石”付き)、
そしてマルフォイ家保管の日記帳。
目星の点いている怪しいアイテムとして、
レイブンクローの髪飾り、
ハッフルパフのカップ、
隠し場所として怪しいのがホグワーツ、ということだ。
分霊箱は、セブルスが持っているマグルじみた物騒な武器であれば、破壊できるとも。
聞き終えて、ルシウスはふと思い当たる部分があって、口にした。
ハッフルパフのカップかどうかはわからないが、昔・・・あのお方が失脚する前に、ベラトリックスが大層喜び勇んで、金色のカップを持っていたのを目の当たりにしたことがあったのだ。
我が君から下賜された!命に代えても、確実に守り通すようにと言われた!と、相当に浮かれている様子だった。
おそらく、それこそがハッフルパフのカップであるに違いない。ベラトリックスの言からも、分霊箱であると見ていいだろう。
その後、レストレンジ夫妻は逮捕されてアズカバンに投獄となったが、その資産は魔法省に接収・・・される前に、マルフォイ家が妻の姉の家だから、とその管財人を名乗り出たため、現在は凍結状態に陥っている。
それでも、危険なマジックアイテムの確認のために、家宅捜査は許可した。そうしないと、資産凍結が許容されなかったのだ。だが、その時にそういった類のアイテムの存在は聞かなかった。いくら、魔法省の闇祓いの性質が低くとも、その判別・対処くらいはできるはずだからだ。
つまり、レストレンジ邸にハッフルパフのカップはない。
本人不在で、鉄壁の守りを誇ると言えば。
「グリンゴッツだな」
「また厄介なところに・・・」
三人そろって、ため息を吐いた。
「しかも、ベラトリックスとロドルファス・・・あの帝王狂信者の管理下だ。
確実に、金庫の守りだけでなく、他にも何か仕掛けてくるぞ」
「分霊箱は、他の魔法が効かないんです。僕が、スリザリンのロケットを取ってくるときも、
クリーチャーも破壊できないほどですから、相当です」
ルシウスとレギュラスのため息交じりの言葉に、セブルスが静かに口を開く。
「・・・グリンゴッツそのものへは侵入できるかね?」
「可能だ。管財人はシシーだからな。金庫の内部を確認したいとシシーが言えば、侵入自体は可能だ」
「その・・・ナルシッサ姉さまは大丈夫なんですか?」
気づかわしげに見てきたレギュラスに、ルシウスは静かにうなずいた。
結果として、姉を裏切らせることになる(ベラトリックスはナルシッサの実姉に当たる)、ナルシッサの心情を慮った彼に、ルシウスは答えた。
「彼女もマルフォイの女として嫁いできた。ドラコを守るためならば、邸宅のような怪物にも杖を向けられる、強い魔女だ。覚悟はできていよう」
それに、とルシウスは内心で続けた。
元々、ブラックの魔女らしく苛烈な部分のあったベラトリックスは、闇の帝王と邂逅し、その思想と魅力に強く魅せられた結果、変わってしまった。
他者を痛めつけるのを是とするサディスティックさを押し隠しもしなくなり、闇の帝王に従わざれば人にあらず!というような、極端すぎる思想に傾倒してしまった。
ルシウスは知っている。
ベッドの中で妻が、「ベラが怖い」と泣いていたことを。昔に戻ってほしい、と泣いていたことを。
ナルシッサは、ベラトリックスを愛しているだろう。だが、もう後戻りも、手を取り合うことも、不可能になっていると、悟りもしているだろう。
ルシウスにできることは、今の家族を守ること、シシーが泣けば彼女の寄る辺になること、それだけだ。
貴族は、時として血縁者すら天秤にかけなくてはならない。それは当然のことだが、つらくないわけではない。
だが、覚悟はしていた。一族と、息子と、息子の将来の家族たちのために。
ルシウスは、腹を決めていた。
「ならば、ルシウス。あなたの姿と杖を貸していただきたい」
少しばかり感傷に浸っていたルシウスを引き戻したのは、セブルスの言葉だ。
「どうするのだね?」
「グリンゴッツの
せいぜい杖で個人の識別をつけるという程度です。
ならば、ポリジュース薬であなたに偽装すれば、Mrs.マルフォイとともに金庫に入っても、不思議ではありますまい」
現状、分霊箱を確実に壊せるのは、セブルスの持つ奇怪な武器のみだ。生半な魔法は通用しないことは、レギュラスとハウスエルフのクリーチャーが証明している。
その武器も扱いが難しいらしいうえ、何というか、悍ましい気配がするので、触りたくない。なぜセブルスはあれを平然と振り回せるのだろうか。
となれば、セブルスをどうにか金庫に入れるようにした方がいい、ということだ。
「ふむ。となれば、私が家にいる日にした方がいいな。日取りは追って知らせる」
ルシウスにも仕事がある。魔法省に出向したり、荘園や企業の視察、打ち合わせをしたりするのだ。そんなときに、グリンゴッツにもいたと判明したら、余計な疑惑を持たれかねない。念には念を入れるのが、スリザリンだ。
そうして、ルシウスはもう一つの心当たりについて言った。
「ホグワーツにも分霊箱があるかもしれない、という話だが、それについても一つ、心当たりがある。
“必要の部屋”にあるやもしれん」
「必要の部屋?」
「あったりなかったり部屋ともいう。私は父上――先代から聞いたことがあってな」
と言って、ルシウスは説明し始める。
ホグワーツの特定の場所――大きな壁掛けタペストリーにバカなバーナバスが愚かにもトロールにバレエを教えようとしている絵が描いてある。その向かい側の何の変哲もない石壁の前で、気持ちを必要なことに集中させながらその壁の前を3回往ったり来たりすれば、その部屋が出現する。
そこには、その時の気持ちに必要なあらゆるものが用意されるのだ、と。
「そして、こうもおっしゃられていた。
だいたいは必要な時に偶然その部屋に出くわして二度と見つからないことが多い。ゆえに、その部屋の存在を知りうるものはほとんどいない、何かを隠すこと、見つからずに何か成し遂げるにはうってつけだろう、と。
・・・父上は、それを宝物を見るような目で思い返すように語っておられた」
ぽつりと、そう付け加えたルシウスに、セブルスは脳についた瞳が瞬いたのを感じた。
「なるほど」
「え?何がですか?」
聞き返すレギュラスに、セブルスは答えた。
「おそらく、先代マルフォイ家当主殿に“必要の部屋”の存在を教えたのは、闇の帝王だろう。
“秘密の部屋”をも探り当てたような御仁だ。その存在を知っていても、不思議ではない」
「なら・・・!」
ハッとしたレギュラスに、セブルスは深々と頷いた。
いずれかの分霊箱が、そこにある可能性が高い。
「次にホグワーツに行った時に、探りを入れてみよう。協力に感謝する、ルシウス」
「礼には及ばない。家族のため、ひいては我がマルフォイのためだ」
頭を下げるセブルスに、ルシウスは答えた。
それから数日後、グリンゴッツにナルシッサ=マルフォイと、ポリジュース薬でルシウスに変身し、彼の杖を借りたセブルスが訪問。
金庫内の確認という名目で、レストレンジの金庫を訪れ、その中でハッフルパフのカップと思しきものを発見。
悪質な双子呪文で分裂を繰り返して無数に増えていくカップの中で、遺志の残滓から分霊箱を見極めたセブルスは、血の遺志収納から取り出したノコギリ鉈で真っ二つにした。手ごたえから、やはり分霊箱であったとも判明した。
ポリジュース薬に関しては、予備を錠剤化魔法で持ち歩いていたので、どうにか正体を露見させることもなく、分霊箱の処分を完了したのだ。
一方で、ルシウスも今回のことで完全に帝王と手を切ることとなり、セブルスの手を借りて闇の印を消した。
家族や領地、傘下企業、そこで働く人々に何かされたらと思うと気が気でなくて!
この通り、友人の開発した技術で闇の印も消しました!
闇の帝王とはすっぱり縁を切ります!
これからは、誠心誠意、イギリス魔法界のさらなる発展のために尽力します!
意訳してそんなことを、しれっと記者たちの前で言ってみせるルシウスは、イギリス名物7枚舌をキレイに炸裂させていた。
その後、ルシウス経由でセブルスのもとに同様に闇の印を消してほしい、とこっそり依頼が来るようにもなった。
その関係者に、ダームストラング校長のイゴール=カルカロフがいたのも、余談である。
さて、死喰い人の残党と思しき黒犬の
新たに“忠誠の術”をかけなおし、一息ついたところで、セブルスはいい加減話すべきだろう、頼みたいこともある、と話を切り出した。
子供たちは、二人して友人宅に遊びに行っており、不在である。
実は、今度引っ越した町は、ハーマイオニー=グレンジャーの実家となるグレンジャー・デンタルクリニックがあるのだ。
詳しい住所は教えられないけど、同じ町だよ!とハリーJr.が手紙を出したところ、遊びにおいで!と誘われたそうだ。
その際、お姉さんも一緒にどうぞ、と書かれていたので、一緒に行ったのだとか。
グッドタイミングだ。これから話す話は、子供には少々刺激が強い話にもなる。ジュニアもヘザーも好奇心が強いところがあるので、首を突っ込まれてはことだ。
「それで、改まって何だい?セブルス」
「すまない。手を、貸してほしい」
インスタントのコーヒーの入ったカップを手にするハリーを前に、セブルスは頭を下げて言った。
「ど、どうしたんだい?!突然!」
「実はだな・・・」
仰天するハリーと、目を丸くするリリーに、セブルスは腹をくくって、話し出した。
先日の“秘密の部屋”騒動の元凶が、闇の帝王の分霊箱――分割した魂を収められた器物であり、他にもそれが複数あること。
いくつかは破壊でき、残っているものも破壊の目星がついたこと。
「どうして早く話してくれなかったの?!それ、私たちも無関係じゃないはずだわ!」
真っ先にそう言ったのはリリーだ。ムッとして、私!怒ってます!とばかりに眉を吊り上げている。
「リリー。話さなかったんじゃなくて、話せなかったんじゃないかな?私たちは皆、事情を持ってて、追われる立場だ。これ以上面倒を背負い込ませられない、と思ってくれたんだろう。
まあ、話してほしかった、というのには同意するがね」
「あ・・・」
ハリーになだめられ、リリーはハッとした。
この幼馴染が、不器用で肝心なことは話したがらないというのは、リリーが一番知っているはずなのに。
また、感情優先で怒ってしまった。
「ごめんなさい、スネイプ・・・」
「気にすることはない。黙っていたのは事実だ」
しゅんと申し訳なさそうにして謝るリリーに、セブルスは緩く首を振った。
できるなら、セブルスたちだけで片付けたかったが、一つ思いついたことがあり、それを片付けるにはハリーの手を借りた方がいいと判断したので、ここに来たのだ。
悪いのは中途半端なセブルスだ。リリーが怒っても無理はない。
「それで、私たちは何をすればいいんだい?」
「分霊箱がある以上、“闇の帝王”が復活する可能性がある。
だが、今、奴には肉体は存在しない。復活するならば、肉体を作り直す必要があるはずだ」
「・・・まさか、そんなことが、できるというの?」
「あくまで予想だが、不可能ではないだろう」
蒼褪めて震える声で尋ねるリリーに、セブルスは静かにうなずいた。
「ふうん・・・SF小説を思い出す話だね?コンピューターの中に意識だけを残しておいて、作ったアンドロイドやクローンの中にあとでそれをインストール・・・要は、乗り移って、はい復活、という展開だね。
ああ、アンドロイドっていうのは、人間そっくりの機械仕掛けの人形のことだね。
で、クローンってのは・・・うーん、ある人間の遺伝子、ええっと、肉体の構成情報を元に、その人間そっくりに作り上げた存在って言えばいいかな?
いずれも架空の存在だし、後者に関しては倫理的問題もあるから、実用化はされてないね」
SFに疎い魔法使い二人のために、説明するハリーに、なるほど、と二人は頷いた。
「さすがハリー!物知りね!」
「そうでもないよ」
感心するリリーに、ハリーは少し照れくさそうにするが、すぐに表情を引き締める。
「そのヴォルデモートってやつは、それと同じことを魔法でしようとしている。そうだね?
本人の肉体がないなら、近似遺伝子の持ち主の肉体情報を使うかもしれないね」
「話が早くて助かる」
「でも、ええっと、キンジ、イデン?」
「わかりやすく言えば、血のつながった肉親、と思えばいいよ。親兄弟とか、子供とかだね」
「“例のあの人”にそんな存在、いるのかしら?いまいちピンと来なくて」
「いるのだ」
視線をさまよわせるリリーに、セブルスは端的に答えた。
「先日の騒動の際、私は奴の分霊箱と相対した。
その時、奴の分かたれた魂は言っていたのだ。
本名はトム=マールヴォロ=リドル。ヴォルデモート卿はそのアナグラムだ。
ミドルネームは祖父からで、名前自体は父からだ、と。汚らわしい、母が魔女であるだけで捨てた男だ、と」
「ま、待って!え?!それって、“例のあの人”って半純血ってこと?!」
目を白黒させるリリー(どうも、純血と思い込んでいたらしい)に対し、ハリーは軽く眉を動かしただけだ。
「うーん・・・あくまで私が部外者だから言えることなのかもしれないが・・・納得はできるね」
「え?どういうことなの?」
「すぐさま殺すだ何だと過激な排除・弾圧運動をやっていたという話だったろう。
そういうのは、本当にそういう血筋の人間はやらないんじゃないかと思ってたんだ。コンプレックスの裏返しってやつだね
持たざる者は、持つ者を羨み、そこに行こうとするものだよ。どんなに足搔いて、手に入らないものであろうとね」
「そうだ。
冷静に考えれば、ヴォルデモートなど聞いたこともない名を名乗る時点で、出生に訳ありだというようなものだ。
自身の血を誇るならば、素直に家名を名乗ればいい」
ハリーの言葉にうなずいて、セブルスは改まって話を切り出した。
「ハリー。貴公に頼みたいというのは他でもない、トム=リドルという男を探してほしいのだ。
おそらく、すでに亡くなっていることだろうが、骨でも残っていれば、それを新たな肉体の材料にされかねん」
「なるほど。魔法族でないなら、魔法使いよりも、こちらで調べる方がいいね。
私は作家だから、作品の参考にしたい、と調べ物をしているスタイルで調べることもできる。
任せてくれ」
「私もサポートするわ。他にできることがあったら言って。
言っておくけど、また変な遠慮をしたら、容赦しないわよ!」
うなずいたハリーに、リリーが言った。
「・・・具体的にどうするのだね?」
「次の食事会で、スネイプ一人、ウナギのゼリー寄せを食べてもらうわ!」
「わかった。何かあれば必ず相談しよう」
恐る恐る尋ねたセブルスに、リリーがドヤ顔をしながら言うや、セブルスは真面目な顔をして即行で言った。
それを見て、ハリーがククッと肩を震わせる。
冗談を真に受けるあたり、この友人は基本的に真面目なのだ。
続く
【ハッフルパフのカップ】
ヘルガ=ハッフルパフが自身の象徴的アイテムとして作り上げたカップ。
取っ手が二つある、穴熊の彫刻が施された金のカップ。様々な魔法が施されている。
彼女の子孫となるヘプジバ=スミスは、それをあくまで安全にしまっておくだけであった。
ヘプジバの元から奪われたそれは、闇の帝王の魂を宿されたのち、レストレンジ夫妻に託された。
寛容を徳目とするヘルガ=ハッフルパフも、その有様を何と思うであろうか。
次回の投稿は、来週!内容は・・・ホグワーツ特急にて。アフタールーピンインパクト!・・・3話目にしてようやくホグワーツですよ。今楽章は亀進行ですなあ。お楽しみに!